Nishida's diary

トリニータを中心にいろんな試合を。

【大分】vs大宮(A) 結果は伴わずとも〈J2 第23節〉

2連敗で迎えた大宮戦は、結果から言えば連敗を一つ伸ばして3連敗。結果だけみると自動昇格を目指す上で手痛い敗戦となったが、内容は確実に良くなった。試合の中でどう立て直したかを振り返っていきたい。

 

この日のメンバーは以下のように

大宮アルディージャ
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6月は負けなし。大前元紀は5試合4ゴールと絶好調。月間MVPを獲得した。ここ5試合スタメンは固定。勢いを持ってこの日を迎えた。

 

大分トリニータ
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スタメンを固めた大宮とは対称的にメンバーを5人変えて挑んだ大分。出場停止明けの丸谷拓也をはじめ、黄誠秀、福森直也、宮阪政樹那須川将大がスタメン。宮阪、丸谷以外は久々な選手になった。

 

出鼻を挫かれズルズルと

試合は2分で動く。ボックス内で黄誠秀がマテウスを倒してPK。これを大前に決められて早くも先制を許す。大前は4戦連発のゴールとなった。

ここから大分はドタバタする……ことはなく、いつもより球離れを早くして打開を図った。

この日の大分の工夫は左右を非対称にした変則的なものだった。

左サイドに那須川を置いた理由として、相手の右SBで前線によく顔を出す酒井宣福に対して守備での貢献と、ボール奪取後に酒井のウラを馬場賢治が突くためにクロス精度が高くアーリークロスを使って展開ができるように、といった意図を持っていた。

逆の右サイドでは選手の距離を狭めて松本怜の前に國分伸太郎が流れて、國分が空けたスペースを宮阪が1列上がり、パス回しで崩すためだろう。
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片野坂監督は守備の5-4-1をベースに宮阪と丸谷を高い位置で縦の関係にして上記の策により打開を図ったが、タスクの過多により発生したボランチ脇を突かれて機能不全に陥った。

 

タスク過多だったのは宮阪。中盤のボランチとトップ下を行き来していつもより攻撃的な役割を与えられていたが、なぜかDFラインまで下がってビルドアップをしており、松本と國分が孤立し、ボランチ脇にスペースを空けて守備偏重な形になってしまった。

そしてボランチ脇を大前、茨田陽生に突かれて守勢に回ってしまった。
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また、大宮も大分のビルドアップに対してマッチアップを明確にしていたため、より切羽詰まった印象になった。

宮阪が落ちてDF4枚+1枚の形では4-4-2のままFW2枚+SH2枚で蓋をして対応。

大分がDF3枚+2枚のビルドアップに対しては茨田が内に入り、酒井が1列前に、DFラインに三門雄大が落ちて4-1-4-1で対応。
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前からハメてショートカウンターという形を狙いとして持っており、それを可能としていたのは相手を見る事だけでなく、エリアによってリアクションを変えていたから。大宮のアタッキングサード、大分の自陣寄りでは上記のような形に応じて対応。中盤より前で大分がボールを持てば酒井がDFラインに戻り5-4-1に変えてブロックを築いてスペースを消す。
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マテウス、大前をサイドではなく内に寄せた事により相手の左右のCBを釣りだしスペースを作らせると共にゴールまでの最短距離でカウンターを完結させる意図を持っていた。マテウスがボールの収まり所になること、ある程度は4バックでも守れるという個の強みを生かした実に嫌らしいものだった。

 

それだけでなく、大宮はボールを持つと中盤4枚が幅を取ってボールを回し、大分のシャドウのプレスを無効化とボランチ間を強制的に間延びをさせて、ボランチ間、ボランチDF間に大前がポジション取りをして大分の守備は混乱してしまう。ミスマッチを突かれまくった大分の崩壊は時間の問題かと思われたが、35分から4-4-2に変更し、マッチアップを明確にして球際の強度を強め対応して凌ぐ。
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自分たちのタスクの矛盾による機能不全から悪い状況に陥ると共に、臨機応変に対応できる大宮と、やりたいことはチグハグでフィニッシュまで持っていけずミスの連続でより意識が守備に傾き、挙げ句の果てにプランの変更という最悪な状況。0-1なのが不思議なくらいだった。

