Nishida's diary

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【大分】vs新潟(H) 決め手は"シュータリング"〈J2 第27節〉

前節、新たな試みで喉から手が出るほど欲しかった後半戦初勝利を手にした勢いそのままに、4-0の完勝で連勝を飾った。

 

この日のメンバーは以下のように。

大分トリニータf:id:west242447:20180806034650j:image

前節からの変更は1つ。星雄次がメンバーから外れ、那須川将大がスタメンに。千葉から期限付きで加入した岡野洵がさっそくベンチに入った。

 

アルビレックス新潟f:id:west242447:20180806035117j:image

J1から降格して1年目だが、ここまでリーグ戦19位。後半戦も1勝4敗と波に乗れていない新潟は前節からの2枚の変更。GKをアレックスムラーリャから大谷幸輝へ、CBの原輝騎から怪我明けのソン ジュフンがスタメンへ。ベンチには新加入の梶山陽平と渡邊凌磨が入った。

 

焦らず丁寧に

この日のゲーム前のインタビューで片野坂監督は「狙いができれば勝てる」と自信を持っていたようで、選手たちもいつも通り焦らず丁寧にゲームに入った。前節と同様にGKを含めたビルドアップに取り組み、積極的にCBからFWにクサビのパスを入れる意図が見えた。

大分の新潟対策は、守備のマッチアップを明確にしたこと。3バックを右にスライドし、左サイドを那須川が埋めて4バックに。3センターの中盤は左にスライドして丸谷拓也小手川宏基がダブルボランチを組み、左SHに前田凌佑が入る4-4-2へ。

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誰が誰を見るかという単純な約束事だったが、これだけで新潟の攻撃はほとんど凌げてしまった。

新潟の攻めはSBからシンプルに矢野貴章をターゲットにロングボールを入れてポストプレーから落としたボールを田中達也が受けるか、タメを作って田中と左右のSHを押し上げるかがメイン。SBがドリブルで持ち上がって起点になることはあれど、直接得点に繋がることはそうそうないので、大分は自陣深い位置での不用意なファールをしないことが重要であった。

一方の新潟の大分対策は、大分の右CBの岩田智輝が松本怜とのコンビでサイドを崩してくる事を想定して、岩田に対面する高木善朗が積極的にプレスに行かず、リトリートをして縦パスを警戒。必然的に左サイドが押し下げられるため、セカンドトップの田中は矢野と高木の間を取り持つ事と、大分のビルドアップの起点になるボランチのチェックの2つのタスクを担った。それ以外はオーソドックスな4-4-2だったが、大分のボランチを抑えられなかったことが結果として大きな代償を支払うこととなった。

 

ゲームは開始すぐに矢野がファーストシュートを放つと、9分には安田理大のクロスを那須川がヘディングでクリアしようとするが後ろに逸れてゴールへ。ギリギリの所で高木駿が弾く。新潟の決定機はこれだけだった。

大分はサイドでCB、WB、ボランチの3枚でサイドを崩してはいたが、3ボランチの左右がサイドの組み立てに関わるためかバイタルエリアがぽっかりと空いてクロス一辺倒に。大銀ドーム特有の蒸し暑さにより今季初の飲水タイムを挟んで32分。中盤中央から丸谷→前田と渡り伊佐へ縦パス。ワンタッチで前田に戻して那須川と左サイドへボールが行くと那須川がクロスと見せかけた「シュータリング」。山なりのボールはファーサイドのサイドネットへ吸い込まれ、大分が先制点を奪う。

--その先制点は、クロスのようなシュートのような感じだったが……。

……狙いました(笑)。自分の中でもたまに「シュータリング」と呼んでいるのだが。ラッキーではあるが、ああいうところで持つとGKはクロス対応の体勢に入るので、そこを狙ったら良いところに行って入った。

大分-新潟 選手コメントより

スコアが動いてから新潟は小川佳純と加藤大が縦の関係になり両SBを押し上げたが、37分に岩田がドリブルで持ち上がり、伊佐へボールが渡ると反転してシュート。バーに当たり得点にはならなかったが、大分の3センターがボランチ脇を突いていき新潟はすぐに横の関係に戻していた。

結局前半は、那須川のゴールで1点のリードで折り返す。

 

最後まで激しく

大分は後半、三平のキックオフから鈴木義宜のロングボールを伊佐がヘディングで落として松本怜→小手川と右サイドを崩しマイナスのクロス。伊佐がニアサイドでスルーをすると三平が流し込み2-0。後半開始15秒ほどの電光石火の攻撃だった。

