Nishida's diary

トリニータを中心にいろんな試合を。

【日本代表】vsコロンビア 不要なリスクを抱えつつ〈ロシアW杯 グループH 第1節〉

 まさかまさかのワールドカップ初戦で勝利。4年前にボッコボコにされたコロンビアにリベンジを果たした。しかし、なぜだろう。手放しで喜べない。どこかで「次のない戦いをみている」気分である。

再現性のない成功。それを素直には喜べない。だがしかし、日本代表の底力、尻に火がついてから何とかしようという気迫が感じられた。「気持ち」での勝利なのかもしれない。

 

この日のメンバーは以下のように。

日本代表
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西野さんに変わってからの3試合。最後の最後で出た「トップ下、香川」を軸にしたメンバー構成となった。そして最後まで隠していた酒井宏樹の先発。多分こっちはバレてたとは思う。紆余曲折あったが最後に最適解を導きだしてくれたことで一先ずはメンツを保った。

 

コロンビア代表
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こちらも日本と同じ4-2-3-1。4年前にトラウマになったハメス・ロドリゲスはベンチスタート。試合前のアップでも軽めにしか調整しておらず、コンディションの悪さが伺えた。

しかし、ハメス以外にも右サイドのクアドラード、FWのファルカオと強力な前線に日本はどう対処するのかが問題になるだろう、というのが試合前の見立てだった。

 

いきなりのカミカゼ

日本代表は4-4-1-1で守り、中からやられない事を意識していたと思われる。一方のコロンビアはサイドに幅を取らせてそこからの打開を考えていたようだ。2分にコロンビアは左サイドからクロスを送るが、ブロックをされて香川がクリア。これに大迫がウラに抜けてコロンビアGK、オスピナと1対1になりシュート。これはブロックされるが、こぼれ球に香川が詰めてシュート。これをペナルティエリアカルロス・サンチェスが手をだしてしまい、サンチェスは決定機阻止で退場。日本はPKを獲得する。これを香川がしっかりと決めて、日本は6分に先制をする。

1人少なくなったコロンビアは、選手交代はせずにキンテーロを1列下げて4-4-1へと変更。
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数的優位になった日本だが、ここから稚拙なプレーで流れを引き寄せられない。ボールを持つと縦に仕掛けたり、やや難しい縦パスを入れて簡単にボールを奪われてカウンターを受けてしまう。相手が自陣にブロックを作って待ち構えているのに、それを何度も繰り返し、ピンチを招いてしまう悪循環に陥ってしまう。

リードを奪って数的優位なのに浮き足だった日本が落ち着きだしたのは20分を過ぎてから。この時間になってやっと相手が高い位置から仕掛けてこないと気づいてボールを回し始める。

日本が無理に仕掛けてこないと気づいたコロンビアは、31分にクアドラードを下げて、ボランチバリオスを投入。サイドにキンテーロが回った。
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この交代から、コロンビアにボールを回される。ジリジリと日本サイドに入ると、37分に長友のクリアが真上に上がり、落下点に長谷部とファルカオが競ると、ファルカオが倒れてファールの判定。日本は抗議するも判定は覆らずにペナルティエリアの外でFKを与えてしまう。このFKをキンテーロが壁の下にゴロのシュートを放つ。川島はボールを掻き出すもゴール。日本は不用意な形から不覚にも同点にされてしまう。

同点になり、パニックになった日本はより前へ前へと攻め急ぐ。バタついて、数的優位なのを忘れたかのような振る舞いのまま前半終了。

 

相手にも助けられて

パニックを起こした日本だったが、ハーフタイムで落ち着きを取り戻し、後半はじっくりと攻めるようになった。

4+4で引いて守るコロンビアに対して、日本は原口、乾が積極的にDFラインと中盤の間でボールを受ける動きを見せる。また、そこでボールを奪われてもすぐにプレスに行くことで相手SHに高い位置を取らせない。
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これにより、日本はSBの酒井宏樹と長友がフリーでボールを持つことができるようになった。

試合がやや日本ペースのまま膠着しはじめた59分、コロンビアはキンテーロを下げてエースのハメスを投入。これにより主導権を奪い、2点目を狙う姿勢を見せた。しかし、この采配が大きな誤算となってしまった。

