Nishida's diary

トリニータを中心にいろんな試合を。

【大分】vs徳島(H) 喉は守れどゴールは守れず〈J2 第30節〉

台風の影響で中2日で迎えた徳島を攻めに攻めた大分だったが、ワンチャンスを決められての敗戦。「これもまたサッカー」とはいえ、割りきれない内容でしかなかった。

 

この日のメンバーは以下のように。

大分トリニータ
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徳島戦の通算成績は4勝3分4敗。全くの五分だが、ここ4回の対戦で全敗と、リカルド監督との相性は悪い様子。スタメンに三平和司が復帰し、國分伸太郎が久々にベンチ入り。

この試合で那須川将大がJ2通算150試合とのことで試合前にセレモニーも。どの選手の奥さんも綺麗なのでより頑張ってほしい。(嫉妬)

 

徳島ヴォルティス
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前節の岡山戦から5人もの変更をした徳島。3バックの右の内田航平は今季初のスタメン。左WBの表原玄太は湘南からの育成型レンタルで早速スタメンに。そして広瀬陸人、小西雄大ピーター・ウタカもフレッシュな状態で出場。ウタカとバラルの2トップは初めてだった。

 

引いた相手を押し込んで

前半、低い位置でブロックを引く徳島を予想して、大分は超攻撃的な形で押し込む。

徳島は前節の東京ヴェルディと同じように5-3-2、もしくはそこにウタカがやや下がった位置の5-3-1-1での守備。

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5-3-2の守備では「3」の両脇が空く、というのを前節のブログで紹介した。前節ではその空いたスペースを3センターの小手川宏基と前田凌佑が埋めたが、この日はより押し込むために左右のCBの岩田智輝と福森直也がここを突いた。

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これにより、徳島の5+3のブロックの間で小手川、前田と1列降りてくる三平が受ける事ができ、対面するWBを押し込む事ができただけでなく、岩田、福森が高い位置でフリーでボールに絡むことができるのでそこから対面へのパスやアーリークロスなどやりたい放題といった内容に。

徳島は奪ってからロングボール1本で数的優位、外国人2人による質的優位で殴ってくることも想定しており、奪われたら切り替えは早く、ゲーゲンプレスで即時奪取を目指し、裏にボールが出た際には鈴木義宜と共にボールサイドとは逆のCBがカバーリングをしてデュエルで負けない事を意識。これによりトップははほぼ全くと言って良いほど攻めることができず、自陣でのプレーが増えて連続した効果的な攻めは全くできなかった。

 

一方の徳島は、5-3-2の撤退守備から攻撃に移るために、左WBの表原のポジショニングにより攻め方を変えていたと感じた。ウラを返せばネガティブトランジッションの際に誰がどこを守るかがハッキリしていたとも言える。

基本は撤退守備の5-3-2。

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ボールを持てば4-4-2へ。

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表原が高い位置にいれば4-1-2-3のような形に。

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この変形を見てもわかるように、表原以外は大きなポジションチェンジはなく、横のスライドを基本にしていた様子。

実際には大分がDFラインに5人ぶつけてきたため5-3-2からなかなか持ち上げられなかったが、無策であったとは言えなかった。

 

ほぼ押し込んでのゲームになった大分は、三平の調子が良く6分には伊佐耕平とのワンツーでニア上を狙ったり、16分には岩田のクロスからシュートを放ったりと1stタッチがいつも以上に冴えていた。チームとしても中から崩す事ができ、丸谷拓也ミドルシュートや小手川のシュートもあった。が、得点には結び付かない。

殴り続ける大分と窒息気味の徳島、という印象で前半を終えた。

 

交代から流れを変える

後半に入って、徳島はハーフラインより自陣で1stプレスを敷き、バラル以外の10人で守備ブロックをつくって中を埋めたが、前田と小手川が対面するIHを引き付けることでCBをフリーにすることができた。

サイドから積極的に崩す大分は、61分に三平、伊佐の2トップを下げて後藤優介、藤本憲明を投入。スペースへの飛び出しに長ける選手を入れたことにより、より深い位置へボールを運ぶ意図での投入だったのだろう。直後の64分には福森のロングフィードから抜け出した藤本が肩で落とし、後藤がミドルシュート。68分には小手川のクロスから後藤がヘディングシュートを放つが、これは梶川裕嗣のスーパーセーブに阻まれゴールを割れない。

これを防いだ徳島は、69分にバラルを下げて杉本太郎を投入。おそらくこれが徳島の勝つためのプランであった。

杉本太郎に託されたプランは大分のアンカーの丸谷をマークし、コースを消すこと。そして間延びした中盤と前線を繋ぎ、カウンターに転じるための中継役を担うこと。このプラン自体は目新しいものではないが、残り20分というのが実に嫌らしかった。大分は攻めながらもゴールが割れずに、より前がかりになるので攻守のバランスが崩れる。サイドからの攻撃は高さがないので一発はないから中央突破さえされなければカウンターで一発狙える、と考えての時間帯、選手交代であった。

 

実は試合開始時から中を割らせないための布石は既にあった。5+3のブロックの中でボールを受けさせないために、「3」の脇に入られた際にはIHとWBで大分は挟んでいたが、徳島はIH+シシーニョで対応。これによりシシーニョは左右を献身的に走らないといけなかったが、中盤2枚でクローズして中にパスを出させないようにしていた。それでも大分はすくないタッチ数で中を崩したが、ゴールを奪えなかった。これにより、岩尾憲とシシーニョのボール奪取からロングカウンターという前期にも食らった必殺の形が出来やすい状況になっていた。

80分にウタカから佐藤晃大に変えて高さを加えると、83分にカウンターから大分を押し込み、中央を杉本→表原と繋ぎ小西雄大が1stタッチで前を向くと右足一閃。徳島が土壇場で得点を奪ってみせた。

これが決勝点となり、0-1での敗戦という結果になった。

 

徳島の印象

前期での対戦ではやりたいことを互いに潰し合いながら、丸谷の不用意なタックルで数的優位を作られて敗戦。今回はやりたいことを気持ちよーくやらせて痛い一撃をくらって敗戦。どちらも見ごたえたっぷりだったが、今回のリカルド監督はややバクチを打ってきた印象が強い。タラレバになるが、もし前半のうちに押し込んだ大分が得点を奪ったらどうなっていたかは非常に興味深い。完成度の高い、主力が複数人抜けてもやることをしっかりと遂行できるチームなので崩壊はなかっただろうが、攻撃のデザインなどは見てみたかった。

90分をどう戦うか、残り時間でどう建て直すかがハッキリしていた監督と、それを粘り強くできる選手たちがいるチームはやはり強い。まさに完敗だと言える内容だった。悔しい。

 

喉は守れどゴールは守れず

試合後のインタビューでガラガラにならなかった片野坂監督。これは"ベンチ入り"した浅田飴のおかげ。しっかりと喉を守ってくれた。しかし、徳島の術にまんまとハマり、敗戦。「大分にボールを持たせても怖くない」というのがバレてからの3-1-4-2だったが、この日もそれを証明する形になってしまった。

だからといって一度引いてから何とかしよう!という短絡的なハナシではない。中を切られながらも中央から崩すことはできていたし、押し込むばめんが長く続いたことからも、決して通用しなかったわけではない。

最後の精度に文句も言いたくなるが、そこは札束の問題で、移籍ウィンドウも閉まっているため「掘り出し物」に期待するのはお門違いでしかない。

 

 

では今、何が必要か?

それは口酸っぱく言っているセットプレーのデザインと、競争力を取り戻す事だ。

セットプレー。特にCKから得点の気配は全く無く、今日のようにタコ殴りにしておいて無得点。手っ取り早く点が取れそうなのはセットプレーの他ないのではないか?と常に感じる。世界中ではリヴァプールスローインの専門コーチを雇ったりとしている。そういった所を見ても突き詰めていく必用があるのは明白ではないか?