 

整理をして「らしさ」を取り戻す 

にっちもさっちも行かなかった前半。改善点は沢山あるように見えたが、原因は宮阪のタスク過多という1点のみ。そこで後半から宮阪をボランチに固定をし、3-4-3で前から仕掛けるように変更。これにより内容が劇的に改善した。

大分が3バックでビルドアップをするため大宮は4-1-4-1で対応をしてきたが、馬場を中心に大宮の1ボランチ脇を突いて次第に攻撃が活性化。國分がサイドに流れるのは変えず、彼の空けたスペースを宮阪が埋めるのは、後半開始すぐでは機能しなかったが、時間の経過と共にそこも改善していった。

64分には丸谷のパスを藤本が胸で落とし馬場がシュートと中央突破もできるようになり、ほぼ大分がハーフコートに押し込んでいく。73分には那須川→星雄次、馬場→清本拓己と2枚替えをしてより縦への意識を強めてゴールを奪う意識を強める。

2枚替えから左右に大きく展開をしていき、相手のプレスが効きづらくさせると、中央でシャドウがボールを受けやすくなり、そこに蓋をされても宮阪から大きなサイドチェンジでサイドを抉るという波状攻撃に。WBからWBへとつながりシュート、相手の背後からシュートなど様々な形でゴールを脅かす。結局最後の精度が足りずに枠内シュートゼロ。これが響いて3連敗になってしまった。

 

大宮の印象

好調の大宮は前回よりも手強く、特に前半は状況判断の面で大きな差があった印象。判断が良ければ自ずとペースは握れるはずなので、ノッてきた今からの巻き返しが怖い。

選手ではマテウス、茨田が印象に残った。

マテウスはゴリゴリのフィジカルでシュートの意識も強く、リトリートで守備をする大分のスペースへの侵入は大きな驚異だった。

茨田はこれまではボランチだったが、今季の途中からSHへ。主にサイドから中に入り、ハーフスペースへの侵入と酒井のスペースを空ける役割だったが、これが上手くハマった印象。ボールキープもできるのでタメを作ってサイドの上がりを待てるので、右サイドの酒井とのコンビは強烈だった。

そしてなんといっても石井監督。オーソドックスな4-4-2に選手の特長を生かした配置は理にかなってると感じたし、茨田のコンバートで酒井との関係や、大前と富山貴光を流動的に置いたりと確実に良くなっていた。守備も大崩れしないし、これから勝ち点をまだまだ伸ばしそう。

 

結果は伴わずとも

結果だけ見れば片野坂体制初の3連敗と厳しい結果になったが、これまでとは違い、後半の45分で盛り返していたことを評価したい。今までは流れが悪くなって苦肉の策でのフォーメーション変更で応急措置をして多少は佳くなることはあった。しかし、この日はベースである3-4-3で真っ向勝負をして多くのチャンスを作った。これは、これまでミシャ式をベースにしたサッカーが根付いている証左であり、ハイプレス、ハイインテンシティーを貫いて押し込んだ、盛り返した事は大いに評価したい。幸い、上位陣も軒並み足踏みと、首位とは勝ち点差もあまりない。この日の後半45分をベースに戦えば、必ず建て直せると思う。敗れはしたがチームとして、トリニータが勇往邁進するために必要な自信をつけられた試合になったはず。悪い中で見いだしたこの光明を掴めるか。次節が楽しみだ。

 

【ハイライト】2018明治安田生命J2リーグ第23節 大宮アルディージャ vs 大分トリニータ - YouTube