Nishida's diary

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【大分】vs岐阜(A) ひさびさの勝利! 〈J2 第26節〉

5試合勝利なし。長いトンネルに入ったかと思われた大分だったが、中盤での優位を作り出して岐阜をシャットアウト。前半に奪った2得点をあげて久しぶり、そして待望の後半戦初勝利を手にした。

 

この日のメンバーは以下のように。

FC岐阜
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真夏の3連戦の最後で風間宏矢小野悠斗から三島頌平、中島賢星とトップ下の2枚を変更。前節から新加入の北谷史孝が先発に。

カウンターからの失点、セットプレーからの失点が多く、前節の讃岐戦ではCKから連続で失点。通算1勝の苦手大分にどう対応してくるかが注目された。

 

大分トリニータf:id:west242447:20180801152012j:image

5試合勝利から見放された大分は、前線の3人を総入れ替え。藤本憲明、後藤優介、馬場賢治をベンチスタートにし、伊佐耕平、三平和司小手川宏基が先発に。DAZNの予想では伊佐の1トップ、三平、小手川の2シャドウでの3-4-2-1と予想されたが、実際は伊佐と三平の2トップ、小手川は中盤の右に入った3-1-4-2か3-3-2-2の形でゲームに入った。

 

バイタルを埋めて

大分は中盤を前田凌佑、丸谷拓也小手川宏基の3枚で埋めて岐阜の中盤での細かいパス回しのスペースを消してサイドに誘導して奪いきる意図があった。

前期の対戦では、大分は4-1-4-1を採用してビルドアップで相手を引き込んでから中盤3枚がパスコースに顔を出して岐阜のプレス回避を目的にした3センターだったが、この日の3センターは前から仕掛けて相手の最終ラインに積極的にハメる意図があった。

 

大分は、岐阜対策として岐阜が自陣に居るとき、アンカーが落ちて疑似3バックになっているときは2トップが積極的にプレスに行きパスコースを消しに行く。岐阜がボールを持ち上がった際には1stDFをハーフラインよりやや下に設定をしてスペースを消す事を共通事項としながら非カウンター、ポゼッションの2つの場面によって形を変えていた。

 

・岐阜がポゼッションで攻めて来るとき

岐阜の3トップの左右はペナルティエリアの幅までしか広がらず、中盤との距離を詰めて積極的にパス回しに関与することが求められていた。そのため、大分の3バックは距離間を保ちながら対面する岐阜の選手を見ることができる。そして、岐阜のアンカーである宮本航汰が落ちて左右のSBが高い位置を取った3-4-3のような形に変形。

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これに対して伊佐、三平の2トップがコースの限定をしてサイドに追い込み、WBとトップ下の2枚で挟んでしまいボールを奪う。f:id:west242447:20180802183511j:image

幸いにも、岐阜のアンカーの宮本が落ちた際にトップ下の中島、三島が連動して落ちて来なかったためサイドで効率的にボールを回収できた。

 

・岐阜がカウンターで攻めて来るとき

岐阜はポゼッションで崩せないと見ると、低い位置からロングボールで数的同数のFWに一度ボールを繋いで位置の回復から攻める事に対しても、大分は準備ができていた。

ロングボールが入ると、WBは無理にDFラインまで戻って5-4-1を形成する今までのやり方ではなく、アンカーの位置の丸谷がDFラインに入り、小手川、前田がバイタルを埋めた4-4-2の形で守っていた。

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4+4のブロックを形成して3トップの無効化に成功する。

 

結果として、岐阜はバイタルエリアを埋められてよい形でボールを受けられず、速攻を仕掛けても大分DFの網にかかり、ボールは保持できても攻め手を失ってしまう。

 

また大分はビルドアップの形にも工夫を加えた。

普段は3バック+ボランチ2枚の5人での組み立てを行うが、この日は3バック+丸谷+GKの高木駿という5人で行った。

高木はゴールキックの際によくタッチラインを割っているためかそれほど周りの評価は高くないが、浮き球のミドルパスをWBにしっかりと付けたり、相手のプレスを往なしながらのビルドアップはこの半年で確実に伸びていたため、ビルドアップへの積極的な参加を片野坂監督は要求したのだろう。