競争力では、現状、正常な競争が行われているのは2トップの片割れ、三平のポジションのみだろう。不動のメンバーが実に10人にもなろうとしている現状では変化をつけられず、交代も臨機応変さに欠いている。前期ではスーパーサブ川西翔太や清本拓己、藤本など流れを変えられる選手が居たが、後半戦では未だにその役目を果たせる選手が居ないのも大きな問題だろう。

シーズンは残り12試合。全勝は難しいが、それにどれだけ近い成績にできるかはこの2点に掛かっていると考える。今こそ、30人でこの苦難を乗り越えてほしい。

 

 

【ハイライト】2018明治安田生命J2リーグ第30節 大分トリニータ vs 徳島ヴォルティス - YouTube

【大分】vs東京V(A) ハートは熱く、喉はクールに〈J2 第29節〉

得点は動かず、前期とおなじスコアレスドローとなった試合だったが、両監督が戦術面で殴りあう非常に内容の濃いゲームであった。

 

この日のメンバーは以下のように。

東京ヴェルディ
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これまでは4-1-2-3をメインに使用していたが、この日は大分に合わせてか3バックでミラーゲームを仕掛けてきた。

夏の移籍ウィンドウでCBの畠中槙之輔横浜FMへ移籍、渡辺皓太はU-21代表に選出され不在と主力2人が居なく、代わりに平智広、G大阪からレンタルした泉澤仁がスタメンに。そしてこの試合で田村直也がJ通算300試合出場、奈良輪雄太はJ通算100試合出場とのこと。

 

大分トリニータ
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ここまで3試合で4ゴールと好調だった三平和司がメンバーから外れ、この試合の数日前に竹内彬が讃岐へ移籍したためキャプテンになった馬場賢治がスタメンからスタート。ベンチに宮阪政樹が久々に入った。

 

ハマった仕掛け

互いに戦術面で殴りあった試合で、先に仕掛けたのは大分だった。ボールを持つと左右のWBがウイングほどに位置を取り、馬場が1列下がってクサビを受ける形に。WBが高い位置を取ると共に3センターの左右がSHの役割を果たした3-4-3のような形でゲームに入った。

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これはヴェルディが4-1-2-3で来ることを予想して中盤の3枚を間延びさせてSBを上げさせない意図があったと思われるが、ヴェルディが3-1-4-2でゲームに入ったためより左右のスペースを有効に使うことができた。

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大分が攻める際に、ヴェルディは3バックに3トップを当てられるためWBが引いて対応しなければならない。5バック気味になると中盤を3センターで守らないといけないが、大分の前田凌佑、小手川宏基が左右に開くため必然的に走る距離が長くなる。前田、小手川にチェックに行くと中央から崩される形になり、3センターがボールサイドに連動して動く事を大分が強いた。

また、前田、小手川が2トップに近い位置でプレーするのに連動してCBの福森直也、岩田智輝がサイドを埋めてくるのでヴェルディはどうしてもSHの位置を埋めることができなかった。

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(左サイドの前田が1列上がり、ハーフスペースに顔を出すと共に福森が連動してサイドへ。その際に3バックの残り2人は2トップを見るためスライドする。)

 

そして、大分は守備面でも多少形を変えてきた。普段はハーフライン付近までFWが下がり、スペースを埋めることを優先し、状況が良ければ2トップ+1枚でハイプレスをしていたが、この日は2トップ+前田or小手川の3枚でプレスを仕掛ける事を優先。それに伴いDFラインも普段より高く設定していた。

これは大分がネガティブトランジッションに注意をしていたからだ。この日の3-4-3から普段の5-3-2の守備をするためには、両WBがトップの位置からDFラインまで80メートル以上のダッシュを連続しなければならない。これは全く現実的ではないため、それならばインテンシティを高めて前からハメて押し込んだ方が合理的であると判断したからだろう。ネガティブトランジッションの際にはハイプレスを仕掛けたが、ヴェルディがビルドアップの際にはしっかりと5-3-2の守備ブロックを作りじっくりと守ることを使い分けたことで、WBの体力面でのリスク管理も行われた。

 

WBのポジションという1つを変えただけだったが、結果としてヴェルディからボールを取り上げ押し込んだ。CKから松本怜のクロスを鈴木義宜が触れば1点というようなチャンスや、丸谷のミドルがポストを叩き、その跳ね返りを馬場が折り返し伊佐耕平が詰めてゴールネットを揺らすも馬場のオフサイドで得点には至らなかった。

 

攻め込まれたヴェルディは35分ほどから3センターから泉澤を左サイドに回した3-4-2-1へと変更。

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これによりサイドに蓋をすることができ守備が安定すると39分にはドウグラスヴィエイラからのパスを泉澤、43分には左サイドを崩して梶川諒太がシュートを放つも共に高木の好セーブに阻まれる。

一進一退の前半はスコアレスで折り返す。

 

形が変われば

後半に入り、ヴェルディが前半途中からサイドの修正をしたため、次は大分が3センターの脇を使われる事が増えた。そのため、馬場を泉澤と同じようにしてシャドウの位置に下げて5-3-2から5-4-1へ変更するかと思われたがそれはせずに、WBの動きを変えて修正を加えた。

大分のWBはヴェルディがビルドアップを行う際には5-3-2だが、WBの藤本寛也、奈良輪雄太にボールが入るとすかさずチェックに行きマンマーク気味に。大分はWB、同サイドのFW、CHと丸谷がボール狩りを行い速攻に転じたいと考えていたようだ。

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(ヴェルディの右サイドで藤本がボールを受けると那須川が飛び出し前を塞ぎ、前田がボランチ、伊佐がDF、丸谷がシャドウのコースを消しにかかり、奪えば逆サイドの小手川へ繋ぎ横ズレからチャンスを作る)

これは那須川が背後を取られれば大ピンチになりうるが、そこのカバーを丸谷ができるようにしていたように思われる。前半でも43分にもあったように素早いテンポでパスを回されると劣勢になるが、それは整備されたモノではなく、再現性に欠くと判断したのだろう。

結果として大分は部分的、位置的な密度を高めて高いインテンシティから速攻を目指したが、練度が低く連続してのプレーには乏しかった。また、ヴェルディもDFラインを高くし、大分は押し下げられたため55分からは速攻に移る機会は少なくなった。

前半とは逆の展開になりヴェルディが押し込むと55分には泉澤、68分には佐藤優平の直接FKとチャンスは作るが、またしても高木の好セーブによって失点は免れた。

その後は大分はFW2枚と那須川から藤本憲明、後藤優介、星雄次し、ヴェルディは佐藤、泉澤からアランピニェイロ、李栄直を投入して打開を図るもスコアは動かず。勝ち点1を分けあう結果となった。

 

ヴェルディの印象

やっぱりロティーナ監督との対戦は戦術的な要素が多く、柔軟性、引き出しの数が試されるなぁ……という印象。これに対して片野坂監督が用意でまたしても上回ったが、ロティーナ監督が修正をし、試合は高い緊張感のまま終わるという内容の濃いものだった。

選手で印象に残ったのは梶川諒太泉澤仁

梶川は、ボランチの位置からいつの間にか前線に顔を出してきて非常に掴みづらい選手だな、という印象。また、組み立ても上手く器用なので戦術に幅を持たせる大事な選手なんだとも。

泉澤は中間ポジションを取るのが上手く、出し手が出したいタイミングで顔を出せる選手。ハーフスペースへの侵入、カットインでワイドを空けたりと頭のいい、周りが見える選手だなと感じた。

