Nishida's diary

トリニータを中心にいろんな試合を。

【大分】vs新潟(A) 死闘を30人で〈J2 第13節〉

昨年までJ1だった新潟相手に、今季、片野坂監督がよく口にしていた「30人で戦う」という言葉を実践。特に後半は息を飲むような、心臓が飛び出るような展開になったが、勝ち点3を手にすることができた。

 

アルビレックス新潟
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第6節徳島戦以降ホームで勝ちがない新潟だが、GWのアウェイ2連戦は山口(2-1○)、金沢(3-2○)といずれも勝利。両試合共に後半の50分と44分に得点する勝負強さをみせた。大分との勝ち点差は7。勝てば「4」差、負ければ「10」差となるためなんとしても勝ちたいところ。

 

大分トリニータ
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前節から5人もの入れ替えを行った大分。第2節山形戦以来に出場となった黄誠秀と那須川将大、今季初先発となった川西翔太、 ここ2試合をベンチからスタートしていた林容平、そして今季初出場&初先発となった國分伸太郎がスタメンに。

 

使い分けが上手くいった前半

大分は5人ものメンバーの入れ替えと、前節の大宮戦で少しだけ試した4-4-2のスタートになるかと思ったが、3-6-1でゲームに入った。

大分は試合開始から落ち着いてボールを回すと、7分に早くもスコアが動く。左サイドで那須川がGKとDFの間に低いクロスを送ると、ゴール前で林が潰れて逆サイドへ流れると、松本が右足を振り抜き先制。9分には自陣から福森がロングボールを入れると、國分が胸で落とし、林がミドルシュートを放つなど、メンバー変更による連携不足を感じる部分は少なかった。

新潟は14分、ワンツーで原輝綺が右サイドの深くを抉りセンタリング。これが大分DFの頭を越えて渡邉新太が胸トラップからゴールの上をぶち抜く豪快なシュートが決まり同点とする。

大分は同点にされるも浮き足立つことはなく、その後もボールを動かしてペースを握ると、29分に1点目と同じように那須川のクロスが逆サイドまで流れると、松本が利き脚とは逆の左足でクロスをあげる。インスイングのボールがゴール方向へ向かうと、ソンジュフンがクリアミス。これがゴールに吸い込まれて、幸運な形で再びリードを奪う。

そのまま2-1の1点リードで前半を折り返す。

 

この日の大分は、場面によってビルドアップの形を上手に使い分けていた。

相手が前からプレスに来ると、ボランチの片方がDFラインに下がり4+1の形でボールを回しつつ、低い位置からロングボールを入れていく。相手が下がり目になると、ボランチが縦から横に位置取り、3+2の形になり、より高い位置でボール回しをして前線にボールを入れる機会を伺っていた。

これまではシーズン開幕から4+1でのビルドアップをしていたが、カウンター主体のチームとの対戦では3+2でのビルドアップをしていた大分。しかし、この日のように時間によって流動的に形を変えていたのははじめてだったように思われる。結果として大分のパスをどこで抑えるかが明確にできなかった新潟は、プレスの仕掛けどころが曖昧なまま前半を終えることになった。

 

対応してきた新潟

後半に入り、新潟はメンバー交代こそ行わなかったが、プレス位置を高くして、FWのターレスがコースを限定し、左右のCBを両SHが監視、降りてくるボランチの片側を小川佳純がマークにつく形を採用していたように思われた。これにより前半よりはボールを持つ時間が多少少なくはなったが、千葉戦や金沢戦でも同じような対策をされていたため落ち着いて対応をすることができた。

ハイプレスを仕掛けた新潟だったが、それが長続きするはずもなく61分に小川を下げて矢野貴章を投入。前線でポイントを増やして押し込むことを目標にしていたか。同じタイミングで大分は馬場から清本へ。高い位置から仕掛けてくる相手の裏を狙いたい。

その2分後の63分には黄誠秀を下げて刀根を投入。新潟が矢野を投入した事に対して、前線でのエアバトルや球際を意識していたと感じた。

守備でビルドアップ対応をされた大分だったが、それよりも新潟がボールを持った時の変化に驚異を感じていたと思う。前半では深い位置までSBが持ち込んでクロスを上げていたが、後半に入ってからは浅い位置からでも前線にボールを供給して来るようになった。

前線で待つターレスは前半から競り合いに強く、前を向かせなくとも前半で一度見せたようなバイシクルシュートがあったため、大分は対応に苦労した。それに加えて高さや強さのある矢野も投入されたことにより、前線で綺麗にボールが繋がらなくとも、讃岐戦のようなスクランブルからこぼれ球を狙ってくるため65分から大分は押し込まれる形になってしまった。

それでも大分はロングカウンターから清本がダイレクトでシュートを打つなど、チャンスを作る。この場面のように、攻撃をシュートで終えることが出来ていたため、防戦一方にはならず、相手に守備を少しでも意識させることができた。

新潟は押し込むがシュートまで持ち込めないためか、田中達也とブルーノメゲネウを投入して前線をより厚くして得点を狙うが、大分が瀬戸際でボールを掻き出し続けて守り抜く。最後の最後までわからないゲームとなったが、守りきった大分が勝ち点3を手にした。

 

新潟の印象

新潟にとっては攻めて攻めて攻めまくった後半で得点ができずに敗戦。それも決勝点はオウンゴールなのだから不満が残るゲームとなったはず。個人的に感じたのは、大分のビルドアップ対策が完全でなかった事が挙げられる。新潟は3+2のビルドアップに対してボランチと両SHが圧縮して中を閉じて、WBのケアをSBがする事がゲームプランとしてあったはず。それは前半のスタートから上手く動いている事から感じられた。しかし、大分のボランチが1枚落ちて4+1でビルドアップをすると、ボランチの1枚に対して新潟が4人も寄せてバランスが崩れた。後半には修正をしてきたが、それまでに大分に与えた時間は充分だったような。

鈴木監督は日体大から今季久々にJで指揮を取るが、ここ数年は大学生の指導をしていたため、選手たちの自主性を重んじていると思う。実際、ピッチでプレーするのは選手なのだから、選手の判断、つまりは自主性が問われるのだが、新潟の選手達はその判断ができない、もしくは遅かった様に思われた。これが勝敗を分けたような気がした。

選手で気になったのは渡邉新太。得点も素晴らしかったが、まずボールを持ったら仕掛ける事を意識しているようで、見ていてワクワクする選手だった。他にも原輝綺や戸嶋祥郎といった若手もスタメンに名を連ねていてこれからが楽しみだと感じた。セカイのサカイこと坂井大将も頑張ってスタメン復帰を目指して欲しい。

 

30人で掴んだ勝利

スタメンは変われどやることは変わらない。それを見せてくれた大分。選手が変われば個性も変わる。星のような力強い突破はないが、どこからでも高精度なクロスを上げられる那須川。丸谷のようにバランスを取りつつも、ボールを受けると積極的にヌルヌルッとドリブルで仕掛けられる川西。久々の出場となったが、前回の出場で課題だった攻撃面でアピールをできたソンス。今季初出場となったが、前線からの連続したスプリントで守備にも貢献した國分など、各自の「色」を出しつつ、勝利できた。

それだけではない。これまでは押し込まれるとそのまま失点となる場面で、粘り強く対応して後半は無失点にできた。 昨年までJ1だった新潟を相手にここまでできたのは本当に大きく、これからに繋がるものだった。

この勝ちは勝ち点3以上の価値がある。そう思わせてくれるゲームだった。

 

【ハイライト】2018明治安田生命J2リーグ第13節 アルビレックス新潟 vs 大分トリニータ - YouTube