Nishida's diary

トリニータを中心にいろんな試合を。

【大分】vs磐田(A) 確実に〈J1 第3節〉

こんにち令和!元号も変わったのに未だにし3節。ヤバいヤバい。

 

名前を見ると豪華なメンバーな磐田。しかし戦術が「気持ち」になると個々のアイディアが足りねぇよ!と細かい所がすべて選手に丸投げにされてしまい、行き詰まってしまう。

そんな相手のゴタゴタに巻き込まれることもあったが、大分は淡々と出来る事をしてがっちり勝ち点3を掴んだ。

 

この日のメンバーは以下のように。

ジュビロ磐田
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「偽SB」をするために、本来は中盤の選手である松本昌也をSBに。両SHは馬力のある外国人に任せる形。

不運な事にCBの要である大井健太郎を怪我で、左SBの高橋祥平が体調不良でベンチ入りすらしなかった。

 

大分トリニータf:id:west242447:20190507225128j:image

俺たちのゴレアドールこと後藤優介が先発に入ったこと以外はスタメンは変更無し。小林成豪や伊藤涼太郎はベンチからスタート。

前回対戦は2015年。パウリーニョのスーパーゴールも、土壇場で小林祐希に決められて磐田はJ1昇格、大分はJ2J3の入替戦に回る。入替戦で迷将柳田は後半ATパウリーニョ投入の伝説を作った。その後に片野坂さん来るんだからホントわかんないなぁ……

 

ざっくりとした狙いでは

冒頭にも書いたが、磐田は「気持ち」を重視した究極の個のチーム。名波さんは偽SBをしていたが、なんのためにやっているかは全くの不透明さ。そんな歪んだ中でもざっくりとした大分対策らしきものはほんのり感じられた。

攻撃ではトップ下でポジションをとる大久保嘉人が大分のDFと中盤の間で受けることで相手にボールを見せて、サイドで強力な個を使い突破をする事。守備では大分のボランチである前田凌佑を川又堅碁や大久保がプレスバックをしてボールの即時回収を目標にしていた。

しかし、大分それで捕まるほどJ2でヤワな試合をしてきてはいない。ビルドアップでは高木駿がCBの一角として振る舞い、大分は高木+3バック(+ボランチ)で組み立て。磐田は川又、アダイウトン、ロドリゲスが3バックに蓋をして大分が無理に通そうとした縦パスを大久保が切るのを狙っていたようだ。大分は4人(+ボランチorWB)がビルドアップをしているのに磐田は4人しか制限をかけに行っていない。それでは磐田は守備の方向付けをできたとしても高木→逆サイドのWBで一気にひっくり返ってしまう。また、磐田の両サイドのアダイウトン、ロドリゲスが大分のビルドアップの制限をあまりかけられておらず、自由に振る舞い、プレスに行ったり行かなかったりで全く連動性がなかった。

ここで出てくるのが磐田の個々のアイディアと言う名の「気持ち」だ。連動性が全くないプレスにしびれを切らして大久保は勝手にボールへと食らいつきバランスを崩すと、ボールが取れないからとよりプレスにいかなくなるSH。気持ちが揃わないので大分は気持ちよく相手を釣り出して背後、背後へとボールを回していくだけでよい。相手のざっくりとした狙いを上手く往なしていた。

そして13分。サイドに流れた前田凌佑が内側に入ったSBの背後へとスルーパス。これに後藤優介がサイド深くでボールを受けてCBを引っ張り出してクロス。これをニアサイドに飛び込んだ藤本憲明がしっかりと決めて早速の先制点。ゴールパフォーマンスで「LTポーズ」も。

ちょっと違うかもだが、昨年の水戸戦のゴールみたいな。ワンタッチできっちり決めて「これは決めて当然」みたいなふてぶてしさ。最高にクール。

 

大分の磐田対策

あんまりにも基本的な釣り出して背後→背後という安直すぎる(と言っては失礼か)形で幸先の良いスタートを切った大分。磐田に問題があったこともあるが、大分がエラーを引き起こしやすくしたのはしっかりと準備をしてきたからだ。

