Nishida's diary

トリニータを中心にいろんな試合を。

【大分】2018年シーズンレビュー 掴んだもの、足りなかったもの〈選手編①〉

阿鼻叫喚のJ1参入プレーオフ紙一重でなんとか回避し、自動昇格の切符を掴み取った大分トリニータ。シーズンも終わった事なので、選手やチームの一年を振り返っていきます。

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まずはGK登録の選手から!

 

GK

1.修行智仁
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(※写真は2016年のもの)

4年前に加入。1年目こそ夏場から上福元直人のポジションを奪い、J3優勝に貢献も2年目からは出場機会は激減。今年は出場なしだった。しかし、チームが苦しい時にポッと更新してくれるTwitterやベンチ外のメンバーに言葉や背中で「プロとしての在り方」を魅せてくれた選手。試合に出ることだけがチームに貢献してるんやないぞ!という事を改めて教えてくれた。

シーズン末に契約満了で大分を後にするが、その時のコメントの一部を。

大分のことが大好きです。ただ、選手として僕が大分でやれる事はもうありません。この4年間で僕のやれる事は全てやりきりました。今年で最後。その覚悟でこの1年を過ごしてきました。僕が大分でやりたかった事は、J1に昇格する事、少しでも若い選手の力になる事、そして大分の人を幸せにする事です。
 皆さんの応援のおかげでJ1に昇格する事ができました。ただ、僕の仕事はJ1に上がるまでであり、昇格したその時が大分とのお別れの時だとずっと思っていました。昇格しても大分でプレーすることはない。それでもみんなと昇格したい。そう思わせてくれるクラブでもありました。みんなの喜ぶ顔が見られて良かったです。

全文はコチラで

選手として「このチームでやりきった」という気持ちと「まだまだ現役を続けたい」というプロとしての向上心とがコメントから見えて心から応援したいと思った。ありがとう、修行さん。

 

22.ムン・キョンゴン
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今季は天皇杯山口戦で出場、リーグ戦はベンチ入りのみ。デカさとシュートストップが魅力のGKとの触れ込み(だったはず)だが映像で見ることはできず。天皇杯ではハイクロスをファンブルして失点とほろ苦い感じだったそうな。GKは失点の場面が目立つからそこだけで語りたくはないかな、と。

大卒で初の海外挑戦だが、インスタや伊佐スタなどで日本語頑張ってるなぁと。全体見て指示を出すポジションだから言語は大切。存分に三平や伊佐あたりと絡んでほしい。

来年はルヴァン杯など試合数も増えるはずなのでプレーをみたい。

 

23.兼田亜季重
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今季加入の爽やかイケメン。ベンチ入りがなく、GKの中での序列は低かった。彼の話題だと途中で坊主にしてよりかわいくなった事くらいしかわからない……

クラブからの発表はまだだが、JFAのフリーの選手に名前が載っていたのでおそらく退団。アディオス。

 

31.高木駿
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今季リーグ戦全試合フル出場。一年を通して大きく崩れる事はなかったが、夏場までは周りの評価は高くなかった気がする。おそらくビルドアップの起点やシュートストップはおそらくJ2トップクラスの実力があったが、WBへのロブパスがタッチラインをよく割っていたため、「おい高木ィィィ!!」と謎の激昂おじさんがたくさんいたのだろう。しかし夏場あたりからコツを掴んだのかWBにも正確にボールを付ける事が増えた。この中距離のロブパスの精度が上がったことにより、チームとしてもビルドアップの逃げ道を作りつつ幅を持たせるができた。

完成度の高い選手になりつつあるが、気になる点がひとつ。大分のビルドアップはよくGKが関わるので必然的にボールをさわる回数が増える。高木にボールが入って味方にパスを出す、となった時に相手選手がパスコースに入ってきてもそのままパスをしてしまうクセがある気がする。(ウイイレのスーパーキャンセルができないみたいな。)アウェイ福岡戦のドゥドゥにカットされた場面に象徴されるようにGK-DF間でのパスミスはほぼ失点!となるため丁寧さは絶対だが、基本的にGKにマンマークを付けてくるなんて事はまずないので、もうちょっと余裕をもってほしい。繋ぎのミスから慌ててしまいバタつく場面も散見されるので、決め打ちのパスを減らすのはその後に影響が及ばないようにするためという意味でも大切にできるといいなぁ、と。

ビルドアップの際に1列飛ばして中盤にパスを付ける機会が増えるとより戦術の幅が広がりそう。J1というより高いレベルでチャレンジしてほしい。

試合後の伊佐スタグラムにて「マンオブザマッチタカーギー」とかラインダンスでよく前に出たりと明るいキャラクターだが「でも1失点~」とかコメントを見ると三平と同じて真面目な所がふと表れる。そういう所好き。

契約更新もそうそうに発表。来期もヨロシク!

 

 

総評

結果としては高木がシーズンフル出場。ポゼッションを志向するためクラシカルなタイプは活躍の機会はなかった。2番手争いをムン、修行で行い兼田はベンチ入りも果たせなかった。基本的にGKは戦術がガラリと変わったり、アクシデントがないとなかなか入れ替えはないポジションなだけに出場時間だけでは貢献の具合は測れない。けれどもみんな仲が良い雰囲気は伝わってきた。

 

 

写真はトリニータ公式HPJリーグ公式より

 

次回はDF編!

 

 

 

【大分】vs山形(A) 割り切って、乗り越えて〈J2 第42節〉

リーグ戦終了。最後はヒヤリとしたが、なんとか得失点差で2位で自動昇格を手にした。

いやぁ、良かった。ホッとしたから更新が遅くなりまして……

 

とりあえず、当初の目標を上回り、自動昇格。その振り返りはするとして、まずは山形戦の振り返り。普段とは違う、ピリッとした空気は冬の寒さではなく、メンタルから来るものだったのかもしれない。

 

この日のメンバーは以下のように。

モンテディオ山形
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この日は栗山直樹が出場停止。かわりに坂井達弥がスタメン。シャドウには南秀仁が入り2枚の変更。

松本怜大がこの試合でJ通算100試合出場。おめでとう!

 

大分トリニータ
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この日は伊佐耕平がメンバー外。コンディション不良でメンバーから外れていた藤本憲明が先発に復帰。

 

丁寧な準備

最終節、勝てば自動昇格と緊張しないわけがないシチュエーション。もちろん硬さはみられたが、大分はしっかりと狙いを持って山形戦に挑んでいた。

①低い位置でのビルドアップでは、大分は両サイドのWBが高い位置を取り、丸谷拓也が1列落ちて4-1-2-3に。

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②最終ラインがボールを持って相手を自陣に押し込むと、両WBと左右のCBが近づきシャドウとトライアングルを作り、狭いスペースでの崩しをみせていく。

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このボールの位置の違いでWBの役割を変える事により相手を押し込む事ができた。

相手とのマッチアップを見ながらその違いを見ていこう。

①ではWBが高い位置に居ることで、対面する相手WBを自陣に押し下げる。またある程度は割り切って中盤を省略してロングボールを入れても良い、という考えがあった。

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しかし、このままではDFラインが低く前線に人数をかけていくから意図的に間延びをしている状態になっているため、前線にクサビのパスを入れようとしても相手ボランチがフィルターになっているため外へしかボールが回らない。

 

そこでDFとダブルボランチ、GKで相手のプレスをかわしていき、自陣に押し込むと、②へと変化していく。

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ここでのミソは大分のシャドウが山形のボランチの外側に顔を出すこと。これにより、左右のCBにボールが入ると、相手の嫌なところにスペースを作る事ができる。

大分のWBが下がって対面するWBを釣り出し、シャドウがその背後を突けば相手CBをサイドに引っ張り出すことができたり

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(この場面ではボールホルダーの岩田に松本怜が近づき、内田を釣り出す。内田の背後に三平が入り、松本怜大をサイドに引っ張り出す。ボールサイドのボランチの中村は松本怜大のカバーに入れば前田がフリーになり、前田のマークを離さなければ藤本がクサビを受けやすくなる。

または松本にボールが入るとフリックして三平に早くボールをつけたり……)

 

シャドウが下がってボランチを引っ張り、WBやCBがハーフスペースへと入りマークをずらしたり

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(この場面では三平がボールサイドに寄り岩田とパス交換をして岩田は中村の内側へ侵入。

もしくは三平、岩田でパス交換をしている間に内田が三平へと寄せてきたら松本怜が裏へ抜ける。)

