Nishida's diary

トリニータを中心にいろんな試合を。

【日本代表】vsパラグアイ 組織は見えたが……〈国際親善試合 〉

ワールドカップ前最後の調整となったパラグアイ戦。日本代表は「らしさ」を見せることができたが、守備がハッキリしないままワールドカップを迎える結果になった。

 

この日のメンバーは以下のように。

日本代表
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前回と同じ4-2-3-1を採用。メンバーは酒井高徳以外は全員入れ替え。酒井高徳も逆サイドの左SBで起用された。

 

パラグアイ代表
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こちらも4-2-3-1を採用。この試合でGKのビジャールは代表引退試合となった。2010年の南アフリカ大会で対戦した時のGKであった。お疲れさまでした。

 

"香川システム"が機能

前半から日本は相手のMFとDFの間やDFラインの裏を狙うシーンが多く見られた。

中盤の底から柴崎がクサビのパスを多く入れ、2列目で受けた選手がターンやワンツーをして相手に後手を踏ませる。狭いバイタルエリアでフリックやターンができる香川を中心に攻撃の形を作る。

攻撃のスイッチの役割を果たした柴崎だったが、シーンによっては中盤でパスコースがなく、バックパスしかない状況でパラグアイの前線から激しくチェックを受けて数的不利になる場面も数度あり、ビルドアップのサポートはまだ課題があるように見受けられた。

それでも、日本はボールサイドに1トップと2列目の3人が寄り、空いた逆サイドのスペースをSBが上がった3-2-4-1や、ボランチが1列上がり4-1-4-1のような形にして狭いスペースでパス回しをして行く事と、ボールを奪われてもすぐに取り返す事を意識していた。

左サイドで組み立てる時は逆サイドの遠藤が2列目の一角に入り、幅を持たせる。
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ボールを奪われても前から仕掛けていく。

相手CBが岡崎からボールを奪い、手薄な日本の右SBのウラを狙うが、前からプレスをかけてそのスペースにいい形でボールが行かないようにする。
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相手に素早いカウンターをさせないようにしていたこの形が機能していた。狭いスペースで人数をかける事で狭いスペースで局面を打開できる香川が生きやすく、プレスの連動ができるようになっていた。

しかし、32分にスローインの流れからオスカルロメロにボレーシュートを決められて先制を許す。

その後39分に柴崎のFKがクロスバーをかすめるなどあったがスコアは動かず0-1で前半を終える。

 

守備の形を模索した後半

 後半に入り日本は東口、遠藤を下げて中村と酒井宏樹を投入。これで日本は代表メンバー23人全員がプレーすることとなった。

51分に香川がDFラインとMFの間に動きワンタッチで乾にパス。乾はカットインから巻いたシュートを放つとゴールに吸い込まれ同点に。3試合目にして嬉しい初ゴールとなった。

 

ボールが落ち着いた後半、日本は守備の形を変更した。

ガーナ戦で試した3バックのような形で守備を行い、酒井宏樹が内側に入り武藤がサイドを守るような形に。
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 相手を引き込んで、カウンターの場面を作る意図があったようだ。55分には香川が裏に抜け出してペナルティエリア内に入るもシュートまでは持ち込めず。

63分にパラグアイのSBの裏で武藤がボールを受けると、CBが武藤のチェックへ。これにより内側でズレができ、武藤から香川へパスをすると香川はフリック。後ろから走り込んだ乾がフリーでシュートを放つとGKの脇に当たりながらもゴールにが決まり逆転に成功。

この得点後に武藤を下げて大迫を投入。これにより2トップとなった。
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解説は「2トップで前線のポイントを増やしてより攻撃的にー」と話していたが、リードを奪った際の守備を意識していたように見えた。香川のサイド起用は4年前に守備の穴として散々狙われていたので守備の強度を見たかったのだと感じた。しかし、結果としてシステム変更により日本の多くの選手が守備の際に適切な対応ができずに、無闇に複数人がボールホルダーに寄せていき、危うく守備が崩壊しかけた。

これを見て西野さんは岡崎から原口に変更し、4-2-3-1に戻す。
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その後、柴崎のFKから相手のオウンゴールでリードを離し、再び4-4-2での守備を試すために79分に乾から宇佐美へと交代。香川を2トップの1角で起用を試した。
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この変更後は相手ボランチから中盤でボールを奪いカウンターから3対2の形を作るも香川がフカしてしまい決まらず、90分にパラグアイがFKのこぼれ球を豪快なミドルで突き刺して3-2。その1分後にまたしても相手ボランチからボールを奪い2対3になったところを香川が狭いスペースのドリブルで抜いて最後はDFの股を通してGKの逆をついてゴール。

4-2と西野さんの率いた時のガンバのスコアのような形で初勝利を飾った。

 

"ザックリ"とした中で

攻守共にやりたい事が見えた日本代表ではあったが、どれも"ザックリと"したモノにしかならなかった印象が強い。

攻撃面では1トップ+2列目3人でボールサイドに寄って空いたスペースを下から支えて計5人が前に張る事は見えた。が、4-4-2に変更をして2トップ+両サイド+1枚の形での崩しは見ることができなかったし、5人より少ない人数では仕留めきれない印象が強かった。また、ネガティブトランジッション(攻撃→守備)ではリスクを負って出たスペースのカバーが曖昧で、そこを突かれた時にどう立ち振る舞うかは全くと言っていいほど見られなかった。

守備ではスイス戦後に槙野が「(DFラインの人数は)3枚なのか4枚なのかわからないですが……」と話していたように、この日もどちらにするかを迷ってしまい、細部が詰められないままでいる。最悪なのは3バックと4バックの併用。この日のパラグアイの緩い攻めであっても3バックから4バックへ変更した際に、マークの受け渡しやフォアチェックなどすべてで後手を踏み「とりあえず」ボールホルダーに食い付く場面はすなわち守備の崩壊を意味する。時間帯によって臨機応変にできる見込みはごくごく僅かだろう。 

今回迎えるワールドカップは「南アフリカ大会によく似ている」と言われているようだが、"ザックリ"とした中で迎えるワールドカップは今回がはじめて。最後で日本式ポゼッションを棄てて守備の意識を第一に置いた岡田監督と、最後までどっち付かずな今の日本では比べる対象ですらない。

すでに開幕をしたロシアワールドカップでは、代表チームがクラブチームのような緻密さを持つチームが多い。そんな中で攻守ともにどっちつかず、出たとこ勝負なチームは非常に難しいゲームになるだろう。開幕戦でサウジアラビアが崩壊したように、無秩序なチームは切り刻まれる。今までで最も難しい大会にしてしまった田嶋をはじめとするハリルホジッチ監督を切った人々を怨まずにはいられない。

