Nishida's diary

トリニータを中心にいろんな試合を。

【大分】vs熊本(H) 様変わりした相手を抑えて〈J2 第17節〉

前節は大敗を喫した大分。この日も難しい試合になったが、久しぶりのクリーンシートで首位をキープした。

 

この日のメンバーは以下のように。

大分トリニータ
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前節から1枚の変更。FWの三平和司から伊佐耕平が先発に。以上。

 

ロアッソ熊本
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村上巧が怪我から復帰を果たして3バックの真ん中に。それまで3バックの1角を担っていた米原秀亮が本職のボランチで起用された。

 

攻守を上手く分断した前半

前半の45分はほぼ大分のワンサイドゲームになった。

大分のビルドアップに対して熊本はハーフラインより自陣寄りのところまでリトリートをしてブロックを作ることを優先したが、これが裏目に出る。長短の正確なキックができる宮阪政樹がほぼプレスを受けないので大きな展開に持っていく事ができたのだ。また、もしビルドアップでパスミスをしても、中盤の位置なので、ゴールまでの距離が長く、失点の匂いはあまりしなかった。前節の甲府のように、熊本はCF、シャドウ、ボランチの5人でボランチ包囲網を緩く作っていたが、宮阪との距離を詰められないままズルズルと後退していたように思われた。

 

それを見てか15分ほどから熊本はDFラインを押し上げる。CBがドリブルでミドルサードまで持ち上がり、重心を上げると共にWBがCBに近づき、大分のWBを釣り出そうとする。しかし大分はこの誘いには乗らずに5バックでしっかりとブロックを作って、WBはシャドウの後藤と馬場が監視をして攻め手を奪う。"バスを止められた"熊本はボランチやCBでパスを回せど引いた相手を崩せない。

 

一方の大分は、相手を崩す手段もしっかりと準備をしていた。

熊本のストロングポイントは2つ。左右のWBの走力と前線の皆川佑介、安柄俊の高さだ。これに対して大分はシャドウの動きとボールの保持によりその両方を消していた。

 

まずは左右のWBをどうやって消すか。

これに対しては、大分のシャドウとWBのポジショニングを少しズラして変化をつけていた。

いつもなら大分が自陣でボールを回している間にWB、シャドウ、CFが高い位置を取り5トップのような形にするが、この日はWBをやや下がり目に置き、シャドウの後藤優介と馬場賢治は相手の3バックとWBの間に位置するように配置。これにより、後藤や馬場にボールが入ると、まずはWBの田中達也黒木晃平がチェックに行かないといけなくなり、CBとWBのポジションを強制的に逆にしたのだ。それにより、大分のWBの松本怜、星雄次がフリーで受ける事もでき、もしボールを奪われても田中、黒木はインサイドにいるため素早いカウンターに移行することも出来ない。

 

次に皆川と安の高さ対策について。

これについては熊本の最初の誤算だったとも考えられる。1トップ2シャドウではシャドウの選手がサイドの守備に回らなければならない。安は右サイドの松本を見なければならず、それに加えて、対人に強い#丸坊主オネエの刀根亮輔とマッチアップする場面も多く、サイドで孤立させることに成功。1トップの皆川もCBとボランチでしっかり挟んで対応ができたため、高さが生きる場面は少なかった。

これにより熊本のカウンターを潰してワンサイドゲームに持ち込めたのだ。

 

大分の先制の場面でも、狙いが上手くハマった形になった。23分に伊佐が潰れて後藤がこぼれ球を拾った時に、左WBの黒木はペナルティエリア内の後藤とサイドの松本のどちらかのマークを捨てなければならない状況に。フリーの松本のクロスから馬場が1トラップからのシュートで先制。馬場は3試合連続のゴールとなった。

 

大分は狙いどおりに押し込んで、熊本はやりたいことを潰されてゲームを折り返す。

 

 

適材適所に配置をして建て直す

後半に入り、熊本はシステム変更により攻守の整理を行ったことにより息を吹き返す。

以下のような4-1-4-1(4-1-2-3)のような形を取り、3つの狙いをもって後半をスタートさせた。
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1つめは前半の修正。

サイドの黒木、田中がインサイドに、インサイドの安がサイドに流れてチャンスが作れなかった事を受けて、黒木、田中の後ろに1人援護をつけて守備でもサイドを見るようにし、安はより皆川と近い距離でプレーするように変更。これにより熊本の選手たちが本来やりたかったプレーがしやすいように整理を行った。

 

