Nishida's diary

トリニータを中心にいろんな試合を。

【大分】vs岡山(H) 沸いたOFURO〈J2 第28節〉

お盆で帰省客が多いこの時期に合わせてトリニータは年イチの動員企画として"OFURO"(Oita FUll blue pROject)が企画された岡山戦は、最後の2枚替えが功を奏し2試合連続のゴールラッシュとなった。

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そして久々に現地観戦。初期の大分スポーツ公園のイラストにあった幻の体育館が出来上がりつつありました。

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久々のホームの声援は腹に響く。すき。f:id:west242447:20180816233939j:image

そしてDAZNなどの映像では映らないシーンの確認もでき、やっぱり観戦は現地に行くに越したことはない!と感じました。

 

 

 

この日のメンバーは以下のように。

大分トリニータf:id:west242447:20180816033902j:image

スタメンは前節と同じ11人。ベンチ入りメンバーは川西翔太林容平が外れ、替わりに星雄次、後藤優介が入った。

 

ファジアーノ岡山f:id:west242447:20180816034108j:image

ここまでリーグ最小の22失点と堅守な岡山。序盤戦でイヨンジェが長期離脱をし、赤嶺真吾も離脱。それでもウノゼロで勝ち点を積み上げ首位に立ったが、第11節熊本戦の勝利を最後に調子が上がらず、中位になってしまった。左WBの三村真が練習中の負傷でメンバーを外れ、椋原健太が左、澤口雅彦が右に入った。前線には横浜FCからレンタル加入のジョン チュングンが1トップ。

 

互いに意図を持って

両チーム共にシュートチャンスが少なく、堅い45分。しかしそれは、互いに相手の構造を見て対策を立てそれに対応するという非常に緊迫したものだった。

岡山の狙いは2つ。主に守備での工夫が見てとれた。

 

1つめは、大分が自陣でのビルドアップを制限すること。2シャドウの1角である赤嶺が大分の3バックの福森直也と鈴木義宜の間に入り、右WBの澤口が低い位置を取り、右サイドが重い4-4-2のような形で守る。

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この意図として、大分のビルドアップでGKの高木駿が絡むことを牽制する狙いがあった。

大分のDFラインでのボール回しを行う際のマッチアップをみてみよう。

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鈴木にはジョン チュングンがつき、高木に赤嶺がつく。GKのコースを限定しに行くため必然的に中盤で数的不利に陥るが、そこに出すにしても、サイドに出すにしても浮き球でしかパスは通せないため必然的に精度が下がる。

攻撃でも赤嶺がサイドに流れ、澤口がサイドからインナーラップをしてハーフスペースに飛び込んでボランチ脇、もしくはWBの背後を狙っていた。

 

2つめは左サイド。大分の攻撃は右サイドの快速、松本怜にCBの岩田智輝も右SBのようなプレーをするため、マッチアップを明確にしておかないと徐々にバランスが崩れズレが生じてしまう。そのため、左WBの椋原は守備の際にリトリートをして5バックを作るのを優先するよりも松本にマンマークをして、岩田のオーバーラップを上田康太か見るようにしていた。

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これにより、大分の右サイドを潰して逆サイドの那須川将大に展開しても、大分はロングボール1本で逆サイドに振るのはあまりしないのでDFのスライドだけで対応できるだけでなく、カウンターに移った際に赤嶺が鈴木と福森の間を突けるためにあえて右サイドを下げて左サイドをマンマーク気味にしていたようだ。

 

一方の大分も、右に流れる赤嶺の対応と、岡山が左サイドの守備を固める事、松本にマンマークを敷かれることにしっかりと対応ができていた。

 

ビルドアップの制限をかけられると、左WBの那須川が下がってパスコースを作り、丸谷拓也小手川宏基が左にスライドをして三平が1列下がり3-4-2-1のような形で対応をした。
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松本に椋原がマンマークをされることには、動きを複雑にして混乱させるということではなく、敢えて高い位置を取って椋原を押し下げて、SB-SH間を間延びさせて、空いたスペースを三平や岩田が突く形で対応した。