 

何に期待するか

ここまでは夢も希望もない日本代表についてグダグダと話したが、明日にはいよいよ初陣のコロンビア戦。4年前のトラウマは未だに強烈な印象だが、セネガルポーランドに比べればまだなんとかなりそうなイメージ。(ウラを返せば開幕で惨敗なら悲惨な結果になるだろう。)ここで踏ん張れるか否かで予選だけでなく、これからの日本サッカーの未来は大きく変わるだろう。

期待すべきは香川を中心としたアタッカー陣。世界に比べ、守備は貧弱としか言えず、西野さんになってからは平均2失点と守って勝つのはほぼ不可能だろう。と、なれば2点取られても3点取る勢いが必要。チーム全体を圧縮してボールサイドで細かいパス回しをして狭いスペースを仕掛けの量で圧倒して押し込み前からの守備、ショートカウンターを狙う必要がある。それができれば「窮鼠猫を噛む」では無いが、世界をアッと驚かせることができるかもしれない。

 

 

 

とりあえず、日本代表に「がんばれ」と声をかけ続けて田嶋が消える

だったり

某プロフェッショナルに「ありがとう」と声をかけ続けてスタメンから消える

だったりすればいいんじゃないっすかね。
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ハリルホジッチでよかったやん!!!!!

いろいろあるけど応援します。

 

【大分】vs愛媛(A)「できた」気分にさせられて〈J2 第18節〉

攻めども攻めども崩せずに、PKでの敗戦。しかしそれはラッキーパンチではなく、愛媛の狙いにまんまと嵌められて、ズルズルと沼に填まった印象だ。

 

この日のメンバーは以下のように。

愛媛FC
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成績不振により間瀬監督を解任し、後任の川井監督就任後も4戦勝ちなし。開幕からホームで未勝利となかなか浮上のきっかけを掴めない愛媛。

前節から丹羽詩温がベンチスタートで、変わりに小暮大器が右WBで先発。小池純輝が逆サイドに回り、近藤貴司が1列前のシャドウに入った。

 

大分トリニータ
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前節の終盤で脚を痛めた素振りを見せた福森直也が星雄次と共にベンチ外。福森の位置に刀根亮輔が回り、右CBには黄誠秀がスタメンに。星の位置に松本怜が回り、逆サイドには岸田翔平が先発に入った。そして林容平と岩田智輝がベンチ入り。

 

入りは良かったが……

前半入りの大分は、愛媛の低いラインの前でシャドウの後藤優介、馬場賢治が楔を受けて相手を引き付けてサイドに展開、クロスからチャンスを伺う。12分には左サイドの松本のクロスにDFの死角から飛び込んだ後藤がヘディングで合わせてゴールネットを揺らすもファールの判定。

一方の愛媛は序盤からDFラインでボールを回せど、大分の前線の選手が内側のコースを切っていたため、前へ繋ぐ流れがCB→WB→サイドに流れてきたシャドウと限定されていた。そのため、アタッキングサードに入る前に大分の網にかかり、シュートまで持ち込めない。

大分はビルドアップに問題を抱えた愛媛を序盤で叩けなかった事が、後に大きなツケを払う事に繋がってしまった。

 

愛媛の狙いが効きはじめる

愛媛は3-4-2-1で守備をしていたが、ボールを持つと以下のような4-1-2-3に可変。
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3バックが左にズレて右のスペースを田中裕人が埋めて両WBに高い位置を取らせる。

これにより大分の5バックに前5人をぶつけ、攻撃から守備に転じた時に相手WBに高い位置を取らせづらい形を作っていた。

しかし、これが効き始めるのは前半の30分ほどから。それまでは、DFラインからボールを引き出す動きが乏しく、アンカーの野澤英之の周りは相手にコースを切られているため、3トップの両サイドに位置取りをしたWBが下がってボールを受ける事しかできなかった。

DFラインは上がらない、シャドウは降りてこないとなっており、攻守は完全に分断され、間延びしていた愛媛。そこを大分が突く前に修正をかけられてしまった。

前半35分ほどからシャドウの一角を担っていた近藤がシャドウとアンカーの間を繋ぎ、リンクマンの役割を担うと、ここからジリジリと大分を追い込んでいく。外だけでなく中からもボールが繋がるようになった愛媛は、DFラインも積極的になり、ラインを上げる。全体の距離感が近くなり、間延びを防ぐだけでなく43分にはDFラインからサイドの裏のスペースを小暮が突いてチャンスを掴む。愛媛は前半のうちに修正をして後半へ。

 

徐々に劣性に

大分はチャンスを決めきらないが、40分までは相手にシュートを打たせないまずまずな前半を過ごした。しかし、徐々に噛み合う愛媛の攻守の前に、大分は良い形が作れなくなっていく。

後半での愛媛の修正は、サイドでSB、アンカーorシャドウ、WGの3人でユニットを作り、タッチ数を減らして大分のWBの裏を取ってCBを釣り出し、DFラインのズレを作る事を試みた。

そこからのチャンスはなかなかできなかったが、流れは徐々に愛媛へと流れていく。52分には大分のパスミスを近藤が奪ってシュートをするが高木駿に弾かれるも、65分にはビルドアップのミスからカウンター。カバーに入った宮阪のスライディングした手に当たってPKを獲得。これを近藤が決めて愛媛が先制。

 徐々に攻め手を失った大分は、69分に黄誠秀を下げて國分伸太郎を投入。
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國分はシャドウではなく、左サイドに回り松本が右サイド、岸田が右CBに入って攻撃に厚みを持たす。愛媛は松本の速さの対策としてか小池と小暮を入れ替えて対応してきた。

前がかりになった大分。愛媛は大分のWBとCBの間のスペースにシャドウを走らせカウンターを狙う。前がかりになって戻りも遅いとみた片野坂監督は、79分に馬場を下げて清本拓己を投入。4-4-2に変更し、サイドのケアとサイドアタックと前線の厚みを持たせた。
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特に左サイドは速さと量で勝負をするも決めきることができず。21位の愛媛を相手に痛い敗戦で首位陥落となった。

 

愛媛の印象

前半の30分まではボールに顔を出す選手が少なく、このままならどこかで集中が切れて大分が勝つなぁ~とぼんやり思っていたが、時間を追うごとに攻守が噛み合った愛媛を前になにもできなかった。川井さんはかなりやり手な印象。嫌なチームだった。

選手で目立っていたのは近藤貴司と前野貴徳。近藤は前から、前野は後ろから攻守のリンクマンの役割を果たしており、彼らが良い体勢でボールを受けるとスイッチが入っている印象があった。

