Nishida's diary

トリニータを中心にいろんな試合を。

【奈良クラブ】vsFC今治(H) 「J未満」のクラブのしあわせとは〈JFL 1st第8節〉

GWの連戦はJリーグだけでない。「アマチュア最高峰」のJFLもまた、連戦を戦っている。今回はJ空白県のひとつで、Jリーグ入りを目指す奈良クラブを観に奈良県橿原市へ。「J未満」のしあわせとは何かを感じられれば、と思い足を運んだ。
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この日のメンバーは以下のように。

奈良クラブ
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リーグ開幕から3連勝と波に乗っていたが、そこから4連敗。ここ数年、Jリーグを目指してはいるがJFLで中位に甘んじるなど成績は芳しくない。近年で名をあげた選手に、ベストイレブンと新人王を獲得した茂平(現北九州)や、昨年のベストイレブンと得点王に輝いた坂本修佑(現沼津)らが挙げられる。

 

FC今治
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 ここまで3勝2分2敗とまずまずな成績の今治JFL加入2年目ながら、オーナーに岡田武史氏(元日本代表監督)、監督には吉武博文(元U-17日本代表監督)と、主にコーチ陣にビッグネームが揃う。

 

逃げ腰で攻められて

前半開始早々にゲームが動く。GKのロングボールに横野純貴が頭で競り合うと、こぼれ球は藤井貴之の前に。ペナルティエリアの前から豪快にドライブシュートを蹴りこみ奈良クラブが幸先よく先制。前半中頃にも藤井がシュートを放つなどしたが、それくらい。基本は両SH、CFの3人が近い距離を取るが、ボランチのサポートも少なく、SBの押し上げもまちまち。明確な決まり事が見えてこないと、今治に流れが向く。奈良のSBの前で右WGの佐保昂兵衛がボールを受けるとボールを下げて、上村岬がクロス。GKとDFの間で有馬潤がワンタッチで決めて同点に。37分には左サイドを小野田将人が上がり、ペナルティエリア内にカットインをすると奈良DFが思わずファール。このPKを小野田が決めて逆転。試合をひっくり返す。

 

数は増やせど

後半に入り、奈良クラブはベタ引きの5バックから両サイドを1列上げて3-4-3に。ボールに関わる人数を増やすが、流れは変わることはなかった。

後半開始直後には、ボランチがボールを奪われて3対3の状態に。この場面でのシュートはGKの藤吉皆次朗がセーブをするが、これに象徴されるように、高い位置を取るようになった奈良のサイドを今治の3トップが上手く突く場面が多く見られた。それでも瀬戸際で失点が増える事はなかったが、80分にミスから上村岬に決められると、3分後にはボランチのロストから有馬潤がこの日2点目を決めて1-4。奈良は先制するも大敗し、5連敗となった。
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チームではない何か

この日の奈良を見ていると、やりたい事ばかりを優先して、やるべきこと、しなければいけないことがほぼ全くできていなかった。

顕著だったのがボランチ。真ん中に2人居るが、DFからボールを引き出す動きも少なく、サイドと連携を取るワケでもなし。DFは仕方がないから位置の確保のためにロングボールを入れて起点を前線に作るも、それだけ。それにより奈良の攻撃は中盤の省略しかできず、結果としてボランチが終始漂うだけだったのは奈良にとって本当に痛手だった。

WBも後半は攻め上がるばかりで裏のスペースのケアができない、CBは押し上げもできずにビルドアップから軽率なミスで試合を決定づける3点目を献上する。チームの状態が上向かないからといって、中盤から下の選手が揃って低調だと厳しいという印象を受けた。

一方でGKの藤吉皆次朗とFWの横野純貴はなんとか状況を打開しようと気を吐いた。藤吉は前半終了間際や、後半にビッグセーブを連発するなど、4失点ながらも良いプレーが多かった。横野はプレーに粗さもあったが、前線からプレスを積極的に仕掛けて前から行く姿勢を見せてくれた。そしてこれに連動できないのが寂しくもあった。

 

狙いどおりだった今治

一方で、逆転での勝利、それも4点も取れた今治にとっては会心の勝利だったことだろう。試合の分かれ目となったのは同点にしたシーン。5バック+2ボランチ+向慎一の8人で守る奈良に対して2センターの上村岬と小野祐輔がボランチの外に開いてボールを貰う。そこで相手のSBが釣れればWGが裏を取り、ボランチが釣れればバイタルエリアを突く形ができていた。ボランチ脇で起点をしっかりと作り、良いクロスから同点。まさに狙いどおりだったはずだろう。結果としては相手のミスから3得点だったが、積極的にWGが仕掛けていく姿は見ていてとても面白かった。

 

「J」未満のしあわせは?

奈良クラブJリーグへの参入を目指しているが、成績面で見劣りをする。JFL参入後の3年間で7位、10位、7位と、上位に食い込めていない。和柄のユニフォームや、ユニークな?応援がウケたりと「J未満」ながら話題になってきた奈良クラブ。しかし、肝心の成績がこれでは客足は離れていくだろう。アマチュアだから成績は度外視でも良いかも知れないが、あくまでも奈良クラブは「Jを目指す」クラブ。そのための情熱や必死さはピッチから伝わらなかった。

あくまでも試合結果は相手あっての事なので一概には言えないが、成績面以外でも、YouTubeなどといったSNSの活用が上手くいっていない現状で、奈良に興味を持ってもらえるかは大いに疑問に感じる。J空白県のチャレンジはまだまだ改善の余地がありそうだ。

 

 第20回JFL 1st 第8節FC今治vs.奈良クラブ - YouTube

対戦相手のFC今治のチャンネルから。

 

GW最後の試合でHondaFCに1-0で勝利し、首位のクラブに土をつけた。自力は必ずあるはず。Jリーグへの挑戦はまだ、これからだ。