 

岡山の"大分対策"を上手く利用してサイドから仕掛けるだけでなく、岡山のビルドアップに対してのリアクションにも多少の変化があった。これまでは相手がボールを持った際は、FWはミドルサードの入り口からプレスをかけていたが、それではどうしてもポジティブトランジッションの時にFWが低い位置からスタートをするためにロングカウンターが機能しないという欠点があった。それの対策として"3センター"の前2枚の前田・小手川がFWと連携してプレスをかけると、全体を押し上げて前から奪いに行く狙いが見えた。しかし、これは90分間連続して行うには前田・小手川の負担はとても大きくなるためペース配分が重要だったが、右の小手川は松本、岩田のカバーリングもこなさなければならないため、前半は前田が小手川の分まで守備のスイッチ役として左右を動き回っており、岡山のビルドアップからロングボールで背後を狙われる場面が見られた。

 

お互いに狙いをもって潰しあった前半は、見るからに硬い入りになっていた。そのため、前半のビッグチャンスは8分の那須川のCKから伊佐がニアで逸らしたヘディングシュートのみだった。

 

岡山は15分に裏に抜けたジョンチュングンと岩田が縺れた際に脇腹を痛めて(肋骨?)前半の21分に齊藤和樹と交代。前半終了間際にはボール際で伊佐が後藤圭太とぶつかり、後藤はその時に膝を痛めてしまい、48分には下口稚葉と交代。岡山は早い段階でアクシデントが続き、早くも2つもの交代カードを切らざるを得ない状況になってしまう。

 

中を意識し、トドメを刺す

硬い前半から修正を加えた大分は、サイドで停滞していた攻撃に中でのプレーを増やすように指示していた様だ。

後半開始直後の46分には小手川がミドルシュート。これは岡山GKの金山隼樹が指先でセーブするとポストに弾かれる。50分には伊佐もミドルシュートも金山にまたセーブされ、続く51分には岩田がミドルシュートを放つがDFに当たりバーを弾く。中での積極的なプレーが増えて波状攻撃を仕掛けると、岡山の守備ブロックはじわりじわりと後退する。大分はそれを見逃さなかった。

52分。ペナルティエリア左で受けた前田がサイドにパス。那須川はダイレクトで中に早く低いボールを入れると、伊佐がニアで潰れて三平がシュート。これが決まり幸先よく先制。三平はこれが3試合連続ゴールとJ2通算50得点目を記録した。56分にも那須川のミドルシュートがまたしてもポストを叩く。完全に大分の流れになった。

 

岡山が劣勢となったのは、後藤圭太の負傷退場が大きいだろう。岡山の3バックは基本的に横にスライドをしてスペースを埋め、選手が持っている球際の強度を生かすことで堅守が成り立っているが、空中戦に強い後藤の代役は澤口と、本職ではない選手が務めたこと。そして右WBに入った下口のポジション取りの悪さ。DFラインまで下がって5バックの1角に入るか、フォアチェックを行うかが曖昧で、前半は守備に追われていた那須川が攻撃参加ができる余地を与えてしまった。

結果として下口は撤退して守備に追われて、右のシャドウの齊藤と間延びをしてしまったため、劣勢になってしまった。

これを見て長澤監督は61分に最後のカードを切る。赤嶺を下げて、仲間隼斗を投入。4バックと3バックを併用できるようにして、下口のポジショニングを改善して、サイドの決壊を防ぐ事に着手した。

守備では澤口が中に絞って3-4-2-1

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攻撃では椋原と澤口がSB、下口がSHをする4-4-2

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と可変システムを採用。これにより、下口がサイドでの守備は前から奪いに行くことが明確になり、左サイドの決壊の阻止とカウンターの精度を上げる事ができた。