 

やりたいことをやらされて

大分は攻守でやりたいことを愛媛にされて、攻守が分断。結果として攻守の意識のズレが生まれて間延びをしてしまった。

チームの守備の決め事として5-4-1のブロックを作り、リトリート。相手のDFラインは低く、攻勢に出ればキモとなるシャドウはフリーになりやすい。そうなったときに相手選手がCFとボランチの間で受けるとフリーにしてしまう事が大きな悩み所だった。
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野澤の横の位置に近藤が下がり、大分のボランチの前でボールを回されてもリトリートが優先なので、フリーで回すのを許容する形になった。これにより、サイドの守備をするシャドウは「ボランチが押し上げてボールホルダーにチェックにいけよ!」と思う一方で、ボランチは「まずはブロックの形成が第一だから、サイドから中にボールが行ったらシャドウがコースを切ってくれよ」と両者の間に意識のズレがあったように思われた。結果として早く攻めたいシャドウが前への意識が強くなり、サイドの押し上げを待たずして前線に突っ込み間延びをしていた印象が強かった。リトリートでブロックの形成を第一にするのは構わないが、相手のボールホルダーの位置に合わせて適切なラインの高さを設定しないと厳しいと感じた。

 

これから松本、福岡と上位陣との対戦が続く。DFラインの高さを丁寧に微調整することがこれからの課題だろう。それが上手くできれば昇格圏を狙っていけるはずだ。

 

【ハイライト】2018明治安田生命J2リーグ第18節 愛媛FC vs 大分トリニータ - YouTube

【日本代表】W杯開幕前に読んでおきたい本〈書籍〉

さーて、金曜日にはもう開幕ってのに自国の代表がクソすぎて盛り上がりに欠けるなぁ……でもどうせなら楽しみたい!って人は多いはず。実際ワタクシもそう。W杯前後は特に書籍も充実してくるので、そこに乗っかってソンはないかな、という事で何冊かご紹介。

 

本を選ぶにあたり、まずなぜハリルホジッチ監督は解任されなければならなかったのか?どういう戦いをしたかったのか?から始まり、これまでの代表ってどんなだったか?今の戦術のトレンドは?などを知るという観点で選んでみました。多分W杯が終わったあとに代表の顛末についてや、上記の内容を踏まえた面白い本がまた出るはず。楽しみだけどとりあえずはW杯前に、ということで。

 

 

 砕かれたハリルホジッチ・プラン

著者:五百蔵容
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まずはハリルホジッチ監督の解任により、4年間の積み上げがなくなった日本代表。ハリルホジッチがやりたかった事はなんぞや?というのは結局分からずじまいだが、そのヒントになる1冊。

日本代表でやりたかった「戦術」やコンセプトを図解を交えて分かりやすく記すとこから、代名詞となった「デュエル」や「縦に早い」といった言葉の意味、今の日本代表や協会、メディアなどが抱える問題にも触れた名著。最後の霜田正浩氏(現山口監督)の章だけでも一読の価値がある。これを読まずして今の代表は語れない。

 

 

日本代表戦術アナライズ

著者:西部謙司
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上記の「砕かれたハリルホジッチ・プラン」では、ハリルホジッチ監督を中心にした話なので、これまでの代表の流れはあくまでも補助としての役割。オフト時代からの代表の"最後の"試合を中心にどんなコンセプトでサッカーをやりたかったか、というのはこの本で補いました。西部さんの書籍は読みやすいので、こちらから読むのもありかも。代表の4年間は続けど、次の4年には繋がらない。ここ数ヵ月で露になった醜態の予兆はずっと昔からあったんだな、と。また、日本代表の日本化とは何かの考察も面白かった。

 


モダンサッカーの教科書 イタリア新世代コーチが教える未来のサッカー

著者:レナート・バルディ、片野道郎
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2008年の無敵艦隊スペインやバルセロナが平たく言えば「パスサッカー」で、勝利を重ね戦術は新たな局面を迎えた。そして鬼才、ペップ・グアルディオラが率いたバルセロナバイエルン(特に後者)は新たな試みが多くあった……そこから早10年。グアルディオラの頭の中にあったものが「ポジショナルプレー」「5レーン理論」「可変システム」などの言葉を通して今、触れる事ができる。

監督たちの頭の中ではどういう局面が想定されていて、どんなリスク管理をしているのか。まだ読み終えてないのでなんとも言えませんが、グラぽさんがまとめているのでそちらを是非。

 

  

 footballista 2018 RUSSIA WORLD CUP GUIDEBOOK

出版:ソルメディア
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海外のサッカーについて知るならfootballista。月刊誌で、各国リーグのレポートやコラム、インタビューなど日本のサッカー雑誌で一番内容が濃い雑誌が発行するワールドカップの選手名鑑。日程や放送、選手の情報だけでなく、ピルロの大会展望や審判の名鑑、キャンプ地からスタジアムの距離など様々な「知りたい!」に答えてくれる1冊。名鑑で迷ったらこれにすれば間違いない……!

 footballistaのHPにも面白いコラムがたくさんあるのでそちらも覗いてください。

 

 

多分これで今回のハリルホジッチ監督の解任騒動の問題点、日本代表の現在地が分かるようになるはず。また、今の世界のサッカーはどんなのかも知るとワールドカップはもっと楽しめる!と思います。

 

以上!

【日本代表】vsスイス 自分たちの"壁ドン"サッカー〈国際親善試合〉

W杯初戦のコロンビア戦まであと2試合。FIFAランク6位のスイスと対戦をしたが、ゴール前では"壁ドン"続きにエースの介護で全くサッカーですらなかった。クーデターを起こしてこの内容、この結果では到底納得はできないが、もう、どうしようもない。虚しさだけが残る90分であった。

 

この日のメンバー

日本代表
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ちぐはぐだった3バックをやめて4年前は慣れ親しんでいた4-2-3-1を採用。先発メンバーはシステム変更により山口蛍が外れ、かわりに酒井高徳が入った。

 

スイス代表
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こちらも4-2-3-1。W杯初戦の相手がブラジルということもあり、結構本気でどれくらいできるかのテストとしての日本戦だったはずだが、練習にすらならなかったようだ。ごめん。

右SBのリヒトシュタイナーはこの日が代表100試合目。

 

30分間のみのサッカー

前半のスイスはボールを持つと、ボランチの11番ベーラミが下がりSBに高い位置を取らせると共に、8番のフロイラーが連動して下がり、長谷部を釣り出してスペースを創る。長谷部が出てきたらそのウラを狙う意図を持っていた。また、日本のボランチに激しくデュエルを仕掛けて中を締めると共にショートカウンターを狙っていた。