そしてこの日の実況の桑原学さんと解説の柴村直弥さんの話がとても良かった。戦術面での狙いや選手の特徴など分かりやすく伝えていただき、自分もセットプレーの意図が理解できた。どこぞやの焼肉屋は「いやぁ~」「良かったっすねぇ~」など中身がない感想屋なので見習ってほしい。

 

一体感を持って

この日はGKのアップの際に高木からゴール裏に対して「前で応援してほしい」と話があったようで、サポクラもそれに答えるという一幕があったり、

ハーフタイムにスタッフがサポーターにのど飴をもらったり

とチームだけでなくサポーターも一丸となって闘っているのはとても良いことだな、と。

そしてこののど飴の一件から浅田飴さんと繋がりができた様子。(ドメサカのまとめより)

サポーターのオファー?から関わりができるのは面白いとも感じました。

 

ピッチ内外で一体感がある大分。残り1/3となった今シーズン。ハートは熱く、喉はクールに一つでも高い順位を目指してほしい。

 

【ハイライト】2018明治安田生命J2リーグ第29節 東京ヴェルディ vs 大分トリニータ - YouTube

 

 

【大分】vs岡山(H) 沸いたOFURO〈J2 第28節〉

お盆で帰省客が多いこの時期に合わせてトリニータは年イチの動員企画として"OFURO"(Oita FUll blue pROject)が企画された岡山戦は、最後の2枚替えが功を奏し2試合連続のゴールラッシュとなった。

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そして久々に現地観戦。初期の大分スポーツ公園のイラストにあった幻の体育館が出来上がりつつありました。

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久々のホームの声援は腹に響く。すき。f:id:west242447:20180816233939j:image

そしてDAZNなどの映像では映らないシーンの確認もでき、やっぱり観戦は現地に行くに越したことはない!と感じました。

 

 

 

この日のメンバーは以下のように。

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スタメンは前節と同じ11人。ベンチ入りメンバーは川西翔太林容平が外れ、替わりに星雄次、後藤優介が入った。

 

ファジアーノ岡山f:id:west242447:20180816034108j:image

ここまでリーグ最小の22失点と堅守な岡山。序盤戦でイヨンジェが長期離脱をし、赤嶺真吾も離脱。それでもウノゼロで勝ち点を積み上げ首位に立ったが、第11節熊本戦の勝利を最後に調子が上がらず、中位になってしまった。左WBの三村真が練習中の負傷でメンバーを外れ、椋原健太が左、澤口雅彦が右に入った。前線には横浜FCからレンタル加入のジョン チュングンが1トップ。

 

互いに意図を持って

両チーム共にシュートチャンスが少なく、堅い45分。しかしそれは、互いに相手の構造を見て対策を立てそれに対応するという非常に緊迫したものだった。

岡山の狙いは2つ。主に守備での工夫が見てとれた。

 

1つめは、大分が自陣でのビルドアップを制限すること。2シャドウの1角である赤嶺が大分の3バックの福森直也と鈴木義宜の間に入り、右WBの澤口が低い位置を取り、右サイドが重い4-4-2のような形で守る。

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この意図として、大分のビルドアップでGKの高木駿が絡むことを牽制する狙いがあった。

大分のDFラインでのボール回しを行う際のマッチアップをみてみよう。

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鈴木にはジョン チュングンがつき、高木に赤嶺がつく。GKのコースを限定しに行くため必然的に中盤で数的不利に陥るが、そこに出すにしても、サイドに出すにしても浮き球でしかパスは通せないため必然的に精度が下がる。

攻撃でも赤嶺がサイドに流れ、澤口がサイドからインナーラップをしてハーフスペースに飛び込んでボランチ脇、もしくはWBの背後を狙っていた。

 

2つめは左サイド。大分の攻撃は右サイドの快速、松本怜にCBの岩田智輝も右SBのようなプレーをするため、マッチアップを明確にしておかないと徐々にバランスが崩れズレが生じてしまう。そのため、左WBの椋原は守備の際にリトリートをして5バックを作るのを優先するよりも松本にマンマークをして、岩田のオーバーラップを上田康太か見るようにしていた。

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これにより、大分の右サイドを潰して逆サイドの那須川将大に展開しても、大分はロングボール1本で逆サイドに振るのはあまりしないのでDFのスライドだけで対応できるだけでなく、カウンターに移った際に赤嶺が鈴木と福森の間を突けるためにあえて右サイドを下げて左サイドをマンマーク気味にしていたようだ。

 

一方の大分も、右に流れる赤嶺の対応と、岡山が左サイドの守備を固める事、松本にマンマークを敷かれることにしっかりと対応ができていた。

 

ビルドアップの制限をかけられると、左WBの那須川が下がってパスコースを作り、丸谷拓也小手川宏基が左にスライドをして三平が1列下がり3-4-2-1のような形で対応をした。
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松本に椋原がマンマークをされることには、動きを複雑にして混乱させるということではなく、敢えて高い位置を取って椋原を押し下げて、SB-SH間を間延びさせて、空いたスペースを三平や岩田が突く形で対応した。

 

岡山の"大分対策"を上手く利用してサイドから仕掛けるだけでなく、岡山のビルドアップに対してのリアクションにも多少の変化があった。これまでは相手がボールを持った際は、FWはミドルサードの入り口からプレスをかけていたが、それではどうしてもポジティブトランジッションの時にFWが低い位置からスタートをするためにロングカウンターが機能しないという欠点があった。それの対策として"3センター"の前2枚の前田・小手川がFWと連携してプレスをかけると、全体を押し上げて前から奪いに行く狙いが見えた。しかし、これは90分間連続して行うには前田・小手川の負担はとても大きくなるためペース配分が重要だったが、右の小手川は松本、岩田のカバーリングもこなさなければならないため、前半は前田が小手川の分まで守備のスイッチ役として左右を動き回っており、岡山のビルドアップからロングボールで背後を狙われる場面が見られた。

 

お互いに狙いをもって潰しあった前半は、見るからに硬い入りになっていた。そのため、前半のビッグチャンスは8分の那須川のCKから伊佐がニアで逸らしたヘディングシュートのみだった。

 

岡山は15分に裏に抜けたジョンチュングンと岩田が縺れた際に脇腹を痛めて(肋骨?)前半の21分に齊藤和樹と交代。前半終了間際にはボール際で伊佐が後藤圭太とぶつかり、後藤はその時に膝を痛めてしまい、48分には下口稚葉と交代。岡山は早い段階でアクシデントが続き、早くも2つもの交代カードを切らざるを得ない状況になってしまう。

 

中を意識し、トドメを刺す

硬い前半から修正を加えた大分は、サイドで停滞していた攻撃に中でのプレーを増やすように指示していた様だ。

後半開始直後の46分には小手川がミドルシュート。これは岡山GKの金山隼樹が指先でセーブするとポストに弾かれる。50分には伊佐もミドルシュートも金山にまたセーブされ、続く51分には岩田がミドルシュートを放つがDFに当たりバーを弾く。中での積極的なプレーが増えて波状攻撃を仕掛けると、岡山の守備ブロックはじわりじわりと後退する。大分はそれを見逃さなかった。

52分。ペナルティエリア左で受けた前田がサイドにパス。那須川はダイレクトで中に早く低いボールを入れると、伊佐がニアで潰れて三平がシュート。これが決まり幸先よく先制。三平はこれが3試合連続ゴールとJ2通算50得点目を記録した。56分にも那須川のミドルシュートがまたしてもポストを叩く。完全に大分の流れになった。

 

