Nishida's diary

トリニータを中心にいろんな試合を。

【大分】vsC大阪(H) それぞれの現在地〈ルヴァン杯グループC 第1節〉

ひさびさの!ヤマザキナビスコカップ!じゃなくてルヴァンカップ!!!天皇杯以外のカップ戦をみると「あぁ、J1なんやなぁ~」とじんわり感じる。

ルヴァン杯の特徴はスタメンの1人は必ず21歳以下の選手を登録しなければならない事。そして、チームによりけりだが、リーグ戦に出場できていない多くの選手がみられる点が魅力だ。ルヴァン杯初戦に出場できるようにとU-18の矢野太一、西城響也、工藤大雅の3選手が2種登録でトップチームに登録もされた。

この日の大分は、選手のそれぞれの立ち位置、チームとして要求された役割をどれだけできるかの確認の場であった。

 

この日のメンバーは以下のように。

大分トリニータ
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先週末の松本戦から11人全員を入れ替えた大分。小島亨介と長谷川雄志はプロ初の出場。小林成豪も移籍後初の出場に、オナイウ阿道、高畑奎汰は初スタメンと初物づくし。

高畑奎汰はU-21でのスタメン枠としての扱いという側面もあっただろうが、先週末のプレーを見る限り、戦力として期待されてのスタメン起用だろう。

3バックは岩田智輝、鈴木義宜、福森直也の3人以外では三竿雄斗刀根亮輔は怪我、庄司朋乃也は契約の関係で出場できないこともあり、丸谷拓也が右のCBに入った。

 

セレッソ大阪
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昨年も手に汗握るひりひりした試合をしたロティーナ監督率いるセレッソ。開幕の神戸戦では左利きの舩木翔を右のWBに置いたりと、何か企んでる感じがビンビン。この日も右利きの松田陸を左WBに置いてきた。

セレッソもスタメンは木本恭生以外は全員ベンチやベンチ外の選手ばかり。それでこのメンツってやっぱりJ1やなぁ……とひしひしと感じた。

U-21枠ではCBの瀬古歩夢を起用。J3に参戦しているU-23チームで昨年も活躍していたらしいし、嫌な存在になるのかな、と感じていた。

スタメンに丹野研太、ベンチに清武弘嗣も居た。久しぶり!

 

基本の確認

この日の大分は、対戦相手のスカウティングをして想定した場面毎に選手がその日の任務を遂行するというよりは、「自分たちがやりたい事ってこんなだよね」という確認の意味合いが強かった印象。このような強度を弱めた中で選手がどう振る舞うのかが見られるのがカップ戦序盤の醍醐味かもしれない。そのため、個々の戦術理解度がどれくらいのものかや、攻守の決まり事を確認しながらのゲーム展開になった。

 

組み合わせの工夫

大分は基本の確認をしつつ、スタメンの選手にも「選手層の底上げ」を期待されていたと考えられる。

大分は基本的に3~4人の関係性を大切にしている。それは大分が「ボールを大切にするチーム」だからだ。近年ではバルセロナポゼッションサッカーの基礎として「三角形を作る」ことからフォーメーションとは違ったユニット論も重要視されるようになった。ボールホルダーは味方の一番近いポジションの選手の動きがわかれば、相手から多少の圧力を感じても選択肢を減らさないで済む。それだけでなく、フォーメーションとは違ったユニットでの大胆なポジションチェンジによって、相手を崩す意図もある。

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この日の大分のスタメンは、昨年からのメンバーが6人、新加入が5人とほぼ半々。昨年からのメンバーで公式戦で始めて見るのは岡野洵が右CBではなく中央だった事のみ。そしてどこで三角形を作っても必ず1人は既存のメンバーが居る配置であった。この狙いは、新加入選手がチームの約束事を守れなかった時の保険という意味合いと、ユニットで新加入の選手が機能できるようにするための配慮であったと思われる。

 