一方の日本は1トップの大迫と2列目の宇佐美、本田、原口が流動的に動き相手に的を絞らせないようにする。守備では前から積極的にプレスにいくが、連動した動きは皆無であった。それが顕著だったのは、スイスのボランチに対してのプレスであった。本田はコースは切るがボディコンタクトは一切なし。左右の宇佐美、原口もボランチにプレスをかけてがら空きのサイドに回される。どこで奪うかがハッキリしないため、守備陣は撤退しかなく、サイドに回ったボールをSBが飛び出してそのウラを取られる無限地獄だった。

無計画な前線からのプレスは明らかにオーバーペースで、30分過ぎには運動量が下がり、11人全員が自陣に撤退することでしか守備の強度をあげることができなかった。自陣に撤退をしていざボールを奪ってロングカウンターでも、浅野のような裏抜けのスペシャリストがいるわけでもなし、すでに体力を使いきっており走れないのでボールを回収されて再び守備を繰り返す。38分にはその前のプレーで接触があった大迫が座り込み40分に武藤と交代。自陣に押し込まれたまま、その直後にサイドから仕掛けたエンボロがペナルティエリア内で吉田に倒されてPK。これをしっかりロドリゲスに決められて先制を許す。そのまま攻め手を欠いたまま前半を終える。

 

単調に次ぐ単調

 30分でガス欠を起こした日本代表。ハーフタイムで多少の体力の回復はできただろうが、相変わらず前線からのコースの限定ができない。56分に宇佐美と酒井高徳を下げて乾と酒井宏樹を投入するも守備の改善はなし。相手にズレを作られてサイドに吉田を釣り出せば中で長友がミスマッチを作られる苦しい展開。74分には川島のスローがシャキリにカットされてループシュート。これは枠に飛ばなかったが致命的なミスになりかけた。

60分に大島→柴崎、75分に本田を下げて香川を投入する。相手がゲームを流してプレーをして、プレスが緩くなってやっとボールを保持できるようになった。両SBを押し上げて相手陣にてボールは持てども相手DFの前でしかプレーができずに、守備陣に対応されたりパスミスを奪われてカウンターなど単調なプレーに終始した日本。その後は日本のCKからカウンターをドルミッチに決められて0-2で敗戦となった。

 

プロフェッショナルの介護

前回のガーナ戦で3-4-2-1の守備の穴になり続けた本田圭佑。この日は"得意"の4-2-3-1で2列目の真ん中でプレー。しかし、この日の本田もタメを作る事で攻撃で多少のアクセントにはなったが、やはり守備では負担になり続けた。

前半30分まで"飛ばした"日本。選手たちの距離感が近く、ポジショニングも流動的。これが90分フルでできれば世界をアッと驚かせる事ができるだろうが、強度の問題と稚拙な守備により脆くも崩れた。そしてその中心にいたのは本田だった。

前線で起こったカオスの中心は本田。彼が10番として中盤を自由に動くことによりできた歪みは、守備の大きな負担になりチームメイトの足を止めさせる枷になっていた。本田が自由に動けば動くほど、左右の人数の偏りは激しくなり、次第に2列目の3選手は中へ中へと渋滞を起こしてボールロストを繰り返す。カウンターから本田のいないサイドにボールが渡る事があっても、本人の走力、体力が原因でサポートに行けずに攻撃に厚みを持たせることができないし、守備ではボールホルダーの前に立つだけの"アリバイ守備"に終止し、1対1でデュエルもできず、パスコースの限定もできない。本田は無回転芸人であって中村俊輔のようなスペシャルなフリーキッカーではないし、香川のように狭いスペースでの打開や、相手の背後を取るアイデアもアジリティもない。むしろ何ができるのだろうか本当にわからない。

そんな彼にFWと左右の2人の3人がかりで介護をつけて良い形で攻撃に繋げることは不可能だ。11人の組織の中で攻撃のタスクを握る中盤の真ん中でなにもしない、できないのだから異物と言う他ない。これでピッチ内で監督のように振る舞う王様っぷりは本当に不快でしかなかった。なぜ代表に選ばれているのかを「結果」で示してもらうほかない。

本田についてはこちらでも指摘があるのでそれも良ければご覧下さい。

 

それ、本気で言ってます?

 この試合のハーフタイムに、JFA会長の田嶋幸三が出演。前半の感想を聞かれ「やりたい形が見えた」「DFも中盤もコンパクトで意図が伝わる」「忌憚ない意見を言い合っている」と妄言に終始した。

「やりたい形」の意図は全く見えないし、「中盤もDFもコンパクト」にベタ引きをして攻撃に転じる事もできないし意図があるなら教えてほしい。そんな中で「忌憚ない意見を言い合っている」のは一部の権力を握った選手達が一方的に要求をしていることではないかと勘繰られても仕方がない。

【閲覧注意】
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また試合後に西野監督は「形はできている」「ゴールが足りなかった」「中が閉じられていて変化がないと厳しい」と能天気な事ばかり述べていた。テストマッチは残り1試合。何を話しているのだろう。

ゴールするための手段も意図もなにも見えないし感じられない。11人がサッカー未満の意図のない球蹴りを見せられて「形はできた」ってもうアホかと。本番前で無能がたくさんしゃべっても結果が出ない、出る雰囲気もない地獄を見せられても我々は白けるだけだ。

 

それでも本番はやってくる

クソみたいな単調で意図の全く見えない試合をW杯直前に見せられて大変腹立たしいが、それでもコロンビア戦はすぐに始まるし、腹は減るし、いずれ田嶋も死ぬ。"奇跡"を待つしかない虚しさを抱えながら。

【大分】vs熊本(H) 様変わりした相手を抑えて〈J2 第17節〉

前節は大敗を喫した大分。この日も難しい試合になったが、久しぶりのクリーンシートで首位をキープした。

 

この日のメンバーは以下のように。

大分トリニータ
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前節から1枚の変更。FWの三平和司から伊佐耕平が先発に。以上。

 

ロアッソ熊本
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村上巧が怪我から復帰を果たして3バックの真ん中に。それまで3バックの1角を担っていた米原秀亮が本職のボランチで起用された。

 

攻守を上手く分断した前半

前半の45分はほぼ大分のワンサイドゲームになった。

大分のビルドアップに対して熊本はハーフラインより自陣寄りのところまでリトリートをしてブロックを作ることを優先したが、これが裏目に出る。長短の正確なキックができる宮阪政樹がほぼプレスを受けないので大きな展開に持っていく事ができたのだ。また、もしビルドアップでパスミスをしても、中盤の位置なので、ゴールまでの距離が長く、失点の匂いはあまりしなかった。前節の甲府のように、熊本はCF、シャドウ、ボランチの5人でボランチ包囲網を緩く作っていたが、宮阪との距離を詰められないままズルズルと後退していたように思われた。

