【大分】vs松本(A) 手堅く、最後まで〈J2 第19節〉
勝ち点差は僅かに「3」。得失点差はなし。松本が勝てば順位が入れ替わり、大分が勝てば勝ち点差がまた開く。まさに「6ポイント」のゲームは大分が手堅く勝利した。
この日のメンバーは以下のように
松本山雅FC
ここまでホーム負け無し。そして最近のホーム5試合は無失点。怪我人がちらほら出ており、この日はFWの高崎寛之がベンチスタート。
大分トリニータ
前節は21位の愛媛に敗戦し、首位陥落。そこから4人の変更をした。契約の関係で宮阪政樹がベンチ入りできず、岸田翔平、伊佐耕平はベンチスタート。黄誠秀はベンチ外に。
3バックの右に丸谷拓也を下げて、 ボランチは小手川宏基と川西翔太が組む。左のWBに星雄次がはいり、松本怜は右サイドに戻った。FWには藤本憲明が3/17東京V戦以来の先発に復帰と大きく入れ替えを行った。
前節の修正をしっかりとできた前半
大分は前半早くの7分に失点をしてしまう。
左右を揺さぶり、左サイドからの星のクロスが流れて逆サイドの松本がボックス内の深い位置でクロス。これが松本DFにあたると、前田大然が自陣深くでボールを回収してドリブルを開始。松本の援護のために高い位置にいた丸谷がぶち抜かれ、カバーに鈴木義宜と刀根亮輔、小手川が行き、逆サイドがポッカリと空いたところに前田直輝に決められて失点。前田大然の速さで守備が完全に後手を踏まされた形になってしまった。
しかし大分はボールを持たれる、奪われると前線から球際に激しく寄せ、ボールを保持すると中盤から下でボールを落ち着かせて、バタつかない。
前節はボールを持っても相手DFラインに5人をぶつけることができずに攻めあぐねたが、この日は両サイドを直接5人ぶつけずに、WBには幅を取らせることと、ボランチとの距離を離れすぎないようにすることを意識していた。
いつもならこのようにDFラインに5人を直接ぶつけるが、
この日はWBを低い位置で起用。
これに対して松本山雅FCは、まずはシャドウの後藤優介、馬場賢治にチェックにいくのを第一にしており、左右のスペースはそこまで気にしない。松本山雅FCの3バックは空中戦に強いので、中でしっかり締めればよい。という考えだったのだろう。実際、大分のサイドからのクロスは精度が高くなく、それほど脅威に感じていなかっただろう。大分もこれは折り込み済みであったようで、ウラ抜けを得意とする藤本を起用することで相手DFラインを下げる意図を持って、シャドウが死なないようにしていた。
そして前半22分。DFラインからウラへのボールに藤本が飛び出してトラップしようとしたところで岩間雄大に倒されてしまう。岩間のこのプレーを決定機の阻止に当たるとしてレッドカード。松本山雅FCは残り70分を10人で戦うことになる。
1人少なくなった松本山雅FCは、先制点を挙げた前田直輝を下げでDFの浦田延尚を投入。3-4-2の形でFWを1枚削った。
33分に大分のCK。後藤がショートコーナーを選択し、一旦ボールが松本怜に預けられている間に混戦のボックス内で浦田が刀根を倒したとしてPKを獲得。後藤がしっかりと決めて同点に。
40分には中盤で馬場が右足アウトサイドでDFラインのウラにボールを出すと後藤がボールを残して藤本にマイナスのパス。これを藤本がしっかりと決めて逆転に成功。
よい形で、また数的優位を生かして前半の内にリードを保って折り返す。
数的優位を生かして
後半に入り、松本が多少形を変更。
攻撃では3-3-2-1とボランチを1枚削り、
守備では5-3-2、もしくは永井龍がサイドに流れて5-4の形でブロックを形成。
前田大然を内側からサイドに張らせて、パウリーニョが前後に動いて攻守を繋ぐ。