 

などサイドでボールを持った際のバリエーションが多くあり、山形は誰が誰を捕まえるか、どこのスペースを閉じるかが曖昧になっていた。

主導権を握った大分は②の形で岩田、三平、松本がサイドで少ないタッチ数で崩して相手をボールサイドに寄せておき、大外の星雄次が合わせて先制点を奪う。

 

一方の山形は、攻守を5人ずつで分業気味に。

1トップ2シャドウ、ダブルボランチの5枚で相手のビルドアップを制限して中央を閉めて外へと追い込み、3バック+両WBはセットして相手との人数を合わせつつスペースをなくす。

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しかし、山形がボールを持つと3バック+両WB+GKで回し、幅は作れるが奥行きが出てこないままロングボール。

大分に先制を許してからはボールを持つ場面が増加。これにより本田拓也南秀仁が1列ずつ下がり、4-4-2へ可変。

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これによりサイドの厚みとビルドアップに奥行きができた。が、実況からも指摘があったようにパススピードが遅く、大分のプレス(特に馬場賢治)に寄せられてパスコースがなくなる事も多く、効果的に前線にまで運べなかった。

 

流れを掴めない山形、サイドから攻める大分、という感じで前半は進んだが、大分はもう1つ準備をしてきた。

それはセットプレーの場面。

15分の大分のCKの場面ではマンマークを敷く山形に対して大分はペナルティスポットあたりに鈴木義宜、福森直也、丸谷拓也を置いて山形DFをピン止めをしてその前に三平がセット。ボールが入るタイミングで三平はファーサイドに逃げてマンマークについた選手は鈴木、福森、丸谷のブロックに捕まり三平はフリーに。ボールは弾かれたがデザインされたものであった。

また、35分のCKでは馬場がキッカーの星に近づき、山形の選手がマイクで「ショート(コーナー)あるぞ!」と声がかかっていたが、星はセンタリング。三平が高い打点で合わせるも枠に嫌われた場面。これも今年は松本がショートコーナーからクロスを散々見せたのが功を奏する形になった。

そんなこんなでボール持って主導権を握り先制点→ボールを持たせて時計を進めつつも抜け目なくセットプレーから追加点を狙うといった形で前半を折り返す。

 

消極的な慎重さ

後半に入ってすぐの48分、大分がこの日はじめてのFKのチャンス。ボールの近くに大分の選手が8人も集まり入念にFKのサインプレーの準備らしき事をするも上手くいかずに、山形にボールを持たせると次第に山形がチャンスを作る。ペナルティアーク付近で得たFKを素早いリスタートでサイドにまわして熊本雄太がシュートも枠を外してしまう。

徐々に流れが山形に傾くなかで大分が1枚目の交代。58分に馬場を下げて小手川宏基を投入。

後半の頭からロングボールが多いとは感じていたが、ここからより消極的になっていったように思われる。

三平と小手川が曖昧なポジショニングをしていたためカッチリとしたものではなかったが、大分は自陣に網を張り跳ね返す事を選択。

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両WBを高くせずに中央は3+3で突破を許さないようにした。

 

これをみて山形ベンチにも動きが。

67分に本田拓也阪野豊史を下げてアルヴァロ・ロドリゲスと中山仁斗を投入。可変システムでCBに落ちる本田を下げてアルヴァロ・ロドリゲスを入れる事で3バックで引いた相手を押し込む事を選択し、ゲームで消えていた阪野から中山に変えて前線の活性化を目論んでいた。

押し込まれる大分は5+3(+三平)でブロックを作り、高くなった最終ラインの裏を藤本が狙う形しかなくなる。74分に三平→川西翔太でボールを持ち上げることをしたかったが、あまり上手くいかず。

山形が大分が自陣に入ってからプレスをかけてくるとわかってからは、小林成豪とアルヴァロ・ロドリゲスを1列ずつ上げて押し込む。中盤の高い位置でボールを持てるアルヴァロ・ロドリゲスと南がプレーする機会が増えて大分はますます押し込まれてしまう。81分には松本怜大→汰木康也でより攻撃に力を入れると、アディショナルタイムに試合が動く。南がバイタルエリアで裏に浮き球のパスを送ると、小林と中山が反応。中山のシュートはブロックされるが、こぼれ球をアルヴァロ・ロドリゲスがミドルシュートで一撃。土壇場で同点に追い付く。

最後に大分は藤本→林容平でなんとか追加点を狙いにいくも時間は足りず。1-1のドローで試合終了となった。

 

それでも掴む

試合終了後の整列時の大分の選手たちの表情は皆暗く、「やってしまった」感が溢れていた。他会場の結果に委ねられた順位。2~3分の静寂はとても長かった……

が、大分のゴール裏からワッと歓声が上がると同時に選手たちも自動昇格とわかったようで、歓喜の瞬間が訪れる!

他会場では町田が引き分け横浜FCが勝利したため大分、町田、横浜FCの3チームが共に勝ち点76で並んだが、得失点差で頭ひとつ抜け出した大分がJ2 2位で来期の昇格を決めた。

 

内容は悪くとも

プラン通りで先制点を奪い、無理せずにセーフティーにゲームを進めてはいたが、前半から5+4ブロックの間が間延びをしていたり、パスが噛み合わなかったりとちぐはぐな感じを拭えないまま後半に。より引いて相手にボールを持たせるが、ボールを持てる南、アルヴァロ・ロドリゲスを自由にしすぎてやりたいことができなかった。幸いにも90分まではゴールを割らせなかったため、絶望と大慌ての時間はアディショナルタイムのみで良かったが、もしあと10分、20分早い時間での失点だったら……と思うと背筋が凍る。

それでも、この試合は1/42であり、42試合で勝つときはたくさん点を取り、負けても失点数は少なかった(甲府は知らん)からこそ掴み取れた自動昇格。とにかく!よかった!

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【ハイライト】2018明治安田生命J2リーグ第42節 モンテディオ山形 vs 大分トリニータ - YouTube

 

ひとまずは

一年間、皆さんお疲れ様でした。本当に本当に良かった!わしゃ泣いたよ。嬉しいよ。

とりあえずは2018年のマッチレビューはこれでおしまい。来週からはシーズンの振り返りをやっていきます!

【大分】vs金沢(H) 積み上げたもの〈J2 第41節〉

苦しんだ。やはり終盤になるとどのチームも(ある程度まともならば)完成度が高くなる。金沢も大分対策をしっかりしつつ、どこを狙うかが明確で、大分は後手を踏みまくった。

そんなとてもしんどく、苦しんだ試合だったがなんとか勝利し、自動昇格への望みを繋いだ。

 

この日のメンバーは以下のように。

大分トリニータ
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この日も前線の組み合わせを変更。伊佐耕平と清本拓己が先発に入り、10月の月間MVPに輝いた三平和司小手川宏基がベンチスタート。

福森直也はこの試合でJ通算100試合出場。嫁さん(彼女さん?)綺麗だな!

三平も月間MVPのセレモニーで三平父と嫁さんとパシャリ。三平息子に転生したい。羨ましい。

 

ツエーゲン金沢
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こちらは1人の変更。ボランチ梅鉢貴秀から大橋尚志に変えてきた。

前回ではWBにマンマークを敷かれて、清原翔平にやられかけた記憶。ヤンツーが監督と難しいゲームになるんだろうな、嫌だなぁ……って思ったり。多分コケるならここなんだろな……ってちょっと弱気になりつつ観戦してました。

 

中→外にやられかけ

この日の金沢は、3-6-1の大分に対して4-1-2-3でマッチアップを明確にするという愛媛などがやってきた大分対策に工夫を加えて、大分のDFを動かし、深い位置でスペースを作り出した。

金沢はボールを奪うと大橋がアンカー気味になり、SHの清原とボランチの藤村慶太が内側に絞り、4-1-2-3に可変。

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これまでのチームは3トップの左右(ここでは加藤大樹と杉浦恭平の位置)は左右に開いて大分のWBにぶつけることが多かったが、金沢は左右のハーフスペースに3トップを置き、藤村と加藤、清原と杉浦が同じレーンに入る事をしてきた。

この中央に人を寄せたことにより何が起こったか。大分のWBは意図的にフリーにさせられ、3バックは外側に引っ張られやすくなってしまった。

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金沢の3トップは内側に寄っているため対面するCBが監視するが、加藤と杉浦はゴールから逃げる動きでCBを引っ張る。