 

それを見てか15分ほどから熊本はDFラインを押し上げる。CBがドリブルでミドルサードまで持ち上がり、重心を上げると共にWBがCBに近づき、大分のWBを釣り出そうとする。しかし大分はこの誘いには乗らずに5バックでしっかりとブロックを作って、WBはシャドウの後藤と馬場が監視をして攻め手を奪う。"バスを止められた"熊本はボランチやCBでパスを回せど引いた相手を崩せない。

 

一方の大分は、相手を崩す手段もしっかりと準備をしていた。

熊本のストロングポイントは2つ。左右のWBの走力と前線の皆川佑介、安柄俊の高さだ。これに対して大分はシャドウの動きとボールの保持によりその両方を消していた。

 

まずは左右のWBをどうやって消すか。

これに対しては、大分のシャドウとWBのポジショニングを少しズラして変化をつけていた。

いつもなら大分が自陣でボールを回している間にWB、シャドウ、CFが高い位置を取り5トップのような形にするが、この日はWBをやや下がり目に置き、シャドウの後藤優介と馬場賢治は相手の3バックとWBの間に位置するように配置。これにより、後藤や馬場にボールが入ると、まずはWBの田中達也黒木晃平がチェックに行かないといけなくなり、CBとWBのポジションを強制的に逆にしたのだ。それにより、大分のWBの松本怜、星雄次がフリーで受ける事もでき、もしボールを奪われても田中、黒木はインサイドにいるため素早いカウンターに移行することも出来ない。

 

次に皆川と安の高さ対策について。

これについては熊本の最初の誤算だったとも考えられる。1トップ2シャドウではシャドウの選手がサイドの守備に回らなければならない。安は右サイドの松本を見なければならず、それに加えて、対人に強い#丸坊主オネエの刀根亮輔とマッチアップする場面も多く、サイドで孤立させることに成功。1トップの皆川もCBとボランチでしっかり挟んで対応ができたため、高さが生きる場面は少なかった。

これにより熊本のカウンターを潰してワンサイドゲームに持ち込めたのだ。

 

大分の先制の場面でも、狙いが上手くハマった形になった。23分に伊佐が潰れて後藤がこぼれ球を拾った時に、左WBの黒木はペナルティエリア内の後藤とサイドの松本のどちらかのマークを捨てなければならない状況に。フリーの松本のクロスから馬場が1トラップからのシュートで先制。馬場は3試合連続のゴールとなった。

 

大分は狙いどおりに押し込んで、熊本はやりたいことを潰されてゲームを折り返す。

 

 

適材適所に配置をして建て直す

後半に入り、熊本はシステム変更により攻守の整理を行ったことにより息を吹き返す。

以下のような4-1-4-1(4-1-2-3)のような形を取り、3つの狙いをもって後半をスタートさせた。
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1つめは前半の修正。

サイドの黒木、田中がインサイドに、インサイドの安がサイドに流れてチャンスが作れなかった事を受けて、黒木、田中の後ろに1人援護をつけて守備でもサイドを見るようにし、安はより皆川と近い距離でプレーするように変更。これにより熊本の選手たちが本来やりたかったプレーがしやすいように整理を行った。

 

2つめは大分の5トップへの対策。

後ろに5枚置かれてスペースがなくなり、攻め手を失っていた熊本だが、ボールを保持すると、5バックに1トップ2シャドウと両WBの5人をぶつけてアンカーの中山雄登、CBの米原を1列ずつ上げて攻撃に厚みを持たせた。
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3つめは相手WBの抑制

大分はWBが5バックのサイドを担当するため、まずはリトリートでスペースを埋める。前半の熊本は、そのWBを釣り出すことに失敗したため、後半はサイドの人数を増やして数的優位を生かしてWBを釣り出して、サイドを抉ろうとした。そのために、SBとアンカー、SHのトライアングルができるとダイレクトパスを繋いでいくことを求めた。

 

すると50分にはカウンターから皆川が潰れて安がキープをしてサイドのスペースへパス。駆け上がった田中はダイレクトでクロスを上げると松本のマークを振り切った黒木がヘディングで合わせるもバーに当たり得点ならず。

 

熊本のシステム変更に面食らった大分は、誰が誰のマークをするかが明確ならず、攻められる場面が増えた。そこで1発を決められるとどうなるかは全くわからなかったが瀬戸際で防ぎつつ、状況を整理できた大分は60分ほどから落ち着きを取り戻していく。

 

大分が慣れたことを感じてか、69分に熊本は安を諦めて伊東俊を投入。高さからスペースを突く形に変えた。大分も同じタイミングで攻守に動き回った馬場と後半は守備に追われた宮阪を下げて國分伸太郎、川西翔太を投入。國分には馬場と同じように前線からのプレスを、川西にはプレーを剥がしつつ攻撃に厚みを持たせる事を期待しての投入だった。

 

70分が過ぎても攻勢に出る熊本に対して大分は、一時的にではあったが岐阜戦の時のように3ボランチのような形で守りを固めた。
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 中を閉じられた熊本はサイドからのクロスと伊東の仕掛けでゴールを狙うも、ことごとくブロックされてしまい攻めあぐねる。

77分に中山→上村周平、85分に小谷祐喜→佐野翼とフレッシュな選手を入れるも状況は変わらず。

大分も伊佐と福森直也が足を痛め、星も足をつるなど満身創痍な中で伊佐→三平。もう1点を狙い勝負を決める選択をすると、後半のアディッショナルタイム。中盤で鈴木義宜が皆川からボールを奪うとそのままドリブルで前線へ。PA内の後藤にパスを出すと、チップキックでGKの脇をすり抜けて追加点。2-0で九州ダービーを制した。

 

熊本の印象

大分戦を終えて33失点とリーグトップの失点数の熊本だが、攻守のバランスが悪くて失点が多いというわけではないためそこまで悪くないような……

リーグ戦序盤では3バックはフラットに保ち、「まずは守備の安定」を第一に考えていた様だが、中盤戦に入り人を動かしてギャップを作る事にチャレンジをしているように感じた。今季の熊本の可変システム、大胆なつるべの動きを支えるのはボランチ米原秀亮だ。CBとボランチをこなし、状況判断も的確。右WBの田中達也がリーグトップの9アシストをしているためかやや黒子的な印象も否めないが、チームのバランスをとる戦術のキーになっていた。

