Nishida's diary

トリニータを中心にいろんな試合を。

【大分】vs金沢(H) 積み上げたもの〈J2 第41節〉

苦しんだ。やはり終盤になるとどのチームも(ある程度まともならば)完成度が高くなる。金沢も大分対策をしっかりしつつ、どこを狙うかが明確で、大分は後手を踏みまくった。

そんなとてもしんどく、苦しんだ試合だったがなんとか勝利し、自動昇格への望みを繋いだ。

 

この日のメンバーは以下のように。

大分トリニータ
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この日も前線の組み合わせを変更。伊佐耕平と清本拓己が先発に入り、10月の月間MVPに輝いた三平和司小手川宏基がベンチスタート。

福森直也はこの試合でJ通算100試合出場。嫁さん(彼女さん?)綺麗だな!

三平も月間MVPのセレモニーで三平父と嫁さんとパシャリ。三平息子に転生したい。羨ましい。

 

ツエーゲン金沢
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こちらは1人の変更。ボランチ梅鉢貴秀から大橋尚志に変えてきた。

前回ではWBにマンマークを敷かれて、清原翔平にやられかけた記憶。ヤンツーが監督と難しいゲームになるんだろうな、嫌だなぁ……って思ったり。多分コケるならここなんだろな……ってちょっと弱気になりつつ観戦してました。

 

中→外にやられかけ

この日の金沢は、3-6-1の大分に対して4-1-2-3でマッチアップを明確にするという愛媛などがやってきた大分対策に工夫を加えて、大分のDFを動かし、深い位置でスペースを作り出した。

金沢はボールを奪うと大橋がアンカー気味になり、SHの清原とボランチの藤村慶太が内側に絞り、4-1-2-3に可変。

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これまでのチームは3トップの左右(ここでは加藤大樹と杉浦恭平の位置)は左右に開いて大分のWBにぶつけることが多かったが、金沢は左右のハーフスペースに3トップを置き、藤村と加藤、清原と杉浦が同じレーンに入る事をしてきた。

この中央に人を寄せたことにより何が起こったか。大分のWBは意図的にフリーにさせられ、3バックは外側に引っ張られやすくなってしまった。

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金沢の3トップは内側に寄っているため対面するCBが監視するが、加藤と杉浦はゴールから逃げる動きでCBを引っ張る。

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杉浦が福森を引っ張り出すと、杉浦が居た場所に清原が上がっていき数的優位になる。

この場合、清原に対して星雄次がチェックに行くか、福森から杉浦のマークを引き継いでいくかになる。

星が内側に絞ると金沢のSBの石田峻真がフリーになりやすくなり、馬場賢治が石田にマンマークでつけば、大分がボールを回収した時に重心が上がりにくくなる。

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杉浦のマークを引き継ぐ場合は背後を取られた形での対応になるため、処理が難しい。

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ただ守るだけなら星と松本怜がベタ引きの5バックで構える事で対応はしやすくはなるが、それでは大分のやりたいサッカーはできなくなる。

 

この内→外に出るシャドウのような動きをする3トップの対応にあたふたする間に、9分にはCBから杉浦へクサビが入り、ワンタッチで清原に落とす。清原はこのクサビ→落としの間にオーバーラップした石田にパス。石田はフリーで受けるが福森に処理をされてしまう。

この場面では星が清原へ寄せていたため大外ががら空きになり、福森は杉浦から石田へとマークをずらす必要に迫られた。もし、石田が福森を振りきってしまえば中では福森が離した杉浦が浮きニアから崩されていたかもしれない。横ズレを意図的に起こさせて1枚剥がせば即ピンチになる形は、特に前半の序盤から見受けられた。

 

また、ただ大分のWBに中切るか外で受け渡すかを迷わせるだけでなく、大分のWBに金沢のSBをぶつける事でより混乱させようとしていた。(嫌がらせか!)