岡山が劣勢となったのは、後藤圭太の負傷退場が大きいだろう。岡山の3バックは基本的に横にスライドをしてスペースを埋め、選手が持っている球際の強度を生かすことで堅守が成り立っているが、空中戦に強い後藤の代役は澤口と、本職ではない選手が務めたこと。そして右WBに入った下口のポジション取りの悪さ。DFラインまで下がって5バックの1角に入るか、フォアチェックを行うかが曖昧で、前半は守備に追われていた那須川が攻撃参加ができる余地を与えてしまった。

結果として下口は撤退して守備に追われて、右のシャドウの齊藤と間延びをしてしまったため、劣勢になってしまった。

これを見て長澤監督は61分に最後のカードを切る。赤嶺を下げて、仲間隼斗を投入。4バックと3バックを併用できるようにして、下口のポジショニングを改善して、サイドの決壊を防ぐ事に着手した。

守備では澤口が中に絞って3-4-2-1

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攻撃では椋原と澤口がSB、下口がSHをする4-4-2

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と可変システムを採用。これにより、下口がサイドでの守備は前から奪いに行くことが明確になり、左サイドの決壊の阻止とカウンターの精度を上げる事ができた。

大分は64分に三平を下げて、馬場賢治を投入。相手がやり方を変えてきたが、勢いそのままに追加点を奪いに行く。自陣で福森と高木がパス交換をして左サイドのライン際に浮き球のパス。ボールは相手の頭上を越えて下がって受けた伊佐が数的優位を生かしてドリブルを仕掛けると、馬場、松本が囮となって伊佐がカットイン。ペナルティエリア前で4対3とほぼ詰みの状態で右サイドを上がった小手川が伊佐からのパスをダイレクトでシュートを放つが僅かに枠の横。大分が一番やりたいビルドアップからのサイドを絡めた速攻ができたが、得点には繋がらない。

すると今度は、ここまで防戦一方だった岡山にも決定機。74分にアタッキングサード入り口から齊藤→仲間→伊藤とワンタッチでパスが繋がり、大分の鈴木がチェックするためにDFラインから飛び出す。それに合わせて那須川がサイドから中にポジションを移し、チャレンジ&カバーをするが、空いた左サイドにパスを出されて下口がフリーで受けてセンタリング。ファーサイドへのボールを齊藤がバックステップでマークを外して頭で折り返すと、仲間がヘディングで合わせてゴール。岡山がワンチャンスをモノにして振り出しに戻す。

岡山は早々に交代カードを使いきっていたことと蒸し暑い大銀ドームという環境もあり、同点にしてからは5-4-1で撤退をして守備固め。堅実に勝ち点1を拾いに来たようだった。

攻めて押し込みながらも追い付かれた大分は、82分。伊佐と小手川を下げて、藤本憲明と後藤優介を投入。馬場が小手川の位置に入った。

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ここから引いた岡山を相手に慌ててロングボールを入れるような雑な事はせず、ボールを持って揺さぶると、右サイドで松本がやや下がってマンマークについている椋原を釣りだしCBとWBの間にチャンネルを作ると、そこのスペースに藤本が走り、岩田がスルーパス。右サイド深くで藤本が馬場にボールを渡すと、ペナルティエリアの角からクロス。これを後藤がジャンピングボレーで合わせて勝ち越しに成功する。

何度でも見ていられるエースのスーパーゴール!

キング・オブ・シュート

は週間ベストゴールにも選出された。

 

勝ち越された岡山は、高さのある増田繁人を前線に送り、キック精度の高い喜山康平と伊藤がロングボールを入れるパワープレーへ。f:id:west242447:20180817141748j:image

しかし、大分は前がかりになった相手の背後を見逃さなかった。89分にはカウンターから左サイドの那須川から藤本がヘディングで落として丸谷へ。丸谷はゴール前まで持ち上がり、中にパスを出すと藤本がスルーをして後藤が追加点。90+1分には自陣で福森から中盤の藤本にパスを出すと、藤本は浮き球でウラヘ。これに馬場が抜け出してダメ押しの4点目が決まる。硬いゲームも終われば3点差と大分は2試合連続での大勝。J2通算200勝目にもなった。

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岡山の印象

アクシデント続きだったが、試合後に「それもまたサッカー」と言い切る長澤監督の潔さが印象に残った。

岡山の堅固な守備のベースである3バックのスライドはDAZNではあまり写されないのて現地で見られて良かったなぁ、と。それだけに後藤の負傷交代は大きな痛手だった。

選手で印象に残ったのは仲間隼斗。守備重視のチームにあって前で孤立することは多々あるが、前線からプレスをかけて間延びを防ぎ、得点まで奪ってみせた。

試合前の桃太郎チャントでは大分側から手拍子、試合後には岡山の選手から一礼に、大分サポから岡山コール、岡山サポから大分コールと、非常に暖かい雰囲気だったのも印象に残った。

 

 

スーパーサブを残せる利点

この日の大分は、ベンチスタートの3選手が得点に絡み3得点。後藤、藤本、馬場は誰が出ても強力で、層の厚さと対戦相手に合わせた起用ができるのはとても大きいだろう。今のFWはスタメン争いが熾烈。結果を出さねば替えられるという緊張が良い方向に繋がっている。これを生かすためにも、3センターのバリエーションを増やすことで、より積み上げができると感じた。明日のヴェルディ戦も難しくなるだろうが、勝ち点を伸ばしてもらいたい。

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【ハイライト】2018明治安田生命J2リーグ第28節 大分トリニータ vs ファジアーノ岡山 - YouTube

【大分】vs新潟(H) 決め手は"シュータリング"〈J2 第27節〉

前節、新たな試みで喉から手が出るほど欲しかった後半戦初勝利を手にした勢いそのままに、4-0の完勝で連勝を飾った。

 

この日のメンバーは以下のように。

大分トリニータf:id:west242447:20180806034650j:image

前節からの変更は1つ。星雄次がメンバーから外れ、那須川将大がスタメンに。千葉から期限付きで加入した岡野洵がさっそくベンチに入った。

 

アルビレックス新潟f:id:west242447:20180806035117j:image

J1から降格して1年目だが、ここまでリーグ戦19位。後半戦も1勝4敗と波に乗れていない新潟は前節からの2枚の変更。GKをアレックスムラーリャから大谷幸輝へ、CBの原輝騎から怪我明けのソン ジュフンがスタメンへ。ベンチには新加入の梶山陽平と渡邊凌磨が入った。

 

焦らず丁寧に

この日のゲーム前のインタビューで片野坂監督は「狙いができれば勝てる」と自信を持っていたようで、選手たちもいつも通り焦らず丁寧にゲームに入った。前節と同様にGKを含めたビルドアップに取り組み、積極的にCBからFWにクサビのパスを入れる意図が見えた。

大分の新潟対策は、守備のマッチアップを明確にしたこと。3バックを右にスライドし、左サイドを那須川が埋めて4バックに。3センターの中盤は左にスライドして丸谷拓也小手川宏基がダブルボランチを組み、左SHに前田凌佑が入る4-4-2へ。

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誰が誰を見るかという単純な約束事だったが、これだけで新潟の攻撃はほとんど凌げてしまった。

新潟の攻めはSBからシンプルに矢野貴章をターゲットにロングボールを入れてポストプレーから落としたボールを田中達也が受けるか、タメを作って田中と左右のSHを押し上げるかがメイン。SBがドリブルで持ち上がって起点になることはあれど、直接得点に繋がることはそうそうないので、大分は自陣深い位置での不用意なファールをしないことが重要であった。

一方の新潟の大分対策は、大分の右CBの岩田智輝が松本怜とのコンビでサイドを崩してくる事を想定して、岩田に対面する高木善朗が積極的にプレスに行かず、リトリートをして縦パスを警戒。必然的に左サイドが押し下げられるため、セカンドトップの田中は矢野と高木の間を取り持つ事と、大分のビルドアップの起点になるボランチのチェックの2つのタスクを担った。それ以外はオーソドックスな4-4-2だったが、大分のボランチを抑えられなかったことが結果として大きな代償を支払うこととなった。