後半の最初のチャンスを外すと、外→中が増えて逆の形を作れなかったのは今後の課題になるように思えた。

 

バチバチの戦術勝負を制して

片野坂監督と渋谷監督。二人の戦術勝負は前半では片野坂監督、後半では渋谷監督が上手に出たように思えるが、決めるときに決めた大分が勝負を制した。

馬場のシュートはトラップがハンドでは?と解説の増田は言っていたが、故意のものではないし、脇を締めており、審判もトラップの場面をしっかり見ていることがハイライトからも見てとれるため誤審ではないだろう。

2点目も皆川から鈴木がボールを奪った場面でファールだったのでは?と熊本ベンチが抗議をしていたが、正当なチャージであった(服を引っ張っていない)し、それまでの皆川と鈴木のマッチアップでは熊本のアドバンテージをとる場面も多く、審判も気にしていたからこそ正当なチャージという判定を下したと自分は思った。

試合終盤では、大分は3選手も足を痛めたような仕草をしており、まさに満身創痍ではあった。しかし、第10節金沢戦以来のクリーンシートで終わることができたのは、前節の甲府戦の6失点を払拭する意味でも大きな収穫だと言える。

これからは全国的に梅雨入りをしていき、まとわりつくような暑さでの戦いになる。そうなると、これからは僅差での試合がより増えるがこれからも「30人全員で」戦って勝ち点3を積み上げてもらいたい。

 

【ハイライト】2018明治安田生命J2リーグ第17節 大分トリニータ vs ロアッソ熊本 - YouTube

【日本代表】vsガーナ 3バック!やってみました!〈5/30 キリン杯〉

ブンブン!ハローユーチューブ!

今回は「日本代表、3バックやってみました!」です。どうせウイイレでしょ!って?違う違う!(ここで変顔)実際の!日本代表でやっちゃうんです!クーッ!

 

えー、にっちもさっちも行かなかった昨日の代表戦。感想としては3バックでどんな感じになるかが見られたことのみが収穫ではないか。「美は細部に宿る」なんてステキな言葉があるが、ホントは「神は細部に宿る」らしい。しかし、そんな細部を詰める段階に日本代表は入っているべきはずなのに、一度更地にしてしまった。そんなところに神など宿らない……そんな苦しい内容だった。

 

この日のメンバーは以下のように。

日本代表
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西野ジャパンの初陣は、3バックでスタート。吉田、槙野の間に長谷部が構え、右WBには原口。シャドウの位置に本田と宇佐美が入るなど、独自性がみてとれた。

 

ガーナ代表
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こちらは4-3-3のシステム。トップ下のトーマス・パーテイはアトレティコマドリード(ESP)でプレーする大型選手。数年前の鳥栖との親善試合でボールを刈り取りまくってパスをズバズバ通していたボランチが1列前で起用。トップにはレバンテ(ESP)でプレーするボアテングバルセロナの無敗記録を止めるハットトリックをして一躍有名に。

ボアテングってたくさんいる……

 

 

3バックは!攻撃的ですからねぇ!

実況が前半何度も話していたこのフレーズ。守備を4人→3人で少ない!攻撃に人数が割ける!みたいな理屈で話していたが、そんな超単純な算数なわけがない。日本の3バックに対してガーナは3トップをぶつけてパスコースを限定。逃げどころとして左右のWBが降りて5バックのような形に終始していた。

ハリルホジッチ前監督では、縦への速さを基盤に高い位置での守備の嵌め方や、ビルドアップのやり方など様々な試みがなされていたが、この日の代表の3バックでは、重心が後ろになりすぎて、実質は5バックの5-4-1でのプレーに終始していた。
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5バック気味でもやり方さえ上手く工夫すれば全く問題がないが、今の代表では選手の良さを消していた。

 

選手は距離感を意識してのプレーをして、ベタ引きにならないようにしていたが、そもそも守備の時には後ろに5人も置くのだから、なかなか全体の押し上げに苦労していた。ショートパスで繋ぐにしても、パスの受け手が低い位置なので、遅攻にしかならない。ロングボールで位置の回復を試みても、前線のターゲットは少なく、相手にすぐに回収されてしまう。そうなると、長い距離をドリブルで運ぶか、走ってボールを呼び込みDFラインを押し下げるかをしないといけないが、本田や宇佐美は長い距離を走れるタイプではないため、攻守の繋ぎ目が左右の長友と原口しかなかった。過労死認定モノだ。

 

日本の最初のチャンス。長友が左サイドの深くから大迫を狙ったクロスは、相手DFが下がりながらのプレーで守備の対応が難しい事もあるが、被カウンターのリスク回避のために早くクロスを上げた印象もあった。

 

ちぐはぐしていた前半の入りにFKを与えてしまい、パーテイに直接決められてしまう。そこから建て直しに時間がかかり、形が見えだしたのは前半の30分を過ぎたあたりからだった。

ボランチの位置を少し上げて、WBを持ち上げる。これにより高い位置を取るガーナのSBの背後をWBが取ることによりチャンスを創る事ができた。攻守の繋ぎ目の補強ができたため、単発ではない攻撃が見え始めた中で前半が終わる。

 

時間ばかりが過ぎる

後半に入り、日本は3人を入れ替える。

大迫、宇佐美、原口を下げて、武藤、香川、酒井高徳を投入。

前半の良い形を保ちつつ、WBからFWにワンタッチで繋ぐ場面も増えたことにより全体の押し上げに成功。ボックスの近くでプレーできたことにより、香川も生きるようになった。

しかし、相手のゴールキックから前線にボールが行くと、PA内で川島が相手を倒してしまいPKに。これをボアテングに決められて0-2に。

日本は59分から本田、山口を下げて岡崎、柴崎を投入。香川をトップ下に置いた3-5-2へと変更。
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76分には長谷部→井手口で4バックに。
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様々な形を試した代表だったが、有効な攻め手は見つからないまま時計の針ばかりが進み、試合終了。メンバー発表を翌日に控えたゲームの収穫はなにもなく、ネガティブな疑問ばかりが浮き彫りになるものとなった。

 

適材適所とは程遠く

ハリルホジッチ監督を解任して、選手の経験にしか拠り所がない代表だが、西野監督の選手起用には多くの疑問があった。

 

なぜ3バックだったのか。

長谷部をCBに置いて、吉田と槙野がフリーマンとして高い位置取りをすることで起点を作ろうとしていたが、そこで起点になる配球をする場面が乏しかった。ボランチも、ボールを積極的に刈り取るタイプの山口はほぼゲームから消えていた。ボランチは怪我で離脱した青山のような長短織り混ぜたパスができる選手が好ましく思えた。選手の良さを消して、チームとして機能しない。それならばせめて選手の良さ、個性が生きるように出来ないのか……

