Nishida's diary

トリニータを中心にいろんな試合を。

【大分】vs愛媛(H) 今こそ選手の奮起を〈J2 第25節〉

最後に勝ち点3をみてから遂に1ヶ月。1分3敗で迎えた愛媛戦は、片野坂監督が選手に道筋を提示することはできたが、目標である勝ち点3にはまたしても手が届かなかった。今、求められるのは選手の奮起。そう痛感した試合だった。

 

この日のメンバーは以下のように

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前節から3人を入れ替えて臨んだ大分。3バックの右に岩田智輝が今季初スタメン。前田凌佑は初出場。そして馬場賢治がスタメンに復帰した。

 

愛媛FC
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DAZNの愛媛の予想フォーメーションは4-1-2-3だったが、実際は3-4-2-1を基本とした可変型だった。怪我から復帰の神谷優太がトップの位置に入っているが、ほぼゼロトップのように。

 

自信を持たれて

前半から仕掛けたのは、今節も大分だった。6分に中盤で前田が安藤淳からボールを奪うとそのままドリブル。駆け上がる味方の動きを利用してスルスルと持ち上がると、愛媛がたまらずファール。ペナルティエリアの外でフリーキックを獲得するが、壁に阻まれる。続くコーナーキック。中での競り合いで林堂眞が鈴木義宜を倒したとして前半9分でPKを獲得した。このプレーで林堂は完全にホールディングとは言えず、微妙な判定。スコアだけでなく、心理面で大分が優位に立てるチャンスでもあったが、キッカーの後藤優介の蹴ったボールは愛媛GKの岡本昌弘がファインセーブ。絶好のチャンスを逃してしまった。

そこからゲームは落ち着きだし、両チームの可変の仕組みが見えてきた。

大分は、ビルドアップの際にボランチが1枚落ちて4バックを作るのは変わらず。しかし多少のメンバー変更により、いつもより攻撃に厚みを持たせる意図があった。f:id:west242447:20180728174011j:image

右CBに岩田を起用したことにより、擬似4バックを作ると前田の横ほどまで上がり、松本怜、後藤と距離感を縮め、その3人の関係性を中心に右から崩したかったようだ。

ボランチに前田を起用した理由として、愛媛がブロックの位置を低く設定し、宮阪政樹のような大きなサイドチェンジから揺さぶって攻める事をしても、スペースがないため効果的でない。ならば周囲を上手く使いながら縦の意識の高い前田を使うといったところか。似た選手として川西翔太も挙げられるが、これまでベンチにも入れていなかった前田のモチベーションや、川西の器用さが逆に作用すると考えたのだろう。しかし、片野坂監督が彼をベンチにも入れないという所から、前田でやれるという確信的なものがあったのかもしれない。

 

一方の愛媛は、大分のボールを持つ位置によって可変。大きく分けると

・大分陣内/中央

・自陣内/サイド

の2つ。

そしてゼロトップの神谷の役割も重要なものだった。

 

大分陣内では、シャドウの近藤貴司がサイドに開き、野澤英之が1列前へに入って4-1-2-3へ。
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これにより、大分のDF3枚+ボランチ2枚に蓋をしてビルドアップを阻害する。

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自陣内では両WBがDFラインまで下がり、シャドウが左右に開いた5-4-1へ。f:id:west242447:20180728180035j:image

大分は1トップで2シャドウ+両WBという左右を広く使った攻撃をするため、それに合わせて5バックに。中盤中央のスペースをボランチが消して左右へ誘導してWB+シャドウ、WB+CBで挟んでの守備をしていた。

 

ここまでは大分やミシャ式対策でよくある型だが、それに加えて愛媛はボールの位置によって上記の2つを変えていた。

ボールが中央の時は4-1-4-1。サイドならば5-4-1。これの意図はビルドアップの阻止、大分の攻撃に対しての数合わせというのが第一だが、この横の可変は大分のシャドウを消すための意図があったように思われた。

大分はシャドウの後藤、馬場にボールが入ると高確率でチャンスを作る。なので中央でボールを持たれた時はCBやボランチからシャドウへ直接クサビを入れられないように、サイドではシャドウにボールが入ったとしても愛媛ボランチとCBで挟撃をしようとしていたようだ。

 

そしてゼロトップの神谷。彼の役割は攻守で1つずつだが大切な役割があった。

守備では大分DFに対して積極的にプレスに行き、コースの限定をするという守備のスイッチとしての役目。

攻撃では大分のDFと直接やり合うのではなく、大分ボランチの近くやセンターサークルよりやや自陣寄りでプレー。これにより、大分DFを釣り出したり、大分DFとボランチの間で受けたり、味方ボランチの位置にまで下がり中盤中央で数的優位を作ってカウンターをしたり……。

また、神谷が下がると近藤、野澤が前に上がり2トップのような形に変わり、カウンターの鋭さを常に持っていた。
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そしてこのゼロトップの神谷の動きが効いたことにより先制点を許してしまう。自陣から西岡大輝が右サイドへ大きく展開。玉林睦実がヘディングで落として近藤がドリブルで駆け上がる。ゴールライン際からマイナスのパスを送ると、神谷がダイレクトで合わせて得点。愛媛は狙い通りの会心の一撃だった。

大分はこの失点によりビハインドで折り返しに。

 

殴るしかない!