この日のビルドアップの形は2+3、3+2の形がメインだった。2+3では鈴木義宜と高木が横になり、福森直也、丸谷、岩田智輝がその前で構え、3+2では鈴木がやや右に移動して福森、高木、鈴木が横になり、丸谷、岩田がその前で構える。この2つのビルドアップをメインとしたことで、岩田が右サイドの高い位置を取ることが可能になり、脚の速い松本怜との強力なサイドアタックを繰り出すことを可能にした。

またGKの高木をビルドアップに組み込めたため、前線で2トップ+両サイド+トップ下のどちらかが絡んだ攻撃が可能になり、もう片方のトップ下が中間ポジションを取ることでパスコースを増やすことも可能になっただけでなく、前線に人数がいるため3バック、GKからクサビのパスを積極的に入れることが可能になった。

 

このような狙いを持った大分は、15分に右サイドの松本のクロスを大外の星雄次が合わせる大分らしいプレーを見せ、19分には左サイドのスペースを星が突いて前田、丸谷と繋ぎミドルシュートを放つと、三平がこれを絶妙なトラップで足下に収めると、冷静に流し込んで待望の先制点を奪う。

28分に岐阜DFの北谷がボックスのギリギリ外でハンドを犯しFKを獲ると、GKとDFの間に入ったボールは丸谷と北谷に当たりゴールへ。公式記録ではオウンゴールとなったが、2点のリードで前半を折り返す。

 

まだ、モノにはできず

後半に入り攻め手がほとんどない岐阜はハーフタイムで動く。ライアン デ フリースを下げて長沼洋一を投入。3-3-2-2へ変更してマッチアップを明確にしてきた。

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これにより序盤こそ右サイドからチャンスを作った岐阜だったが、トップ下がスペースを埋められているためよい形でボールを受けられない。また、ボールを受けても前を向けないためパスが各駅停車になり攻撃が停滞すると、次第に攻めたい攻撃陣と非カウンター対策のため守りに重きを置きたい守備陣で別れてしまい間延びをして、フリックを多用した岐阜のパスワークは消えていった。

 

一方の大分も課題を見せた。

ロングカウンターからサイドへの展開は精度が低くなり、うまくボールが入ったとしても、FWやトップ下が追い付けずに、効果的にゴール前まで持ち込めなかった。しかし、三平、伊佐から後藤、藤本に変更をしてからはサイドからのアーリークロスに抜け出す形を見せた。これからも3-1-4-2を継続するならFWの組み合わせも悩み所だろう。

また、4分であったライアン デ フリースの抜け出しのような形はこれから狙い目とされるかもしれない。3トップに対して大分DFがマンマーク気味でついていたこの日。4分の場面では岐阜の右サイドの山岸祐也がタッチライン際に開いており、福森と鈴木の間が間延びをし、チャンネルができていた。このスペースに飛び込まれてシュートを打たれた。WBが対面する選手を捕らえられなかった場合にだれがそこにチャレンジをしていくかや、アンカーの丸谷の脇の埋め方は改善の余地がありそうだ。

 

結果として後半はスコアは動かずに2-0で勝利。6試合ぶりの勝ち点3となった。

 

岐阜の印象

前回対戦では前から仕掛けられ、涌き出てくるような印象だったが、今回は大分の対策がハマったためか全体的にパッとした選手は居なかった。この試合後に古橋亨梧が神戸に移籍をし、田中パウロ淳一も離脱となかなか厳しいような。

選手で印象に残ったのは加入2試合目で2失点目の起点になってしまい、オウンゴールも献上してしまった北谷史孝。悪目立ちしてしまった印象で、後半の3バック変更後もあたふたしていたが、まだ2試合目。これから巻き返して3バックも4バックもこなせる選手になると怖いなと感じた。

 

新たな引き出しを手に

これまでは引いた相手に苦戦をし、ボールは持てるが最後まで行ききれないというもどかしい試合が続いたが、ここに来て引いた相手を釣りだすだけでなく、引いた相手を殴る引き出しを手にした印象だ。夏場の折り返しで苦しい試合が続いたが、これは確かな収穫だろう。まだまだ選手には物足りないと感じる点はあるが、システム変更でその弱味を覆い被せた片野坂監督の手腕には驚かされる。

大分の反撃は、ここからだ。

 

【ハイライト】2018明治安田生命J2リーグ第26節 FC岐阜 vs 大分トリニータ - YouTube