Nishida's diary

トリニータを中心にいろんな試合を。

【大分】vs甲府(A)派手にやられたが〈J2 第16節〉

スコアを見ると2-6。ボッコボコにやられたが、そんな試合でもゲーム中でしっかりと修正をして、自分たちのしたいゲームに引き込む事ができた。

 

この日のメンバーは以下のように。

ヴァンフォーレ甲府 
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 5月に入り、吉田監督からレノファ山口で指揮をした上野監督へと変わって、ここまでリーグ戦4連勝。最高の状態で大分を迎える。怪我のジュニオール・バホスの変わりに金園英学が入り結果を残すなど層も厚い。

 

大分トリニータ
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前節から2人の変更。右CBに黄誠秀から刀根亮輔、CFに林容平から三平和司が入る。ベンチには國分信太郎が入った。通算では甲府に勝ち越しているが、ここ6回の対戦では2分4敗と勝てていない。

 

 

"入り"が結果を決めてしまう

勝ち点の行方はすぐに決まった。3分、4分、6分と試合の入りで失点。あまりにも早い連続失点で大分は早くも敗戦が決まってしまったのだ。 

3分は自陣PA前で丸谷拓也から宮阪政樹へパス。宮阪は鈴木義宜へバックパスをするも、短くなり、金園英学に奪われて1失点。

4分は中盤で丸谷から宮阪へ横パスを送るもズレて小塚和季にカットされてドリブルからGKとの1対1をループシュートで決めてあっさり2失点。

6分には右サイドを堀米勇輝がドリブルでPAに侵入すると小塚へパス。小塚がフリックして佐藤和弘がシュートを打つとDFに当たりコースが変わり3失点。

出鼻をくじかれた大分は、CBやボランチから前へのボールがすべて相手に渡るという悪循環に。そんな大分を尻目に甲府はまたまた追加点。GK高木駿から前線の三平和司へとロングボールを送るが、小出悠太がカット。小出はカットした勢いで丸谷、宮阪の間を抜いて金園へパス。金園のシュートはバーに当たるが、こぼれ球を小塚がパスして小出が決めて4失点目。まだ15分しか経っていなかった。

大分も、CBからボランチを飛ばしてシャドウへクサビを入れてチャンスを作るが、甲府ボランチやDFの網に引っ掛かり、連続して攻める場面はなかった。

27分には中盤左サイドをエデル・リマがドリブルで持ち上がり、PA付近で小塚とワンツーで抜け出してニアサイドにシュートを決めて5失点目。

 

大分が崩壊したワケ

前半30分を待たずに5失点を喫した大分。そこには多少の不運もあったが、甲府が準備した「ボランチ包囲網」と「連続したプレス」、そして「WBのマンマーク」が効いたからだ。

 

まずは「ボランチ包囲網」について。

大分は3バック+2ボランチだが、ボランチの片方がDFラインに落ちて4+1の形になる。すると残ったボランチはパスコースを確保するために自然に真ん中に位置取りをすることになるが、そのときに甲府は「ボランチ包囲網」を発動。大分のボランチとDFラインの間でCFの金園がパスコースを消して、シャドウの小塚と堀米がボランチの脇を固める。その後方で佐藤と島川俊郎が構えて待つ。これにより3バックと降りてきたボランチの計4枚は横パスしか選択肢がなくなり、ボランチは周りに5人も囲まれているため、ターンする時間もスペースも消される事となり、ワンタッチでボールを戻すしかなくなる。これにより大分のパスの出所を抑えて、カウンターのリスクを減らした。

 

次に「連続したプレス」について。

囲まれたボランチはバックパスしか選択肢がなくなりボールを下げると、甲府の選手たちはそこへ躊躇なくプレスを仕掛けてくる。

ボランチが無理に前を向くと甲府ボランチがすかさずプレスをかけてバックパス。DFはボールとともにプレスに来るシャドウの小塚や堀米にパスコースを切られながらGKに下げるか、苦し紛れのロングボールを入れるしか選択肢が無くなった。

 

この「ボランチ包囲網」と「連続したプレス」に晒された大分は、ボランチからの長短のパスを遮られて、DFラインからの長いボールしか前線に入れる術がなくなっていた。

 

甲府はこれでパスの出し手を抑えただけでなく、「WBのマンマーク」により守備の安定とリスク管理を行った。

大分がDFラインでゆっくりとボールを回すと、両サイドのWBが前に上がり4-1-5や4-1-4-1のような形になる。4バックの相手ならば、そこに5人をぶつけて数的優位をつくり、両サイドを使ったダイナミックな攻めができる。金沢の柳下監督が言っていたように、4バックに対してはWBがミソになるのだ。しかし、甲府は3バック。数的優位にはなりづらくなってしまう。次善策となるボランチからの大きな展開も封じられてしまうと、ボランチ脇をWBが埋めざるを得ない状況になる。そこに甲府のWBが対面する選手に前を向かせなければ、バックパスしか選択肢は無くなり、より前線が孤立してしまう。