 

大分の対策は攻守共に関わる点と攻撃面でのものであった。

攻守共に関わる点ではSTは開きすぎない事。

大分は守備で5-4-1のブロックを作りSTはサイドを守るが、この日は1つ内側のレーンに立ち位置を置いていた。これにより守備では待っていたら相手SBが内側に絞るためにゾーンで守り易くなり、攻撃では内→外に流れてSBが空けたスペースを使いやすくなる。

攻撃面ではビルドアップ時にST-WBの間でボランチがボールを受ける事。先制の場面ではWBの松本怜とSTの後藤の間で前田がフリーでボールを受けてサイドを攻略。これは前田がサイドに流れてボールを受ける事により、内側に絞った磐田のSBを釣り出す事ができる。するとWBもSTも相手の背後を取りに行くだけだ。得点の場面でもSBの背後を後藤が取ったため、磐田のCBがサイドに出ていくしかなくなった。それだけではなく、前田がサイドに流れた際にティティパンが内側に絞ってアンカーとして立ち振る舞ったため、リスク管理まで行えていた。まさに狙い通りだろう。

 

磐田のリアクション

内側での数的優位を作り出していくサッカーをする磐田だが、内側に人数をかける代償としてサイドをハチャメチャにやられまくっていた。これに対して磐田は最終ラインを高くする事を選択。それにより中央の密度を高めて、スモールスペースを攻略していきたい意図を感じることができた。

……が、背後に広大なスペースがあることは大分の裏抜けマシーン藤本がイキイキする事を意味する。大分はビルドアップも主体にしているが、無理に繋がずにロングボールを蹴るために大分を押し込むという目標は達成できない。

30分には、スルーパスに抜け出した藤本を大南拓磨が倒してしまい一発退場。残り60分を磐田は10人で戦う事になる。

 

策がことごとく裏目に出る磐田は33分にロドリゲスを下げて櫻内渚を投入。DFの数を合わせる。

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セットした守備時ではアダイウトンをトップ的な役割をさせてコースを限定。ムサエフを最終ラインに落として大分の攻撃陣と人数を合わせる。

被カウンター時は、大分WBにSBをぶつけてSB-CBの間にボランチが落ちてカバーをする。

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攻撃では大久保が前線に上がり、大久保の立ち位置を見てアダイウトンと川又が幅を取るように。大久保が右サイドに流れたら川又が中央、のように流動的だった。

皮肉な事に、磐田は1人減った事によりスペースが出来、誰がどこを見るかの判断がハッキリする。特に守備は人数が揃っている時よりも強度が確実に上がった印象であった。

41分にはムサエフが上がって川又がシュート。福森直也がブロックしたボールは宙に浮くとアダイウトンがバイシクルのスーパーゴールで同点に。やはり個の力では上回る磐田が前半の内に追い付いて折り返す。

 

見られた変化

大分からすると上手くいっている中で前半終了という不気味な流れ。後半の入りは前半と同じく、ボールをしっかり保持して全体を押し上げることからはじめた。

磐田はこれに対してアダイウトンをサイドに戻して川又を真ん中にした4-4-1で守る。

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4-4-1に変更した事により、大分のGKとDFラインのビルドアップの誘いには乗らなくなっていた。

そんな相手のブロックを崩せない、いやーな流れを変えたのは福森直也だった。55分に中盤左サイドで前田からパスを貰うと、一度は高山薫に預けて大外に開くと、高山→前田→福森とボールが回り浅い位置から突然のクロス。ボールは相手DFの頭上を越えて後藤がファーサイドでボレー。これが決まって再びリードを奪う。

