Nishida's diary

トリニータを中心にいろんな試合を。

【大分】vs町田(H) 楽な試合を難しく〈J2 第11節〉

試合には勝利したが、それだけ。試合後の片野坂監督も試合後のインタビューで開口一番「ダメです。勝った気がしません。」と語気を強め、怒りを露にした。この日のトリニータはこのコメントからも読み取れるような、楽にクローズできる試合を自ら苦しい展開にしてしまった。

 

この日のメンバーは以下のように。

大分トリニータ
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前節から1枚の変更。CFの林を下げて伊佐がスタメンに。前節に引き続き、岸田がベンチに入った。

 

FC町田ゼルビア
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第8節までは負け無しで2位と好調だったが、ここ2試合は連敗。得点は取れているのでもどかしい敗戦が続いている。

メンバーは前節から1枚の変更。左サイドでここまで6アシストの平戸太貴がベンチからのスタート。そしてその位置に怪我明けの中村祐也がスタメンに名を連ねた。

 

完璧だった前半

幅を広く使った大分、圧縮する町田という真逆の両チームだったが、序盤から幅を使う大分が主導権を握る。前半開始すぐに右CBの刀根からナナメにロングボールを送ると、ペナルティエリアの左で馬場がダイレクトシュート。枠には飛ばなかったが、狙い通りの形からチャンスを作る。続く3分にも右WBの松本から同じ形でボールを入れると、町田の右SB、大谷尚輝の頭上を越えて馬場の足元へ。胸で1トラップからゴールへ流し込む。大分が幸先よく先制をする。

ここまでセットプレーから7点とリーグトップの町田のコーナーにもマンマークで対応してピンチを防ぐと、12分に選手間の距離を圧縮した町田の裏に福森がロングボールを送ると、伊佐が飛び出す。これを町田CBの深津康太が倒してしまい、決定機阻止として退場。町田は守備の要、そしてセットプレーのターゲットを早くも失ってしまう。

町田は10人になって、吉濱遼平→藤井航大。FWを1枚削り以下のような形に。
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10人になった町田だが、ボランチのロメロフランクが積極的に前線に顔を出してチャンスを伺う。1人減ったことにより、大分の3バックに対してFWとSHが対面する形になったため、意図せずにプレスをかける相手の整理ができた。それに連動してダブルボランチが、宮阪や丸谷のパスコースを消すことができた。

これに慌てた大分はパスミスが多くなると、27分に後藤にアクシデント。左足の違和感から清本と交代してしまう。

このままズルズル後退するかとも思われたが、町田の前からのプレスをワンタッチでのパス交換から交わして、中盤で受けた清本から左サイドへ大きく展開すると、フリーの星がドリブルで持ち込んでパス。これを伊佐が落として馬場がシュートを決めてリードを広げる。

町田は前からのプレスができずに撤退し、傷口を最小限に留めようとするも、大分の勢いは衰えない。前半終了間際には、宮阪からのロングボールを星が左サイドを駆け上がり、マイナスのパスを馬場が流し込んで3点差。馬場のプロ初のハットトリックは、トリニータのJ2ホーム通算300点目の記念となるゴールになった。

このまま前半は3-0で終了。後半もこのままの勢いで大勝かとも思われた。

 

徹底したDFラインいじめ

プラン通り、それ以上の前半になったトリニータ。そこには明確な狙いがあった。

大分がボールを持つと、町田はボールサイドに人を寄せて密集地帯を作り、高い位置でのパスカットからショートカウンターでゴールを狙う。これは試合前からわかりきっていた。

前節の町田vs山口では山口の3トップの左、高木大輔がロングボールをフリーで受けてチャンスを作る場面が多かったことから、大分も幅を使ってカウンターからチャンスを作る狙いがあった。

幅を使ってのカウンターを成立させるために、中盤の宮阪だけでなく、フリーマンになる左右のCBがフリーならば、積極的にロングボールを入れる事を心がけた。結果として前半、刀根からの対角線上のパスからファーストチャンス、福森からのロングボールから退場者の誘発と、狙い通りの形になった。

また、両CBにフタがされた時の対策も上手くいっていた。大分の左右のCBに町田のSHが食いつくと、町田のSHとSBの間でWBの星や松本が受けて、SBとCBの間にシャドウが飛び出す。逆サイドのシャドウはファーサイドに流れてフリーな状況を作っており、ボールを受けたWBは状況に応じて左右どちらかのシャドウを使ってシュートチャンスを作っていた。