 

原口のWB起用について

これもよくわからない。前線にいるからこそ、あのスプリントや球際の強さが生きる選手なのに、サイドで守備に追いやっては凡庸な選手になってしまう。また、もともと攻撃的な選手なため、ポジション取りが高く、3バックの脇のスペースを狙われる場面が多々あった。

 

香川のSH起用

香川が「10番」としての良さが生きるのはゴールに近い位置だ。この日も後半から投入されて最初の場面でのペナルティエリア内での仕掛けは他の選手にない大きな武器だ。しかし、後半30分過ぎのフォーメーションの変更によりサイドに追いやられると、味方との距離も遠く、1人剥がしてクロスしかできていなかった。切羽詰まって、前線に放り込む場面の想定するのならば、それこそ3バックでシャドウの2枚がハイプレスを仕掛けて押し上げるべきではないか?

 

結果として、3-4-2-1では重心が下がりすぎること、今までの4-2-1-3を捨ててまでも採用するに値しないし、それができるメンバーではないことがわかった。今の人選のまま3バックでワールドカップに挑むなら、それこそ南アフリカ大会より守備的で攻撃の糸口がない最悪の形になってしまう気がしてならない。

 

自由人、ケイスケ・ホンダ

あまり名指しでの批判はしたくないが、この日の本田はチームにとって異物でしかなく、「チームよりも自分」といったプレーが多くあった。

 

まずは守備のタスクを全うできない。

3-4-2-1の「2」にあたるシャドウの位置の選手は守備の際に、以下のように相手のSBをマークしなければならない。 
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しかし、実際は対面する左SBをフリーにしていたため、原口が前に上がってチェックをするか、カットインをされないために山口がサイドに出る必要がある。
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するとどうなるか。原口が上がってチェックをすれば、3バックの脇にボールを入れられて、日本がボールサイドにスライドしている間に中の相手選手がフリーになってしまう。

山口がサイドに出ると、中を開ける事になるので、トップ下のパーテイが自由にボールが受けやすくなるというジレンマ。

本田が守備をしないと、ズレが生じてしまい失点の素になってしまう。原口や山口が1.5人を見るのはどうしても無理があるのだ。

 

守備を「しない」と上では書いたが、実際には守備が「できない」のではないか、とも感じる。攻撃ではペナルティエリアの近くでプレーをし、守備ではサイドまで動いてフタをする。このタスクをこなすには体力とスプリント回数がどうしても必要になるが、足も速くない、スプリントも少ない本田にこれを求めるのは筋違いかもしれない。ここは起用した西野監督に非があるだろう。

本田自身もそれを感じていたようで、守備から攻撃に転じる際に違いを見せようとしていたようだ。守備をしないかわりに、前線で相手CBとSBの間で構えて、ロングカウンターを受ける準備をしていた。これを90分続けてできれば1~2度はチャンスがあるかもしれないが、途中でこれもやめてしまう。

闇雲にボールサイドに寄って、逆サイドまでうろちょろしてボールに関与できない。ふら~っと中盤まで降りてたまたまカウンターになりボールを受けるも、足下に入りすぎて相手にカットされるなど、守備の穴をより広げ、チャンスをより潰していた。自由人、ケイスケ・ホンダ。本当に彼はプロフェッショナルなのだろうか?
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来るW杯に向けて

この試合の終了の笛とともに、ブーイングが響いた。消極的でちぐはぐな内容に終始したゲームに対してもそうだが、日本サッカー協会の判断に対してのものだろう。

我らの川平慈英も怒ってる。ムムッ!流石にW杯1ヶ月前を過ぎてノー問題です!なんて到底言える内容ではない。この虚しさを抱えたまま迎えるW杯に夢はあるのか。希望はあるのか。

 

本日発表されたロシアワールドカップ最終メンバー23人。 不安が期待を大きく上回る中で選手たちがどう戦っていくのか。そこにこれからの未来を見出だしたい。

【大分】vs甲府(A)派手にやられたが〈J2 第16節〉

スコアを見ると2-6。ボッコボコにやられたが、そんな試合でもゲーム中でしっかりと修正をして、自分たちのしたいゲームに引き込む事ができた。

 

この日のメンバーは以下のように。

ヴァンフォーレ甲府 
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 5月に入り、吉田監督からレノファ山口で指揮をした上野監督へと変わって、ここまでリーグ戦4連勝。最高の状態で大分を迎える。怪我のジュニオール・バホスの変わりに金園英学が入り結果を残すなど層も厚い。

 

大分トリニータ
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前節から2人の変更。右CBに黄誠秀から刀根亮輔、CFに林容平から三平和司が入る。ベンチには國分信太郎が入った。通算では甲府に勝ち越しているが、ここ6回の対戦では2分4敗と勝てていない。

 

 

"入り"が結果を決めてしまう

勝ち点の行方はすぐに決まった。3分、4分、6分と試合の入りで失点。あまりにも早い連続失点で大分は早くも敗戦が決まってしまったのだ。 

3分は自陣PA前で丸谷拓也から宮阪政樹へパス。宮阪は鈴木義宜へバックパスをするも、短くなり、金園英学に奪われて1失点。

4分は中盤で丸谷から宮阪へ横パスを送るもズレて小塚和季にカットされてドリブルからGKとの1対1をループシュートで決めてあっさり2失点。

6分には右サイドを堀米勇輝がドリブルでPAに侵入すると小塚へパス。小塚がフリックして佐藤和弘がシュートを打つとDFに当たりコースが変わり3失点。

出鼻をくじかれた大分は、CBやボランチから前へのボールがすべて相手に渡るという悪循環に。そんな大分を尻目に甲府はまたまた追加点。GK高木駿から前線の三平和司へとロングボールを送るが、小出悠太がカット。小出はカットした勢いで丸谷、宮阪の間を抜いて金園へパス。金園のシュートはバーに当たるが、こぼれ球を小塚がパスして小出が決めて4失点目。まだ15分しか経っていなかった。

大分も、CBからボランチを飛ばしてシャドウへクサビを入れてチャンスを作るが、甲府ボランチやDFの網に引っ掛かり、連続して攻める場面はなかった。

27分には中盤左サイドをエデル・リマがドリブルで持ち上がり、PA付近で小塚とワンツーで抜け出してニアサイドにシュートを決めて5失点目。

 

大分が崩壊したワケ

前半30分を待たずに5失点を喫した大分。そこには多少の不運もあったが、甲府が準備した「ボランチ包囲網」と「連続したプレス」、そして「WBのマンマーク」が効いたからだ。