金沢はビルドアップでSB-同サイドのCBでパスを回し、大分のブロックを作らせつつボールに寄せる。ある程度逆サイドのシャドウ(沼田-山本からみて馬場、石田-庄司からみて清本)がコースを切りに寄ってきたらCBから逆サイドで高い位置を取ったSBへ展開してWBを引っ張り出す。SBの対応をWBがするとまたしても中で誰かが浮くのでズレが生まれる。

柳下監督は前期の対戦前のプレビューショーで「大分のストロングは両サイド。そこをシバけばなんとかなる」的な事を話していたが、まさにそれをやってきた。

 

このWB絶対攻略するマンとなった金沢に対して大分はアタフタ。誰が誰をみてどのスペースで奪いきるかが曖昧になり、崩壊しかけた。しかし、金沢はアタッキングサードでの質が高くなく、ミスが多かったためスコアは動かず。

片野坂監督も「ヤバい!」と思ったのか4バック気味に守備をする。馬場賢治をシャドウ的な位置から左のSHへとやや下げて、清本が伊佐と並びふんわり4-4-2っぽい形にしてサイドを補強。

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2トップがサイドに追い込み低い位置でのサイドチェンジを阻止し、馬場と松本怜がSBをピン止め。

金沢が自陣でボールを回せばこの4-4-2、大分陣内に侵入してきたら5-4-1のブロックを作る形で対応できたことで、一応は守備の混乱を防ぎ、落ち着く事はできた。

 

しかし、大分はこの変更により、攻撃で重要度の高いバイタルエリアで人数をかけて中央から崩す事が難しくなり、SHの馬場と松本の位置で回収されてしまう。ならばとSHに高い位置を取らせてバイタルに近い位置でプレーができるようにと4-1-2-3へとまたしても変更を加えた。(大体25分くらいから。たぶん。)

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これにより、サイドに飛び出す金沢SHは大分のSBが監視、SHの後ろから出てくるトップ下はCB、1トップはアンカーとCBが受け渡して見る、と対応をはっきりさせることに成功。

 

この日の金沢は3バック脇の攻略を執拗にするだけでなく、丸谷拓也に対して藤村をマンマークでつけてきていたため、中央からのビルドアップの制限も試みていた。それをみてアンカーに丸谷ではなく前田を配置。二人は相互にDFラインと中盤でそれぞれ被らないようにのらりくらりとプレー。25分からは丸谷を2列目、前田をアンカーにすることで藤村をゴールから遠ざけて金沢のやりたかった大分のビルドアップの制限も緩くなる。

30分からは大分がチャンスを作り出すようになったが、これは金沢のダブルボランチのマークが被ったり、藤村と大橋が共に大分のビルドアップの制限のために前に出て2ライン間が間延びをしてしまい、下がってクサビを受けに来た清本や馬場にボールが入るようになったから。

多くの駆け引きがありつつも、ゲームの入りで後手を踏み、細かい修正を加えながらなんとか無失点で折り返すことができた。

 

ハイリスク・ハイリターン

後半に入っても大分は前田と丸谷の役割を場面によって切り替えて丸谷のマンマークを剥がしにかかることに加えて、伊佐が左右に流れてサイドの高い位置で起点になるような動きをみせる。すると後半頭の49分。伊佐がそのサイド深くでボールを奪って馬場にパス。馬場は藤村からプッシングを受けたとしてペナ角という絶好の位置からFKを獲得。清本のインフロントのボールは、ファーでフリーになった鈴木義宜がヘディングで決めて劣性の大分が先制点を奪う。苦手なセットプレー(今季これで8点目?)でDFが初得点。岩田とか決めんかい!とは思うが、後半頭で脈絡なしでガツーンと決めた。

が、10分も経たずに自陣からのFK→垣田がヘディング→杉浦シュートでこぼれ球を清原に決められて同点。

つい都合の良いゴールが決まると「もらった!」となるが、おじいちゃん、前節も同じ展開があったでしょ?って感じで同点にされてしまった。うーむ。

 

得点でちょっと有耶無耶になりかけた金沢の後半の修正は、ビルドアップで4-2-2-2のように。

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2列目の加藤、清原が内→外へ飛び出すことは変わり無かったが、彼らが空けたスペースにFWが下がって(ロングボールには競り合いに強い垣田、ショートパスでは杉浦)CBを引っ張り出そうとしていた。また、ビルドアップで大分にボールを回収され、守備に回るときにダブルボランチが横並びでセットされている状態になりやすいので、丸谷と前田を監視しやすくなった。

これを見てか大分は丸谷を最終ラインに、前田をアンカーにして揺さぶりをかけるが乗ってこず。

 

拮抗したゲームで大分は大博打に打って出た。66分に馬場→三平和司と共に丸谷→川西翔太。チームの軸となる丸谷からドスケベな川西投入で「勝ち点3を取るぞ」とメッセージ。しかしこれは、大分にとっては攻守のバランスを崩すきっかけになる、リスクの高い変更であった。

 