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杉浦が福森を引っ張り出すと、杉浦が居た場所に清原が上がっていき数的優位になる。

この場合、清原に対して星雄次がチェックに行くか、福森から杉浦のマークを引き継いでいくかになる。

星が内側に絞ると金沢のSBの石田峻真がフリーになりやすくなり、馬場賢治が石田にマンマークでつけば、大分がボールを回収した時に重心が上がりにくくなる。

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杉浦のマークを引き継ぐ場合は背後を取られた形での対応になるため、処理が難しい。

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ただ守るだけなら星と松本怜がベタ引きの5バックで構える事で対応はしやすくはなるが、それでは大分のやりたいサッカーはできなくなる。

 

この内→外に出るシャドウのような動きをする3トップの対応にあたふたする間に、9分にはCBから杉浦へクサビが入り、ワンタッチで清原に落とす。清原はこのクサビ→落としの間にオーバーラップした石田にパス。石田はフリーで受けるが福森に処理をされてしまう。

この場面では星が清原へ寄せていたため大外ががら空きになり、福森は杉浦から石田へとマークをずらす必要に迫られた。もし、石田が福森を振りきってしまえば中では福森が離した杉浦が浮きニアから崩されていたかもしれない。横ズレを意図的に起こさせて1枚剥がせば即ピンチになる形は、特に前半の序盤から見受けられた。

 

また、ただ大分のWBに中切るか外で受け渡すかを迷わせるだけでなく、大分のWBに金沢のSBをぶつける事でより混乱させようとしていた。(嫌がらせか!)

金沢はビルドアップでSB-同サイドのCBでパスを回し、大分のブロックを作らせつつボールに寄せる。ある程度逆サイドのシャドウ(沼田-山本からみて馬場、石田-庄司からみて清本)がコースを切りに寄ってきたらCBから逆サイドで高い位置を取ったSBへ展開してWBを引っ張り出す。SBの対応をWBがするとまたしても中で誰かが浮くのでズレが生まれる。

柳下監督は前期の対戦前のプレビューショーで「大分のストロングは両サイド。そこをシバけばなんとかなる」的な事を話していたが、まさにそれをやってきた。

 

このWB絶対攻略するマンとなった金沢に対して大分はアタフタ。誰が誰をみてどのスペースで奪いきるかが曖昧になり、崩壊しかけた。しかし、金沢はアタッキングサードでの質が高くなく、ミスが多かったためスコアは動かず。

片野坂監督も「ヤバい!」と思ったのか4バック気味に守備をする。馬場賢治をシャドウ的な位置から左のSHへとやや下げて、清本が伊佐と並びふんわり4-4-2っぽい形にしてサイドを補強。

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2トップがサイドに追い込み低い位置でのサイドチェンジを阻止し、馬場と松本怜がSBをピン止め。

金沢が自陣でボールを回せばこの4-4-2、大分陣内に侵入してきたら5-4-1のブロックを作る形で対応できたことで、一応は守備の混乱を防ぎ、落ち着く事はできた。

 

しかし、大分はこの変更により、攻撃で重要度の高いバイタルエリアで人数をかけて中央から崩す事が難しくなり、SHの馬場と松本の位置で回収されてしまう。ならばとSHに高い位置を取らせてバイタルに近い位置でプレーができるようにと4-1-2-3へとまたしても変更を加えた。(大体25分くらいから。たぶん。)

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これにより、サイドに飛び出す金沢SHは大分のSBが監視、SHの後ろから出てくるトップ下はCB、1トップはアンカーとCBが受け渡して見る、と対応をはっきりさせることに成功。

 

この日の金沢は3バック脇の攻略を執拗にするだけでなく、丸谷拓也に対して藤村をマンマークでつけてきていたため、中央からのビルドアップの制限も試みていた。それをみてアンカーに丸谷ではなく前田を配置。二人は相互にDFラインと中盤でそれぞれ被らないようにのらりくらりとプレー。25分からは丸谷を2列目、前田をアンカーにすることで藤村をゴールから遠ざけて金沢のやりたかった大分のビルドアップの制限も緩くなる。

30分からは大分がチャンスを作り出すようになったが、これは金沢のダブルボランチのマークが被ったり、藤村と大橋が共に大分のビルドアップの制限のために前に出て2ライン間が間延びをしてしまい、下がってクサビを受けに来た清本や馬場にボールが入るようになったから。

多くの駆け引きがありつつも、ゲームの入りで後手を踏み、細かい修正を加えながらなんとか無失点で折り返すことができた。

 

ハイリスク・ハイリターン

後半に入っても大分は前田と丸谷の役割を場面によって切り替えて丸谷のマンマークを剥がしにかかることに加えて、伊佐が左右に流れてサイドの高い位置で起点になるような動きをみせる。すると後半頭の49分。伊佐がそのサイド深くでボールを奪って馬場にパス。馬場は藤村からプッシングを受けたとしてペナ角という絶好の位置からFKを獲得。清本のインフロントのボールは、ファーでフリーになった鈴木義宜がヘディングで決めて劣性の大分が先制点を奪う。苦手なセットプレー(今季これで8点目?)でDFが初得点。岩田とか決めんかい!とは思うが、後半頭で脈絡なしでガツーンと決めた。

が、10分も経たずに自陣からのFK→垣田がヘディング→杉浦シュートでこぼれ球を清原に決められて同点。

つい都合の良いゴールが決まると「もらった!」となるが、おじいちゃん、前節も同じ展開があったでしょ?って感じで同点にされてしまった。うーむ。

 

得点でちょっと有耶無耶になりかけた金沢の後半の修正は、ビルドアップで4-2-2-2のように。

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2列目の加藤、清原が内→外へ飛び出すことは変わり無かったが、彼らが空けたスペースにFWが下がって(ロングボールには競り合いに強い垣田、ショートパスでは杉浦)CBを引っ張り出そうとしていた。また、ビルドアップで大分にボールを回収され、守備に回るときにダブルボランチが横並びでセットされている状態になりやすいので、丸谷と前田を監視しやすくなった。

これを見てか大分は丸谷を最終ラインに、前田をアンカーにして揺さぶりをかけるが乗ってこず。

 

拮抗したゲームで大分は大博打に打って出た。66分に馬場→三平和司と共に丸谷→川西翔太。チームの軸となる丸谷からドスケベな川西投入で「勝ち点3を取るぞ」とメッセージ。しかしこれは、大分にとっては攻守のバランスを崩すきっかけになる、リスクの高い変更であった。

 

川西投入のリスクは投入直後にすぐに表れてしまった。69分に右サイドでロングボールを伊佐が落とし、松本が受けると大外を岩田が回り、三平と星は中に飛び込み清本はペナルティアークほどでサポートに。松本のクロスは精度を欠いてボックス内で弾かれると、中央で川西が落下地点を見誤りヘディングを空かしてしまう。6人も前に人数をかけて攻撃し、第一のフィルターとなるのが川西の役目のひとつであったが、ここでの安易なミスからボール回収をできずに背後の垣田にボールが入ってしまったのだ。縦に速い金沢は垣田が福森を引き付けてボールを落とすと上がってきた大橋から裏へパス。垣田と清原、杉浦が鈴木と1vs3でカウンターを受けるという最悪の形で即失点になりうるミスだった。

71分にも同様の形からバランスが崩れて数的不利なカウンターを受ける。相手の精度に助けられたが、本当にギリギリの場面だった。

 

77分に金沢はスピードを生かせなくなった加藤を下げて金子昌広を投入。大分のビルドアップをする4枚(3バック+高木orボランチ)に制限をかける強度を下げたくなかったのだろう。

大分は金沢のビルドアップへの制限に警戒をしつつも、時間と共に金沢の前4枚の制限とフィルター役のダブルボランチの間が間延びしてくることは承知済み。これは大分のビルドアップがジャブのように効いてきていることの証左であり、次第に川西が生きてくる。

金沢の前4枚とダブルボランチが間延びをすると、ボランチ脇にスペースができ、大分のWBが高い位置から攻撃に絡むことができる。川西が中盤でボールを受けて時間を作ると、金沢の選手はボールを回収するためにプレスにいくが、川西はドスケベなのでヌルヌルとかわしてしまう。中央で1人かわすということは、必然的にダブルボランチを片方を剥がすということ。一枚剥がすともう片方のボランチも川西と対峙しないといけないため、相手は2ラインが崩されてしまう。と、なれば川西☆タイム!