51分にも右サイドを崩し伊佐のフリックから丸谷がスルーパスを送り、抜け出した三平がGKをしっかり見てループ気味にシュート。これが決まり3点目。

67分には岩田の縦パスを右に流れていた三平が受けて中央へパスを送ると、三平とスイッチしていた小手川が冷静に合わせて4点目。これでゲームは決まった。

直後に伊佐にかえてひさびさの出場を果たした林容平、77分に三平から馬場賢治と前線をフレッシュにし、80分には那須川から新加入の岡野を入れる余裕を見せた大分。

新潟は渡邊凌磨、河田篤秀、ターレスと攻撃的なカードを切りパワープレーを仕掛ける。f:id:west242447:20180806062956j:image

が、球際で悉く大分に負け、波状攻撃もできないままタイムアップ。最後まで手を抜かず、球際、1対1のデュエルに拘った大分が1ヶ月半ぶりのホームでの勝利をゴールラッシュで飾った。

 

新潟の印象

こう言ってはなんだが、攻守で連動できずにサイドから再現性のないクロスをむやみに放り込む事に終止し、ほぼ何も出来ていなかった。前期ではオーソドックスな4-4-2で選手の質の高さで殴っている印象だったが、夏場に入りマンネリ化と対策をされて質的な優位は帳消しにされてしまい、選手たちは疑心暗鬼に陥っているように見えた。この試合が今季のワーストであれば「こんな日もある」で済ませられるかもしれないが、戦術的に遅れを取っているのは明確であり、2年連続での降格争いに現実味が出てきた。

チームとして機能性を欠いたのには、監督が的確な指示、戦術を持ち合わせてない事に起因するが、特に致命的だったのはボランチ。中盤の底に居るには居るが、大分の3センターの対応に追われて後手を踏んでおり押し上げに苦労し、それを発端にサイドとの連携ができなくなり攻撃まで上手く運べないという地獄の様な内容に。高木善朗にリトリートをさせて岩田の攻撃参加を抑える意図は面白いと感じたが、高木をボランチの位置まで下げて3センターにぶつけ、田中達也をサイドに回すくらいの思いきりもなく、ほぼ何も積み上げもないままターレスに「次に繋がるゲームを」とハッパをかけても目の前のゲームも戦えていないのに次は見据えられないのでは?と疑問を感じた。

選手で印象に残ったのは、右SHをメインにパワープレーの場合ではボランチに入った戸嶋祥郎。いい形でボールを受ける機会はほぼ皆無だったが、攻守でほぼ唯一走っていた印象で、球際で戦う姿勢を見せていたと感じた。そして戸嶋以上に印象に残ったのは他でもない新潟のサポーター。サウナのような大銀ドームで90分間声を出し続け、チームを鼓舞し続けていた。遠路はるばる大分まで本当にお疲れさまでした。

アルビレックス新潟というチームで一番戦えていたのがサポーターというのは寂しく、不甲斐ないこと。これをチームは、フロントはどう感じるのだろう。新潟の苦境はまだまだ続きそうだ。

 

新たな形をモノにして

ここにきて今季2度目の2試合連続クリーンシートでの連勝を果たした大分。ミドルサードからディフェンシブサードへの侵入を阻止できており守備の改善が見受けられ、GKを含めたビルドアップでプレス回避でも進化を遂げたように見える。復調の要因は、フォーメーション変更があったからではなく、球際の強さの再確認があったのではないか。

これからは引いた相手には3-1-4-2、押し込まれた際は3-4-2-1の2つを使い分けて行くことになるだろうが、今季開幕してすぐの山形戦でも実際にあったようにゲーム内での原則の大きな変化を伴うフォーメーション変更はなかなか上手くいかないのが常。その対策としてはしっかりと3-1-4-2のやり方を詰めてくしかないが、バイタルエリアの埋め方、ロングカウンターのデザインはこれからの課題として向き合わなければならない。価値のある連勝であるからこそ、これから終盤戦、そして来期以降にも繋げていくために細部を詰めていかなければならない。

新たな形をモノにできるのがすぐなのか、来期以降かは神のみぞ知る。しかし、難しい時期をレベルアップで乗り越えたチームをこれからも追っていきたい。そう思える試合であった。

 

【ハイライト】2018明治安田生命J2リーグ第27節 大分トリニータ vs アルビレックス新潟 - YouTube