Nishida's diary

トリニータを中心にいろんな試合を。

【大分】vs山形(H) 試された対応力〈J2 第2節〉

トリニータは木山監督の「大分対策」に翻弄された90分であったが、試合中に試行錯誤を繰り返しながら相手に食らいつき、我慢強く勝ち点1を拾った。

 

 両チームのスタメンは以下の様に。

大分トリニータ
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開幕戦から選手は竹内、星、三平の3人から黄誠秀、 那須川将大小手川宏基が先発に。

フォーメーションも普段の3-6-1から4-4-2に変更。山形の攻撃陣にぶつける意図があった。

 

モンテディオ山形
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開幕戦は水戸に0-3で完敗。それを踏まえてか4-1-2-3から4-4-2に変更。開幕戦からこちらも3人が変更。西村竜馬、松本怜大、汰木康也が先発を外れ、三鬼海南秀仁瀬沼優司が変わりに。山田拓己は右SBから左SBに入った。

 

 想定外のスタート

大分のスタートは4バック。相手FWが右から瀬沼、フェリペアウヴェス、小林成豪の並びを予想していたと考えられる。特に両サイドの瀬沼と小林は起点になれることもあり、3バックで当たるのは難しいと判断をしたか。

前半のキックオフと同時に前に出た山形は予想に反して2トップ。トップ下に入ると予想していた南がFWに入り、瀬沼と小林はSHでの起用となっていた。前に南が入るのが予想外だったためか、チーム全体からぎこちない印象を受けた。

多少慌てた大分DFに対し、前半4分に小林がドリブル突破をすると鈴木義宜に倒されPKに。これをフェリペアウヴェスに決められ、早くも先制点を奪われる。

 

バタつきながらも対応力が見られた前半

試合開始から誤算続きで浮き足立った大分だったが、宮阪を起点にチャンスを作る。

15分ほどからボールが落ち着きだすと、4-4-2で守備をして、ボールを保持すると3-3-2-2へと形を変え、攻撃の糸口を探していた。
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宮阪がDFラインに入ることにより、フリーでボールを受ける回数が増えたが、左右に散らすことは出来ても効果的に前線へとボールが入ることはなかった。また、両サイドの那須川、ソンスが孤立をしてしまう場面が目立ってしまっただけでなく、松本怜がやや内側に入ったためサイドを抉る形も見えづらかった。

 

そして30分ほどからまたボールを保持するようになると同時に4-4-2と3-3-2-2の可変システムを辞め、普段の3-6-1の形に戻した。


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これによりDFラインで落ち着いてボールを回せるようになり、全体のバランスも改善された。これにより攻撃のスイッチ役の宮阪が前線との距離が近くなり、チャンスを創り出す。36分にはその宮阪のパスを藤本が潰れながら後藤へヒールパス。相手DFの寄せに身体をグッと入れて抜けると、最後はGKの股を抜き同点弾。試合を振り出しに戻す。

 

3-6-1にもしっかりと対応してきた山形

前半を1-1で折り返した両チーム。後半からは本来の形を貫いた大分と、それの対策をしっかり講じてきた山形という構図になった。

山形は後半の開始から得点を奪うまでに約束事として3点を共有していたと感じる。内容は

  • 大分がDFラインでボールを持ったときに闇雲にプレスに行かないこと
  • ボランチが縦の関係になった時(宮阪がDFラインに下がった時)に中を閉めてサイドに散らすように仕向けること
  • ボールがミドルサードに来たら一気にプレスに行きショートカウンターを狙うこと

 

重要なのは2つめの中を閉じること。大分はボランチから前線へ早いボールで一気に仕掛ける。実際、1点目も低い位置から藤本にボールが入ったため後藤の裏抜けを許した。これを無力化するためにボランチとFWの間にFWと両サイドを絞る。サイドを経由する場合は直接FWに入るよりは時間がかかるので捨ててもよいという考えだろう。これは本家の広島対策としても有効な手段としてJ1の試合でも見られたりしたので、参考にしたのかもしれない。

