Nishida's diary

トリニータを中心にいろんな試合を。

【大分】vs横浜FM(A) 背後がない!〈J1 第18節〉

【報告】

滞ってるブログですが、リーグ戦折り返しという事でとりあえずは最新の試合から振り返っていき、時間があれば過去の試合(ルヴァン杯第2節~)のも更新、という形を取ります。

 

 

さて、ここからは週末の試合。

リーグ戦上半期を4位という好成績で折り返したトリニータ。序盤戦の貯蓄と接戦の取りこぼしが少なかった事が、ACL一歩手前という4位で折り返せた理由だろう。一方でGW明けあたりから明確に「トリニータ対策」をされてしまい、工夫は見えるがちょっとしたクオリティの差でやられてしまう事も多くなった。非常に難しい時期だ。

そしてリーグ後半戦の初戦はリーグ3位で勝ち点差1の横浜F・マリノス。前期での戦いではトリニータの完勝、前半戦のベストバウトだった。しかし今回はしっかりと対策をされて敗戦。それもやりたいことをほとんどさせてもらえない完敗に近い内容だった。難しかった試合を振り返っていこう。

 

この日のメンバーは以下のように。

横浜F・マリノス
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えっ!天野純スタメン!?海外移籍決めてJ1100試合出場決めてラストゲームは大分戦!トリサポからすると久保建英とか去年の山﨑凌吾とか思い出すからやめてほしい。トラウマスイッチ。

前期では4-1-2-3を採用していたが、今回はダブルボランチで来た。マルコス・ジュニオールがサイドからインサイドになってたりGKも飯倉大樹から朴一圭へ。アップデートが為されてる雰囲気。

会場は今季初のニッパツ三ツ沢。J1からJ3まで毎年ニッパツで試合をしてるので新鮮味はないがダイナミックプライシングでアウェイG裏が2500円と5000円が混在してた。すげぇダイナミックな上がり幅……

 

大分トリニータ
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今季(おそらく)2回目の3-3-2-2でのスタート。1回目もマリノス戦だった。右CBの岩田智輝が前節の浦和戦で負傷交代しており、かわりに島川俊郎が入る。インサイドハーフにはティティパンが久々にスタメン入りして長谷川雄志がベンチスタート。2試合連続途中出場からゴールを決めたスーパーサブの小林成豪はベンチ外に。怪我らしい。

 

サイドバックVer.2.0

今季のマリノスを継続して追っているわけではないが、前半戦と比べてより個人の特徴を生かした形の「偽サイドバック」を実施していた。

前半戦でのマリノスの偽サイドバック(後日掲載予定)はティーラトンが上手くハマらずにいた印象が強かったが、そこを修正してきたイメージ。8分に見せたビルドアップからもそれが伺われた。

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まずは基本の立ち位置の確認。

ここからボードに変わって……

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ダブルボランチの片方(主に喜田)が左CBに落ちて、もう片一方のボランチ(だいたい天野)が中央でリンクマンとしてプレー。

両SBがぐわーっと上がり中盤のサイドorハーフスペースまで上がる。ウイングはSBの立ち位置を見てレーンが被らないような立ち位置を取りつつ、ボールを受けるとカットインをしてハーフスペースでいじめる形。

中盤4枚はSBが幅を取って天野とマルコス・ジュニオールが縦だったり横だったりとビルドアップの出口に顔を出して大分の制限をのらりくらりとかわしていた。

 

守備、特にボールを取られてすぐの強度がとても高く、密集を作ることにより、大分が局面を変えられないうちに奪いきる。ネガティブトランジッションの精度が高いため、ハイラインでも破綻する事はほぼなかった。

 

 

前回の対戦時からの印象の変化としては、攻守の分業(または分断)がなくなり人数を掛けられるようになっていたこと。そして、ビルドアップの際にボールホルダーと同じレーンに立たないこと。さらには縦パスが入った瞬間に複数人がレーン移動を行い、深い位置でも余裕が持てるポジショニングを行っていたことが挙げられる。

 