攻め手はあるものの、ラスト30mを崩せない大分は後半に入り、意外な変更をする。ボランチ丸谷拓也からFWの三平和司へと変更し、今季初御披露目の形に。

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前線の枚数を増やし、強制的にシャドウへのコースを作らせた。

愛媛はこれの対応するのに少しドタバタしたが、ボールと逆サイドのシャドウが一列下がり3-5-2のような形をとって対応してきた。f:id:west242447:20180728184132j:image

しかし、大分もここまでの愛媛の修正を想定していたようだ。ボールを持った際に松本がFWと同じ高さでほぼウイングとしてプレーをして相手を押し下げ、後ろにスペースを作る。そこを積極的に岩田が上がり、精度の高いアーリークロスでシャドウを介さないシンプルな攻めという変化をつけた。また、鈴木と前田が上がった岩田のケアをしっかりと施していたため、岩田のウラのスペースをカウンターの狙い目とされることもなかった。f:id:west242447:20180728185328j:image

そういった事もあり、ここからの45分はほとんど大分が愛媛を殴り続ける事になる。戦術的な駆け引き、ベンチワークはとても見ごたえがあった。

60分になると、ほぼ攻め手を失った愛媛は野澤から夏に岐阜から新加入をした禹相皓を投入。守備の強度を保つ為だろう。

大分も同じタイミングで交代。スペースを消され、ほぼなにもできなかった藤本憲明から伊佐耕平へ。前線でボールを収める事、クロスへの飛び込みを期待してだろう。

62分には岩田がミドルシュートを放つが枠に嫌われ、その後に岩田のアーリークロスから三平のヘディングも決まらない。

いよいよ攻撃の糸口がなくなった愛媛は、カウンターを効かせるためにカードを切った。

ボールサイドによって1列落ちたり上がったりしていたシャドウ2枚から禹相皓をボランチに固定をして、高さのある吉田眞紀人を投入。ロングカウンターで吉田のポストプレーに期待しての交代だろう。

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前から仕掛ける大分に対して効果的な策になるかと思われたが、勢いは止められない。

77分に大分は福森直也から清本拓己を投入。ほぼ攻め手がなく、引きこもらざるを得ない愛媛を崩すため、サイドに厚みを持たせるための交代。これにより実質、鈴木の1バックで1-3-4-2という超攻撃的な策に出た。

81分には右サイドで作って松本が深い位置からマイナスの折り返し。馬場がスルーをして前田がシュートを放つも、玉林が身体を捻りつま先でコースを変えて得点ならず。結局、引きこもらざるを得ない状況にまで持っていくことはできたが1点が遠く、またしても勝ち点を逃してしまった。

 

愛媛の印象

前期の対戦では川井監督の初陣で、それまでの3-4-2-1をベースに選手の特徴を生かしていた印象。特に近藤貴司はその恩恵を受けた一人だろう。それまでは突破力を買われてかWBで何度か使われてはいたがパッとせず。しかし川井監督になってからはシャドウの位置でのびのびとプレー。今季の大分のトラウマベスト11の有力候補になった……

選手では岡本昌弘と神谷優太が印象に残った。シュートの雨あられで大忙しだった岡本が何度も好セーブを見せていたのは知っての通り。神谷もゼロトップの意図をしっかりと理解をしてプレーしているようでとても面倒な存在であり続けた。

そしてなんといっても川井監督の手腕。シーズンの途中からの抜擢ながら、ベースはそのままに適材適所の起用で後半戦序盤の台風の目になった。選手の役割がしっかりと整理できているからこその結果であるし、よく走ることのできる好チームになった。すごい……

 

「あとは選手のみ」というもどかしさ

この試合、相手を押し込みあの手この手でゴールを奪うための道筋を作った片野坂監督。しかしながら、監督ができることはベンチ入りメンバー18人の選考と、交代枠3つのタイミングと攻めきる、守りきるための準備だけであり、実際に得点したり守ったりというのは選手の役目だ。だが、どこかで選手たちがその意図を汲み取れていない、実行に移せていない印象がある。後半の三平投入による意図は、前線でのポイントを増やすことではなく、シャドウを生かす事が第一。しかし選手たちは攻め急いで前へ前へと行くばかりで、肝心なバイタルエリアがスカスカという矛盾が出た場面は象徴的だった。

片野坂監督がやりたいサッカーに選手達がこれからどこまで食いついていけるか。これが今年の大きな課題となるだろう。幸いにも前半戦での貯金があるためPO圏に留まる事ができている。今こそ選手達がチャレンジをしてもう一度、上を目指してほしい。

 

【ハイライト】2018明治安田生命J2リーグ第25節 大分トリニータ vs 愛媛FC - YouTube