両チーム疲労が溜まる80分から川西がボールを持てるようになり、金沢の寄せをひらりひらりとかわしていく。どこまで川西に寄せて良いのかを考えるうちに金沢の選手たちの身体だけでなく頭も疲労させる。じわりじわりとゴールに近づいていくと86分。右サイドの松本から川西にペナ角→ペナ角へとボールが行く。ボールを受けた川西はボディフェイントからカットインをしてファーサイドに巻いたシュートはゴールに吸い込まれて勝ち越し!川西にしかない間合いで相手ボランチは完全にDFラインに吸収されていたし、対面した大橋には一度ショートコーナーから縦を見せていたという伏線込み込みでのゴールは実に痛快だった。

試合はこのまま2-1で勝利。最終節に勝利で自動昇格という所まで来ることができた。

 

金沢の印象
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ぜんぜんスイートでもはにかんでもなく、相手の構造の骨格から殴ってくるシンプルな悪魔でした。本当にやられかけた。

戦力差はありつつも、しっかりとやることを叩き込んでピッチに送り込める名将だと思う。来期も続投という事で、他のJ2チームをいじめてほしい。あわよくばそれを上のカテゴリーから覗きたい。

しっかりとやることを叩き込んではいたが、最後のアタッキングサードに入った時。相手をうまく釣りだして……からの動きにはやや疑問で、CBをサイドに釣りだしたけどニアに飛び込む人がいないとかの細部までは煮詰まっていないのかな、とは感じた。そこのバリエーションがあればおそらくやられていたので助かったな、と……

良いチームだった。

 

「勝つだけ」という難しさ

あと1勝。あと一つ勝つだけで自動昇格というチャンスに幸いにも大分はたどり着いた。しかし、大切なのはここで勝てるかどうか(身も蓋もないが……)。そのためにどうするか。いままでやってきた1年間の継続を見せつけるだけだ。何一つ特別な事は必要ない。

 

この日のコレオはこれ。

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これは10年前のナビスコカップ決勝でしたデザイン。クラブ創設からここまで本当に紆余曲折あったが、それまでにクラブが積み上げたもの。あれから10年で色々ありましたね。トリニータが今年1年、そしてこれまで積み上げたもの全てを出してほしい。

 

……とは思うが、いつも通り、全力で。最高のトリニータを魅せてほしい。

【ハイライト】2018明治安田生命J2リーグ第41節 大分トリニータ vs ツエーゲン金沢 - YouTube

 

【大分】vs横浜FC(A) ニコニコ笑顔に刺される〈J2 第40節〉

他会場の結果により、年間6位以上が決まった大分。ひとまずは当初の目標はクリアすることができた。しかし……

 

 

 

非常に痛い、痛すぎる敗戦だった。

やりたいことはさせてもらえず、札束ビンタを食らってレジェンドまで投入。やさーしそうなタヴァレスじぃさんに刺された。それも結構エグい、致命傷になるような重い一撃を。くっそ。

 

この日のメンバーは以下のように

横浜FC
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怪我人が多く、イバは2度目の累積警告(シーズン通算で8枚!?)で2試合、野村直輝も累積で今節は出場停止とメンバーが揃わない横浜。スタメンを見てみるとレアンドロ・ドミンゲスにブルーノ・メゲネウ、戸島章に瀬沼優司と「中盤、誰すんの?」状態だったが、メネゲウと瀬沼が2列目に入った。

 

大分トリニータ
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この日も前線に動きあり。

コンディション不良で藤本憲明がメンバー外になり、ベンチ入りをした林容平は当日に横浜入りしたらしい。それに伴ってかスタメンも変更。CFに三平和司、シャドウに小手川宏基が入った。

 

一貫していた中での潰し

この日、横浜FCは大分対策として中央を閉じてサイドに追いやることを徹底。バックパスを狙い、ショートカウンターを狙うというのが効いていた。

横浜は大分がボールを持つと5-3-2でセットをして、岩田智輝にブルーノ・メゲネウをぶつけて大分の右サイドの威力を殺す。5バックは基本的には高い位置は取らずに前5人で完結するように。

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横浜の攻守の分業は大分の攻撃を間延びさせつつ、しっかりとブロックを作って跳ね返す狙いがあった。

大分はビルドアップで中盤底の丸谷拓也、前田凌佑が起点になり相手を食いつかせてできるスペースをシャドウと両WBが突く。相手にズレを生じさせる第一の手段が3バックとボランチの遊びのパス。横浜はCB-ボランチで回すのはOKだが、ボランチの身体の向きは常に気をつけていたと思われる。丸谷や前田がDFからボールを受けてターンをすると大分の攻撃のスイッチが入る。そこをまずはカバーしてしまおうというのが横浜の狙い。

次に丸谷、前田が前を向いても速攻や疑似カウンターにならないように致命傷になりかねない中央をクローズ。これでボランチからのパスコースはWBかDFに戻すしかなくなる。リスクを負ってCFに浮き球を配給する事もできるが、横浜の5バックはすでにセットされており、CFが受けるスペースはない。

ここまででボランチの2人は前を向けない、前を向けたとしてもパスコースが限定されているためサイドに回すか作り直すしかない。という形。

次にWBにボールが回ったらどうするか?だが、横浜はミドルサードで大分のWBがボールを持つことはOK。むやみに北爪健吾、永田拓也にプレスに行かせずに5バックとしてプレーをさせることで、ボールを受けたWBが持ち上がった際にはマッチアップ、ボールを受けに来たシャドウには3バックが監視をしてブロックが崩れないようにしつつ中を閉める。これで大分のビルドアップからの攻撃を完全に殺せた。

大分のWBは深い位置でプレーをしてマイナスの早いボール、逆サイドも絡んだ幅を使った攻撃が魅力だが、深い位置には横浜のWBが構えているためそこを崩すには工夫が必要だった。他にも松本怜、星雄次からのアーリークロスは優先度が低く、中でターゲットマンになりうる選手もいないため、横浜のセットした5バックは極めて有効な手段であった。

 

攻撃ではレアンドロ・ドミンゲスがフリーマンとして自由に動き、大分のDFと中盤の2ライン間でフラフラすることで、スペースを埋める事を優先する大分はレドミを誰が見るか?という問題を起こさせる。

大分のビルドアップでやり直したいときは無理せずバックパスを狙うが、戸島、瀬沼がそのバックパスを狙うことで大分にボールは持たせるが、自由を与えない。

 

ボールは持てるが効果的なプレーができない大分は、3-4-2-1からボランチの片方を落として4-1-2-3に可変をして両WBに高い位置を取らせて岩田につくメネゲウのマークを振りきろうとしたり

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三平が下がってきて0トップのようにしたりと工夫はすれど、5バックと引いた横浜DFを揺さぶることはできず。

25分には後ろ向きのボールを鈴木義宜が珍しくミス。戸島がボールを奪うと、鈴木からのパスを受けに高木駿がペナルティエリアから大きく出ておりゴールはガラ空き。戸島にロングシュートを打たれるが枠を外れてなんとか一安心も、バックパスは狙われて攻めの形もできないまま前半を折り返す。

 

先制するも……

後半に入り、大分が早速動く。前線で積極的にボールに関わろうとしていた三平だったが、中央を閉じられたためか終始消えがちでこの日はお役御免。伊佐耕平を投入して前線での収まりどころを作る。

また、攻撃でも修正を加える。横浜はレドミの気まぐれで5-4-1にもなるが、基本は5-3-2でセットした守備をすること、WBはある程度自由にボールを持てることからWBからシンプルに伊佐にボールを付けてしまうという形に変更。中で勝負をすることで多少ボールは奪われても良い。リスク管理をしっかりしようという指示があったように思われる。 

やや強引ではあったが、前で時間が作れるようになったため、前半よりはチャンスを作れるようになった。が、最初のビッグチャンスは横浜。低い位置からのアーリークロスのこぼれ球を佐藤謙介が豪快にミドル。ボールの中心よりやや下でミートしたボールは福森直也にあたり下から浮き上がるようになったが枠に嫌われる。

あわやスーパーゴールかというシュートが外れると59分、右サイドで伊佐が田代真一を釣りだすと身体を入れて入れ替わる。深い位置まで持ち込むと、中でプルアウェイをしてマークを外した馬場賢治がしっかりとファーに詰めて待望の先制点を奪う。

 

