Nishida's diary

トリニータを中心にいろんな試合を。

【大分】vs鹿島(A) 片野坂サッカーVer.4.0〈J1 第1節〉

物語はハッピーエンドがいい。それは誰しも思うこと。しかし、サッカーで、スポーツで、人生で、全てが上手く行く事なんてそうそうない。Jリーグでそれを一番知ってるのは多分、トリニータだ。だからこそ、このJ1という晴れ舞台での久しぶりの勝利は格別だった。

 

ひさびさのJ1。順位予想は軒並み最下位か降格が占め、開幕はACL王者の鹿島。そして対戦成績では7連敗中と、さすがに開幕は引き分けられれば上々のスタートかなぁ、なんて思ったが、トリニータは継続してきたやり方で見事に鹿島を圧倒してみせた。

 

この日のメンバーは以下のように。

鹿島アントラーズ
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J1……ビッグネームが多く、町田でめっちゃアシストしてた平戸太貴もベンチ!?層が厚いなぁ、これが1部の上位か……といった面子。

それでも鈴木優磨や伊東幸敏、小田逸稀、中村充孝白崎凌兵が離脱と、昨年から怪我人が多い印象。

開幕前にACLプレーオフに出場。そこから先発は2枚変更をして町田浩樹から犬飼智也土居聖真から遠藤康になった。大分からするとプレースキッカーの遠藤と高さの犬飼が来るからセットプレーが怖いなぁ、と。そしてプレーオフって聞くと胃がキリキリする……

 

大分トリニータ
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大分は開幕がもちろん今年初の公式戦。

昨年からGK、3バックはそのままに開幕からティティパン!?それも丸谷拓也外すかぁ~!と。左右は予想通りの馬力のある2人。シャドウは新加入の伊藤涼太郎と小塚和季。伊藤も結構ビックリした。1トップは藤本憲明

「J2オールスター」と呼ばれた補強により層が厚くなり、庄司朋乃也、オナイウ阿道馬場賢治でもベンチスタート。伊佐耕平や小林成豪、三平和司はベンチにも入れなかった。

 

 

慣れるまで、慣れてから

開始から10分の大分は、これまで続けていたGKを含めたビルドアップはそのままに、「受け身にならないこと」に重点を置いていた。

そのため、ボールへの寄せの速さ、強度を重視。攻守の切り替え、特に奪われてすぐ(ネガティブトランジッション)でのボール狩りを行ってメンタル面で呑まれない事に重きを置く。しかし、相手はJ1の鹿島。競技レベルも上がれば判断や技術も高く、大分のサイドで鹿島がボール奪取をするとティティパン、前田凌佑のダブルボランチがボール狩りを行い、バイタルエリアがガラ空きになる場面も散見された。

また、ビルドアップでもGK→CB→ボランチorWBと各駅停車が多く、鹿島の網を張ったボランチやWBの位置で前が向けない、剥がせないという窮屈さも感じ取れた。

しかし、1つのプレーで大分は自信を持ってプレーができるようになった。この日最初のビッグチャンス、11分の高木駿のロングフィードから藤本が裏抜け→GKと1対1を作った場面だ。この後、何度か見られる藤本のDFに競らせて背後を狙うパターンは、昨年にも多く見られた形。対峙する相手DFは藤本が競る事を前提に身体を預けるが、藤本は一歩下がったり、身体を先に入れたりして相手を往なして広大なスペースを使う。

去年にも似たような形が。こりゃやらしいわ……

 

鹿島の狙い、誤算

この日の鹿島の守備の狙いは明確で、大分のビルドアップに制限をかけて横圧縮。ショートカウンターで仕留めたい、というものだったと思われる。

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まずはビルドアップの起点となる3バックに2トップの伊藤翔セルジーニョで制限をかけて前のパスコースを消す。そしてセルジーニョの逆サイドを遠藤康(この図では大分の右サイド、鈴木・岩田・高木でボールを回していることを想定)がフタをして3バックに3枚ぶつける。これにより、大分は最終ラインから無理にボランチにつけても対面する鹿島のボランチが質的に上回り、サイドに浮き球を配球してもタッチラインを割ったり、横にスライドをして対応ができるため、大分のビルドアップを封鎖できると考えたのだろう。