 

大分のボランチを抑えて、WBに前を向かせない事で、重心を下げさせる。前からボール狩りをすることができたので大分の3-4-2-1の骨格を殴ることができたために、後手を踏ませ続ける事ができた。

 

少しの修正で"らしさ"を取り戻す

30分も経たずに0-5と大きく離された大分だったが、少しの修正を加えて、建て直しに取り組んだ。

WBが前を向けない、ボランチは囲まれる。ならば左右のCBを押し上げて、WBとボランチとの距離を縮める。これにより大分は落ち着きを取り戻し、攻撃にも得点の匂いが出て来た。

左右のCBを上げることにより、福森直也と刀根がボールを奪われると、即決定機につながるリスクを孕んでいたが、チームのコンセプトを守りつつボランチ包囲網とWBのマンマークをどうにかするには、それしか手がなかった。

効果としてはボランチの後ろではなく、横や斜め後ろに構えた事により、連続してプレスをかけられても、ゴールへ一直線ではないので多少の時間を作る事ができる。また、CBがボールの出し手になるため、甲府はそこへのチェックをするためにどうしてもシャドウの小塚や堀米が左右に出ることを余儀なくされるため、ボランチ包囲網を崩す事ができる。

WBとの距離も近づくため、WB→CB→WBとワンツーで相手WBとCBのスペースを付くことができる。これにより大分は落ち着きを取り戻すと、その位置取りを高くした福森からのスルーパス馬場賢治が上手く決めて1点を返す。前半はこの後スコアは動かずに1-5で後半へ。

 

主導権は握るものの

大分は後半の頭から宮阪、三平を下げて川西翔太と伊佐耕平を投入。ボランチの位置で相手を剥がせる川西と、ボールの納めどころとして伊佐を入れたことで、後半はより大分が攻勢を強める。

54分には川西がサイドのスペースにスルーパス。松本がドリブルからマイナスのパスを送るがDFに阻まれてコーナーに。後藤のCKを伊佐がニアで合わせてファーの馬場がヘディングで合わせようとするもGKの河田晃兵にキャッチされゴールならず。

その後、甲府は堀米→田中佑昌、小塚→高野遼とシャドウを下げて、大分は馬場→清本拓己を投入。清本の投入後、最初のプレーで松本のスローインを清本が落として松本がクロス。相手のクリアが甘くなり、星がボックス内の後藤へパス。後藤は右足でファーサイドに巻いたシュートを放つと、ゴールに吸い込まれて2点目。

甲府は失点から6分後に金園に変えてリンスを投入すると、88分にCKからヘディングで決めて2-6となり、試合終了。甲府は6年ぶりの4連勝をクラブ最多タイの6得点で飾った。

 

甲府の印象

 大分対策を満点の回答でタコ殴りにした甲府。やっぱり元J1なだけあって上手いな、落ち着いてるなと感じた。
選手では小塚と堀米のシャドウがボールを持ってドリブルを仕掛けられるし、判断も良いし本当に厄介だった。また、仕上げのリンスボトル販売の日にしっかりと仕上げてくるリンスは嫌らしかった。

ただ、前半早くに点差がつきすぎたため、この試合だけであれこれは語れないな、という印象が強い。

 

大事なのは次

悪夢のような30分から建て直し、後半は意地を見せた大分。6失点はいただけないが、「やられた!」というよりは「そんなこともある……」といったプレーが序盤で続き、それを確実に仕留められたから大きく点差がついた印象が強い。(仕上げのリンスはなんとか防いでほしかったが。)42試合でこのような玉突き事故のような連続失点をすることはあるだろう。それがたまたまこの試合だった。そう感じる。

点差がある程度つくと、集中を切らしてしまい内容もグダグダになりがちだが、この日の大分は修正を加えて対応してみせ、2点を呼び込んだ。また、2点目の後の86分の被カウンター、2対2の場面で、最前線の伊佐が全力ダッシュでボールを掻き出すシーンは本当に痺れた。こういった細かいところが最後の最後になにかを呼び込んでくれるような気がする。

次節は苦手の熊本戦。ここを勝ち点0で終えるか3で終えるかで、これからの戦いは大きく変わるだろう。

 

【ハイライト】2018明治安田生命J2リーグ第16節 ヴァンフォーレ甲府 vs 大分トリニータ - YouTube