Nishida's diary

トリニータを中心にいろんな試合を。

【大分】vs福岡(H) 九州の誇り〈J2 第20節〉

2位の大分と4位の福岡。勝ち点差は僅かに「2」。今期最多の12058人の観客を前でトリニータは最高の結果で首位に返り咲いた。

 

この日のメンバーは以下のように。

大分トリニータ
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前節、怪我で途中交代をした後藤のかわりに國分伸太郎がスタメン。契約の関係でベンチ外だった宮阪も戻ってきた。そして前節に引き続き、丸谷が右のCBに入った。

 

アビスパ福岡
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前節の4-4-2からフォーメーションを変更し、3バックで挑んだ福岡。松田力が累積で出場停止。かわりに石津大介が6試合ぶりに出場ら、左サイドには輪湖直樹から平尾壮へと変わった。

 

偏った攻めに対応

前半、福岡は左サイドから攻勢を仕掛ける。鈴木惇が左に寄り、平尾壮が位置を取る。CFのドゥドゥが左サイドに流れて石津大介がバランスを取り、篠原弘次郎が高い位置を取るサイドのカバーリングをしていた。
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 このように左サイドに人数をかけていく。中盤から下でボールを持つと、左から平尾、ドゥドゥ、石津、森本、枝村が大分の3バック+両WBに圧力をかけることで攻撃を作る。

マッチアップでは、大分の後ろ5枚に対してアタッカー5人は1対1を仕掛けるのではない。
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 福岡の左サイド、大分から見て右サイドを攻めていくため、松本怜に平尾をぶつけ、その背後にドゥドゥが流れて3バックの網の目を拡げてサイドからのカットイン、もしくはクロスで大分の守備をこじ開けようとした。

大分は、ドゥドゥがサイドに流れることにより、そこから打開してくることを想定していたようにみえた。ボールを保持しても、星雄次と松本のWBは相手の5バックの端を担う相手WBにぶつけず、トップ下とWBの中間にポジションを取って、相手の2列目をサイドの守備へと誘っていた。
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これにより、大分のWBがボールを持った時は、相手WBが前に出てきたらその裏をシャドウが突き、2列目の選手がチェックに来れば、ボランチの宮阪がフリーでボールを受ける事ができるようになるため、中央からの攻めに転ずる事ができる。

以上のように両チーム共に明確な狙いを持ってゲームに挑んでいた。

 

大分ははじめて片方のサイドから攻めを受けたが、慌てることなくしっかりと対応。相手を引き込んで、やや攻撃で渋滞を起こさせてカウンターを狙った。

福岡は左サイドからの攻略を目指すも、なかなか守備が崩れない。すると前線に人数をかけて手数で上回ろうとする。前の5人が前のめりになり、3バックの左右を務める實藤友紀、篠原弘次郎も高い位置までボールを運んで厚みをもたらす。2列目の石津大介枝村匠馬も前目にポジション取りをしていたため、次第に中盤の中央が空になっていた。

 

そして19分。大分は自陣で松本がインターセプトをすると、國分が素早く前線へ。右サイドに流れていた藤本が持ち運び、PA前の馬場へパス。馬場はタメを作ってサイドの松本にボールを渡すと、ダイレクトでクロス。GKとDFの間に速いクロスが入ると、DFの死角から藤本がニアサイドで合わせて先制点を奪う。福岡の高くなった左サイドのウラを取っての得点となった。

24分にはCKのこぼれ球を小手川が1トラップからドライブシュート。これは枠に嫌われたが、カウンターから効率よく攻める。

先制を許した福岡は相変わらず左サイドからの攻めが多かったが、1ボランチ鈴木惇の左右がぽっかりと空き、トップ下の2人も前のめりになっていたためロングボールを放り込むか、サイドに預けるかしかなく、中央からの打開は難しくなる一方。これを見てか大分は守備の形を変化させる。

いつもは5-4-1でサイドにフタをして5+4で挟んで潰すが、この日は5+3で守り、相手の手薄になった中央で数的優位を作り出した。
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前線で國分、藤本が相手の背後を虎視眈々と狙い、速攻を意識していた。また、中央でボールを持たれると、ラインを上げてショートカウンターを狙いつつ相手をサイドへと引き込んでいく意識があった。