ここまでの鹿島の想定は、1stDFが上手い伊藤翔を起点にマンマーク気味に。選手の質で上回ることができるので優位性が保たれる。逆サイドに展開されても危険度は低く、横スライドで対応をすればOKといったものだ。

しかし鹿島はこの質的優位を過信していたのが大きなアダとなる。それは高木駿という個の上手さだった。

この日の高木は本当にスーパーで、自身が常にフリーマンであることを生かした配球が冴え渡っていた。鹿島は3バックに3枚をぶつけたが、大分はビルドアップの出口を2つ準備。1つはボランチの片方が落ちて数的優位を作ること。鹿島のボランチがこれに釣られて前に出ようものなら大分の2シャドウに背後を取られるため迂闊に寄せられない。しかし、これもよくあるビルドアップの形なので鹿島もそんな単純な誘いにはもちろん乗らない。が、鹿島にとって一番厄介だったのがもう1つの形、GKの高木駿のビルドアップの参加だ。

3バックに3枚がそれぞれ監視をする鹿島だが、さすがにGKにまでマンマークはつけられない。なぜなら、それをしてしまうとフルコートの1on1になってしまい、走力!体力!気持ち!が重要になってしまうため、質的優位を保てない。どうしても横スライドだけでは選手を追えず視線を切られてしまう。高木にプレスに行きたいが、全体で意識の共有をしないといけず、細かいDFラインの調整も必要になるため、高木は絶対的なフリーマンになる。そして大分は、高木にフリーマンとしての明確な役割が与えられていた。

高木の役割は「1つ外の選択をする」事だ。GKから1つ外のWB、1つ前のボランチ。そして鈴木と横並びになり1つ外の岩田……といったように、ボールの逃げ道を作る役割だ。この日の高木がスーパーだったのは、ワンタッチでボールを逃がす事ができたこと。DFからバックパスをもらって、鹿島の前線が詰めてくる。それでもどこにフリーな選手が居るかを正確に見極めて少ないタッチで配球をする。それにより鹿島の網を崩してしまったのだ。

絶対的なフリーマンが正確に配球をする。これにより、鹿島は前線での質的優位はあるが常に1人多く見ないといけなくなるばかりか、1つ外のパスをされるために、目線も切らないといけなくなった。

 

誤算続きの鹿島、慣れた大分の次の策

「高木駿が捕まえられない」

これにより鹿島は前線からのプレスからミドルサード敵陣寄りに1stDFの位置を下げる。それにより大分のDFラインは解放され、低い位置でのビルドアップでは高木が左CBとしてプレーすることができた。

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15分まではアグレッシブさで相手に息をさせない守備を心掛けた大分は、ビルドアップが高い位置でできるようになることで、次の手を打つ。

この試合、解説の岩政大樹さんが話していた「伊藤涼太郎のポジショニングが低い」と指摘していた所がミソだったように思われる。ビルドアップの位置取りができた大分は、ボールの位置によってミスマッチを生かすだけでなく、ポジションを動かして中央での数的優位を確保していた。

 

最終ライン~ミドルサード自陣寄り

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高木が1列上がり前線で数的優位に立つ事を目標にする。前田とティティパンは高木の動きに合わせて関係を縦横で使い分けていた。

 

ミドルサード敵陣寄り~

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カウンター対策のため高木は下がり、鈴木義宜と福森直也の間に前田orティティパンが入って守備の強度を確保しつつ、中盤には伊藤が落ちて、左右のWBを高くする。小塚は2列目でボールの繋ぎ役としてバイタルエリアで浮いたポジショニングをする。