 

ゲームは開始すぐに矢野がファーストシュートを放つと、9分には安田理大のクロスを那須川がヘディングでクリアしようとするが後ろに逸れてゴールへ。ギリギリの所で高木駿が弾く。新潟の決定機はこれだけだった。

大分はサイドでCB、WB、ボランチの3枚でサイドを崩してはいたが、3ボランチの左右がサイドの組み立てに関わるためかバイタルエリアがぽっかりと空いてクロス一辺倒に。大銀ドーム特有の蒸し暑さにより今季初の飲水タイムを挟んで32分。中盤中央から丸谷→前田と渡り伊佐へ縦パス。ワンタッチで前田に戻して那須川と左サイドへボールが行くと那須川がクロスと見せかけた「シュータリング」。山なりのボールはファーサイドのサイドネットへ吸い込まれ、大分が先制点を奪う。

--その先制点は、クロスのようなシュートのような感じだったが……。

……狙いました(笑)。自分の中でもたまに「シュータリング」と呼んでいるのだが。ラッキーではあるが、ああいうところで持つとGKはクロス対応の体勢に入るので、そこを狙ったら良いところに行って入った。

大分-新潟 選手コメントより

スコアが動いてから新潟は小川佳純と加藤大が縦の関係になり両SBを押し上げたが、37分に岩田がドリブルで持ち上がり、伊佐へボールが渡ると反転してシュート。バーに当たり得点にはならなかったが、大分の3センターがボランチ脇を突いていき新潟はすぐに横の関係に戻していた。

結局前半は、那須川のゴールで1点のリードで折り返す。

 

最後まで激しく

大分は後半、三平のキックオフから鈴木義宜のロングボールを伊佐がヘディングで落として松本怜→小手川と右サイドを崩しマイナスのクロス。伊佐がニアサイドでスルーをすると三平が流し込み2-0。後半開始15秒ほどの電光石火の攻撃だった。

51分にも右サイドを崩し伊佐のフリックから丸谷がスルーパスを送り、抜け出した三平がGKをしっかり見てループ気味にシュート。これが決まり3点目。

67分には岩田の縦パスを右に流れていた三平が受けて中央へパスを送ると、三平とスイッチしていた小手川が冷静に合わせて4点目。これでゲームは決まった。

直後に伊佐にかえてひさびさの出場を果たした林容平、77分に三平から馬場賢治と前線をフレッシュにし、80分には那須川から新加入の岡野を入れる余裕を見せた大分。

新潟は渡邊凌磨、河田篤秀、ターレスと攻撃的なカードを切りパワープレーを仕掛ける。f:id:west242447:20180806062956j:image

が、球際で悉く大分に負け、波状攻撃もできないままタイムアップ。最後まで手を抜かず、球際、1対1のデュエルに拘った大分が1ヶ月半ぶりのホームでの勝利をゴールラッシュで飾った。

 

新潟の印象

こう言ってはなんだが、攻守で連動できずにサイドから再現性のないクロスをむやみに放り込む事に終止し、ほぼ何も出来ていなかった。前期ではオーソドックスな4-4-2で選手の質の高さで殴っている印象だったが、夏場に入りマンネリ化と対策をされて質的な優位は帳消しにされてしまい、選手たちは疑心暗鬼に陥っているように見えた。この試合が今季のワーストであれば「こんな日もある」で済ませられるかもしれないが、戦術的に遅れを取っているのは明確であり、2年連続での降格争いに現実味が出てきた。

チームとして機能性を欠いたのには、監督が的確な指示、戦術を持ち合わせてない事に起因するが、特に致命的だったのはボランチ。中盤の底に居るには居るが、大分の3センターの対応に追われて後手を踏んでおり押し上げに苦労し、それを発端にサイドとの連携ができなくなり攻撃まで上手く運べないという地獄の様な内容に。高木善朗にリトリートをさせて岩田の攻撃参加を抑える意図は面白いと感じたが、高木をボランチの位置まで下げて3センターにぶつけ、田中達也をサイドに回すくらいの思いきりもなく、ほぼ何も積み上げもないままターレスに「次に繋がるゲームを」とハッパをかけても目の前のゲームも戦えていないのに次は見据えられないのでは?と疑問を感じた。

選手で印象に残ったのは、右SHをメインにパワープレーの場合ではボランチに入った戸嶋祥郎。いい形でボールを受ける機会はほぼ皆無だったが、攻守でほぼ唯一走っていた印象で、球際で戦う姿勢を見せていたと感じた。そして戸嶋以上に印象に残ったのは他でもない新潟のサポーター。サウナのような大銀ドームで90分間声を出し続け、チームを鼓舞し続けていた。遠路はるばる大分まで本当にお疲れさまでした。

アルビレックス新潟というチームで一番戦えていたのがサポーターというのは寂しく、不甲斐ないこと。これをチームは、フロントはどう感じるのだろう。新潟の苦境はまだまだ続きそうだ。

 

新たな形をモノにして

ここにきて今季2度目の2試合連続クリーンシートでの連勝を果たした大分。ミドルサードからディフェンシブサードへの侵入を阻止できており守備の改善が見受けられ、GKを含めたビルドアップでプレス回避でも進化を遂げたように見える。復調の要因は、フォーメーション変更があったからではなく、球際の強さの再確認があったのではないか。

これからは引いた相手には3-1-4-2、押し込まれた際は3-4-2-1の2つを使い分けて行くことになるだろうが、今季開幕してすぐの山形戦でも実際にあったようにゲーム内での原則の大きな変化を伴うフォーメーション変更はなかなか上手くいかないのが常。その対策としてはしっかりと3-1-4-2のやり方を詰めてくしかないが、バイタルエリアの埋め方、ロングカウンターのデザインはこれからの課題として向き合わなければならない。価値のある連勝であるからこそ、これから終盤戦、そして来期以降にも繋げていくために細部を詰めていかなければならない。

新たな形をモノにできるのがすぐなのか、来期以降かは神のみぞ知る。しかし、難しい時期をレベルアップで乗り越えたチームをこれからも追っていきたい。そう思える試合であった。

 

【ハイライト】2018明治安田生命J2リーグ第27節 大分トリニータ vs アルビレックス新潟 - YouTube

【大分】vs岐阜(A) ひさびさの勝利! 〈J2 第26節〉

5試合勝利なし。長いトンネルに入ったかと思われた大分だったが、中盤での優位を作り出して岐阜をシャットアウト。前半に奪った2得点をあげて久しぶり、そして待望の後半戦初勝利を手にした。

 

この日のメンバーは以下のように。

FC岐阜
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真夏の3連戦の最後で風間宏矢小野悠斗から三島頌平、中島賢星とトップ下の2枚を変更。前節から新加入の北谷史孝が先発に。

カウンターからの失点、セットプレーからの失点が多く、前節の讃岐戦ではCKから連続で失点。通算1勝の苦手大分にどう対応してくるかが注目された。

 

大分トリニータf:id:west242447:20180801152012j:image

5試合勝利から見放された大分は、前線の3人を総入れ替え。藤本憲明、後藤優介、馬場賢治をベンチスタートにし、伊佐耕平、三平和司小手川宏基が先発に。DAZNの予想では伊佐の1トップ、三平、小手川の2シャドウでの3-4-2-1と予想されたが、実際は伊佐と三平の2トップ、小手川は中盤の右に入った3-1-4-2か3-3-2-2の形でゲームに入った。

 

