Nishida's diary

トリニータを中心にいろんな試合を。

【大分】vs徳島(H) 喉は守れどゴールは守れず〈J2 第30節〉

台風の影響で中2日で迎えた徳島を攻めに攻めた大分だったが、ワンチャンスを決められての敗戦。「これもまたサッカー」とはいえ、割りきれない内容でしかなかった。

 

この日のメンバーは以下のように。

大分トリニータ
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徳島戦の通算成績は4勝3分4敗。全くの五分だが、ここ4回の対戦で全敗と、リカルド監督との相性は悪い様子。スタメンに三平和司が復帰し、國分伸太郎が久々にベンチ入り。

この試合で那須川将大がJ2通算150試合とのことで試合前にセレモニーも。どの選手の奥さんも綺麗なのでより頑張ってほしい。(嫉妬)

 

徳島ヴォルティス
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前節の岡山戦から5人もの変更をした徳島。3バックの右の内田航平は今季初のスタメン。左WBの表原玄太は湘南からの育成型レンタルで早速スタメンに。そして広瀬陸人、小西雄大ピーター・ウタカもフレッシュな状態で出場。ウタカとバラルの2トップは初めてだった。

 

引いた相手を押し込んで

前半、低い位置でブロックを引く徳島を予想して、大分は超攻撃的な形で押し込む。

徳島は前節の東京ヴェルディと同じように5-3-2、もしくはそこにウタカがやや下がった位置の5-3-1-1での守備。

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5-3-2の守備では「3」の両脇が空く、というのを前節のブログで紹介した。前節ではその空いたスペースを3センターの小手川宏基と前田凌佑が埋めたが、この日はより押し込むために左右のCBの岩田智輝と福森直也がここを突いた。

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これにより、徳島の5+3のブロックの間で小手川、前田と1列降りてくる三平が受ける事ができ、対面するWBを押し込む事ができただけでなく、岩田、福森が高い位置でフリーでボールに絡むことができるのでそこから対面へのパスやアーリークロスなどやりたい放題といった内容に。

徳島は奪ってからロングボール1本で数的優位、外国人2人による質的優位で殴ってくることも想定しており、奪われたら切り替えは早く、ゲーゲンプレスで即時奪取を目指し、裏にボールが出た際には鈴木義宜と共にボールサイドとは逆のCBがカバーリングをしてデュエルで負けない事を意識。これによりトップははほぼ全くと言って良いほど攻めることができず、自陣でのプレーが増えて連続した効果的な攻めは全くできなかった。

 

一方の徳島は、5-3-2の撤退守備から攻撃に移るために、左WBの表原のポジショニングにより攻め方を変えていたと感じた。ウラを返せばネガティブトランジッションの際に誰がどこを守るかがハッキリしていたとも言える。

基本は撤退守備の5-3-2。

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ボールを持てば4-4-2へ。

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表原が高い位置にいれば4-1-2-3のような形に。

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この変形を見てもわかるように、表原以外は大きなポジションチェンジはなく、横のスライドを基本にしていた様子。

実際には大分がDFラインに5人ぶつけてきたため5-3-2からなかなか持ち上げられなかったが、無策であったとは言えなかった。

 

ほぼ押し込んでのゲームになった大分は、三平の調子が良く6分には伊佐耕平とのワンツーでニア上を狙ったり、16分には岩田のクロスからシュートを放ったりと1stタッチがいつも以上に冴えていた。チームとしても中から崩す事ができ、丸谷拓也ミドルシュートや小手川のシュートもあった。が、得点には結び付かない。

殴り続ける大分と窒息気味の徳島、という印象で前半を終えた。

 

交代から流れを変える

後半に入って、徳島はハーフラインより自陣で1stプレスを敷き、バラル以外の10人で守備ブロックをつくって中を埋めたが、前田と小手川が対面するIHを引き付けることでCBをフリーにすることができた。

サイドから積極的に崩す大分は、61分に三平、伊佐の2トップを下げて後藤優介、藤本憲明を投入。スペースへの飛び出しに長ける選手を入れたことにより、より深い位置へボールを運ぶ意図での投入だったのだろう。直後の64分には福森のロングフィードから抜け出した藤本が肩で落とし、後藤がミドルシュート。68分には小手川のクロスから後藤がヘディングシュートを放つが、これは梶川裕嗣のスーパーセーブに阻まれゴールを割れない。