このときに、鹿島は4-4-2なのでミスマッチは起きないが、大分のポジションチェンジについていけず、アタフタしていた印象。

鹿島DFからしたらCBが見るはずの伊藤涼太郎が自分のテリトリーから外れてわざわざ鹿島ボランチの網にかかっているように、鹿島のボランチは自分たちのコース切りによって大分のボランチをDFラインまで下げさせた、と錯覚をしてしまう。が、鹿島のSHは福森、岩田にプレスをかけられず、「自分は今、福森(岩田)を見るべきか、下がってSBのケアをするべきか」の判断を迫られ、いつの間にかサイドで数的不利に陥る、という具合に。鹿島の永木亮太は異変を感じてややサイドに寄っての守備をしたが、そうすると中央でレオ・シルバ伊藤涼太郎とティティパン(or前田)の2枚を見なければならなくなり、鹿島はチームとしてどう守備をするのか、整理が全くできていなかった。

大分はビルドアップの確保からミスマッチをスタートとするポジション移動により鹿島の守備を混乱させることができた。

 

アタッキングサード

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アタッキングサードに入ってからは、伊藤は再び前線にアタック。サイドは高く、左右のCBのどちらかが攻撃にも関わる。

守備の混乱を起こしている鹿島は、時間差で上がる伊藤涼太郎を誰が見るかが明確でなく、DFラインがガタガタになっていた。大体の場面でアタッキングサードに侵入した後でもボランチが伊藤にチェックに行けていたのでそこまでの問題にはならなかったが、これにより大分は鹿島のボランチの片方のピン止めに成功。ボール奪取の上手い厄介なレオ・シルバを大分のダブルボランチが監視することにより、被カウンターの準備もできた。

被カウンターの準備は以下のような形で行われていたように思われる。

 

伊藤涼太郎が永木をピン止め

②中盤でレオ・シルバに奪取されると大分ボランチがアタック

③そこで刈り取れなくても近いポジションの選手(ボランチの片方、WB、CB)が再びボール回収を目指す

(④)逆サイドのWBは急いでカバーリングに入る

 

後ろから作り前まで運ぶ。前で奪われても即時回収を目標にできたことにより、守備の強度を保つ事ができ、結果として先制点も奪う事ができた。

 

18分の先制点の形は、鹿島のプレスを受けない位置から福森が前線へパス。一度はチョン・スンヒョンに弾かれるが、こぼれ球を前田→伊藤→小塚と繋ぎ藤本が逆足ながら冷静に決めて……というもの。チョン・スンヒョンが弾いたあとの永木のポジショニングが外に寄っており、前田はフリーに。伊藤も1列前で浮いたポジションに居る。伊藤にボールが入った時点でチョン・スンヒョンは藤本と伊藤を見なければならなかったため、ラインが上がることを信じてボールにチャレンジも、少ないタッチ数で藤本がエアポケットに侵入。鹿島の右SBの安西幸輝が慌てて寄せるも藤本は冷静にフィニッシュ。準備したものが上手くハマり、持ち前のパスワークを生かしてのフィニッシュ。完璧な先制点だった。

 

藤本はこれでJFLJ3、J2、J1で開幕ゴール。念願のやべっちF.C.にも解説するっちで出演もできた。J1ってすごい。藤本はもっとすごい!

 

先制後の大分、鹿島のアクション

先制後の大分はボール喪失後の即時回収からラインを下げて守備では5-4-1を敷いた。この5-4-1は、今までのような5+4ブロックの構えての守備、というよりはボールホルダーには強く行き、空いたスペースをスライドで埋める様な形であった。これにより構えたままでの5+4ブロックではフリーにさせてしまう相手のSBにも強く行く事ができた。

一方の鹿島は、スタートからSHに逆足になる選手を配置。右サイドに左利きの遠藤康、左サイドに右利きの安部裕葵を起用して、そこにボールが入ると逆サイドの選手が絞って3バックに3枚をぶつける。

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この場合では左サイドの安部にボールが入った場面を想定。サイドに逆足の選手を配置することによって対面する大分のWBを抜かずともカットインからニアサイドのFWに足下に出す、インスイングのクロスで飛び込ませる、自らカットインをして大分のWBを内側にずらして大外からSBを上げる、といったように様々な選択肢を持てる。実際、カウンターから高山薫が千切られてあわや失点!な場面もあった。そして5+4ブロックでは、WBが抜かれてしまうとCBがサイドに引っ張り出され、ファーサイドでミスマッチが起こりやすくなる。そういった狙いが鹿島にあった。