こういう上手くいってないけど選手交代で相手の隙をついて先制。今年は先制後の逃げ切りも多かったため「もらった!」と思ったが、そんなに甘くはなかった。

 

60分に横浜は岩田を監視していたメネゲウから齋藤功佑を投入。勝たないと自動昇格の可能性が低くなる横浜は、後半からボールを持つと積極的に両WBを上げて攻め込んでいた。それが功を奏する形で同点にする。DFからボールを受けたレアンドロが前線に浮き球のパス。ボックスの外にこぼれたボールをレアンドロがダイレクトで右足アウトに回転をかけたシュートを放つがまたしても枠に嫌われる。そのこぼれ球を永田が押し込んで同点に。

 

同点にされた大分は失点直後に小手川→國分伸太郎で前線での動きを増やそうとするが、次の得点も横浜だった。失点から5分後、左サイドで國分がファールをしてFKに。

レアンドロの早いボールにヨンアピンが合わせて横浜が逆転に成功すると、79分には同じような位置からまたしてもFKを与えると、次はニアに早いボール。田代が頭で合わせて2点差にされてしまう。

 

このFK2つが大きく響き、大分は敗戦。勝ち点を伸ばせずに、1節で首位を松本山雅FCに明け渡す事になってしまった。

 

横浜FCの印象

前期も今回もしっかりと対策された。前期の対戦では3ボランチで中を閉めて、大分を外に外にと追いやっていたが、なぜか後半からはそれをやめて同点に。そのせいかあまりやられた感覚はなかったが、大分対策を一番できていたのは多分タヴァレス監督だろう。優しい顔してエグい人やで……

選手起用でも高い選手を使うことでクロスからの得点を狙うだけでなく、2列に並べる事で時間差での飛び込みをさせたりといやーな配置だった。デカイけどなんか高さのイメージのない選手として使いづらい印象があった瀬沼(ちょっと違うけど小松塁指宿洋史タイプ)の良さが出ていたなぁ、と。ジェフリザーブスや町田でそんな点取ってなかった戸島も動いて収めて飛び込んでと捕まえにくく、下手に倒してFKを与えるとあとはレドミさんで、って形でまんまとやられた。悔しい。

札束でスーパーな助っ人ほしい!と無い物ねだりをしたくなる……

 

危うさを感じつつも

ハイライトだけみればレドミのスーパーなミドルとFK2つでやられたが、直接得点に関わらない部分でも準備がされていた横浜FC

中を閉じられるとWBが良さを出しにくい状況になり、ビルドアップに終止し、ダイナミックさを欠いた大分。前半戦の大きな課題であったビルドアップのコースが読まれることは3センターの採用で上手く行ったが、中を閉じられた時のアウトサイドの引き出しの少なさは改善されないままに終盤の上位対決でそれが炙り出される結果になった。残り2試合でこの課題に対して100点の回答は難しいだろう。そして、続く金沢、山形は共に中位に甘んじるが「曲者」として上位から勝ち点を奪っている。

残りの試合が少なくなると、欲張ってちょっと先を見ちゃうもの。その気持ちをグッと抑えて目の前の90分に全力を注げるかが勝負の分かれ目だと思う。馬場ブログでもあったように、

僕たちには決して過信ではない、今までみんなで積み上げてきたことへの揺るぎない自信があります。

だから今から特別なことをするわけでもなく、今まで積み上げてきたことをしっかりやれるように準備する。

自分たちが積み上げてきたことを信じて闘う。

これが大切。

いつだって修羅場上等なトリニータなので、この時期での2位は燃えないわけがないと思うのです。まずはホーム最終節。自分は会場にはいけないけれど、最高の雰囲気で選手を後押ししてほしいな、と思います。自分はDAZNから後押しします。

 

先のJ1よりも目の前の90分。30人全員+サポーター、スポンサーみんなで勝利を掴みとってほしい。

 

【ハイライト】2018明治安田生命J2リーグ第40節 横浜FC vs 大分トリニータ - YouTube

【大分】vs松本(H) 層の違いを見せつけて〈J2 第39節〉

町田戦での悔しい敗戦から2週間。再び訪れた「天王山」は試合をコントロールし続け、1-0で勝利。点差は1しかなかったが、内容では大きく上回った大分。どう松本の攻撃を凌ぐかをしっかりデザインしており、会心の勝利となった。

 

この日のメンバーは以下のように。

大分トリニータ
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前節から1人の変更。國分伸太郎がベンチに下がり、キャプテンの馬場賢治がスタメンに。

この日で鈴木義宜がJ通算150試合出場。おめでとう。

 

松本山雅FC
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リーグ最小失点の松本は、橋内優也が怪我から復帰。左のストッパーに今井智基が入る。

試合の前から「前田大然とセルジーニョが怪我か?」とのウワサが出ており、またまたぁ~。反町さんのアジジ作戦か~?と思ったが、二人ともベンチ入りもせず。シャドウには石原崇兆岩上祐三が入った。

 

強みを生かして

キックオフ前から駆け引きは既に始まっていた。コイントスで松本のゲームキャプテンの橋内はエンドを変更。攻撃力のある大分が攻めた時にペナルティエリア辺りに日が射し込むように、という狙いがあったと思われる。

 

松本はボランチ藤田息吹が前に出ていき、ビルドアップの起点となる3バック+GKにプレスがかかるようにした守備。1トップの高崎寛之が鈴木にマークをするが、GKの高木駿にパスが渡されるとそのまま追いかける。それと同時に鈴木のマークを藤田に受け渡す。大分が焦れてロングボールを前線に放り込んでも松本のDFは高さと強さがあるため容易に跳ね返せる。また、大分がボールを持って押し込む時に左右のストッパーが前線に顔を出すため、それを制限する意味合いもあった。

それでは大分は3バックを飛ばしてWBにつける、という形を目指すが、両者共に3-4-2-1とミラーゲームになるためWBどうしがぶつかる。球際の強さは松本の方に分があるとして、大分の3バックへの制限を準備したのだろう。

大分のビルドアップが阻止できなければ、自陣で5-4-1でブロックを築き、スペースを潰す形で対応していた。

 

大分は3バック+GKの4枚での組み立てにマンマーク気味で対応されると、ボランチ丸谷拓也が最終ラインに入り、数的優位に立つと共に相手のプレスを剥がしつつ、松本は大分のビルドアップを許すか、前からハメていき強力な大分FWと自陣で1対1を作られるかを迫られる形となった。

 

松本は大分DFへのビルドアップの制限を緩めて、5-4-1の撤退守備でスペースを埋める。自陣で自由にボールを持てるようになった大分は、ボールを回してチャンスを伺う。

 

この日の大分は、敵陣でボールを奪取しても速攻は仕掛けずに味方の上がりを待ってじっくり攻めることを意識していた。

遅攻となるので松本にブロックを作る時間を与えてしまうが、大分はボールを動かして崩す事は今季、一貫して取り組んでいること。また、松本のカウンターの威力を殺す意味合いがあった。

松本のカウンター封じは攻守でのシャドウのポジションの違いを利用したもの。

守備ではシャドウの石原、岩上はサイドハーフとして振る舞う。

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そして攻撃に転じた際には高崎の近くでプレー。

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となる。

松本がボール奪取から全体を押し上げる際にボールを繋ぐ事ことよりもロングボールで高崎に当ててからセカンドボールを回収して一気に押し上げる形を取る。

もし大分が速攻を仕掛け、松本の守備に引っ掛かってカウンターを受けるとなると、シャドウは高崎の近くでプレーできるが、遅攻をすることで開いた位置でボールを受ける大分のストッパーについていかざるを得なくなり、カウンターに転じても高崎が孤立する。

大分がボールを持ってじっくり攻める時に、高崎は左右の繋ぎ役となる前田凌佑につく事で組み立ての邪魔をしていたが、出来ることはそれくらいしかなかった。

 

大分がボールを持って試合をコントロールしだした32分。ついに得点が生まれる。

右サイドを崩しにかかった大分は、三平和司パスミス。今井が回収するも果敢にプレスバックして三平が再びマイボールにすると、前田→丸谷→藤本憲明とテンポよく1タッチで繋ぎ、藤本はヒールでスペースにボールを置く。これに三平が利き脚とは逆の左で強烈なシュートを決めて、大分が先制。

三平は嬉しいシーズン10点目となった。

 

その後、スコアは動かずにリードして折り返す。

 