攻守の約束事

攻守でフォーメーションを変える事で、その日の狙いがぼんやり見えてくる大分。

攻撃ではWBを高くして幅を取ってボランチの背後にシャドウが落ちることによってサイドの攻略を第一に、外から中に揺さぶりをかけようとしていた。

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攻撃の時にWBを高くするため、背後は狙われやすい。そのケアを高畑奎汰と丸谷拓也が担い、中央では長谷川雄志が1列下がりプレーメーカーとして振る舞った。

 

守備では敵陣と自陣の2パターンで変化。

敵陣では5-3-2で前からプレスをかけてサイドに誘導。

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それを掻い潜られて自陣での守備では5-4-1でスペースを消す。

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基礎の基礎はこんなに感じ。

 

セレッソの狙い

今年からロティーナ監督を迎え、3バックを軸にするセレッソ。リーグ開幕戦で左利きの舩木翔を右WBに置いていたが、その狙いは全くわからなかったが、この日も「逆足WB」を採用。右利きの松田陸を左WBで起用してきた。

守備では5-4-1のブロックでボールサイドにボランチ2枚がコースを切って同サイドのシャドウがボールホルダーへ寄せるような形をメインにしていた。

 

主導権は握るが……

共にボールを持ちたがる傾向にあるチームの対戦。先にボールを持ったのは大分だった。

この日中盤と最終ラインの梯子役となった長谷川雄志が相手のプレスを受けない位置から長短の正確なパスでリズムを作った。また、丸谷拓也のCB起用も昨年はあまり上手くいかなかったが、攻撃参加のタイミングと積極性が増して小林成豪、オナイウ阿道とのトライアングルを形成し、押し込む事に成功。特に丸谷の攻撃参加により対面する高木俊幸を押し下げて被カウンターの予防にもなった。

しかし、先制をしたのはセレッソだった。23分に松田陸高木俊幸を使いワンツーでインナーラップをすると縦パス。抜け出したブルーノ・メンデスは岡野洵を引きずりながら冷静に流し込んだ。

チームファーストシュートがゴールになったセレッソ。この得点シーンではWBの逆足配置が見事にハマった。高木がやや開き気味の位置で小林成豪を引き付けて、後ろから松田陸がサポート。小林が高木に寄せたため、丸谷は高木のマークを引き受けるために前に出てカバーリングの準備。高木にボールが入ると松田は高木が開けたハーフスペースへと侵入して、小手川宏基の背後を取りつつ丸谷が高木と松田の2人を見なければならない状態に。そして丸谷が前に出た背後をメンデスが突いて大分の3バックの中央の岡野をサイドに引っ張り出すことに成功。後は岡野を千切ってしまえば大分の守備は高畑と長谷川だけになるのでマイナスの折り返しでも強引にシュートでも大チャンスになる。それをしっかりと決めきったのはJ1の質、といったところだろう。大胆な内側へのオーバーラップは岩田智輝がよくする大分の得意な形だっただけにやられた印象が凄く残った。

 

噛み合わない中で

ボールは保持したが、押し込めずに失点。大分は違和感を感じながらプレーをしていたように見えた。特に、右サイドの丸谷、小手川、小林のトライアングルは互いにポジションを移して変化をつけていたが、シャドウのオナイウを絡めてのプレーになると途端にギクシャクしていた印象があった。

失点の5分後に片野坂監督はそこを修正。シャドウのオナイウと馬場賢治を入れ替えた。

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これにより大分はパスワークの右サイド、スペースを活用する左サイドと左右非対称な攻撃の形に。

これにより、多少は整理されたかと思われたが、左サイドで星雄次と高畑が攻撃時に共に大外で引き付けようとしてポジションが丸かぶりになる場面が多々あった。

ギクシャクしながら、変えられる所は柔軟に対応をした大分。相手がどうこうというよりは自チームの動きの確認の方を大切にしていた印象。修正を行い、どう変化するか?と思っているところで前半を折り返す。

 

徐々に、徐々に

後半に入り、大分は昨年から所属する選手を中心に今できること、できないことを考えながら徐々に狙いを合わせていく。

前半の課題であった左サイド星、高畑丸かぶり問題は、星が内側のハーフスペースを埋めることで対応。ボールを持ったときにごちゃごちゃすることが少なくなった。

小島亨介は高木駿とは違い、DFラインに参加して積極的にビルドアップに参加することができなかった。これにより、3バックの左右を押し上げる機会が減ったが、岡野がメンデスにマンマークをすることで守備でメンデスに前を向かせないこと、向かれてもカバーリングをしやすくした。ビルドアップでは長谷川が上手くポジション取りをしてバランスを取った。

 

満足できたら?