大分の対策

複雑なビルドアップを行うマリノスに対して大分は前回と同様に3-3-2-2を採用し、球際の強度を上げる事をメインに行うことで相手の背後を狙った。

サイドバックの監視役にインサイドハーフの小塚和季とティティパンを置いてマリノスのビルドアップに蓋をする。中央で可変の肝になる喜田の監視を前田凌佑がマンマークで行った。

両チーム共にボールを持ちたがるため、自陣に押し込まれた際には偽SBをWBが、ウイングをCBの左右がそれぞれ見て3センターがバイタルエリアを埋める事を目標に。

攻撃では小塚、ティティパンが偽SBの背後を狙う事、WBとFWの距離感を大切にして狭いスペースでひっくり返そうとしていた。

 

が、この日はマリノスのマークの外し方が上手すぎて、攻守共に全く機能しなかった。というか機能させてもらえなかった。

 

大分の誤算

まずは相手が上手かった。が、これに関しては「J118位からのスタート」というのがチーム共通の認識(多分)であるためそこまで重要でなく……3センターの裏を取られまくった事だろう。

3センターの真ん中の前田は喜田とデートをしてるので自陣よりも敵陣での制限を行う。マリノスは喜田のボールの受け所を左にズラして中央の前田を釣り出す。小塚、ティティパンは偽サイドバックの監視をしていたが、背後のウイングが内側に絞るためにWBが前に出られない。


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大分の動きを赤、マリノスの動きを黒で。

喜田のDFライン落ち。前田はマンマークをしているため中央からサイドへ。

小塚、ティティパンは対面するSBを見るが、そのSBは内→外へ。これについていくと中央の天野、マルコス・ジュニオールがフリーになるし、かといって動かなければ中盤のサイドで起点を作られる。

SBが外に開くタイミングでマリノスのウイングはハーフスペースの攻略へ。大分のWBはサイドに流れてくるSBを見るか対面するウイングを見るかに悩み、左右のCBは突っ込んでくるウイングを潰しに出るかリトリートをしてスペースを埋めるかの判断を迫られる。

 

守備でことごとく後手を踏まされて究極の二択を迫られ続ける。中央のスペースを消してサイドに追い込む事すらもさせてもらえなかった。

また、3センターを球際に強く行かせたが為にバイタルエリアを空けてしまう場面も弊害として表れてしまった。

 

やりたいことができない。いつも以上に守備に追われる。なんとか高木の好セーブによって失点は免れたが、切羽詰まったまま前半が終了。

 

応急処置と我慢

片野坂さんにしては珍しく全く狙いがハマらなかった前半。後半の修正はシンプルなものだった。

相手がボールを持って確実に大分のブロックを崩してくる。ならば……相手からボールを取り上げてしまおう!という。

前半からハイラインをひいて局面をクローズして即時回収を目指すマリノス。大分はこれに全く歯が立たなかった、というわけではなく、局面をひっくり返す事さえできれば、逆サイドには広大なスペースがあり、そこを狙い目にはしていた。後半から大分がボールを握ることで、この逆サイドのスペースを狙いにいった、と感じた。

また、ボールを握るにあたり、3センターはボールを受けるとターンやドリブルを増やしてなんとか前に運ぼう、剥がしてやろうという気概がみえた。

 

背後がない!

マリノスのようにポゼッションで押し込みたい!となるとハイラインをひく、という結論に至る。それによりGKの守備範囲が広くなり、PA内から外へ大迫力のカバーリングが行われる。今となっては昔の話だが、佐藤優也(千葉)のミサイル特攻は鈍足のDFと相まってスリル満点のエンタメと化していた。

しかし、マリノスはそんな可愛い気のあるハイライン!ではなく、質を伴った暴力装置として大分に次の手を打たせなかった。

 