これにより大分の先制後は落ち着かせるつもりが押し込まれる流れになってしまった。

これに対して大分もリアクション。

ボールと逆サイドのシャドウを内側に寄せて3センターに近い形に。鹿島の前3枚の前に大分の中盤が3人でコースを消すことで、ニアサイドへのクサビを封じた。

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また、明確な3センターにはせず、シャドウの選手は少し遅れても良い、という判断にしたことにより、攻撃に転じた際に重心が重くなり、鹿島のプレッシャーに圧されることを事前に防いだ。

その後、鹿島も35分ほどからSHをスイッチさせてSBとのタテの関係で崩しにかかるも、最後のところで大分が踏ん張り、前半を大分が1点リードで折り返す。

 

生かされた高さ

後半に入り、変化を見ていきたいな……と思っていた矢先に試合は振り出しに戻る。48分にハーフライン近くからのFK。ゾーンで守る大分だったが、永木が山なりのボールをファーサイドへ。大外から犬飼智也が頭で落とすと、伊藤翔がしっかりと詰めて同点に。鹿島は「高さ」という絶対的な優位性を生かした。

 

後半からの変更点

鹿島は後半から、カウンターで幅を使うことを意識。ボールに対して強く来る大分の中盤の背後を取って位置を確保したかったのだろう。しかし、みえたのはそれだけ。サイドに振っても、中の動きが整理されているわけではなかったこともあり、あくまでも個々の裁量に任せる、といったスタンスか。

 

一方の大分は、藤本の裏抜けが思いの外ハマったため、GKを含めた最終ラインから1発を狙いつつ、じっくりとボールを回して鹿島の陣形を崩す、というゲームプラン自体の変更はなし。前半との違いは、中盤と前線の繋ぎ役としてプレーをした伊藤涼太郎の役割を、小塚和季にも求めた。大分は前半からWBを高くして押し込む事はできたが、WBがビルドアップに関わると中盤で鹿島の選手たちに奪われる場面が見られた。そこで、WBにボールが入った際には、同サイドのシャドウが近づいてパスコースを作り、逆サイドのシャドウはFWとしてプレー。2トップ気味にしたことで鹿島のCBをピン止めしつつ、サイドで数的優位を作ることを求めていたようだ。

 

先手先手で主導権を奪う

ボールの位置によって入れ替わり立ち替わり選手が目まぐるしく動いていた大分。選手交代でも先手を打って勝ち点3を奪いに行く。

62分に伊藤涼太郎を下げてオナイウ阿道を投入。オナイウは藤本と2トップを組んで3-1-4-2へとシステムを変更した。

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2トップにしたことにより、相手のCBと1対1が2つできることになったが、相手のSBがフリーになりやすくもなった。そのため、守備ではチーム全体が下がってプレー。5-3-2でブロックを作った。

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高さに優位性のある鹿島に対して、引いて守るという選択は危ないのでは?とも感じたが、鹿島のSBからシンプルに前線へ放り込む事はそれほどなく、SH-SBが連携をして大分のサイドの深い位置を狙う事を第一目標にしていたようだ。SBがフリーになった鹿島は、引いた大分を押し込んでいく。大分にとってもオナイウ投入からの5分間はセカンドボールを回収されてボールを持てない我慢の時間が続いた。

押し込む鹿島は、SBが高い位置でプレーをすると、SHはハーフスペースに絞り、FWは下がってのポストプレーで大分のDFラインを崩しにかかる。鹿島が優勢に見えたが、それこそが大きな狙いであった。

鹿島のSBが高い位置を取るということは、必然的にDFラインも高くなる。鹿島の2CBは共に高さはあるが速さはそこまでない。そして、広大なスペースを生かしたロングカウンターができる藤本、オナイウが2トップ。どちらかが対面するDFを抜いてしまえば広いスペースで2対1を作れる。そして大分の最終ラインがビルドアップを阻害されても高木のロングフィード1本で状況をひっくり返せる、と踏んだ。