大人なゲーム展開

後半に入っても、松本は3バックからロングボールを高崎に当てて……という攻撃を目指すが、シャドウとの距離が変わらないため、バイタルエリアスクランブルを起こせないまま。ロングボールの出し手が角度をつけてサイドから放り込んでチャンスを作るが、波状攻撃とはいかない。

62分に松本は高崎を諦めて永井龍を投入。左右に流れてのプレーができる永井が入ったことにより、シャドウとの距離感が改善されてシュートに持ち込む形を作ることができた。しかし、CFとなる永井が左右に動くため、肝心な中央でのスクランブルは起こせない。波状攻撃ができずに単発での攻撃のままだった。

一方の大分は、ビルドアップの形を工夫して3バックに高木、丸谷、時には前田が絡んで前からハメてくる松本の網を掻い潜る。そうなると松本は撤退してスペースを埋める5-4-1に移行するので、ブロックを作らせてカウンターの威力を下げるというやり方を徹底。サイドからサイドへ、サイドの奥行き(CB↔️シャドウ)を使ってボールを動かし、相手がボールを奪いにくい、奪ってもカウンターがしづらい形を意図的につくる。

71分に大分は馬場、三平を下げて後藤優介、伊佐耕平を入れてシャドウのタイプを変える。同じタイミングで松本は岩間雄大岡本知剛。空中戦が少なく、パスが繋がらないためここを変えてきたのだろう。

 

その後、松本は3バックは固定しつつ、前線を増やして3-1-3-3気味にしたり

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下川陽太から三島康平へ変えて高さを増やして無理やりスクランブルを起こしにかかるが

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大分DFがしっかり対応。相手が前がかりになったのを見てカウンターから星雄次が惜しいシュートを放つなど、終始試合巧者ぶりを見せつけて1-0で勝利。天王山をモノにした。

 

松本の印象

力こそパワー、パワーこそ正義。

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キレイな京都みたいなサッカーだったが、セルジーニョと前田大然の不在が大きく響いた。上手さと早さがある両者がいないため前線でスクランブルが起こせない松本は次の策が全く見えないままただひたすらにボールを蹴り込む。ボコ蹴りサッカーで策を封じられるとしんどいなぁ、と。

フィジカル重視なサッカーのためか怪我人も警告も多く、終盤にベストな11人を組めない。J2でもこのサッカーは限界に近いとも感じるが、失点は少ないしなまじっか点が取れてしまう。それ故下手にカテゴリーが上がっても、強度の差でやられてしまう。J2では勝ち点が取れるためにカウンター、フィジカル重視のサッカーが続く。それはそれで楽しいならいいが、チームとしての積み上げがあるかと言われると、この日の試合をみると疑問符がつく。

天王山は落としたが、まだまだ自動昇格の可能性は充分にあるためここから踏ん張れるかは注目だろう。

 

層の違いを見せつけて

大分はこの天王山をモノにして、J2で単独首位に躍り出た。「準備不足」だったのは片野坂監督の喉くらいで(本人談)、今年は2桁得点が4人(後藤、藤本、三平、馬場)となり、岩田もスタメンに定着。選手層の厚さを1年を通して作り上げ、怪我も警告・退場も少なく、試合毎に様々なチャレンジをしての首位。感慨深い。だが、あくまでもこの試合も1/42でしかなく、まだ何も手にしたわけではない。混戦のJ2リーグで気を抜かずに残りの3試合、まずは上位対決の横浜FCを叩きたいところ。

 

また、この試合でトリニータJリーグ参入から20年で450万人を動員。大分市陸からビッグアイへと立地が変わるだけでなく、様々なカテゴリーで色んな試合を経験してきた。

明日の11/1でナビスコ杯戴冠からちょうど10年。2008年からは本当に激動につく激動だった。新たな10年を素晴らしい形でスタートさせるために、残り試合も全力で勝利に向かって取り組んでほしい。

 

【ハイライト】2018明治安田生命J2リーグ第39節 大分トリニータ vs 松本山雅FC - YouTube

 

 

 

 

【大分】vs千葉(A) 背後を突いて〈J2 第38節〉

運動の秋!ハイラインを引く千葉のDFは裏抜けマシーン藤本と楽しくかけっこ!みたいな試合。

何言ってるかわからないと思うけど、実際にそんな試合だった。この時期になんてサッカーをしてるんだ……ってのを見せられた。しかし、大分はそんな相手に付き合う事なく、大の苦手な千葉を粉砕。

 

この日のメンバーは以下のように

ジェフユナイテッド千葉

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予想は4-2-3-1だったが、実際は小島秀仁が2列目に入った4-1-2-3。それまではロドリゲスと佐藤優也がおよそ半分ずつスタメンをしていたが、9月からGKの大野哲煥が先発。怪我人が多発!というわけではないのにシーズンで3人のGKが出場と珍しいことに。

この日の結果次第でJ1参入PO圏内の6位以下になる可能性がある大事な試合に。

 

大分トリニータ
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前節は天王山を落とした大分も、これ以上の取りこぼしは許されない。

先発の3トップを総入れ替え。シャドウに入った國分伸太郎は第24節の栃木戦以来の出場となった。

 

ドタドタ、バタバタ

リーグ1位の67点を叩き出している大分と、65点でリーグ2位の千葉の戦いは、バタバタした入りに。

開始27秒でキックオフから鈴木義宜が前線にクリアしたボールを千葉DFが見送り、GKの大野がPAの外から中に入ってボールを取ろうとしているところで三平和司が押し込んで先制。

試合前に姫野宥弥から「ワンチャンアルデ」と言われていた予言が当たった。

 

珍しすぎる形で先制した大分だったが、その後は千葉のハイプレスに晒されてビルドアップがしにくい状態になると、11分。ゴールキックで高木駿から福森直也にボールを渡すが、少し浮いてしまい処理を誤る。慌てた福森は高木に戻すが指宿洋史がプレス。こぼれ球を町田也真人が奪いシュートを放つとこれが決まり、両チームとも全く崩しの形を見せないまま11分で2点も生まれるという世にも奇妙なゲームになった。

 

そこからもハイプレスでイケイケの千葉、それに慌ててバタつく大分、プレスを大分が外すとカウンターでバタつく千葉、というドタバタした、落ち着きの無いゲームは続く。

16分には矢田旭がドリブルでボックス内に入りキックフェイントでDFを剥がしてシュートに持ち込もうとした所で福森がクリア。中盤を大きく越えたボールは千葉のハイラインの裏に転がり、裏抜けをした藤本憲明が独走からGKを交わしてゴール。再びリードを奪った。

 

この日の千葉の大分対策は3トップが3バックに積極的にプレス、大分のWBを千葉のSB、ボランチにトップ下が付いて……とフルコートでハイプレスを仕掛けるための4-1-2-3の配置にしたのだろう。

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高い位置でプレスを仕掛け、奪ってショートカウンター!として、大分のパスの出し手、受け手両方にフタをしてきた。

しかし、大分のビルドアップではGKの高木も積極的にパス回しに関与するため、中央の指宿は鈴木だけでなく高木にもプレスをかけないといけない。

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どちらかにつけばどちらかが空くことはわかりきっているが、こうなったときの策を千葉は持ち合わせていなかった。

指宿が高木に寄せて、船山貴之下平匠が1つずつスライドして寄せるが、大分は中央に3枚いるため、近藤直也はゴールに近い中央を締めるのを優先しないといけないため大分のWB(この場合は松本怜)がフリーに。

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すると大分の速攻を遅らせるために中盤の選手はボールサイドにスライドしていくが、逆サイドの大外がフリーに。シャドウの選手がサイドに流れるだけでCBは簡単に釣り出されてしまうし、大分が攻めるだけのスペースも広大だ。守備をする千葉からするとその広すぎるスペースで3人で大分の4選手を捕まえないといけないためどうしても無理が生じてしまう。

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守備時のケアをしないといけないため上がれないアンカー、中央突破をされないようにするためマークを放す事ができないCB、広大なスペース。千葉の「第1の網」がかからなかったときの対策、リスク管理は全くといって良いほどなかった。

また、左右に揺さぶられてマークする人がスライドによって複数回入れ替わり、下がりながらの守備で千葉のDFはどうしてもボールウォッチャーとなってしまう。これでは守備は野ざらしと言っても差し支えないだろう。なんだこれ……

 