大分の「引き込む」ポゼッションに対してハイライン・ハイプレスで息をさせないマリノス。背後を狙えど、藤本憲明にはチアゴマルティンスがぴったりついていくし、朴一圭が広大なスペースを大胆に、そしてセーフティにカバーリングを行っていた。そのため、大分は背後がない状態に陥ってしまい、手持ちのカードにない「ポゼッションしながら位置を確保し、相手を押し込む」以外に有効な手立てがなくなってしまった。J1との質の差を「疑似カウンター」でなんとか五分五分に持ち込んでいた大分は、このマリノスの背後潰しによって強制的にがっぷり4つ組まされる羽目になってしまった。

 

また、56分には今季全試合フル出場だった松本怜が負傷により星雄次と交代。ツキもないのか。

 

 

やりたい事、できる事

後半からボール持ってマリノスの良さを消そうとしたが、それも45分間ずーーーっと続く訳でもなく。60分ほどからは、試合の流れが再びマリノスへと傾く。62分にマルコス・ジュニオールから三好康児を投入し一気に試合を決めにかかる。

大分は我慢の展開が続くが、ボールを持つ意識を持ったことで多少は攻撃でチャンスができはじめていた。よりボールを大切にするために、70分にプレス強度の高いティティパンから配球のうまい長谷川雄志を投入。

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3-4-2-1に変更をして、今できる押し込むためのポゼッションへとシフトを図った。

 

今のトリニータができる「押し込むための」ポゼッション。それはビルドアップの際のDFの動きにある。

 

緑がボール

破線がパス

実線が人の動き

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ビルドアップ時にCBの鈴木義宜から島川俊郎へ横パス。この際に島川の前に長谷川雄志がサイドへ流れる。

マリノスはハイプレスを行うためもちろん制限を。仲川輝人は島川へチェックしつつ縦の楔をケア。エジガル・ジュニオは鈴木へのリターンパスのコースを消すために鈴木-島川の間を埋めに行く。

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長谷川が空けた中央のスペースをCBの鈴木が埋めて、サイドの星はロングボールを受けるために前方へフリーラン。鈴木のカバーリングに前田が入る。

エジガル・ジュニオが蓋をしたはずの位置には鈴木は居らず、一列前のアンカーのポジションに入るため、島川からリターンパスを受けた段階で仲川とエジガルを剥がすことができる。といったカラクリだ。

 

これは片野坂監督が見てると話していたキケ・セティエンのベティスで、バルトラが行っていたビルドアップの形の1つ。鈴木がこの「バルトラロール」を行う事で局面を変えようとしていた。

基本的には「引き付ける」ことの応用であるが、このバルトラロールは神戸戦から少しずつ行っているためまだまだ実戦で有効な手立てにはなっておらず、実験段階である。そのためこの試合でも狙い通りに剥がせたシーンは1~2回ほど。義宜がそこで受けてからどうする問題もあるし難しいなぁ、という感想だが、切羽詰まった悪あがきのパワープレーなんかより片野坂監督の「らしさ」を感じられる采配であった。

 

「やりたい事」を「できる事」まで落とし込めれば良かったが、この日はまだ「やりたい事」の輪郭がぼんやりみえるかなー?くらいだった。シーズンは長いししゃーない。

 

高木の好セーブやDFが身体を投げ出しての守備によって瀬戸際で失点を免れていた大分だったが、74分にシュートブロックのこぼれ球をエジガル・ジュニオに決められて遂に均衡が破られる。スコアレスでもしんどかったのに失点をしてしまい、その後は相手がゲームをクローズして試合終了。0-1以上に差を感じるゲームであった。

 

しんどい時期

川崎戦からだろうか。良いゲームはできているが、「良いゲーム」止まり。やりたい事は見えるし創意工夫は痛いほど感じるが、結果になかなか結びつかない。ここ数試合はまさに「停滞感」の一言に集約される。

今あるすべてを出しきって、それ以上を求めるのはとても烏滸がましいと感じるが、これから先を考えるなら個人のレベルアップは必須だ。多分この停滞感を打破できるかでこの先のトリニータも大きく変わってくるはず。とても苦しく、もがいているのを知っているからこそ、報われてほしい。それだけ。

 

次は札幌戦!

妥当!停滞感!!!