バイタルを埋めて

大分は中盤を前田凌佑、丸谷拓也小手川宏基の3枚で埋めて岐阜の中盤での細かいパス回しのスペースを消してサイドに誘導して奪いきる意図があった。

前期の対戦では、大分は4-1-4-1を採用してビルドアップで相手を引き込んでから中盤3枚がパスコースに顔を出して岐阜のプレス回避を目的にした3センターだったが、この日の3センターは前から仕掛けて相手の最終ラインに積極的にハメる意図があった。

 

大分は、岐阜対策として岐阜が自陣に居るとき、アンカーが落ちて疑似3バックになっているときは2トップが積極的にプレスに行きパスコースを消しに行く。岐阜がボールを持ち上がった際には1stDFをハーフラインよりやや下に設定をしてスペースを消す事を共通事項としながら非カウンター、ポゼッションの2つの場面によって形を変えていた。

 

・岐阜がポゼッションで攻めて来るとき

岐阜の3トップの左右はペナルティエリアの幅までしか広がらず、中盤との距離を詰めて積極的にパス回しに関与することが求められていた。そのため、大分の3バックは距離間を保ちながら対面する岐阜の選手を見ることができる。そして、岐阜のアンカーである宮本航汰が落ちて左右のSBが高い位置を取った3-4-3のような形に変形。

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これに対して伊佐、三平の2トップがコースの限定をしてサイドに追い込み、WBとトップ下の2枚で挟んでしまいボールを奪う。f:id:west242447:20180802183511j:image

幸いにも、岐阜のアンカーの宮本が落ちた際にトップ下の中島、三島が連動して落ちて来なかったためサイドで効率的にボールを回収できた。

 

・岐阜がカウンターで攻めて来るとき

岐阜はポゼッションで崩せないと見ると、低い位置からロングボールで数的同数のFWに一度ボールを繋いで位置の回復から攻める事に対しても、大分は準備ができていた。

ロングボールが入ると、WBは無理にDFラインまで戻って5-4-1を形成する今までのやり方ではなく、アンカーの位置の丸谷がDFラインに入り、小手川、前田がバイタルを埋めた4-4-2の形で守っていた。

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4+4のブロックを形成して3トップの無効化に成功する。

 

結果として、岐阜はバイタルエリアを埋められてよい形でボールを受けられず、速攻を仕掛けても大分DFの網にかかり、ボールは保持できても攻め手を失ってしまう。

 

また大分はビルドアップの形にも工夫を加えた。

普段は3バック+ボランチ2枚の5人での組み立てを行うが、この日は3バック+丸谷+GKの高木駿という5人で行った。

高木はゴールキックの際によくタッチラインを割っているためかそれほど周りの評価は高くないが、浮き球のミドルパスをWBにしっかりと付けたり、相手のプレスを往なしながらのビルドアップはこの半年で確実に伸びていたため、ビルドアップへの積極的な参加を片野坂監督は要求したのだろう。

この日のビルドアップの形は2+3、3+2の形がメインだった。2+3では鈴木義宜と高木が横になり、福森直也、丸谷、岩田智輝がその前で構え、3+2では鈴木がやや右に移動して福森、高木、鈴木が横になり、丸谷、岩田がその前で構える。この2つのビルドアップをメインとしたことで、岩田が右サイドの高い位置を取ることが可能になり、脚の速い松本怜との強力なサイドアタックを繰り出すことを可能にした。

またGKの高木をビルドアップに組み込めたため、前線で2トップ+両サイド+トップ下のどちらかが絡んだ攻撃が可能になり、もう片方のトップ下が中間ポジションを取ることでパスコースを増やすことも可能になっただけでなく、前線に人数がいるため3バック、GKからクサビのパスを積極的に入れることが可能になった。

 

このような狙いを持った大分は、15分に右サイドの松本のクロスを大外の星雄次が合わせる大分らしいプレーを見せ、19分には左サイドのスペースを星が突いて前田、丸谷と繋ぎミドルシュートを放つと、三平がこれを絶妙なトラップで足下に収めると、冷静に流し込んで待望の先制点を奪う。

28分に岐阜DFの北谷がボックスのギリギリ外でハンドを犯しFKを獲ると、GKとDFの間に入ったボールは丸谷と北谷に当たりゴールへ。公式記録ではオウンゴールとなったが、2点のリードで前半を折り返す。

 

まだ、モノにはできず

後半に入り攻め手がほとんどない岐阜はハーフタイムで動く。ライアン デ フリースを下げて長沼洋一を投入。3-3-2-2へ変更してマッチアップを明確にしてきた。

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これにより序盤こそ右サイドからチャンスを作った岐阜だったが、トップ下がスペースを埋められているためよい形でボールを受けられない。また、ボールを受けても前を向けないためパスが各駅停車になり攻撃が停滞すると、次第に攻めたい攻撃陣と非カウンター対策のため守りに重きを置きたい守備陣で別れてしまい間延びをして、フリックを多用した岐阜のパスワークは消えていった。

 

一方の大分も課題を見せた。

ロングカウンターからサイドへの展開は精度が低くなり、うまくボールが入ったとしても、FWやトップ下が追い付けずに、効果的にゴール前まで持ち込めなかった。しかし、三平、伊佐から後藤、藤本に変更をしてからはサイドからのアーリークロスに抜け出す形を見せた。これからも3-1-4-2を継続するならFWの組み合わせも悩み所だろう。

また、4分であったライアン デ フリースの抜け出しのような形はこれから狙い目とされるかもしれない。3トップに対して大分DFがマンマーク気味でついていたこの日。4分の場面では岐阜の右サイドの山岸祐也がタッチライン際に開いており、福森と鈴木の間が間延びをし、チャンネルができていた。このスペースに飛び込まれてシュートを打たれた。WBが対面する選手を捕らえられなかった場合にだれがそこにチャレンジをしていくかや、アンカーの丸谷の脇の埋め方は改善の余地がありそうだ。

 

結果として後半はスコアは動かずに2-0で勝利。6試合ぶりの勝ち点3となった。

 

岐阜の印象

前回対戦では前から仕掛けられ、涌き出てくるような印象だったが、今回は大分の対策がハマったためか全体的にパッとした選手は居なかった。この試合後に古橋亨梧が神戸に移籍をし、田中パウロ淳一も離脱となかなか厳しいような。

選手で印象に残ったのは加入2試合目で2失点目の起点になってしまい、オウンゴールも献上してしまった北谷史孝。悪目立ちしてしまった印象で、後半の3バック変更後もあたふたしていたが、まだ2試合目。これから巻き返して3バックも4バックもこなせる選手になると怖いなと感じた。

 

新たな引き出しを手に

これまでは引いた相手に苦戦をし、ボールは持てるが最後まで行ききれないというもどかしい試合が続いたが、ここに来て引いた相手を釣りだすだけでなく、引いた相手を殴る引き出しを手にした印象だ。夏場の折り返しで苦しい試合が続いたが、これは確かな収穫だろう。まだまだ選手には物足りないと感じる点はあるが、システム変更でその弱味を覆い被せた片野坂監督の手腕には驚かされる。

大分の反撃は、ここからだ。

 

【ハイライト】2018明治安田生命J2リーグ第26節 FC岐阜 vs 大分トリニータ - YouTube

【大分】vs愛媛(H) 今こそ選手の奮起を〈J2 第25節〉

最後に勝ち点3をみてから遂に1ヶ月。1分3敗で迎えた愛媛戦は、片野坂監督が選手に道筋を提示することはできたが、目標である勝ち点3にはまたしても手が届かなかった。今、求められるのは選手の奮起。そう痛感した試合だった。

 

この日のメンバーは以下のように

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前節から3人を入れ替えて臨んだ大分。3バックの右に岩田智輝が今季初スタメン。前田凌佑は初出場。そして馬場賢治がスタメンに復帰した。

 

