Nishida's diary

トリニータを中心にいろんな試合を。

【大分】vs松本(H) 層の違いを見せつけて〈J2 第39節〉

町田戦での悔しい敗戦から2週間。再び訪れた「天王山」は試合をコントロールし続け、1-0で勝利。点差は1しかなかったが、内容では大きく上回った大分。どう松本の攻撃を凌ぐかをしっかりデザインしており、会心の勝利となった。

 

この日のメンバーは以下のように。

大分トリニータ
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前節から1人の変更。國分伸太郎がベンチに下がり、キャプテンの馬場賢治がスタメンに。

この日で鈴木義宜がJ通算150試合出場。おめでとう。

 

松本山雅FC
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リーグ最小失点の松本は、橋内優也が怪我から復帰。左のストッパーに今井智基が入る。

試合の前から「前田大然とセルジーニョが怪我か?」とのウワサが出ており、またまたぁ~。反町さんのアジジ作戦か~?と思ったが、二人ともベンチ入りもせず。シャドウには石原崇兆岩上祐三が入った。

 

強みを生かして

キックオフ前から駆け引きは既に始まっていた。コイントスで松本のゲームキャプテンの橋内はエンドを変更。攻撃力のある大分が攻めた時にペナルティエリア辺りに日が射し込むように、という狙いがあったと思われる。

 

松本はボランチ藤田息吹が前に出ていき、ビルドアップの起点となる3バック+GKにプレスがかかるようにした守備。1トップの高崎寛之が鈴木にマークをするが、GKの高木駿にパスが渡されるとそのまま追いかける。それと同時に鈴木のマークを藤田に受け渡す。大分が焦れてロングボールを前線に放り込んでも松本のDFは高さと強さがあるため容易に跳ね返せる。また、大分がボールを持って押し込む時に左右のストッパーが前線に顔を出すため、それを制限する意味合いもあった。

それでは大分は3バックを飛ばしてWBにつける、という形を目指すが、両者共に3-4-2-1とミラーゲームになるためWBどうしがぶつかる。球際の強さは松本の方に分があるとして、大分の3バックへの制限を準備したのだろう。

大分のビルドアップが阻止できなければ、自陣で5-4-1でブロックを築き、スペースを潰す形で対応していた。

 

大分は3バック+GKの4枚での組み立てにマンマーク気味で対応されると、ボランチ丸谷拓也が最終ラインに入り、数的優位に立つと共に相手のプレスを剥がしつつ、松本は大分のビルドアップを許すか、前からハメていき強力な大分FWと自陣で1対1を作られるかを迫られる形となった。

 

松本は大分DFへのビルドアップの制限を緩めて、5-4-1の撤退守備でスペースを埋める。自陣で自由にボールを持てるようになった大分は、ボールを回してチャンスを伺う。

 

この日の大分は、敵陣でボールを奪取しても速攻は仕掛けずに味方の上がりを待ってじっくり攻めることを意識していた。

遅攻となるので松本にブロックを作る時間を与えてしまうが、大分はボールを動かして崩す事は今季、一貫して取り組んでいること。また、松本のカウンターの威力を殺す意味合いがあった。

松本のカウンター封じは攻守でのシャドウのポジションの違いを利用したもの。

守備ではシャドウの石原、岩上はサイドハーフとして振る舞う。

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そして攻撃に転じた際には高崎の近くでプレー。

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となる。

松本がボール奪取から全体を押し上げる際にボールを繋ぐ事ことよりもロングボールで高崎に当ててからセカンドボールを回収して一気に押し上げる形を取る。

もし大分が速攻を仕掛け、松本の守備に引っ掛かってカウンターを受けるとなると、シャドウは高崎の近くでプレーできるが、遅攻をすることで開いた位置でボールを受ける大分のストッパーについていかざるを得なくなり、カウンターに転じても高崎が孤立する。

大分がボールを持ってじっくり攻める時に、高崎は左右の繋ぎ役となる前田凌佑につく事で組み立ての邪魔をしていたが、出来ることはそれくらいしかなかった。

 

大分がボールを持って試合をコントロールしだした32分。ついに得点が生まれる。

右サイドを崩しにかかった大分は、三平和司パスミス。今井が回収するも果敢にプレスバックして三平が再びマイボールにすると、前田→丸谷→藤本憲明とテンポよく1タッチで繋ぎ、藤本はヒールでスペースにボールを置く。これに三平が利き脚とは逆の左で強烈なシュートを決めて、大分が先制。