これを防いだ徳島は、69分にバラルを下げて杉本太郎を投入。おそらくこれが徳島の勝つためのプランであった。

杉本太郎に託されたプランは大分のアンカーの丸谷をマークし、コースを消すこと。そして間延びした中盤と前線を繋ぎ、カウンターに転じるための中継役を担うこと。このプラン自体は目新しいものではないが、残り20分というのが実に嫌らしかった。大分は攻めながらもゴールが割れずに、より前がかりになるので攻守のバランスが崩れる。サイドからの攻撃は高さがないので一発はないから中央突破さえされなければカウンターで一発狙える、と考えての時間帯、選手交代であった。

 

実は試合開始時から中を割らせないための布石は既にあった。5+3のブロックの中でボールを受けさせないために、「3」の脇に入られた際にはIHとWBで大分は挟んでいたが、徳島はIH+シシーニョで対応。これによりシシーニョは左右を献身的に走らないといけなかったが、中盤2枚でクローズして中にパスを出させないようにしていた。それでも大分はすくないタッチ数で中を崩したが、ゴールを奪えなかった。これにより、岩尾憲とシシーニョのボール奪取からロングカウンターという前期にも食らった必殺の形が出来やすい状況になっていた。

80分にウタカから佐藤晃大に変えて高さを加えると、83分にカウンターから大分を押し込み、中央を杉本→表原と繋ぎ小西雄大が1stタッチで前を向くと右足一閃。徳島が土壇場で得点を奪ってみせた。

これが決勝点となり、0-1での敗戦という結果になった。

 

徳島の印象

前期での対戦ではやりたいことを互いに潰し合いながら、丸谷の不用意なタックルで数的優位を作られて敗戦。今回はやりたいことを気持ちよーくやらせて痛い一撃をくらって敗戦。どちらも見ごたえたっぷりだったが、今回のリカルド監督はややバクチを打ってきた印象が強い。タラレバになるが、もし前半のうちに押し込んだ大分が得点を奪ったらどうなっていたかは非常に興味深い。完成度の高い、主力が複数人抜けてもやることをしっかりと遂行できるチームなので崩壊はなかっただろうが、攻撃のデザインなどは見てみたかった。

90分をどう戦うか、残り時間でどう建て直すかがハッキリしていた監督と、それを粘り強くできる選手たちがいるチームはやはり強い。まさに完敗だと言える内容だった。悔しい。

 

喉は守れどゴールは守れず

試合後のインタビューでガラガラにならなかった片野坂監督。これは"ベンチ入り"した浅田飴のおかげ。しっかりと喉を守ってくれた。しかし、徳島の術にまんまとハマり、敗戦。「大分にボールを持たせても怖くない」というのがバレてからの3-1-4-2だったが、この日もそれを証明する形になってしまった。

だからといって一度引いてから何とかしよう!という短絡的なハナシではない。中を切られながらも中央から崩すことはできていたし、押し込むばめんが長く続いたことからも、決して通用しなかったわけではない。

最後の精度に文句も言いたくなるが、そこは札束の問題で、移籍ウィンドウも閉まっているため「掘り出し物」に期待するのはお門違いでしかない。

 

 

では今、何が必要か?

それは口酸っぱく言っているセットプレーのデザインと、競争力を取り戻す事だ。

セットプレー。特にCKから得点の気配は全く無く、今日のようにタコ殴りにしておいて無得点。手っ取り早く点が取れそうなのはセットプレーの他ないのではないか?と常に感じる。世界中ではリヴァプールスローインの専門コーチを雇ったりとしている。そういった所を見ても突き詰めていく必用があるのは明白ではないか?

競争力では、現状、正常な競争が行われているのは2トップの片割れ、三平のポジションのみだろう。不動のメンバーが実に10人にもなろうとしている現状では変化をつけられず、交代も臨機応変さに欠いている。前期ではスーパーサブ川西翔太や清本拓己、藤本など流れを変えられる選手が居たが、後半戦では未だにその役目を果たせる選手が居ないのも大きな問題だろう。

シーズンは残り12試合。全勝は難しいが、それにどれだけ近い成績にできるかはこの2点に掛かっていると考える。今こそ、30人でこの苦難を乗り越えてほしい。

 

 

【ハイライト】2018明治安田生命J2リーグ第30節 大分トリニータ vs 徳島ヴォルティス - YouTube