Nishida's diary

トリニータを中心にいろんな試合を。

【大分】vs東京V(A) ハートは熱く、喉はクールに〈J2 第29節〉

得点は動かず、前期とおなじスコアレスドローとなった試合だったが、両監督が戦術面で殴りあう非常に内容の濃いゲームであった。

 

この日のメンバーは以下のように。

東京ヴェルディ
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これまでは4-1-2-3をメインに使用していたが、この日は大分に合わせてか3バックでミラーゲームを仕掛けてきた。

夏の移籍ウィンドウでCBの畠中槙之輔横浜FMへ移籍、渡辺皓太はU-21代表に選出され不在と主力2人が居なく、代わりに平智広、G大阪からレンタルした泉澤仁がスタメンに。そしてこの試合で田村直也がJ通算300試合出場、奈良輪雄太はJ通算100試合出場とのこと。

 

大分トリニータ
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ここまで3試合で4ゴールと好調だった三平和司がメンバーから外れ、この試合の数日前に竹内彬が讃岐へ移籍したためキャプテンになった馬場賢治がスタメンからスタート。ベンチに宮阪政樹が久々に入った。

 

ハマった仕掛け

互いに戦術面で殴りあった試合で、先に仕掛けたのは大分だった。ボールを持つと左右のWBがウイングほどに位置を取り、馬場が1列下がってクサビを受ける形に。WBが高い位置を取ると共に3センターの左右がSHの役割を果たした3-4-3のような形でゲームに入った。

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これはヴェルディが4-1-2-3で来ることを予想して中盤の3枚を間延びさせてSBを上げさせない意図があったと思われるが、ヴェルディが3-1-4-2でゲームに入ったためより左右のスペースを有効に使うことができた。

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大分が攻める際に、ヴェルディは3バックに3トップを当てられるためWBが引いて対応しなければならない。5バック気味になると中盤を3センターで守らないといけないが、大分の前田凌佑、小手川宏基が左右に開くため必然的に走る距離が長くなる。前田、小手川にチェックに行くと中央から崩される形になり、3センターがボールサイドに連動して動く事を大分が強いた。

また、前田、小手川が2トップに近い位置でプレーするのに連動してCBの福森直也、岩田智輝がサイドを埋めてくるのでヴェルディはどうしてもSHの位置を埋めることができなかった。

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(左サイドの前田が1列上がり、ハーフスペースに顔を出すと共に福森が連動してサイドへ。その際に3バックの残り2人は2トップを見るためスライドする。)

 

そして、大分は守備面でも多少形を変えてきた。普段はハーフライン付近までFWが下がり、スペースを埋めることを優先し、状況が良ければ2トップ+1枚でハイプレスをしていたが、この日は2トップ+前田or小手川の3枚でプレスを仕掛ける事を優先。それに伴いDFラインも普段より高く設定していた。

これは大分がネガティブトランジッションに注意をしていたからだ。この日の3-4-3から普段の5-3-2の守備をするためには、両WBがトップの位置からDFラインまで80メートル以上のダッシュを連続しなければならない。これは全く現実的ではないため、それならばインテンシティを高めて前からハメて押し込んだ方が合理的であると判断したからだろう。ネガティブトランジッションの際にはハイプレスを仕掛けたが、ヴェルディがビルドアップの際にはしっかりと5-3-2の守備ブロックを作りじっくりと守ることを使い分けたことで、WBの体力面でのリスク管理も行われた。

 

WBのポジションという1つを変えただけだったが、結果としてヴェルディからボールを取り上げ押し込んだ。CKから松本怜のクロスを鈴木義宜が触れば1点というようなチャンスや、丸谷のミドルがポストを叩き、その跳ね返りを馬場が折り返し伊佐耕平が詰めてゴールネットを揺らすも馬場のオフサイドで得点には至らなかった。

 

攻め込まれたヴェルディは35分ほどから3センターから泉澤を左サイドに回した3-4-2-1へと変更。

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これによりサイドに蓋をすることができ守備が安定すると39分にはドウグラスヴィエイラからのパスを泉澤、43分には左サイドを崩して梶川諒太がシュートを放つも共に高木の好セーブに阻まれる。