2つめは大分の5トップへの対策。

後ろに5枚置かれてスペースがなくなり、攻め手を失っていた熊本だが、ボールを保持すると、5バックに1トップ2シャドウと両WBの5人をぶつけてアンカーの中山雄登、CBの米原を1列ずつ上げて攻撃に厚みを持たせた。
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3つめは相手WBの抑制

大分はWBが5バックのサイドを担当するため、まずはリトリートでスペースを埋める。前半の熊本は、そのWBを釣り出すことに失敗したため、後半はサイドの人数を増やして数的優位を生かしてWBを釣り出して、サイドを抉ろうとした。そのために、SBとアンカー、SHのトライアングルができるとダイレクトパスを繋いでいくことを求めた。

 

すると50分にはカウンターから皆川が潰れて安がキープをしてサイドのスペースへパス。駆け上がった田中はダイレクトでクロスを上げると松本のマークを振り切った黒木がヘディングで合わせるもバーに当たり得点ならず。

 

熊本のシステム変更に面食らった大分は、誰が誰のマークをするかが明確ならず、攻められる場面が増えた。そこで1発を決められるとどうなるかは全くわからなかったが瀬戸際で防ぎつつ、状況を整理できた大分は60分ほどから落ち着きを取り戻していく。

 

大分が慣れたことを感じてか、69分に熊本は安を諦めて伊東俊を投入。高さからスペースを突く形に変えた。大分も同じタイミングで攻守に動き回った馬場と後半は守備に追われた宮阪を下げて國分伸太郎、川西翔太を投入。國分には馬場と同じように前線からのプレスを、川西にはプレーを剥がしつつ攻撃に厚みを持たせる事を期待しての投入だった。

 

70分が過ぎても攻勢に出る熊本に対して大分は、一時的にではあったが岐阜戦の時のように3ボランチのような形で守りを固めた。
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 中を閉じられた熊本はサイドからのクロスと伊東の仕掛けでゴールを狙うも、ことごとくブロックされてしまい攻めあぐねる。

77分に中山→上村周平、85分に小谷祐喜→佐野翼とフレッシュな選手を入れるも状況は変わらず。

大分も伊佐と福森直也が足を痛め、星も足をつるなど満身創痍な中で伊佐→三平。もう1点を狙い勝負を決める選択をすると、後半のアディッショナルタイム。中盤で鈴木義宜が皆川からボールを奪うとそのままドリブルで前線へ。PA内の後藤にパスを出すと、チップキックでGKの脇をすり抜けて追加点。2-0で九州ダービーを制した。

 

熊本の印象

大分戦を終えて33失点とリーグトップの失点数の熊本だが、攻守のバランスが悪くて失点が多いというわけではないためそこまで悪くないような……

リーグ戦序盤では3バックはフラットに保ち、「まずは守備の安定」を第一に考えていた様だが、中盤戦に入り人を動かしてギャップを作る事にチャレンジをしているように感じた。今季の熊本の可変システム、大胆なつるべの動きを支えるのはボランチ米原秀亮だ。CBとボランチをこなし、状況判断も的確。右WBの田中達也がリーグトップの9アシストをしているためかやや黒子的な印象も否めないが、チームのバランスをとる戦術のキーになっていた。

後半の最初のチャンスを外すと、外→中が増えて逆の形を作れなかったのは今後の課題になるように思えた。

 

バチバチの戦術勝負を制して

片野坂監督と渋谷監督。二人の戦術勝負は前半では片野坂監督、後半では渋谷監督が上手に出たように思えるが、決めるときに決めた大分が勝負を制した。

馬場のシュートはトラップがハンドでは?と解説の増田は言っていたが、故意のものではないし、脇を締めており、審判もトラップの場面をしっかり見ていることがハイライトからも見てとれるため誤審ではないだろう。

2点目も皆川から鈴木がボールを奪った場面でファールだったのでは?と熊本ベンチが抗議をしていたが、正当なチャージであった(服を引っ張っていない)し、それまでの皆川と鈴木のマッチアップでは熊本のアドバンテージをとる場面も多く、審判も気にしていたからこそ正当なチャージという判定を下したと自分は思った。

試合終盤では、大分は3選手も足を痛めたような仕草をしており、まさに満身創痍ではあった。しかし、第10節金沢戦以来のクリーンシートで終わることができたのは、前節の甲府戦の6失点を払拭する意味でも大きな収穫だと言える。

これからは全国的に梅雨入りをしていき、まとわりつくような暑さでの戦いになる。そうなると、これからは僅差での試合がより増えるがこれからも「30人全員で」戦って勝ち点3を積み上げてもらいたい。

 

【ハイライト】2018明治安田生命J2リーグ第17節 大分トリニータ vs ロアッソ熊本 - YouTube