【大分】vs千葉(H) 歴史的勝利!〈J2 第7節〉
天敵、千葉。
はじめての対戦は自分がまだ小学生だった2003年。ホームのビッグアイで行われた初めてのJ1のリーグ戦の相手は、ジェフ。ワクワクしながらスタジアムに行ったら0-4でボッコボコにやられて「J1怖ぇ~」とトラウマを植え付けられたのを未だに覚えている。そこからリーグ戦では26度の対戦で2勝4分。カップ戦では6試合で2分。天皇杯で1勝1敗。J1昇格プレーオフでは勝利したが、通算34度の対戦で4勝と大の苦手な千葉。ホームの大銀ドームでは未勝利の中で迎えた試合はまさかまさかの大勝となった。
この日のメンバーは以下のように。
大分トリニータ
前節とスタメンは変わらず。竹内、川西、そして三平がベンチに入った。
ジェフユナイテッド千葉
対するジェフも3バック。今では4-1-2-3だったが、システム変更をした讃岐戦で6-1の快勝。続く京都戦も2-0で勝利。良いイメージをもって大分に挑む。前節からボランチに佐藤勇人、シャドウに町田也真人、CFにラリベイが先発に。前節はボランチであった茶島雄介がシャドウに入った。
ハイプレスは突然に
前半開始から千葉はハイプレスを仕掛けてくる。シャドウの町田と茶島が左右のCBの刀根、福森にプレスをかけ、CFのラリベイがCBの鈴木に寄せる。それだけでなく、GKの高木に対してもラリベイがプレスに行き、鈴木をボランチの佐藤勇人が寄せて、大分のビルドアップを完全に塞ぎ、苦し紛れに蹴ったボールを両サイドとボランチの熊谷アンドリューが拾う。また、ハイラインをひいて積極的にオフサイドトラップを仕掛けることもしていたため、サンドバッグ状態に。
大分は普段フリーマンになるはずの刀根と福森が良い形でボールを受けることができないため、攻め手を失ってしまう。しかし、ビルドアップのためにボランチの宮阪や丸谷がDFラインに下がってしまうと、チームの重心がより下がり、ハーフコートに押し込まれると判断してか、降りることはしなかった。
脈絡のない得点から掴んだ流れ
前半は、千葉がボールをキープして得点機を探し、大分がボールを持てばハイプレスを仕掛ける。これが機能してか、千葉のポゼッションは7割にもなっていた。そんな中、何気ないエベルトのバックパスを受けたGKのロドリゲスがダイレクトでボールを蹴ろうとするが、まさかの空振り。プレスに行った林がボールを奪って無人のゴールへ流し込み、タコ殴りにされていた大分がワンチャンスをモノにして先制に成功する。
千葉は失点後もボールを保持するスタイルを変えなかったが、前線のプレーが単調になり、時間とともに大分DFが対応できるようになっていた。また、前から捕まえてくるハイプレスを逆手に取り、GKからボランチのように一つ飛ばしたパスを意識してプレーをしていたように感じられた。
ボールを持って攻める千葉、それを守る大分という形で前半が終了。
しっかりと対応して叩きのめす
後半開始から千葉は杉山弾斗と佐藤勇人を下げて、矢田旭と為田大貴を投入。単調になった前線に工夫を加えるためにフォーメーションを4バックに変更して以下のように。
斜めにロングボールを蹴って左右の揺さぶりをかけて、空いたスペースを突くことを意識していた様に思われる。
58分には裏に抜けた町田が、不用意に飛び出した高木駿をかわして無人のゴールへループシュートを狙うが、最後の砦、 クロスバーに当たる。大分にツキがあった。
このシーンの直後に大分は2人の交代。61分に馬場→清本、62分に林→伊佐。フレッシュな選手を前線に入れて「もう1点取るぞ」とメッセージ。
69分には清本が枠内にシュートを打ってCKを得て流れを掴むと、サイドに流れた伊佐からのマイナスクロスを星が決めてリードを2点に。その3分後には清本が決めて一気に3点差。89分には後藤と交代で入った川西がペナルティアーク中でキックフェイントからしっかりコースに蹴り4-0に。
エイプリルフールに嘘みたいな完勝で大銀ドームで天敵千葉に初白星をあげた。
システム変更を見逃さなかった大分
この試合、後半開始から2枚替えをしてきた千葉。ここで大分は、相手の弱点が明確になり、チャンスを増やすことができた。
後半の千葉の弱点はアンカー脇。攻撃に重きを置いたため、熊谷アンドリューの両脇が広く空いていた。また、トップ下の町田、矢田の守備意識も低く、大分がカウンターを仕掛ければ千葉は4バック+アンカーの5枚になる。マークが緩くなった2シャドウが起点になりチャンスを作った。
また、大分は立て続けに2枚を替えた事により強度を増しただけでなく、シャドウを相手サイドバックにぶつけて、アンカーを釣り出す動きを加えたのだ。これにより逆サイドに展開をした時にも相手に後手を踏ませる事に成功した。
千葉の印象
昨年最後の7連勝はなんだったのか……リスク管理ができておらず、守備での約束事があまり見えなかった。あのサッカーで中盤の底をやるなら90分ボールを刈れる選手でなきゃキツいなぁという印象。そしてトップ下の守備意識が低いため、アンカーだけの問題じゃないのがまた悩みどころか。前から押し込んでいくサッカーは観ていて面白いが、それを往なされた時の策が持てるか否かでシーズンの結果はだいぶ左右されそう。
選手では広島時代から好きだった茶島雄介と元大分の為田大貴はあまり印象に残らず。スキマで受けてターンができ、矢印を前に持っていける両選手。やはり守備が課題か。
そんな中で気になったのは近藤直也と杉山弾斗。近藤は前半から林とやりあって、駆け引きをしつつ高いラインをコントロール。経験がないとどっちも難しい仕事をやっていた印象。杉山は高卒ルーキーながら身体が強く積極的に仕掛けるのが印象に残った。
歴史的なホーム初勝利
リーグ戦通算で3勝目。思えば過去の勝利は大きな節目になる場合が多かった。
千葉からの初勝利は2009年。降格が決まってからの対戦だったが、この勝利によって最下位は免れた。
2勝目は2012年。森島康仁(現栃木ウーヴァ)が2得点で逆転。シーズンを6位で終えてプレーオフ進出。その決勝でも勝利し、J1昇格を決めた。
そして今年。大銀ドームではじめての勝利は過去のトラウマを払拭するかのような快勝。それも途中出場の3人が絡んでの勝利。選手層の厚さも見られた。この勝利を糧に、千葉相手にシーズンダブルをし、そしてその先のJ1昇格のためにこれからも勇往邁進をしてほしい。