この構造的な欠陥を突いて大分は少ないタッチでボールを回し、37分には國分からサイドに流れた藤本のグラウンダーのクロスに三平が合わせて2点差に。GKを加えたビルドでプレスにズレを生じさせ、WBをフリーに。敵陣に入ってからも相手の背後を連続して突いての得点。まさに狙い通りだった。

 

43分にはまたしてもペナルティエリアの外で足下でボールを処理しようとした大野。藤本に身体を入れるも交わされてボールを奪われるとまさかのボックスの外でハンド!決定機阻止で退場も有り得たが、角度がなかったこと、中にDFが居たことから得点になる可能性は少ないとして警告で済んだ。もしこの軽率なプレーで千葉に退場者が出ていたらハイライン、ハイプレスがどうなったのかは見ることはできなかった。

 

落ち着かせて締める

後半に入り、千葉は指宿→為田大貴

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為田は左サイドに入り、船山が中央にポジションチェンジ。

大分は5-4-1でスペースを埋めてブロックを築き、2ラインの間で千葉の選手を捕まえる守備へ。なかなかチャンスは作れなかったが、相手にボールを持たせればハイプレスに晒される事はないので、ゲームを落ち着かせる事ができた。

その後大分は52分に三平→伊佐耕平、千葉は63分に小島→茶島雄介、71分に町田→ラリベイとお互い攻撃的なカードを切る。

攻めあぐねる千葉は締められた2ラインからボールを引き出しに下がってくるが、入れ替わって中を突く動きは全くなかったため大分のブロックの前でボールをぐるぐる回すのみ。71分からはなぜかダブルボランチに変更とちぐはぐな采配も響いた。

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80分にはじわじわと高くなった千葉DFの背後を突いて3バックの一角を務める岩田智輝が右サイドを駆け上がり、ボールを残してハーフスペースに侵入した伊佐へパス。伊佐は逆サイドでフリーの星雄次に低く速いクロスを送ると、星が冷静に押し込んで4点目。

その後、アディッショナルタイムに素早いリスタートで背後を取られ矢田のクロスをラリベイに押し込まれるも4-2で勝利を手にした。

 

千葉の印象

そもそもの策が欠陥だらけで、ハイプレス、ハイラインの裏を取れば簡単に失点。加えてGKの信じられないミスが2回もあったらそりゃ勝てないよ……と言いたくなる内容。これで可能性が僅かにあったPO進出もなくなる呆気なさ。

前節は勝利したものの、サポーターが居残りをしてクラブからこんな声明が出されたり、試合前にはこんなツイート

が流れていたりとゴタゴタしていた様子。

監督はほぼ無策、選手は連動性を欠き、サポーターは見えない未来に憤慨する。みんなどこか他人事のように感じた。チームに「ユナイテッド」と名があり、「WIN BY ALL」と掲げているがここまでバラバラだと最早皮肉でしかない。どうしたもんかね。

全てはマッドなサッカーモドキで昨期終盤に怒涛の7連勝でPOに滑り込んだ幻想の再現を夢見るフロントと、対戦相手の対策ができない、ボールを持っても策がないサッカーを1年通して続けているエスナイデル監督が元凶ではないか?このままではとても悲しい。

 

大一番を前に

初対戦から通算34回目の対戦でやっとのことで千葉にシーズンダブルを合計8-2という大差でやってのけた大分。とても感慨深いと思ったが、それ以上に千葉が弱かったなぁ……と感じるのはちょっと欲張りかもしれない。しかし、町田との天王山を落としたことを引きずらずに天敵から勝ち点3を奪えたのはとても大きい。西京極で虹を見て、千葉にシーズンダブル。これでJ2の御祓は済んだはず。直接対決で反町さんを泣かせてJ1まで突っ走ってほしい。

 

【ハイライト】2018明治安田生命J2リーグ第38節 ジェフユナイテッド千葉 vs 大分トリニータ - YouTube

【大分】vs町田(A) 天王山、落とす〈J2 第37節〉

ここ数年の大分にとって町田は忘れたくても忘れられない相手。2012年の昇格争いでのアウェイ、15年の入替戦……そして今年前期での対戦もまさに死闘と言える内容だった。

目の前に立ちはだかる「壁」、町田。暫定ながら首位に立った大分はまたしても難しい試合となった。

 

この日のメンバーは以下のように。

FC町田ゼルビア
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2試合未消化ながらも上位にいる町田。サイドを圧縮して狭いスペースを攻略すること、そして90分走りきるスタイルで勝ち点を積み重ねてきた。

この日は怪我人やコンディション不良の選手が多く、井上裕大、奥山政幸、森村昂太などがメンバー外。大谷尚輝は累積警告で出場停止。

ロメロ・フランクは前回の大分戦以来24試合ぶりのスタメン起用に。

 

大分トリニータ
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前節から三平和司をベンチに下げ、馬場賢治をひさびさに先発から使う。

ベンチには宮阪政樹が入り、状況によって大きな展開に持ち込める準備をしていた。

 

CBを釣り出して

大分は前回の対戦と同じく、シャドウがサイドに開きWBと近い距離感でプレーすることを重視。(前回の内容はコチラから)

横の圧縮をしてパスコースを狭めてくる相手に対してDFラインからの背後を狙ったパスや対角線への展開により圧縮されていない逆サイドへボールを持っていくことで一気に局面を変える事を目的としていた。

特に多かったのが右サイドからの展開。岩田智輝や松本怜、サイドに寄った鈴木義宜から対角線の星雄次、馬場賢治を狙ったり、ロングパス1本で伊佐耕平を狙ったりといった形に。
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ここで大分は特に対角線へのロングパスで町田を攻略しようとしていた。

星が大外の高い位置でロングパスを受けると、対面する小島雅也はボールへとチェックに。

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それに連動して4バックはスライドをしていくが、小島と酒井隆介の間は広くなってしまう。(小島はボール奪取、酒井は小島との連携と共に対面する馬場を見ないといけないため)

 

「SBにWBをぶつける事でCBを動かす」

これが大分の狙い。

大きな展開で対角線にボールを逃がしてしまえば相手のSB-CBにスペースが自ずとできる。あとは星と馬場の連携でワンツーで星がサイドの角を取ったり、馬場がSBの小島の背後を取ってボックス内に侵入したりできる。そうなった場合、対面するCBはリアクションをせざるを得ない。

 

これは単にこの局面だけのハメ技だはない。町田が大分のサイドチェンジ、ロングパスを嫌って逆サイドにマンマーク気味に付く事や、DFラインを下げる事をすれば町田のスタイルである圧縮して狭いスペースでのカオスを生み出すサッカーはできなくなるため、チームの秩序を乱すという面でも大きな意味があるものだった。

 

また、この対角線ないしDFラインの裏を取るための準備もしっかりとなされていた。

大分は町田がボールを持った際にいつもより低い位置までプレスに行かずリトリート、ディフェンシブサートに入ってからは人にマークをつけて前を向かせない事をした。コンパクトな町田の組織だったプレーを逆手に利用するための策だ。

これがスタートからハマり、前半序盤から伊佐が決定機を2度3度と迎え、大分ペースで試合が進む。

 

町田もSBにWBをぶつけられることは想定済みのようで、大外に振られたらダッシュで横スライドをしてディレイ。根本的な解決とはいかず走らされる形になったが、それは我慢。選手たちも「それが自分たちのやり方」というのをわかっているためか、強度自体は落ちなかったようだ。

 

町田は基本的に相手によってやり方を変えない、横スライドから速攻を防ぎSHを下げてブロックを作ることは片野坂監督も想定済み。町田のプレッシングが外された時に取るリアクションを考えていたため、次の策にもスムーズに入ることができた。

大分の用意した策は右サイドの組み合わせの変更。町田を自陣に押し込んでからの崩しは、シャドウを中→外に開き、相手のCBを外に誘い出す事だった。

普段の大分では、WBの松本怜、右ストッパーの岩田智輝が高い位置を取り、小手川宏基カバーリングをするというトライアングルが大きな武器。しかし、このユニットでは攻撃に転じた際に立ち位置の関係でどうしても深い位置からのスタートになる。そうなると町田の素早い寄せにあっぷあっぷしてしまい絶好の「ボールの狩り場」になる。

それを防ぐために、今季はじめてこのトライアングルから小手川を外し、カバーリングの役目をボランチ丸谷拓也が担った。これにより、小手川が外に流れて松本と縦関係になりやすくなったり裏抜けがしやすくなった。

 