一進一退の前半はスコアレスで折り返す。

 

形が変われば

後半に入り、ヴェルディが前半途中からサイドの修正をしたため、次は大分が3センターの脇を使われる事が増えた。そのため、馬場を泉澤と同じようにしてシャドウの位置に下げて5-3-2から5-4-1へ変更するかと思われたがそれはせずに、WBの動きを変えて修正を加えた。

大分のWBはヴェルディがビルドアップを行う際には5-3-2だが、WBの藤本寛也、奈良輪雄太にボールが入るとすかさずチェックに行きマンマーク気味に。大分はWB、同サイドのFW、CHと丸谷がボール狩りを行い速攻に転じたいと考えていたようだ。

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(ヴェルディの右サイドで藤本がボールを受けると那須川が飛び出し前を塞ぎ、前田がボランチ、伊佐がDF、丸谷がシャドウのコースを消しにかかり、奪えば逆サイドの小手川へ繋ぎ横ズレからチャンスを作る)

これは那須川が背後を取られれば大ピンチになりうるが、そこのカバーを丸谷ができるようにしていたように思われる。前半でも43分にもあったように素早いテンポでパスを回されると劣勢になるが、それは整備されたモノではなく、再現性に欠くと判断したのだろう。

結果として大分は部分的、位置的な密度を高めて高いインテンシティから速攻を目指したが、練度が低く連続してのプレーには乏しかった。また、ヴェルディもDFラインを高くし、大分は押し下げられたため55分からは速攻に移る機会は少なくなった。

前半とは逆の展開になりヴェルディが押し込むと55分には泉澤、68分には佐藤優平の直接FKとチャンスは作るが、またしても高木の好セーブによって失点は免れた。

その後は大分はFW2枚と那須川から藤本憲明、後藤優介、星雄次し、ヴェルディは佐藤、泉澤からアランピニェイロ、李栄直を投入して打開を図るもスコアは動かず。勝ち点1を分けあう結果となった。

 

ヴェルディの印象

やっぱりロティーナ監督との対戦は戦術的な要素が多く、柔軟性、引き出しの数が試されるなぁ……という印象。これに対して片野坂監督が用意でまたしても上回ったが、ロティーナ監督が修正をし、試合は高い緊張感のまま終わるという内容の濃いものだった。

選手で印象に残ったのは梶川諒太泉澤仁

梶川は、ボランチの位置からいつの間にか前線に顔を出してきて非常に掴みづらい選手だな、という印象。また、組み立ても上手く器用なので戦術に幅を持たせる大事な選手なんだとも。

泉澤は中間ポジションを取るのが上手く、出し手が出したいタイミングで顔を出せる選手。ハーフスペースへの侵入、カットインでワイドを空けたりと頭のいい、周りが見える選手だなと感じた。

そしてこの日の実況の桑原学さんと解説の柴村直弥さんの話がとても良かった。戦術面での狙いや選手の特徴など分かりやすく伝えていただき、自分もセットプレーの意図が理解できた。どこぞやの焼肉屋は「いやぁ~」「良かったっすねぇ~」など中身がない感想屋なので見習ってほしい。

 

一体感を持って

この日はGKのアップの際に高木からゴール裏に対して「前で応援してほしい」と話があったようで、サポクラもそれに答えるという一幕があったり、

ハーフタイムにスタッフがサポーターにのど飴をもらったり

とチームだけでなくサポーターも一丸となって闘っているのはとても良いことだな、と。

そしてこののど飴の一件から浅田飴さんと繋がりができた様子。(ドメサカのまとめより)

サポーターのオファー?から関わりができるのは面白いとも感じました。

 

ピッチ内外で一体感がある大分。残り1/3となった今シーズン。ハートは熱く、喉はクールに一つでも高い順位を目指してほしい。

 

【ハイライト】2018明治安田生命J2リーグ第29節 東京ヴェルディ vs 大分トリニータ - YouTube