60分を過ぎて両チームに動きが出てくる。

セレッソは61分に松田陸→舩木翔、64分に片山瑛一→山下達也、71分に高木俊幸→福満隆貴と交代。

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リーグ戦にも絡む松田と片山、起点になった高木が退く形になった。

 

大分も66分に小林成豪→岩田智輝、71分に馬場賢治→後藤優介、75分に長谷川雄志→前田凌佑と交代。

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それぞれの役割を果たした3選手から、松本戦で上手くいってなかった前田、リーグ戦の出場がない後藤、いつもとは違うポジションで出場した岩田と、コンディションの確認とプレー適正をチェックする意味合いが大きかったと考えられる交代だった。

 

激動のラスト15分+α

共に交代カードをすべて切り、残り15分。大分は攻勢に出るために、ボランチの動きを変化させる。

相手を押し下げてるために小手川が高い位置でプレーをして、前田が中盤とDFラインのどちらにも顔を出し相手シャドウを監視をし、高畑をプレッシャーから離して、高い位置でプレーさせる、といった形に。

これが功を奏したのか、89分に劇的な同点弾が生まれる。丸谷が相手からインターセプトをすると後藤と伊佐を使い、少ないタッチ数で崩してボックス内に入ると左足で巻いてシュート。綺麗に決まって追い付く。

90+2分には小島のゴールキックから伊佐が反らして裏のスペースを星が使いカットイン。ボックス内で木本恭生に当たりごちゃっとしたが、後藤が詰めて逆転!

大分が2009年の名古屋戦のような劇的な勝利でルヴァン杯初戦を飾った。

 

選手個人の印象

ルヴァン杯ではリーグ戦で見れない選手が多いため、トリニータの選手それぞれの印象を書いていく。

 

21.小島亨介
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U-23代表の正GKはこの日がプロデビュー。

最後列からビルドアップをする大分のサッカーにすぐにアジャストするなんて無理な話で、最初からDFラインまで上がってプレーなんて頭のネジが飛びきってる。だからすぐにできなくても……

頑張ってパスをつけていたが、解説の高松大樹議員にも指摘されていたように、パススピードが遅く、ビルドアップでリズムが作れない事が多かった。また、右足でのキックが苦手な様子。大分のサッカーでは、左右の蹴り分けやGK→WBへのロブパスができてやっとスタートラインという非常に要求の高いポジション。自分の成長のために来てくれた事はインタビューでも語ってくれてるしこれからが期待。

 

8.丸谷拓也
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昨年MVP級の活躍をした縁の下の力持ちは、今年のリーグ戦ではベンチに甘んじているもどかしい日々だろう。丸谷ですらクローザーって……とは思う。

この日は昨年ほんの数試合しかしなかった右のCBで出場。このポジションは岩田がハマるまで刀根亮輔岸田翔平も、そして丸谷も物足りないという評価だった。しかし、岩田のプレーを見てからか格段にプレーの質が高くなり、劇的な同点弾もゲット。新境地を開拓したかもしれない。

 

16.岡野洵
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リーグ戦では鈴木義宜が不動のCBなため、昨年は右のCBのクローザーに。しかしこの日、本職であろう真ん中で起用されると、持ち前の空中戦の強さとフィジカルを生かして安定したプレーを披露した。失点の場面では引きずられてしまったが、その前で半分詰みかけていたからしゃーなし。これからJ1の強さをつけてほしい。

そしてビルドアップがめちゃんこ上手くなってた。日々成長してるんだなぁ……!!