相手が引いて守る中で、左右のCBが高い位置を取ってフリーでアーリークロスを放り込むという出し手の変化を加えて最初のプレーで得点。ニアサイドに走りDFを引き付けた藤本の動きとファーに走り込んでボールの落下点にしっかりと走り込む後藤の嗅覚と決めきる技術も素晴らしかったが、福森の攻撃参加がとても効いた。今まではWBの背後のスペースをカバーする事をメインにしていたため、あまり攻撃面での貢献は見られなかった福森。前節の交代で久々にフル出場を逃したが、その際に投入された高畑奎汰が見せた溌剌とした攻撃参加から、福森は攻撃に対する意識を高めたのだろう。片野坂監督のチームマネジメントと、それにしっかりと答える選手。ただの勝ち越しゴール以上の価値のある得点だった。

 

しっかりとゲームを閉める

大分がリードを奪ったため、点を奪いにいかなければならなくなった磐田だが、プレスがかからない。それを尻目に大分は58分に高山を下げて星雄次を投入。変化を加えるというよりは、ゲームプランでリードをして60分程で星にJ1の試合を経験させるというのが片野坂監督の頭にあったのだろう。

数的優位を生かしてプレスのかからないミドルサードまで楽々と運んで磐田の選手を釣り出していくか、誘いに乗らなければアーリークロスを放り込む形を繰り返す大分。押し込まれる可能性が低くなったため1ボランチに変更も加える。

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一方の磐田は62分に大久保を下げて中野誠也を投入。山田大記を上下させて攻撃に人数をかける。

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磐田が高い位置で大分のビルドアップを引っ掻ければチャンスができるが、なかなかそのチャンスは巡ってこない。

 

大分は73分にティティパンから丸谷拓也を投入して守備の安定を図り、86分に疲れの見えた?藤本を下げて伊佐耕平を投入。

磐田は83分にアダイウトンから荒木大吾へと変えるが得点は奪えず。大分が勝ち越しゴール後にしっかりとゲームを閉めて勝利を納めた。

 

磐田の最大の弱点

選手の名前はビッグだが、やっているサッカーは結構ガチャガチャしていた磐田。その最大の弱点はトランジションの設計が全く為されていなかった事だろう。

大筋ではSBを内側に入れて相手のサイドの選手を内側にピン止めをして、サイドのスペースでロドリゲスとアダイウトンが1対1になることを目標に設計された偽SBだと思われる。しかし、それが上手くいかなかったら?が全くなく「選手のアイディア」に基づいた球際に負けない、走力で勝るというもの。もうちょっと煮詰めないとそりゃやられる……。

この日の大分はトランジションでどこにスペースが出来ているかの共有ができていたのに対して、磐田はボールに近いヤツが寄せる!くらいなアクションしか出来ていなかった。その結果が内側に絞ったSBのスペースを大分が有効に使えただけでなく、自陣深くまで守備をするタイプでないアダイウトンとロドリゲスが大外サイド張っとくマンになり2CBが右に左に動いて山田大記のサッカーIQでかろうじで防ぐだけになった。

攻撃はこうしたい、守備はこうしたい、というのも重要だが、その間の攻→守、守→攻でリスク管理を行えないと途端に脆くなるのでは上手くいかない。攻守で人を動かしすぎているためトランジションが上手くいかず、自らミスマッチを作り出すのはすごく勿体ないと見ていて感じた。

 

積み上げ、そして成長

自分たちの持っている手札と手段を有効に使って相手の弱点を突いてのゲーム進行。上手く行きすぎて数的優位をつくるという「アクシデント」もあったが、選手たちが監督のやりたい狙いをしっかり遂行しながら個々の持ち味を生かしたり、苦手な事にもチャレンジしつつも積み上げた勝ち点3はそれ以上の価値がある。それをJ1の舞台でできる幸せを噛み締められる今季はチームもスタッフも、そしてサポーターもとても充実している。できるだけ多くの勝ち点を積み上げて、1つでも上の順位でシーズンを締め括れるように、目の前の1つ1つを大切にしてほしい。

 

【ハイライト】2019明治安田生命J1リーグ第3節 ジュビロ磐田 vs 大分トリニータ - YouTube