これが顕著に見られたのが左サイド。星がSBの大谷を釣り出して、馬場がその裏を狙う形から3点も生まれたのだから、徹底的に相手のDFラインに後手を踏ませる事ができた。

 

走力に圧倒されて

圧倒した前半から一転。後半開始から、雲行きが怪しくなった。

47分にCKの流れから、井上裕大のクロスを酒井隆介がヘディングで合わせて1点を返す。

町田は1人少ない状況でも前半と同様に幅を広げることはせずに、無理だと思えば、プレスのスタート位置を下げて、裏のスペースを消す意識をしたものになった。56分に中村祐也鈴木孝司、67分に杉森考起→平戸太貴と前線にフレッシュな選手を入れて、あくまでも前からのプレスで対応というのは変えず。入替戦でのゴールなどで"大分キラー"と言われる鈴木は第2節以来の復帰戦。平戸はここまでリーグトップの6アシストと、得点に絡める選手が入った。

大分は数的優位を生かして左右に揺さぶりをかけて、サイドにボールが入っても無理な仕掛けはせずにバックパスをして作り直す。

67分にカウンターから、伊佐が右サイドの深い位置から折り返し、ゴール前中央で馬場がダイレクトで合わせるも枠の上。4点目とはならない。

チーム全体が狭い幅の町田を大分が我慢強く揺さぶると、70分ほどから異変が表れる。後半途中から左SHでプレーをしていた中島裕希の脚がつり、75分にはロメロフランクが腿の裏を押さえると、そのままベンチへ。交代枠を使いきっていたため、町田は9人でプレーをする事に。

その後に大分はハットトリックの馬場を下げて三平を投入。「4点目をとるぞ」とメッセージを受けた三平は、裏抜けをしてDFラインを下げさせる意図も感じられたが2回連続でオフサイド

攻めて相手をサンドバッグ状態にしたかった大分だったが、ここから町田が執念を見せる。84分に右サイドの大谷から平戸がヘディングで合わせて1点差まで詰め寄る。これをみてか89分に大分も最後のカードを切る。

左サイドの星を下げて竹内を投入。第3節以来の出場を果たすと、今季はじめて福森が左WBに入り、以下のような形に。
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守備的な布陣で試合を終えようとする意図があった様に思われる。試合ももうアディショナルタイムを残そうかという時間で、自陣に押し込んできた町田からボールを奪うと、清本がドリブルで駆け上がり伊佐にパス。ワントラップからGKとの1対1を冷静に決めて再びリードを離し、今度こそ勝ちを確信した大分だった。が、中盤左サイドで刀根がファールを取られてしまい、FK。奥山の蹴ったロングボールを藤井がファーサイドでヘッド。これがゴールに吸い込まれて4-3に。試合はなんとか逃げ切ったものの、モヤモヤするような内容になってしまった。

 

町田の印象

 自分たちのやりたいサッカーの弱点を突かれて、前半早々に失点。また早い時間に深津も退場と苦しい展開になった。後半にはロメロフランクも負傷でラスト15分を9人で戦ったが、そこから2得点。相馬監督も「リスクを負って戦った姿勢は尊敬に値する」と話したように、選手全員がサボらず走り続けた事が最後の最後までゲームをわからなくする要因となっていた。

いつも大分はセットプレーから町田に失点をしている印象だったが、この日もその形から2失点。やっぱり町田は苦手だなぁ、と感じるゲームだった。

 

課題は残れど

片野坂監督は試合後のコメントで

こういうゲームをするのは、僕は本当に嫌いです。勝点3は取ったが、あまりうれしくない。結果だけでなく内容も伴ったゲームをしていかなくては、われわれは42節終わったとき目標を達成するために、一つひとつ目の前の試合に対してやっていこうと話している。いまは首位かもしれないが、こういうゲームをしていると、必ずあとで痛い思いをすることになる。

町田戦 監督コメントより

と話したように、内容が伴わなかったゲームになってしまった。しかし、結果として勝ち点3を手にしたのも確か。内容に課題が残りつつも、勝ちきった事は本当に大きい。42試合が終わった時に目標である「J1昇格」を決めるためには内容をより充実させないといけない。

このゴールデンウィーク3連戦の残り2試合は大宮戦、新潟戦と元J1勢との連戦。勝ち点をしっかりと奪い、昇格に向けて独走に入るために、もう一度ここから立て直してほしい。

 

【ハイライト】2018明治安田生命J2リーグ第11節 大分トリニータ vs FC町田ゼルビア - YouTube