【後編】片野坂監督のJ2初年度の挑戦を振り返る
2017年。偉大なバンディエラ、高松大樹が引退してはじめての年。それは、これからのトリニータを創る上で大きな年。大分トリニータはこれからどこへ向かうのか?という問いに、片野坂監督や選手は成長と工夫という答えを見せてくれた1年だったと感じる。
戦術面で大きな変化をした年だったが、それを成し得るには選手達の成長が大きなカギだった。一昨年のJ3を苦しみながらも残り5試合を全勝で優勝を掴み取り、選手達は大きな自信をつけてJ2へ戻ってきた。そして、その自信は、選手を一回り大きくさせたと感じる。
MVP 後藤優介
シーズンを通じてどの選手も成長していたが、中でも後藤の活躍は目を引いた。
一昨年のJ3で14得点をあげ、殻を破ったエースは、J2の舞台でも輝いた。昨年はリーグ戦42試合中41試合の出場、2度のハットトリックを含む17ゴールと充実したシーズンを過ごした。しかし、ボール1つ分の枠外やクロスバーに嫌われる場面も目立ったのも確か。今期は20ゴールを目標に頑張ってほしい。
MIP 川西翔太
登録はFWだが、年々ポジションを下げて一昨年は山形でボランチをメインにプレーをする。大分に加入して初年度だった昨年は、序盤戦こそ途中出場が多かったが、第9節アウェイ湘南戦以降、鈴木惇と不動のダブルボランチとしてチームのバランスを取る役割を担った。
数字の上では2ゴール3アシストと目立ってはいないが、ボール奪取や的確なポジショニングによりさりげなく気の利いたプレーをしていた。ボールのない所での動きはなかなか評価されづらいが、彼が居たからこそバランスが取れていたと感じる。
ベストマッチ
【公式】ハイライト:名古屋グランパスvs大分トリニータ 明治安田生命J2リーグ第32節2017/9/9 - YouTube
前編でも取り上げたが、まず片野坂監督の采配が見事で、意図した通りに試合を運べたと感じる。また、相手の猛攻を防ぎつつ、耐えて耐えてからの試合終了間際の得点。名古屋相手にはじめてシーズンダブルを果たした。一番痛快で気持ちの良い会心の勝ち。素晴らしかった。
今期にむけて
ここまでざっくりと振り返って来たが、今年の期待値はここ数年で一番高いと言って良いだろう。
このオフシーズンで7年間所属したGK上福元が東京Vへ移籍。シーズンを通して主軸であったMF鈴木惇も福岡へレンタルバックで退団をした。しかし、主力の流出はこの2名だけであり、GKには福岡から兼田、MFには松本から宮阪が加わった事により最低限のクオリティは保てるだろう。また、刀根(←北九州)、丸谷(←広島)、山口(←神戸)とトリニータに縁のある選手も加わっただけでなく、2年連続のJ3得点王の藤本(←鹿児島)、手薄だった左WBには星(←山口)などと充実したオフシーズンとなった。
昨年からスタッフ・コーチ陣、選手ともにトリニータに縁のある選手が多く在籍し、「育成クラブ」としての地位をまた取り戻しつつある。この好循環を大切にしていってほしい。
涙の先に
昨年のJ2第41節 徳島戦後の記者会見にて、片野坂監督はプレーオフ圏内の可能性が絶たれた事により「残念です。本当に悔しい……」と涙する事があった。
そこに、片野坂監督の熱い思いがあったのを感じなかったサポーターはいなかったと感じる。
昨年は果たせなかった悲願を一回り大きくなった今年のトリニータに果たしてほしい。
来る2018シーズン。今年のスローガンは「勇往邁進」となった。
大分トリニータに関わる全ての人が昨年感じたであろう「もっとやれた」という思い。
今年は勇気をもってJ1への挑戦権を掴み取る一年にしてほしい。そして、悲願の先で、片野坂監督の嬉し涙を見たい。
写真は全て大分トリニータ公式HPより
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