実際、後半開始から失点をした65分ほどまではFWにいい形でボールが入らず、中盤でボールを奪われたため重心が後ろに下がり攻め手を失っていた。

 人海戦術でブロックを作る大分が跳ね返し続けたためスコアはなかなか動かなかったが、中村駿の素晴らしいFKで山形が勝ち越しをする。

大分は手詰まり感を感じていた中での失点であった。厳しくなったこのタイミングで宮阪に変えて川西を投入。これにより相手の間でボールを受け、1枚でも剥がして前線へと繋げようという意図が込められていただろう。この交代が早速、奏功する。川西がフリーでボールを貰い、前を向くと前線へロングパス。後藤が頭で逸らすとDFが触れず、快足の松本が裏に抜け出してゴール。試合を再びイーブンに持ち込む。

その後、オープンな展開になりつつも選手交代によりやや大分がペースを握るが得点は動かず。2-2で試合終了。バタついた大分であったが、なんとか勝ち点1を拾った。

 

小さなズレでペースを握れず

大分は前半30分ほどから昨シーズンと同じ3-6-1に戻したが、上手くペースを握ることができず、重心が後ろに下がってしまった。これには山形の対策ももちろんあるが、2つの小さなズレが原因だと考える。

1つは右のCB、黄誠秀のところだ。守備で小林に対して後手を踏んでいたため解説から「狙われてる」と指摘があったが、それよりもボールを持ったときのポジショニングが低かった事が気になった。DFラインでボールを回している時に両サイドのCBは大きく開くが、真ん中の鈴木のほぼ真横にポジションを取っていたため、相手がプレスを掛けやすい位置取りをしてしまっていた様に感じる。もう2~3m前でプレーをするだけでボランチへのパスコースも作れただろうし、松本とサイドでボールのやり取りができたのでは?と。

 

もう1つは小手川の守備から攻撃への切り替え時に適切なポジショニングが取れていない事が挙げられる。守備の時間が多かったこの試合。左サイドを担う小手川はボールを奪ってもそのままタテに入ることが多く、那須川とポジションが被っていた。そのため、ボールサイドに小手川が寄りすぎた穴を藤本が下がるか、丸谷が上がるかで対応をしていたが、ボールを奪われるとバランスが悪いままズレを作られる危険を孕んでいた。試合を通して藤本が小手川の位置まで降りて後藤とほぼ横並びになっていたため、カウンターのキレが落ちたように見受けられた。これも小手川が内側に2~3m入っていればサイドをより生かせたと考える。

 

小さなズレが味方のズレを生んでしまうので、繊細なポジショニングを心掛けないといけない。難しい挑戦をしているが、チーム全体で細かなディテールまで詰めていくことができれば、必ずよい結果が待っていることだろう。じっくりと継続をしてチーム力の底上げをしてほしい。

 

山形の印象

木山監督の対策は見事で、濃いゲーム内容となった。2得点ともセットプレーからなのが気になるが、これから調子が上がれば怖いチーム。

選手では小林成豪が目立った印象。前半から相手の逆を取る上手さを見せて先制となるPKを獲得。大学最後の関西選手権決勝で見せたドリブル突破からのアシスト(5:57~)のようなキレは健在で、Jでも通用する武器がある選手はやっぱり観てて面白いと感じた。

 

 試合を終えて

予想外が続いたゲームだった中でも得意の形から2得点。先発もフォーメーションも変えて、先手を取られても食らいつく事ができた。これはしっかりと積み上げができているからこそだと感じるし、これを勝ち点0で終えるか1で終えるかで天国と地獄の差がある。チーム力の底上げになったゲームであったからこそ今年こそJ1に行きたいと改めて思う試合であった。

 

【ハイライト】2018明治安田生命J2リーグ第2節 大分トリニータ vs モンテディオ山形 - YouTube