 

38.高畑奎太
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第2節で早くもリーグ戦デビューを果たしたルーキーはこの日も堂々としたプレー。試合後のラインダンスからもなんとなくメンタル強そうな印象。

オーバーラップの際に、自分の前に居るWBのポジショニングが大外なのかハーフスペースかを判断して自分がどこのスペースを攻略するかの判断が正確になれば面白い存在になりそう。守備では最終ラインの5枚ブロックを敷く時に対面するSTを意識しすぎてラインが整わない事が多かったのは課題。

まだまだ若いから……ではなくギラギラしてほしい。松本戦で見せたようなクロスをもっと見たい。

 

25.小林成豪(66'Out)
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てっきりシャドウでのプレーを期待しての加入と思っていたため、WB起用は意外であった。しかし、この日の狙いは攻撃時にWBが高い位置を取ることを目標にしていたためアタッキングサードでのプレーを期待されての起用だったのかな、と。松本怜は大外レーンを走るスプリンターという印象だが、小林は大外レーンだけでなくハーフスペースを使えるため、フィットすれば戦術的な幅が見込めるのではないだろうか。

ボールを持った際のヌルヌル感は守備でも生かされたが、3バックの特性上、大外レーンを一人でカバーしなければならない。走力がもっとつけば松本怜のスタメンも不動ではなくなるだろう。期待。

 

20.小手川宏基
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相変わらずサッカーセンスに溢れるというかバランスを取るのがめちゃめちゃ上手く、それもさりげなーくこなしちゃう天才肌。この日も右サイドの要としてプレー。

しかし昨年の甲府戦と同じく、攻撃から守備に変わった際に1プレー遅くなり、大きな穴になりかける所が散見された。失点のシーンも戻りきれておらず、本来はもう一列前の選手なのかも。今年は走れるプレーメーカーの小塚和季が居るため正念場の一年になるかもしれない。頑張れ……!

 

40.長谷川雄志(75'Out)
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この日最大の発見。大卒ルーキーながらチームのリズムを生み出す存在として一番目立っていた。

九州選抜には1度のみの選出ながら、めちゃんこ上手かった。これが他のスカウトにバレなくてよかった~!西山強化部長サンキュー!

長短の配給が正確で、パススピードも申し分なし。特にゴロパスはしっかり転がして味方がトラップしやすい優しさもあるし、左右両利き。ピルロみたいなプレイヤー。早速FKも任されていたし、とんだバケモンが入ったな、と。フィジカルもそこそこ強そうで、ある程度完成されたプレイヤーっぽく見えた。

トップチームの選手との違いは剥がせるかどうかかな、という印象。ボールを受ける、渡すをフリーな状態で正確にプレーできるのはとても貴重だが、相手がプレスに来たときにフリックやワンツーで剥がすとうプレーはそこまで見られなかった。前を向くための引き出しが増えれば、ボランチのスタメン争いはより激化するだろう。

 

19.星雄次
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今年は高山薫が開幕スタメンを勝ち取り、ベンチに。この試合では大外で高畑と被る場面が多くあったが、後半からは整理された。

ボールを持つとカットインからワロスで昨年最終盤は詰まった印象だったが、CBに高畑のようなクロッサーが居ればそこまで悪目立ちはしなかった。

90分を越えてもさすがの走力で、劇的な逆転弾を呼び込んだ。ほっしゃんのカットインからハーフスペース攻略は左サイドの肝になるはず。こっからこっから。

 

45.オナイウ阿道
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昨年山口でブレイクするも、開幕スタメンは奪えずに1.5軍的な位置付けに。

この日は攻撃時に2シャドウの一角としてプレーしたが、ポジショニングと状況判断が甘く、停滞する原因に。守備でも前から制限をかけるのか引いて守るのかがハッキリせずに浮いていた印象。激戦区のシャドウではちょっとフィットしてない印象だった。

ただいま絶賛大注目の藤本憲明も、最初はトリニータの戦術にフィットできずに夏場までスタメン奪取はできなかった。周りの理解もあって生きるポジションなため、もう少し我慢して使うのかな、と。バレないまま浦和から借りパクもしたいけど、多分うちにそんな余裕はないため、結果を残して評価をあげてほしい。やってやれ!