川西投入のリスクは投入直後にすぐに表れてしまった。69分に右サイドでロングボールを伊佐が落とし、松本が受けると大外を岩田が回り、三平と星は中に飛び込み清本はペナルティアークほどでサポートに。松本のクロスは精度を欠いてボックス内で弾かれると、中央で川西が落下地点を見誤りヘディングを空かしてしまう。6人も前に人数をかけて攻撃し、第一のフィルターとなるのが川西の役目のひとつであったが、ここでの安易なミスからボール回収をできずに背後の垣田にボールが入ってしまったのだ。縦に速い金沢は垣田が福森を引き付けてボールを落とすと上がってきた大橋から裏へパス。垣田と清原、杉浦が鈴木と1vs3でカウンターを受けるという最悪の形で即失点になりうるミスだった。

71分にも同様の形からバランスが崩れて数的不利なカウンターを受ける。相手の精度に助けられたが、本当にギリギリの場面だった。

 

77分に金沢はスピードを生かせなくなった加藤を下げて金子昌広を投入。大分のビルドアップをする4枚(3バック+高木orボランチ)に制限をかける強度を下げたくなかったのだろう。

大分は金沢のビルドアップへの制限に警戒をしつつも、時間と共に金沢の前4枚の制限とフィルター役のダブルボランチの間が間延びしてくることは承知済み。これは大分のビルドアップがジャブのように効いてきていることの証左であり、次第に川西が生きてくる。

金沢の前4枚とダブルボランチが間延びをすると、ボランチ脇にスペースができ、大分のWBが高い位置から攻撃に絡むことができる。川西が中盤でボールを受けて時間を作ると、金沢の選手はボールを回収するためにプレスにいくが、川西はドスケベなのでヌルヌルとかわしてしまう。中央で1人かわすということは、必然的にダブルボランチを片方を剥がすということ。一枚剥がすともう片方のボランチも川西と対峙しないといけないため、相手は2ラインが崩されてしまう。と、なれば川西☆タイム!

両チーム疲労が溜まる80分から川西がボールを持てるようになり、金沢の寄せをひらりひらりとかわしていく。どこまで川西に寄せて良いのかを考えるうちに金沢の選手たちの身体だけでなく頭も疲労させる。じわりじわりとゴールに近づいていくと86分。右サイドの松本から川西にペナ角→ペナ角へとボールが行く。ボールを受けた川西はボディフェイントからカットインをしてファーサイドに巻いたシュートはゴールに吸い込まれて勝ち越し!川西にしかない間合いで相手ボランチは完全にDFラインに吸収されていたし、対面した大橋には一度ショートコーナーから縦を見せていたという伏線込み込みでのゴールは実に痛快だった。

試合はこのまま2-1で勝利。最終節に勝利で自動昇格という所まで来ることができた。

 

金沢の印象
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ぜんぜんスイートでもはにかんでもなく、相手の構造の骨格から殴ってくるシンプルな悪魔でした。本当にやられかけた。

戦力差はありつつも、しっかりとやることを叩き込んでピッチに送り込める名将だと思う。来期も続投という事で、他のJ2チームをいじめてほしい。あわよくばそれを上のカテゴリーから覗きたい。

しっかりとやることを叩き込んではいたが、最後のアタッキングサードに入った時。相手をうまく釣りだして……からの動きにはやや疑問で、CBをサイドに釣りだしたけどニアに飛び込む人がいないとかの細部までは煮詰まっていないのかな、とは感じた。そこのバリエーションがあればおそらくやられていたので助かったな、と……

良いチームだった。

 

「勝つだけ」という難しさ

あと1勝。あと一つ勝つだけで自動昇格というチャンスに幸いにも大分はたどり着いた。しかし、大切なのはここで勝てるかどうか(身も蓋もないが……)。そのためにどうするか。いままでやってきた1年間の継続を見せつけるだけだ。何一つ特別な事は必要ない。

 

この日のコレオはこれ。

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これは10年前のナビスコカップ決勝でしたデザイン。クラブ創設からここまで本当に紆余曲折あったが、それまでにクラブが積み上げたもの。あれから10年で色々ありましたね。トリニータが今年1年、そしてこれまで積み上げたもの全てを出してほしい。

 

……とは思うが、いつも通り、全力で。最高のトリニータを魅せてほしい。

【ハイライト】2018明治安田生命J2リーグ第41節 大分トリニータ vs ツエーゲン金沢 - YouTube