愛媛FC
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DAZNの愛媛の予想フォーメーションは4-1-2-3だったが、実際は3-4-2-1を基本とした可変型だった。怪我から復帰の神谷優太がトップの位置に入っているが、ほぼゼロトップのように。

 

自信を持たれて

前半から仕掛けたのは、今節も大分だった。6分に中盤で前田が安藤淳からボールを奪うとそのままドリブル。駆け上がる味方の動きを利用してスルスルと持ち上がると、愛媛がたまらずファール。ペナルティエリアの外でフリーキックを獲得するが、壁に阻まれる。続くコーナーキック。中での競り合いで林堂眞が鈴木義宜を倒したとして前半9分でPKを獲得した。このプレーで林堂は完全にホールディングとは言えず、微妙な判定。スコアだけでなく、心理面で大分が優位に立てるチャンスでもあったが、キッカーの後藤優介の蹴ったボールは愛媛GKの岡本昌弘がファインセーブ。絶好のチャンスを逃してしまった。

そこからゲームは落ち着きだし、両チームの可変の仕組みが見えてきた。

大分は、ビルドアップの際にボランチが1枚落ちて4バックを作るのは変わらず。しかし多少のメンバー変更により、いつもより攻撃に厚みを持たせる意図があった。f:id:west242447:20180728174011j:image

右CBに岩田を起用したことにより、擬似4バックを作ると前田の横ほどまで上がり、松本怜、後藤と距離感を縮め、その3人の関係性を中心に右から崩したかったようだ。

ボランチに前田を起用した理由として、愛媛がブロックの位置を低く設定し、宮阪政樹のような大きなサイドチェンジから揺さぶって攻める事をしても、スペースがないため効果的でない。ならば周囲を上手く使いながら縦の意識の高い前田を使うといったところか。似た選手として川西翔太も挙げられるが、これまでベンチにも入れていなかった前田のモチベーションや、川西の器用さが逆に作用すると考えたのだろう。しかし、片野坂監督が彼をベンチにも入れないという所から、前田でやれるという確信的なものがあったのかもしれない。

 

一方の愛媛は、大分のボールを持つ位置によって可変。大きく分けると

・大分陣内/中央

・自陣内/サイド

の2つ。

そしてゼロトップの神谷の役割も重要なものだった。

 

大分陣内では、シャドウの近藤貴司がサイドに開き、野澤英之が1列前へに入って4-1-2-3へ。
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これにより、大分のDF3枚+ボランチ2枚に蓋をしてビルドアップを阻害する。

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自陣内では両WBがDFラインまで下がり、シャドウが左右に開いた5-4-1へ。f:id:west242447:20180728180035j:image

大分は1トップで2シャドウ+両WBという左右を広く使った攻撃をするため、それに合わせて5バックに。中盤中央のスペースをボランチが消して左右へ誘導してWB+シャドウ、WB+CBで挟んでの守備をしていた。

 

ここまでは大分やミシャ式対策でよくある型だが、それに加えて愛媛はボールの位置によって上記の2つを変えていた。

ボールが中央の時は4-1-4-1。サイドならば5-4-1。これの意図はビルドアップの阻止、大分の攻撃に対しての数合わせというのが第一だが、この横の可変は大分のシャドウを消すための意図があったように思われた。

大分はシャドウの後藤、馬場にボールが入ると高確率でチャンスを作る。なので中央でボールを持たれた時はCBやボランチからシャドウへ直接クサビを入れられないように、サイドではシャドウにボールが入ったとしても愛媛ボランチとCBで挟撃をしようとしていたようだ。

 

そしてゼロトップの神谷。彼の役割は攻守で1つずつだが大切な役割があった。

守備では大分DFに対して積極的にプレスに行き、コースの限定をするという守備のスイッチとしての役目。

攻撃では大分のDFと直接やり合うのではなく、大分ボランチの近くやセンターサークルよりやや自陣寄りでプレー。これにより、大分DFを釣り出したり、大分DFとボランチの間で受けたり、味方ボランチの位置にまで下がり中盤中央で数的優位を作ってカウンターをしたり……。

また、神谷が下がると近藤、野澤が前に上がり2トップのような形に変わり、カウンターの鋭さを常に持っていた。
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そしてこのゼロトップの神谷の動きが効いたことにより先制点を許してしまう。自陣から西岡大輝が右サイドへ大きく展開。玉林睦実がヘディングで落として近藤がドリブルで駆け上がる。ゴールライン際からマイナスのパスを送ると、神谷がダイレクトで合わせて得点。愛媛は狙い通りの会心の一撃だった。

大分はこの失点によりビハインドで折り返しに。

 

殴るしかない!

攻め手はあるものの、ラスト30mを崩せない大分は後半に入り、意外な変更をする。ボランチ丸谷拓也からFWの三平和司へと変更し、今季初御披露目の形に。

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前線の枚数を増やし、強制的にシャドウへのコースを作らせた。

愛媛はこれの対応するのに少しドタバタしたが、ボールと逆サイドのシャドウが一列下がり3-5-2のような形をとって対応してきた。f:id:west242447:20180728184132j:image

しかし、大分もここまでの愛媛の修正を想定していたようだ。ボールを持った際に松本がFWと同じ高さでほぼウイングとしてプレーをして相手を押し下げ、後ろにスペースを作る。そこを積極的に岩田が上がり、精度の高いアーリークロスでシャドウを介さないシンプルな攻めという変化をつけた。また、鈴木と前田が上がった岩田のケアをしっかりと施していたため、岩田のウラのスペースをカウンターの狙い目とされることもなかった。f:id:west242447:20180728185328j:image

そういった事もあり、ここからの45分はほとんど大分が愛媛を殴り続ける事になる。戦術的な駆け引き、ベンチワークはとても見ごたえがあった。

60分になると、ほぼ攻め手を失った愛媛は野澤から夏に岐阜から新加入をした禹相皓を投入。守備の強度を保つ為だろう。

大分も同じタイミングで交代。スペースを消され、ほぼなにもできなかった藤本憲明から伊佐耕平へ。前線でボールを収める事、クロスへの飛び込みを期待してだろう。

62分には岩田がミドルシュートを放つが枠に嫌われ、その後に岩田のアーリークロスから三平のヘディングも決まらない。

いよいよ攻撃の糸口がなくなった愛媛は、カウンターを効かせるためにカードを切った。

ボールサイドによって1列落ちたり上がったりしていたシャドウ2枚から禹相皓をボランチに固定をして、高さのある吉田眞紀人を投入。ロングカウンターで吉田のポストプレーに期待しての交代だろう。

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前から仕掛ける大分に対して効果的な策になるかと思われたが、勢いは止められない。

77分に大分は福森直也から清本拓己を投入。ほぼ攻め手がなく、引きこもらざるを得ない愛媛を崩すため、サイドに厚みを持たせるための交代。これにより実質、鈴木の1バックで1-3-4-2という超攻撃的な策に出た。

81分には右サイドで作って松本が深い位置からマイナスの折り返し。馬場がスルーをして前田がシュートを放つも、玉林が身体を捻りつま先でコースを変えて得点ならず。結局、引きこもらざるを得ない状況にまで持っていくことはできたが1点が遠く、またしても勝ち点を逃してしまった。

 

愛媛の印象

前期の対戦では川井監督の初陣で、それまでの3-4-2-1をベースに選手の特徴を生かしていた印象。特に近藤貴司はその恩恵を受けた一人だろう。それまでは突破力を買われてかWBで何度か使われてはいたがパッとせず。しかし川井監督になってからはシャドウの位置でのびのびとプレー。今季の大分のトラウマベスト11の有力候補になった……

選手では岡本昌弘と神谷優太が印象に残った。シュートの雨あられで大忙しだった岡本が何度も好セーブを見せていたのは知っての通り。神谷もゼロトップの意図をしっかりと理解をしてプレーしているようでとても面倒な存在であり続けた。