 

11.馬場賢治(71'Out)
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一番ギラギラしてる最年長。この日も対面するU-23枠の瀬古歩夢にバチバチ当たりにいき、喰ってやろう!くらいの気概を感じた。

そして相変わらず状況判断が良く、オナイウが戸惑ってるのを感じてプレーエリアをやや下げたり、ポジションチェンジ後はサイドとの関係性を築き、手本としてチームがやりたい事を見せていたと感じた。リーグ戦でも熱いプレーで魅せてほしい。

 

18.伊佐耕平
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今年は藤本が1トップとして不動になりつつある中で、オナイウも加入。正念場の一年になりそうだが、やはり片野坂監督の求めていることはJ3の時からやっているだけに、新加入選手にはまだまだ負けていない。この日は前から制限をかけるのか引いて守るのかを身ぶり手振りでオナイウにレッスン。

逆転弾の場面ではロングボールを繋げるために下がって相手に一瞬、だれが伊佐につくのか?と迷いを生じさせたと思う。そこから逆転弾に繋がったし、できることはやれた。

あとは得点が取れれば、欲を言えば年間7点は計算できる選手になればもっと上へ行けるはず。バモス!伊佐!

 

29.岩田智輝(66'~)
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この日はCBでなくWBで途中出場。そういえば去年のはじめは松本怜岸田翔平に次ぐ右WBの3番手だっただけに、刀根亮輔の怪我から右CBのスタメンになるところをみると持ってるなぁ、と。この日は最初のプレーでチャンスが来たが決めきれず。雰囲気だけのクロスの精度があがればこのポジションでもやっていけるはず。

 

9.後藤優介(71'~)
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やっぱり俺らのゴレアドール。嗅覚ある。

スピードとスペースへの動き出しが上手く、J2では2年連続で2ケタ得点。J3で自信をつけてJ2で伸びた印象。そんな選手がたとえカップ戦であってもJ1の舞台で躍動する姿はやっぱり来るものがある。しゅき。J1でも初ゴールを早くしてできれば3年連続2ケタ得点を目指してほしい。楽しみにしてる。

 

32.前田凌佑(75'~)
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松本戦では全体をコンパクトにする役割を遂行できなかった前田。この日の途中出場は、「危機感を持ってやらんとすぐにスタメンはなくなるぞ!」という意味合いがあったはず。それはどの選手でもそうだけど。

ビハインドで迎えた残り15分からのミッションは重心を前にするためにリスク管理をすることと、DFラインからボールを引き出してコンパクトな陣形を保つことだった。直接的な得点の要因は相手のビルドアップでのミスとGKからのロングボールだったが、どちらもコンパクトにしていたからこそ前からプレスに行けたし、伊佐がロングボールの落下点に入ることができた。たぶん。スタメン組の意地を見た気がする。上出来。

 

内側に向けた矢印を

勝敗にあまりシビアにならなくてよい、と言っては失礼だが、試合の強度が落ちる試合でサブ組が「トリニータのコンセプト」をどれだけできるかの確認の場になった。

GKを使ったビルドアップができないときにサポートをどうするか?パスの各駅停車でWBに入った時にどう動くか?シャドウがボールサイドに寄った時にバイタルエリアを誰が埋めるのか?など問題点を炙り出すための試合だった。それはただ単に選手が戦術に合わせられていないというヒューマンエラーという訳ではなく、今のやってるトリニータのサッカーの構造的な問題にもなっているため、チーム全体の底上げとしてとても有意義な90分だったと思う。そんな課題も見つかりつつ勝利で終えられたのは幸運だ。

次は、この内側に向けた矢印をリーグ戦や選手たちにどう還元していくか。こういった面にも注目していきたい。

 

選手の写真は大分トリニータ公式HPより