三平は嬉しいシーズン10点目となった。

 

その後、スコアは動かずにリードして折り返す。

 

大人なゲーム展開

後半に入っても、松本は3バックからロングボールを高崎に当てて……という攻撃を目指すが、シャドウとの距離が変わらないため、バイタルエリアスクランブルを起こせないまま。ロングボールの出し手が角度をつけてサイドから放り込んでチャンスを作るが、波状攻撃とはいかない。

62分に松本は高崎を諦めて永井龍を投入。左右に流れてのプレーができる永井が入ったことにより、シャドウとの距離感が改善されてシュートに持ち込む形を作ることができた。しかし、CFとなる永井が左右に動くため、肝心な中央でのスクランブルは起こせない。波状攻撃ができずに単発での攻撃のままだった。

一方の大分は、ビルドアップの形を工夫して3バックに高木、丸谷、時には前田が絡んで前からハメてくる松本の網を掻い潜る。そうなると松本は撤退してスペースを埋める5-4-1に移行するので、ブロックを作らせてカウンターの威力を下げるというやり方を徹底。サイドからサイドへ、サイドの奥行き(CB↔️シャドウ)を使ってボールを動かし、相手がボールを奪いにくい、奪ってもカウンターがしづらい形を意図的につくる。

71分に大分は馬場、三平を下げて後藤優介、伊佐耕平を入れてシャドウのタイプを変える。同じタイミングで松本は岩間雄大岡本知剛。空中戦が少なく、パスが繋がらないためここを変えてきたのだろう。

 

その後、松本は3バックは固定しつつ、前線を増やして3-1-3-3気味にしたり

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下川陽太から三島康平へ変えて高さを増やして無理やりスクランブルを起こしにかかるが

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大分DFがしっかり対応。相手が前がかりになったのを見てカウンターから星雄次が惜しいシュートを放つなど、終始試合巧者ぶりを見せつけて1-0で勝利。天王山をモノにした。

 

松本の印象

力こそパワー、パワーこそ正義。

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キレイな京都みたいなサッカーだったが、セルジーニョと前田大然の不在が大きく響いた。上手さと早さがある両者がいないため前線でスクランブルが起こせない松本は次の策が全く見えないままただひたすらにボールを蹴り込む。ボコ蹴りサッカーで策を封じられるとしんどいなぁ、と。

フィジカル重視なサッカーのためか怪我人も警告も多く、終盤にベストな11人を組めない。J2でもこのサッカーは限界に近いとも感じるが、失点は少ないしなまじっか点が取れてしまう。それ故下手にカテゴリーが上がっても、強度の差でやられてしまう。J2では勝ち点が取れるためにカウンター、フィジカル重視のサッカーが続く。それはそれで楽しいならいいが、チームとしての積み上げがあるかと言われると、この日の試合をみると疑問符がつく。

天王山は落としたが、まだまだ自動昇格の可能性は充分にあるためここから踏ん張れるかは注目だろう。

 

層の違いを見せつけて

大分はこの天王山をモノにして、J2で単独首位に躍り出た。「準備不足」だったのは片野坂監督の喉くらいで(本人談)、今年は2桁得点が4人(後藤、藤本、三平、馬場)となり、岩田もスタメンに定着。選手層の厚さを1年を通して作り上げ、怪我も警告・退場も少なく、試合毎に様々なチャレンジをしての首位。感慨深い。だが、あくまでもこの試合も1/42でしかなく、まだ何も手にしたわけではない。混戦のJ2リーグで気を抜かずに残りの3試合、まずは上位対決の横浜FCを叩きたいところ。

 

また、この試合でトリニータJリーグ参入から20年で450万人を動員。大分市陸からビッグアイへと立地が変わるだけでなく、様々なカテゴリーで色んな試合を経験してきた。

明日の11/1でナビスコ杯戴冠からちょうど10年。2008年からは本当に激動につく激動だった。新たな10年を素晴らしい形でスタートさせるために、残り試合も全力で勝利に向かって取り組んでほしい。

 

【ハイライト】2018明治安田生命J2リーグ第39節 大分トリニータ vs 松本山雅FC - YouTube