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ハメスはキンテーロと同じ右サイドに入ったが、コンディション不良のせいか動きが重く守備がほぼできない。これにより長友が高い位置で自由に攻撃に絡むことができ、乾も高い位置でカバーリングを受けられるので積極的にカットインに持ち込めた。

70分に日本は香川→本田、コロンビアはイスキエルド→バッカと両チームとも攻撃的なカードを切る。

バッカは右サイドに入り、ハメスが逆サイドにスイッチ。
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本田は投入時に、ベンチからの指示で大迫に「左右に流れず真ん中で受けろ!」と伝え、あくまでも勝ち点3を狙うために中央から打開をしたい考えがあったようだ。

本田は出場から僅か3分後にCKのキッカーを務め、大迫のゴールをアシスト。守備の貢献はできないが、「数字」で結果を出した。その後はふらふらと右サイドに流れて原口の邪魔になり、高い位置で奪われた酒井宏樹カバーリングもせずに散歩。これをコロンビアが見逃すわけもなく、連続のCKでピンチを招くも、大迫がハメスのシュートをギリギリで足に当ててブロックをしたりして失点にはならなかった。最後は柴崎→山口でボール狩りをしてるうちに2-1で試合終了!数的優位が生きた日本が、開幕戦を最高の結果で終えた。

 

監督の交代カードの意図を探る

開始早々の退場により大きくゲームプランが狂ったコロンビア。数的優位ながら慌てて主導権をなかなか握れなかった日本。そんな両チームの選手交代の意図を探る。

 

31'クアドラードバリオス(COL)

前半の最序盤に退場したC.サンチェス。彼の役目はおそらく、日本の「トップ下番」であったはずだ。日本の攻撃の中心はトップ下の香川か本田。この日は香川がトップ下で出場をしたので、前を向かせない、狭いスペースでの打開をさせないことがC.サンチェスの役割であった。しかし前半早々に退場。守備のキーマンを失ったコロンビアはキンテーロを下げて「トップ下番」をさせたが、本来は1列前の選手なのでどうしても守備が軽く、日本がボールキープをしはじめたタイミングで、ボランチに本職の選手が居ないと失点をしてしまうと感じての交代であったように思えた。交代で入ったバリオスは「トップ下番」として香川をゲームから消し、低い位置やサイドに追いやることができたので、「傷口をこれ以上広げないため」のこの交代でコロンビアは落ち着きを持てたはずだ。

 

59'キンテーロ→ハメス・ロドリゲス(COL)

前半の内に同点にしたコロンビア。しかし後半に入り、日本が落ち着きを取り戻し、守勢に回る時間が増えた。速攻はクアドラードがその前にベンチに下がっているため難しい。となればまずは日本からボールを奪取してから攻撃に転じる必要がある。ボールを持てば違いを魅せる事ができるハメスは、コンディション不良であっても使わないという手はない。また、4年前に日本はコートジボワール相手にリードをしながら、ドログバというスター選手が投入されるとメンタル的に受け身になってしまい逆転を許してしまう。それを見越しての交代だったかもしれない。しかし、これが大誤算。ボールは回ってこないし、守備はできない。コロンビアは9人+本田みたいになってしまい、より攻め手を欠く結果になった。

 

70'香川→本田(JPN)

前半から楔を受けて前を向ける香川はコロンビアにとって無視できないものであり、日本の攻撃の中心としてプレーができた。しかし、バリオスの投入により中で香川が消されたため、攻撃はサイドからの形が増え、中央からの打開はボランチがリスクを負って前に出ることが多くなっていた。しかし、それではカウンターを受けた際に守備に大きな問題を抱えてしまう。となればボランチの上がりの抑制(リスク管理)と中盤中央でのクオリティーの維持が求められ、それができるのは、本田か宇佐美というチョイスが考えられた。

宇佐美はドリブルを好むタイプなので彼が突っ掛けたあとの対応まで詰められていないので難が残る。守備に大きな問題を抱えてでも本田を起用することで、中盤でのタメとミドルシュートで牽制しよう、という意図を感じた。実際はヘロヘロのミドルシュートに始まり、サイドにふらふらと流れたり、ボールロストの鬼。フィジカルもそんなに強くないという苦行だったが、そこは本田圭佑。出場から僅か2分後に起点になり、その後のCKでアシストと「持ってる」所を見せてくれた。

 

70'イスキエルド→バッカ(COL)