49分に丸谷から藤本へロングボールが渡ると、今度は當間建文が手を掛て倒してしまいイエローカード。同じような形から大分はいい位置でFKを獲得。このFKはクリアされ、続くCKも中でファールがあったとして松本山雅FCボールに。このときに、立ち上がった守田達弥に藤本の肩が当たる大袈裟に倒れてファールをアピール。結局カードは無かったが、ボールがないところでも様々な駆け引きがあった。ホームの大声援を背に、異様な雰囲気の中でゲームが進む。
66分に大分が動く。前線で精力的に動き回った藤本からボールがより収まり機動力のある伊佐を投入。この時間から大分のチェックが緩くなり、前田大然の速さを受け身で対応する形になった。
これを見て両チーム共に動く。大分は馬場から三平和司に変えてゲームを落ち着かせようと試み、松本はパウリーニョと永井を下げて工藤浩平と高崎寛之を投入。2枚変えで同点にするため攻撃面でフレッシュな選手を入れた。
それでも松本山雅FCは攻めあぐねると、パワープレーを選択。
これに対して大分は、チームの重心を下げてロングボールでチャンスを伺い、松本は工藤を起点に高崎のポストプレーから攻める。
83分に、高木駿からのボールをを川西がトラップミスから相手に奪われたのを再び奪い返してドリブルで運び伊佐へパス。ボックスの外から放ったシュートは守田に弾かれるが、三平がこぼれ球を押し込んでリードを離すと、その2分後にも川西のスルーパスに後藤が抜け出して4点目。その後もパワープレーに晒されるが、後藤から竹内彬を投入して守備を補強。これ以上失点を増やすことなく4-1でゲームをモノにした。
松本の印象
前半で退場者が出てしまい、ガッツリ組み合ってのゲームにはならなかったのは心残りだった。松本の選手たちの当たりの強さは脅威であったが、この日はその強さが裏目に出てしまったようだ。
選手では前田大然と高崎寛之が印象に残った。前田大然は脚の速さを生かしての裏抜けだけでなく、守備で連続したプレスができるので、大分のように後ろで繋ぐチームにとっては脅威であり続けた。高崎は高さ、強さとポストプレーで周りを生かした。この日のようなコンタクトの激しい試合での駆け引きで嫌な選手であり続けた。
試合後のDAZNのインタビューで反町監督は審判の判定について腸が煮えくり返っていると、不満を露に。昨年は20試合で8度の退場者を出し、1試合あたり0.4人の退場者が出る審判で、松本山雅FCも3試合中2試合で退場者が出た。アセッサー、マッチコミッショナーが正確なレポートを書いてくれないと日本のサッカーは良くならない。1試合あたり0.4枚、JFLでも0.3枚も退場者を出す審判はいかがなものか。このままではサッカーではないし、スポーツでなくなってしまうと話していた。選手を守るために審判を槍玉に上げるのは度々みられる事だが、果たしてそれは好ましい事なのかは大いに疑問に感じた。
ファールで流れが大きく変わってしまったのは間違いないが、その原因を審判に擦り付けるのは違うと感じる。1試合あたりの退場者なんて、ゲームの内容や個々の退場の場面を観なければフェアに語れない。「よく退場者を出す審判だぞ」というのを知っておきながら「どのような場面でカードを提示するか」について話していないから退場者が出るのではないか。それなのに自分たちは判定で恵まれてない!と不満を言うのではお門違いであるし、クラブのイメージにも大きく関わるのではないか?1国のプロの監督が公の場でレフェリーを批判するのがまかり通ってしまうなら、それこそスポーツではなくなってしまう。負け惜しみとしても見苦しい限りだ。
悪い流れは作らずに
判定によって大きく流れが来た大分は、連敗をせず、よい形で福岡との九州ダービーを迎える。ビルドアップの変化のために丸谷のCB起用したり、WBの動きの工夫、微調整など挑戦をしつつ勝ちが多い充実した今、迎えるダービーはとても楽しみだ。前半戦ももう残り2試合。よい形で後半戦に臨みたい。