【大分】vs徳島(A) 崩せず自滅〈J2 第21節〉
一進一退の好ゲームで47分で退場者を出した大分。これにより破綻してしまった。低いラインの相手に釣り出され、ことごとく背後を取られての敗戦。これからの戦い方を考えさせられるものとなった。
この日のメンバーは以下のように。
徳島ヴォルティス
開幕前は昇格圏に予想されながら、怪我人が多く、ここまで4連敗。主力の大崎玲央が神戸に移籍を発表しベンチ外。難しい時期が続く。
この試合から広瀬陸斗が怪我明けで初スタメンで右WBで起用。それに伴い、大本祐槻が逆サイドを務めた。
大分トリニータ
変更は1つ。契約上出場できなかった松本戦以外は全試合先発出場していたボランチの宮阪政樹がベンチスタート。かわりに川西翔太が先発。昨年はこのポカスタでPO進出を逃し、シーズンダブルを食らった。
相手に対応できずに
大分はゲームの入りで、徳島が前からアグレッシブにプレスを仕掛けてくると想定していた。それはボランチのビルドアップの際に工夫を施していたからだ。普段はボランチが1枚下がり4+1の形で組み立てをするが、この日はその下がり方を変更。川西が左CBの刀根亮輔の横に入り、プレス回避の意図が見えた。
しかし、徳島は前線からのプレスを仕掛けては来ず、ハーフラインよりやや自陣よりにラインを引いてきた。これはただ単にドン引いたワケでなく、明確な意図を持っての低いライン設定だった。
徳島の狙いは攻守共に狙いがあった。
まずは守備。
これまでの「大分対策」はいずれもパサーへのアプローチをどうするかが中心だったが、徳島はパスの受けてへのアプローチを試みた。3-3-2-2のサイドを下げて5バックにし、中盤中央の3人は内側を重視し、3バックと中盤の3枚で大分のシャドウを孤立させた。
また、ラインを低く設定することによりボランチからのロングフィードも無効化した。スピードのある大分の両サイドがロングフィードを受けて背後を取って崩す形を取るが、徳島DFがあらかじめ低い位置に構えているので高さでの競り合いに持ち込んだ。また、ラインが低いため、裏のスペースもなくなり、結果として大分のボランチは近くの味方に預けるしかなくなっていた。
ボールの位置取りを高くしてから全体を押し上げる大分は、攻め手は無いがボールは持たされるという状況に。そうなってはリスクを負ってでもラインを高く設定して殴り続けることを余儀なくされた。
次に攻撃。
基本的にはDFラインを低く設定するとそれだけ相手ゴールからも自ずと離れるため、攻めあぐねる事が多い。しかし、徳島はしっかりと攻撃のデザインも施されていた。
肝となったのは中盤の底にシシーニョを置いたことと、FWの動きだ。
徳島の中盤の底はいつも岩尾憲だが、この日はシシーニョを起用。これはボールをシンプルに捌けるシシーニョが一番ボールに触れる位置に置いたということ。シシーニョにボールが渡ればそこを起点にカウンターへと移る意図があった。
徳島の2トップはボールを奪うと、縦ではなくナナメに走り、高い位置を取った大分の左右のCBの裏を狙った。中央を回避することにより、大分のCB、鈴木義宜をサイドへと釣り出す。そして岩尾憲と小西雄大がインサイドを駆け上がりフィニッシュまで持っていく。
大分は高いラインの背後を取られてサイド→中と揺さぶられて多くのカウンターを受けてしまった。
その形から11分に岩尾のシュートをブロックした丸谷の腕に当たってPK。これを岩尾にしっかりと決められて失点。
大分は効果的なカウンターを繰り出す徳島にただただ攻めあぐねてしまい、25分ごろからフォーメーションを変更。4-1-2-3に変えてサイドの補強をした。
引いた相手に対して3バックでは人数が余ること、5バックを敷いた相手のサイドに2枚をぶつけて3ボランチ気味の中盤を拡げる意図があった。これによりサイド突破が増え、シャドウもボールを触れるようになったが、粘り強く対応されてしまい、カウンターを食らう。を繰り返し、ややテンションの高い前半をビハインドで折り返す。
崩れたゲームプラン
大分はハーフタイムに國分伸太郎から清本拓己を投入。今季初めて4-2-3-1に変更をして後半をスタートさせた。
しかしこの変更から僅か2分後にゲームプランは完全に崩れる。なんでもないボールを丸谷が岩尾に対してスライディング。これが岩尾の足首に入り2枚目の警告を受けて退場に。あまりにも軽率なプレーでゲームを台無しにしてしまった。
これにより4-4-1に変更。
大分は果敢に走り、積極的に攻めるも打開はできず。65分ほどから徳島が前に出て来て攻め手を失うと、69分、89分と失点をして0-3で敗戦。残念な結果となった。
徳島の印象
ただ守備的なだけでなく、攻撃もデザインされており、やっぱり徳島はどの順位にいても嫌な相手だと思う次第。
特に攻撃面では、しんどい長い距離のスプリントを何度もこなし、チャンスを作るのは走力が叩き込まれているから。島屋八徳や岩尾憲はそのスピードでもプレーの精度が落ちない良い選手と感じた。次は11対11での戦術での殴り合いをしたい。
運も味方して
個人の軽率なミスもあり、0-3で敗戦も、2位山口も敗戦、町田、福岡は引き分けと上位チームが軒並み勝てず、前半戦を勝ち点40で首位で折り返すことができた。しかし、昨年暮れにPO圏進出を逃し、片野坂監督の涙の会見があったポカスタでリベンジが果たせなかったことはとても悔しい。
ここまで完勝といったゲームはほぼなく、クリーンシートでの勝利も数えるほどと課題は多く残る。そんななかでも今年はシーズンの折り返しをトップで迎えられたのはこれまでの積み重ねの証左であり、勝負強さが備わっているからこそ。後半戦はより研究をされて難しい試合も増えるが、そこを勝つことで新たな景色が見えるのは確かだろう。
後半戦最初の相手は甲府。前回の対戦ではボッコボコにやられた相手にどこまで出来るかを楽しみにしたい。