そしてなんといっても川井監督の手腕。シーズンの途中からの抜擢ながら、ベースはそのままに適材適所の起用で後半戦序盤の台風の目になった。選手の役割がしっかりと整理できているからこその結果であるし、よく走ることのできる好チームになった。すごい……

 

「あとは選手のみ」というもどかしさ

この試合、相手を押し込みあの手この手でゴールを奪うための道筋を作った片野坂監督。しかしながら、監督ができることはベンチ入りメンバー18人の選考と、交代枠3つのタイミングと攻めきる、守りきるための準備だけであり、実際に得点したり守ったりというのは選手の役目だ。だが、どこかで選手たちがその意図を汲み取れていない、実行に移せていない印象がある。後半の三平投入による意図は、前線でのポイントを増やすことではなく、シャドウを生かす事が第一。しかし選手たちは攻め急いで前へ前へと行くばかりで、肝心なバイタルエリアがスカスカという矛盾が出た場面は象徴的だった。

片野坂監督がやりたいサッカーに選手達がこれからどこまで食いついていけるか。これが今年の大きな課題となるだろう。幸いにも前半戦での貯金があるためPO圏に留まる事ができている。今こそ選手達がチャレンジをしてもう一度、上を目指してほしい。

 

【ハイライト】2018明治安田生命J2リーグ第25節 大分トリニータ vs 愛媛FC - YouTube

【日本代表】目先のカネのために捨てられる未来〈監督人事〉

感動をありがとう!日本代表良かった!メディアは日本代表を持て囃して、「さて、次の代表監督は~!」と盛り上がっており、JFAの田嶋も「よーし!26日までに後任決めちゃうぞー!」と頭田嶋なやり取りをしてますが、ちょっと待った。総括もなしに4年後のプラン、これからの長期的な戦略が全く見えないまま、なにも学ばずに「次!次!切り替えていこうぜ!」といわれてもついていけない。こっちは顔面サムライブルーです。f:id:west242447:20180724010945j:image

ということでどうヤバいかを書いていきます。

 

興行第一。カネカネカネ

ワールドカップを終えて、JFAの公式サイトを見ても総括はなく、ロシア大会全体の総括は技術面での考察はなく、「ロシア大会、こんなんでした」といったもの。この記事の最後に

今大会の技術面での分析については、FIFAのテクニカル・スタディ・グループ(TSG)が9月中にレポートを発表する予定だが、今後の競技のあり方に、ロシア大会は小さくない転機となったと言えそうだ。

とある。

そしてワールドカップ後の初戦は9/7のチリ戦@札幌とのこと。9月に総括を発表するのに代表監督は26日に発表。「大きな転機を迎えた」とあるのになぜそんなに急ぐのか……

そもそもワールドカップ明けの日程が大会前に発表されており、だいぶタイトな日程で代表監督を決めないといけない。日本のサッカーのこれからの4年をこんな急ぎ足で決められるとは思えないし、これまでのように監督を決めて監督のやりたいサッカーに日本の理想を擦り合わせていく形で行くのだろう。

つまるところ、代表監督は話題性第一で、そこそこ名のある人を連れてくれば良い位にしか考えてないのだろう。日本代表の長期的なプラン、戦略も提示しない不親切さなんだからこちらはそう受け取らざるを得ない。

また、次期代表監督の発表を26日に決めたことにはもうひとつウラがありそうだ。それは翌日の27日にハリルホジッチ前監督の第1回公判が行われる。

つまり、前日までに代表監督を決めちゃって、これまで通りハリルホジッチ氏に何のリスペクトもせずにいけしゃあしゃあと「これから日本代表が新たな船出をするというのに、前監督はネチネチと自分の名誉のために絶対負けられない戦いを挑んだのである。」とでも書き立てるのだろう。実に汚い。まぁそれもこれもぜーんぶ「コミュニケーション不足」なんだから仕方がないんだろう。んな寝言で許されるかい!と。

結局、JFAとメディアがハリルホジッチを悪者に仕立てあげて、検証できないのに「ハリルホジッチではベスト16には行けなかった」という結論で次の集金を優先するのだろう。
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ハリルホジッチ解任により失った信頼

ハリルホジッチ前監督の突然の解任によって起こった事は、選手第一主義で長期的なプランを持って指導をしても、協会は監督を守らずに保身に走るということだ。

代表監督は、その国の指揮だけでなく競技力の向上も求められる。4年を1つの区切りとしてどのように代表を強化するか、という一大プロジェクトであるが、今回の突然の解任によって信頼を失ったのは確かだろう。それによりこれから様々な面で苦労をすることになるだろう。

今回の解任によりまずは監督より選手の方が守られる、ということが公になった。いくら監督が素晴らしい強化案を持っていても、選手がワガママを言ってゴネれば簡単にクビを切られる。仲介役を協会がしなければならないがメディア、スポンサーと共に選手を中心にした興行を行っているため代表監督は守られる事はない。また、JFAは育成の指針を明確にしておらず、メディアに刷り込まれた「日本らしさ」「勤勉さ」「走力」をオウム返しするのみ。指針がないのにどうやって監督を決めるのか。

明確な指針も無いままアジアの盟主であることを求められ、ワールドカップではベスト8を目指さないといけない。それなのにいざ何か問題が起これば「コミュニケーション不足」とお茶を濁されて解任。これでやりたい監督なんているのだろうか?

これについてはfootballistaにて結城康平さんがまとめているのでそちらもご覧ください。
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オールジャパン」が抱える矛盾

コミュニケーション第一な田嶋はロシア大会後も「オールジャパン」と寝言を言っているようだが、そこには矛盾がある。

海外で活躍する選手は多くいるが、監督やコーチでは海外で活躍する方はいない。ざっくりと今回までのワールドカップで選手の技術力の向上による結果だと考える。しかし、Jリーグが始まって25年。開幕当初は選手だった世代が引退し、指導者としてのキャリアスタートして結果を残しはじめて間もない、というのが今の現状。新たなサイクルが生まれようとはしているが、まだ始まったばかり。指導者のレベルは世界と比べるとまだまだ低く、海外から学ばなければならない現状であるにも関わらず、なぜ「オールジャパン」なのかは謎でしかない。

しっかりと海外のメゾットを日本人に分かりやすいように言語化されているわけでもないのに、判断基準、解任理由がコミュニケーションが取れるか否かの一本槍ではあまりにも低レベルであり、日本サッカーのガラパゴス化鎖国へと舵を執っているようにしか思えない。

それだけではない。選手が引退してからのセカンドキャリアの問題は多く、数年前からずっと言われている事だ。「元プロ」が増えてはいるが、彼らの受け皿は十分あるとは言えず、指導者には登録料など様々な負担があるが、それが有効に活用されているとは思わない。海外の指導者ライセンスとの互換性も低く、本当に日本サッカーは鎖国へ進んでいるようにしか思わない。

 

終わりに

現状で不満なのは

・振り返りもせずに監督を変えること

・そもそものJFAの指針が提示されていないこと

・日本人監督の優位性が明確でないのにそれが最優先になっている理由

・指導者の育成が上手くいっていないこと

・不明瞭な点が多いこと

これらである。素人目に見ても様々な問題があるのにも関わらず、指針すら持ち合わせていない、不明瞭なのは怠惰と言われても仕方がないのではないか。

自分のリサーチ不足であればぜひコメント欄などで指摘をしてほしい。

 

日本サッカー協会、そして田嶋正幸へ、

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貴殿方の傲慢さで選手をはじめとするサッカーに携わる方々が不幸になるのは本当にやめてほしい。しっかりと未来を見据えたビジョンを、指針をわかる形で示してくれ。