そんなこんなで大分は町田の横圧縮を揺さぶりスライドをたくさんさせることで疲れさせる事と、スライドによって生じるスペースを使いCBを釣り出すことで町田の戦術的な骨格を殴り続けたが、先制点は町田だった。

16分に右からのCK。大分は町田の高さを気にして中に陣取る裏を取られてニアサイドのペナ角のロメロフランクをフリーにしてしまう。平戸太貴がゴロでそこに出すと右足一閃。高木駿に触れられるもニアサイドの角に決まり失点。

大分は失点してからもやり方を変えずに骨格を殴り続けると、25分に福森直也のロングパスに抜け出した小手川がGKとの1対1を交わしてカバーに入ったDFの股を抜くシュートで同点。32分にはまたしても大きな展開から小手川→伊佐→小手川と渡り、ニアに飛び込んだ馬場にクロス。馬場はバックヒールでファーサイドに流し込んで一気に逆転。

その後もWBとシャドウがサイドで縦関係になりフリックやワンツーでCB、SBを動かしながら崩す形に。

このままリードして折り返すかな~なんて思った43分、右サイドの低い位置からのクロスをニアでロメロフランクが反らして高木はキャッチできず。こぼれ球を中島裕希がしっかりと決めて再び試合は振り出しに。大分にとっては実に15試合振りの複数失点であった。

 

バレた「左」

えー、突然ですが。シーズン通しで試合をまとめていると、どうしても違和感に感じたり「あー、ここ穴だなぁ~」なんて思う事はあります。あんまり書いちゃうとどこかのクソメ……ゲフンゲフン

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(誰だろうなぁ~???)
から覗かれたらマズいことは極力書いてきませんでした。すんごい自惚れですが……

 

しかし、町田の相馬監督は前半の45分で左サイドからの速攻はないと見切っていた様子。

後半から横スライドで対面する小島雅也を大外の星にまでスライドせずに、パスの受け手となる馬場を捕まえるように。これでは星がサイドを抉って大変!枚数が足りない!となるが、星はボールを足元で受けると①カットイン②パス&ゴーの2択がメイン。深い位置からのクロスは選択肢としてはあるだろうが、ニアに早いクロスはまだしも、ファーサイドや中にクロスを上げるとことごとくワロスになることがバレていた。

また、町田は右サイドの守備で星を取りどころにするために土居柊太は下がりながら星を第一に捕まえず、前田へのパスコースを消しながらの守備へと変更した。

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(4バックの右脇に星が侵入できるが、そこに入られても問題はない。切り返して中と連携を取られた方がイヤなので中の強度は高くしたい。)

これにより、星にボールが入ってもパスの出しどころはなくなり、カットインをしても自ら網にかかるだけ。サイドを抉っても中は高さで勝る相手にFWは競り合いをしないといけないし、そもそも精度が低いためチャンスになりづらい。

また、大分も後半からシャドウを内側に留まらせてバイタルエリアから崩していきたい。全体を押し上げて相手を押し込みたい。という意図もあったようだ。

こうやって次第に大分はじわりじわりと攻め手を失っていくと58分、CKから深津康太のヘディングは枠に嫌われるがこぼれ球を鈴木孝司がトラップからシュート。ゴールネットを揺らし再逆転かと思われたが、鈴木のトラップがハンドと見なされてスコアは動かず。しかし、63分に左サイドのスローインをロメロフランクがボックス内で相手を背負いながら反転。それと同時につま先で蹴り、GKのタイミングを外しつつニアサイドに決めるというスーパーな一撃で再び町田がリード。

 

大分は69分に伊佐、馬場を下げて藤本憲明三平和司を投入。2トップにして攻勢に出る。

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すると直後の70分。三平のクロスに裏抜けマシーン藤本が背後を取ってヘディングシュートは枠に嫌われてしまう。

前線の枚数を増やした大分。ただ単に前に人数を増やしたということではなく、中盤に5人を横並びにすることでサイドチェンジを容易にすることと星を直接小島にぶつけずに少し低い位置で土居を食いつかせて前田をフリーにする意図としての意味合いが強かったように思われる。

しかし、落ちると思った町田の強度は落ちず、サイドで詰まって逆サイドに逃がすことを繰り返してしまった。

83分に狙われていた星を下げて清本拓己を投入して局面の打破を試みたが、時間が少なすぎた。町田は85分にロメロフランク→李漢宰、90+1分に中村→藤井航大、90+5分には鈴木→山内寛史と守備的な交代で4-1-4-1に変更。

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そのまま試合をクローズさせて試合終了。注目の上位対決で勝ち点3を落とす形になってしまった。

 

町田の印象

しっかりと走りきるし、骨格を殴られても我慢。流れが悪くても平戸太貴の精度の高いキックから得点が取れる。実に嫌らしいチームだった。シーズン終盤に差し掛かり、さすがにどこかでガクッと強度が落ちるだろうと踏んでいたが、そんな素振りは全く見えず。

–後半のほうが戦い方が整理されたことは現象を見れば分かるのですが、球際の攻防の部分は守備が整理された上でもインテンシティーが落ちませんでした。これは日本サッカーの共通の課題でもあると思いますが、65分過ぎぐらいからは間延びしてインテンシティーが落ちるものです。それでも町田は終盤までインテンシティーを落とさないゲームをできているという印象です。それはチームの自負として、強みとしているという認識でよろしいでしょうか?
「90分落ちないようにしようとチームを作ってきていますが、普段から我々の試合を見ている方は分かると思いますが、ウチのチームでも後半の60分過ぎや前半の30分過ぎにインテンシティーが落ちるということは当然あります。

ただインテンシティーを落としたまま、90分のゲームを終えようという話を選手たちにはしていません。90分もつようにしようという戦いをしてもらっています。その中で選手たちが努力をしてくれていますし、もしそう言っていただけるのであれば、それは選手の努力の積み重ねでもあります。僕からすると欲深いので、もっとと言ってしまうのですが、今日も選手たちが戦い続けて、やり続けて、難しい場面も何度も破かれても戻ってと、本当によく戦ってくれたなと思っています」

町田公式HPより

 

うーん。強かった。

選手で印象に残ったのは深津康太とロメロフランク。

2人とも前回の対戦で深津は12分に退場、ロメロフランクは後半に負傷退場と苦い試合になったが、深津はエアバトルに強く、セットプレーで脅威であり続けた。ロメロフランクは全得点に絡む大活躍。別の試合で活躍くれ……

出た選手全員が走りに手を抜かない。こんなに強度が落ちないチームはなかなか無いとつくづく感じた。強い!

 

躓いたが

大事な大事な1戦を落とすと共に首位を明け渡してしまった。痛恨の極みである……

前半で伊佐のハットトリック未遂や後半の藤本のヘディングなどタラレバを言ってしまえばキリはないが、全く正反対のサッカーを志す両チームがどんなリアクションをするのかとても楽しく、充実したゲーム内容だったと心から思う。たかが辺境の2部リーグでこれだけ最先端の解釈を取り入れた試合を繰り広げてくれたことがとても嬉しく、それが我が愛するトリニータが1年を通してやってくれているのがとてもありがたいと感じる試合になった。

この敗戦で終わりではなく、残り5試合でまだまだ優勝、自動昇格の道が途絶えたわけではない。今を楽しみ、逆境に立ち向かう。いつだって「修羅場上等」だったじゃないか。このチームでひとつでも上に行きたい。

 

 

 

サッカーの「今」を見る

現在のサッカーを読み解くには「カウンター」と「ポゼッション」という二項対立はもう古くなっている。様々な局面を想定した上でどう立ち振る舞うのか。そのためには「カウンター」と「ポゼッション」のたった2つの言葉ではとても囲いきれない。進む時代に我々見る側も取り残されないようにしないといけない。

 

奇しくも今月号のfootballistaのテーマは

「ポジショナルプレーVSストーミング
欧州サッカー2大戦術潮流の最前線」

内容はコチラ

ポジショナルプレーの大分とストーミングの町田。わからないことだらけのサッカーだが、これを読めばなんとなーくは読み解けるはず。たぶん。

 

ポジショナルな3バックという意味ではベティスサッスオーロあたりが大分に似ているチームだと感じた。大分から世界へ。我々見る側もちょっと世界を覗きませんか?

 

かなーり最後は逸れた気がするけどとりあえず今回はこんなところで。

 

 

【ハイライト】2018明治安田生命J2リーグ第37節 FC町田ゼルビア vs 大分トリニータ - YouTube