69分にこの狙いは得点という最高の結果で実を結ぶ。高くなった鹿島の最終ラインを引っ張り出すために高木が1タッチでサイドにボールを入れる。オナイウはチョン・スンヒョンを背負うと、ボールはチョン・スンヒョンの頭上を越えてオナイウは一気に裏へ。目測を誤り背後を取られたチョン・スンヒョンのカバーに犬飼が入り、なんとかディレイを試みるが、オナイウはアウトサイドでGKとDFの間にスルーパス。あとは裏抜け大好き藤本がワンタッチで冷静に決めて再びリードを奪う。

 

これまた似たような形が去年にもあった。

ハイライトでは映っていないが、GKの高木からロングフィード1本で抜け出して2対1を作ってゴール。必殺の疑似カウンター!

 

試合の閉め方

失点直後に鹿島は安部裕葵から土居聖真を投入。大分もその2分後にティティパンから丸谷拓也を入れた。

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大分は丸谷をアンカーに据えてGK+3バック+3センターでビルドアップを行い、WBを高くして前線で幅を取りつつ鹿島SBのピン止めを、守備では5+3ブロックで中を閉めて、オナイウを遊軍としてプレーさせた。中を閉められた鹿島は外→外と前進はできてもゴールまでは迫れなかった。

苦しくなった鹿島は、76分に遠藤康→山口一真、89分に永木亮太レアンドロと相次いで攻撃的なカードを切ってパワープレーに。

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5分というなっがーいアディッショナルタイムを大分はなんとか凌ぎつつ、90+3分に警告を受けていた前田凌佑から馬場賢治を投入。あくまでも最後までアグレッシブさを要求した。

そして、試合終了。大分は2006年以来の鹿島からの勝利。そして県立カシマスタジアムで通算2回目の勝ち点3を手に入れた。

 

鹿島の印象

決してノープランではなかったが、横圧縮が効かなかった時の次の策が「幅を使う」のみだったのは苦しかった。しかし、選手の個の能力の高さ、判断の正確さはやはりJ1クラスで、非常に厄介。悉く最終ラインをぶち抜かれ、決定的な場面がたくさんあったが、クォン・スンテが最後の砦となり守備の崩壊を防いだ。FWからしたら最後まで動かないGKってとてもやりづらい……。永木亮太も上手くプレスがハマらない中で全体のバランスを見ながらなんとか中盤で奪いきろうと頑張っていた印象。レアンドロがあと10分早く出てきていたらサイドをゴリゴリと抉られて劣勢になっていたかもと思う。ゾッとする。

 

片野坂サッカーVer.4.0

4年目となった片野坂サッカー。この試合は昨年のサッカーをベースにしつつ、ボールの位置を基準にした細かな決まり事を設定。選手交代でフォーメーションを変えるなど、どの采配をとっても意味があり、90分を通して「主導権を握る」「常に能動的に、先手を打つ」事を徹底。そのチャレンジが久しぶりのJ1、それもアウェイの鹿島戦で、開幕から魅せてくれた事。そして、J3から共に駆け上がってきた選手たちがJ1の舞台で堂々とプレーをし、勝ちきった事がとても痛快であった。

 

3-4-2-1をベースに、昨年の夏ごろの躓きから導入された3-1-4-2(3-3-2-2)も織り混ぜて戦術的な幅を広げつつ、構えての守備からアグレッシブな守備へと形を変えた事は、開幕からの大きなサプライズであった。

この日の大活躍でメディアにも大きく取り上げられた藤本憲明。そんな彼でも、次節もスタメンである保証は全くない。片野坂監督は狙いによって選手起用も大きく変わるからだ。「次は何をやってくれるのか」という楽しみに、今年は「J1でどこまでやれるのか」という新たな、そして大きな期待感がある片野坂サッカー。その変化をこれからも追っていきたい。