守備できない、ボール触れないとイライラした兄ちゃんになってたハメス。繋ぐにしても高い位置まで持っていくのはしんどく、ロングカウンターもできないので、まずは位置の回復をしてそこから崩すしかなくなっていたコロンビア。それならばサイドに攻撃的な選手(できればシュートの上手いヤツ)を入れてどさくさに紛れて得点を奪おう!という半ばヤケクソ感のある采配のように思えた。最初から縦に速いクアドラードをなぜ下げた!?ってのはナゾだが、そこらでも多分カミカゼが吹いたんだろう。コロンビアは3強1弱の1弱からまさか勝ち点を落とすなんてのは想定してないだろう。そこらへんの関係で正常な判断ができなかったかもしれない。

 

80'柴崎→山口(JPN)

試合も終盤に入り、1点リード。相手はなりふり構わず前線にボールを入れて得点を奪いに来る。と、なればゲームメーカーの柴崎の頭上をボールが行き交い、起点となる彼は、相手からするとボールを奪えばチャンス!と考える。それならば多少パスには難ありでもボールは他の所で落ち着かせてもらって中盤に狂犬山口を放し飼いしてボール狩りをしてもらう。疲れてきた時間にフレッシュな狂犬。ボールを奪うチャンスはたくさん。相手は1人少ないのでたとえ動きすぎて居るべきポジションを空けても数的に優位に立っているので大丈夫。という考えでの起用だったように思えた。

 

 85'大迫→岡崎(JPN)

前線でボールを収めに収めまくって決勝点まで決めた半端ない功労者も、時間と共に体力を消耗。最後らへんは足がつっていた様であった。CFは控えに武藤と岡崎が居たが、運動量が多く、ルーズなボールでも回収できる岡崎が選ばれた。また、怪我とウワサのあった岡崎のコンディション調整としての意味合いも大きかったはずだ。

 

 選手交代から見ても、日本は前半は浮き足だったが、ハーフタイムで修正ができたことにより相手の状況を見ながら臨機応変に対応できたように思われる。コロンビアは先に動かざるを得なかったこと、日本の中盤をリスペクトしすぎたために有効な攻め手を自ら削ってしまった印象だ。ワールドカップ初戦の難しさが如実に表れたのではないだろうか。

  

11人の「個」での勝利

 退場者に加え、適切なベンチワークができなかったコロンビア。それに対してPKとFKとセットプレーから確実に得点を挙げて勝利を手にした日本は、きっかけこそカミカゼだったかもしれないが、勝ち点3という結果を手にしたことは評価されて然るべきだろう。

しかし、10人の相手に対しての稚拙なゲーム運びからも感じられたように、日本は大きな問題を抱えているように感じたのも確かだ。

特に問題だと思ったのは、マークの受け渡し。両チームのマッチアップはある程度は想定できるが、現代のサッカーでは攻守によってフォーメーションが分かれたり、複雑になりつつある。そうなれば、マークを受け渡す場面が多くなるが、日本は2ヶ月で3試合+W杯本戦の1試合、計4試合しかしていないせいか、マークの受け渡しが上手くいかない場面が多くあった。

特に目立ったのはクアドラードのカットインに対しての日本のアクション。対峙する長友から中央にマークを受け渡すも、CB、ボランチ、SHと3人も食い付く場面があったり、失点シーンの長友のクリアミスに対して落下点に味方同士が被ったりと、ワールドカップの初戦ということを差し引いても守備が整っていない印象が強かった。

グループHの残り2試合、相手が早々に退場者を出すことなどほぼないだろう。11人どうしで試合をしたときに、このマークの受け渡しの曖昧さ、ボールに食い付きすぎるのは大きな問題である。

個々で戦い、対峙する選手に対して球際で気迫のこもったプレーをみせて勝利に持ち込んだ日本代表。これは11人の「個」での勝利だ。これからの2試合は「個」だけでなく、チームとして連動しなければ苦しくなる。今からしっかりと準備することは難しいが、コミュニケーションでなんとかしていくしかない。

 

 

最後に。この勝利は「JFA」の勝利ではないことはハッキリと記しておきたい。。田嶋やTwitterハリルホジッチ監督に対して敬意を欠く川淵三郎の手柄ではない。この勝利は、西野さんをはじめとするスタッフと、23人の選手たちによってもたらされたものだ。

次はセネガル戦。連勝で予選を勝ち抜けたい。