 

まずは「ボランチ包囲網」について。

大分は3バック+2ボランチだが、ボランチの片方がDFラインに落ちて4+1の形になる。すると残ったボランチはパスコースを確保するために自然に真ん中に位置取りをすることになるが、そのときに甲府は「ボランチ包囲網」を発動。大分のボランチとDFラインの間でCFの金園がパスコースを消して、シャドウの小塚と堀米がボランチの脇を固める。その後方で佐藤と島川俊郎が構えて待つ。これにより3バックと降りてきたボランチの計4枚は横パスしか選択肢がなくなり、ボランチは周りに5人も囲まれているため、ターンする時間もスペースも消される事となり、ワンタッチでボールを戻すしかなくなる。これにより大分のパスの出所を抑えて、カウンターのリスクを減らした。

 

次に「連続したプレス」について。

囲まれたボランチはバックパスしか選択肢がなくなりボールを下げると、甲府の選手たちはそこへ躊躇なくプレスを仕掛けてくる。

ボランチが無理に前を向くと甲府ボランチがすかさずプレスをかけてバックパス。DFはボールとともにプレスに来るシャドウの小塚や堀米にパスコースを切られながらGKに下げるか、苦し紛れのロングボールを入れるしか選択肢が無くなった。

 

この「ボランチ包囲網」と「連続したプレス」に晒された大分は、ボランチからの長短のパスを遮られて、DFラインからの長いボールしか前線に入れる術がなくなっていた。

 

甲府はこれでパスの出し手を抑えただけでなく、「WBのマンマーク」により守備の安定とリスク管理を行った。

大分がDFラインでゆっくりとボールを回すと、両サイドのWBが前に上がり4-1-5や4-1-4-1のような形になる。4バックの相手ならば、そこに5人をぶつけて数的優位をつくり、両サイドを使ったダイナミックな攻めができる。金沢の柳下監督が言っていたように、4バックに対してはWBがミソになるのだ。しかし、甲府は3バック。数的優位にはなりづらくなってしまう。次善策となるボランチからの大きな展開も封じられてしまうと、ボランチ脇をWBが埋めざるを得ない状況になる。そこに甲府のWBが対面する選手に前を向かせなければ、バックパスしか選択肢は無くなり、より前線が孤立してしまう。

 

大分のボランチを抑えて、WBに前を向かせない事で、重心を下げさせる。前からボール狩りをすることができたので大分の3-4-2-1の骨格を殴ることができたために、後手を踏ませ続ける事ができた。

 

少しの修正で"らしさ"を取り戻す

30分も経たずに0-5と大きく離された大分だったが、少しの修正を加えて、建て直しに取り組んだ。

WBが前を向けない、ボランチは囲まれる。ならば左右のCBを押し上げて、WBとボランチとの距離を縮める。これにより大分は落ち着きを取り戻し、攻撃にも得点の匂いが出て来た。

左右のCBを上げることにより、福森直也と刀根がボールを奪われると、即決定機につながるリスクを孕んでいたが、チームのコンセプトを守りつつボランチ包囲網とWBのマンマークをどうにかするには、それしか手がなかった。

効果としてはボランチの後ろではなく、横や斜め後ろに構えた事により、連続してプレスをかけられても、ゴールへ一直線ではないので多少の時間を作る事ができる。また、CBがボールの出し手になるため、甲府はそこへのチェックをするためにどうしてもシャドウの小塚や堀米が左右に出ることを余儀なくされるため、ボランチ包囲網を崩す事ができる。

WBとの距離も近づくため、WB→CB→WBとワンツーで相手WBとCBのスペースを付くことができる。これにより大分は落ち着きを取り戻すと、その位置取りを高くした福森からのスルーパス馬場賢治が上手く決めて1点を返す。前半はこの後スコアは動かずに1-5で後半へ。

 

主導権は握るものの

大分は後半の頭から宮阪、三平を下げて川西翔太と伊佐耕平を投入。ボランチの位置で相手を剥がせる川西と、ボールの納めどころとして伊佐を入れたことで、後半はより大分が攻勢を強める。

54分には川西がサイドのスペースにスルーパス。松本がドリブルからマイナスのパスを送るがDFに阻まれてコーナーに。後藤のCKを伊佐がニアで合わせてファーの馬場がヘディングで合わせようとするもGKの河田晃兵にキャッチされゴールならず。

その後、甲府は堀米→田中佑昌、小塚→高野遼とシャドウを下げて、大分は馬場→清本拓己を投入。清本の投入後、最初のプレーで松本のスローインを清本が落として松本がクロス。相手のクリアが甘くなり、星がボックス内の後藤へパス。後藤は右足でファーサイドに巻いたシュートを放つと、ゴールに吸い込まれて2点目。

甲府は失点から6分後に金園に変えてリンスを投入すると、88分にCKからヘディングで決めて2-6となり、試合終了。甲府は6年ぶりの4連勝をクラブ最多タイの6得点で飾った。

 

甲府の印象

 大分対策を満点の回答でタコ殴りにした甲府。やっぱり元J1なだけあって上手いな、落ち着いてるなと感じた。
選手では小塚と堀米のシャドウがボールを持ってドリブルを仕掛けられるし、判断も良いし本当に厄介だった。また、仕上げのリンスボトル販売の日にしっかりと仕上げてくるリンスは嫌らしかった。

ただ、前半早くに点差がつきすぎたため、この試合だけであれこれは語れないな、という印象が強い。

 

大事なのは次

悪夢のような30分から建て直し、後半は意地を見せた大分。6失点はいただけないが、「やられた!」というよりは「そんなこともある……」といったプレーが序盤で続き、それを確実に仕留められたから大きく点差がついた印象が強い。(仕上げのリンスはなんとか防いでほしかったが。)42試合でこのような玉突き事故のような連続失点をすることはあるだろう。それがたまたまこの試合だった。そう感じる。

点差がある程度つくと、集中を切らしてしまい内容もグダグダになりがちだが、この日の大分は修正を加えて対応してみせ、2点を呼び込んだ。また、2点目の後の86分の被カウンター、2対2の場面で、最前線の伊佐が全力ダッシュでボールを掻き出すシーンは本当に痺れた。こういった細かいところが最後の最後になにかを呼び込んでくれるような気がする。

次節は苦手の熊本戦。ここを勝ち点0で終えるか3で終えるかで、これからの戦いは大きく変わるだろう。

 

【ハイライト】2018明治安田生命J2リーグ第16節 ヴァンフォーレ甲府 vs 大分トリニータ - YouTube