大分は64分に三平を下げて、馬場賢治を投入。相手がやり方を変えてきたが、勢いそのままに追加点を奪いに行く。自陣で福森と高木がパス交換をして左サイドのライン際に浮き球のパス。ボールは相手の頭上を越えて下がって受けた伊佐が数的優位を生かしてドリブルを仕掛けると、馬場、松本が囮となって伊佐がカットイン。ペナルティエリア前で4対3とほぼ詰みの状態で右サイドを上がった小手川が伊佐からのパスをダイレクトでシュートを放つが僅かに枠の横。大分が一番やりたいビルドアップからのサイドを絡めた速攻ができたが、得点には繋がらない。

すると今度は、ここまで防戦一方だった岡山にも決定機。74分にアタッキングサード入り口から齊藤→仲間→伊藤とワンタッチでパスが繋がり、大分の鈴木がチェックするためにDFラインから飛び出す。それに合わせて那須川がサイドから中にポジションを移し、チャレンジ&カバーをするが、空いた左サイドにパスを出されて下口がフリーで受けてセンタリング。ファーサイドへのボールを齊藤がバックステップでマークを外して頭で折り返すと、仲間がヘディングで合わせてゴール。岡山がワンチャンスをモノにして振り出しに戻す。

岡山は早々に交代カードを使いきっていたことと蒸し暑い大銀ドームという環境もあり、同点にしてからは5-4-1で撤退をして守備固め。堅実に勝ち点1を拾いに来たようだった。

攻めて押し込みながらも追い付かれた大分は、82分。伊佐と小手川を下げて、藤本憲明と後藤優介を投入。馬場が小手川の位置に入った。

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ここから引いた岡山を相手に慌ててロングボールを入れるような雑な事はせず、ボールを持って揺さぶると、右サイドで松本がやや下がってマンマークについている椋原を釣りだしCBとWBの間にチャンネルを作ると、そこのスペースに藤本が走り、岩田がスルーパス。右サイド深くで藤本が馬場にボールを渡すと、ペナルティエリアの角からクロス。これを後藤がジャンピングボレーで合わせて勝ち越しに成功する。

何度でも見ていられるエースのスーパーゴール!

キング・オブ・シュート

は週間ベストゴールにも選出された。

 

勝ち越された岡山は、高さのある増田繁人を前線に送り、キック精度の高い喜山康平と伊藤がロングボールを入れるパワープレーへ。f:id:west242447:20180817141748j:image

しかし、大分は前がかりになった相手の背後を見逃さなかった。89分にはカウンターから左サイドの那須川から藤本がヘディングで落として丸谷へ。丸谷はゴール前まで持ち上がり、中にパスを出すと藤本がスルーをして後藤が追加点。90+1分には自陣で福森から中盤の藤本にパスを出すと、藤本は浮き球でウラヘ。これに馬場が抜け出してダメ押しの4点目が決まる。硬いゲームも終われば3点差と大分は2試合連続での大勝。J2通算200勝目にもなった。

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岡山の印象

アクシデント続きだったが、試合後に「それもまたサッカー」と言い切る長澤監督の潔さが印象に残った。

岡山の堅固な守備のベースである3バックのスライドはDAZNではあまり写されないのて現地で見られて良かったなぁ、と。それだけに後藤の負傷交代は大きな痛手だった。

選手で印象に残ったのは仲間隼斗。守備重視のチームにあって前で孤立することは多々あるが、前線からプレスをかけて間延びを防ぎ、得点まで奪ってみせた。

試合前の桃太郎チャントでは大分側から手拍子、試合後には岡山の選手から一礼に、大分サポから岡山コール、岡山サポから大分コールと、非常に暖かい雰囲気だったのも印象に残った。

 

 

スーパーサブを残せる利点

この日の大分は、ベンチスタートの3選手が得点に絡み3得点。後藤、藤本、馬場は誰が出ても強力で、層の厚さと対戦相手に合わせた起用ができるのはとても大きいだろう。今のFWはスタメン争いが熾烈。結果を出さねば替えられるという緊張が良い方向に繋がっている。これを生かすためにも、3センターのバリエーションを増やすことで、より積み上げができると感じた。明日のヴェルディ戦も難しくなるだろうが、勝ち点を伸ばしてもらいたい。

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【ハイライト】2018明治安田生命J2リーグ第28節 大分トリニータ vs ファジアーノ岡山 - YouTube