このように多くの駆け引きがあった前半は1点リードで折り返す事ができた。

 

耐えに耐えて

後半に入り、福岡は左サイドの偏重はそのままに、起点となる鈴木惇を中央からやや右寄りに配置。ボールの出し手と受け手の間に相手DFを置くような形にして、守りづらい形にマイナーチェンジをした。また、左サイドだけでなく、右サイドも使うようにしてサイドからシンプルに組み立てを行った。

大分は55分、宮阪から川西へ交代。中央で相手のバランスを崩す意味合いを持っていた。

福岡は63分に2枚替え。森本と枝村を下げて木戸皓貴と城後寿を投入。ここからゲームが激しくなる。

直後の64分、左サイド深くでドゥドゥが前を向くと馬場の肘が入り倒れるもノーファール。1分後には高木駿からのボールを受けようとした藤本が篠原に足払いをされて倒れる。悪質なファールだったが、審判団も見ておらずに流される。プレーが止まり立ち上がれない藤本を篠原が無理矢理起こそうとしてスタジアムは騒然とした。

70分からはオープンな展開になるが、大分はビルドアップでのミスから福岡を勢いづかせてしまう。木戸のシュート、CK崩れからのユインスのミドルシュートは高木が防ぐも、岩下と木戸のロングスローを含め守る時間帯が増えた。79分にはスルーパスを受けたドゥドゥからの折り返しをフリーで木戸が狙うも空振り。なんとか凌ぎきる。

最後20分は手に汗握る展開が続くも、守備陣がしっかりシャットアウト。1-0で上位対決の九州ダービーを制した。

 

福岡の印象

「大分対策」で大分のビルドアップでの対応を工夫をしてくるチームは多々あれど、福岡のように片方のサイドから攻めてバランスを崩そうというのは今季初。見ていてとても面白かった。中盤でボールを持つと、前線の5人がウェーブをして3枚が前に出て、2枚が受けに下がる形をしており、ゾーンかマークかでの対応で後手を踏ませる意図があったはず。しかしこの日はそちらに執心している間に中盤の空洞化を起こし、そこを突かれてしまったか。スペースの取捨選択は悩ましいところかもしれない。

選手で気になったのは、鈴木惇と木戸皓貴。

鈴木惇はさすがのゲームセンス。ロングフィードは一級品だと改めて感じた。彼にミドルシュートをもっと打たれていたら危なかったかもしれない。

木戸はゴリゴリ系のストライカーの印象だったが、ポジショニングが上手く、ワンタッチゴーラーっぽさを感じた。また、ロングスローをもっていたりと引き出しの多さも魅力だった。

そしてこの日もっとも目立っていたドゥドゥ。前半はスタンドにボールを蹴り込み、ハッと気づいてか平謝りしたり、馬場との接触でイラついてか終了後の握手で馬場の手をグーパンしたり……なんというか瞬間湯沸し器のような性格だな、と。考えるよりさきに動くタイプでパッション!な選手はあまりいないから観ていて面白かった。手を出しちゃダメだがシュートレンジも広く、福岡のキーマンとして厄介だなぁ、と。

 

 

越えたその先へ

試合後のインタビューで片野坂監督は髪は乱れ、喉は枯れながらも応対をしていて、この試合の激しさ、難しさを感じた。そして全身全霊で大分の為にやってくれていることも。

上位対決を制した大分は、再び首位に返り咲いた。そして、昨年のホーム勝利数に早くも並んだ。昨年は「鬼門はホーム」と言われて、どこかため息の多い大銀ドームだったが、今年は違う。昨年を越えたその先に見るのは「昇格」の二文字だ。

 

【ハイライト】2018明治安田生命J2リーグ第20節 大分トリニータ vs アビスパ福岡 - YouTube

【日本代表】vsコロンビア 不要なリスクを抱えつつ〈ロシアW杯 グループH 第1節〉

 まさかまさかのワールドカップ初戦で勝利。4年前にボッコボコにされたコロンビアにリベンジを果たした。しかし、なぜだろう。手放しで喜べない。どこかで「次のない戦いをみている」気分である。

再現性のない成功。それを素直には喜べない。だがしかし、日本代表の底力、尻に火がついてから何とかしようという気迫が感じられた。「気持ち」での勝利なのかもしれない。

 

この日のメンバーは以下のように。

日本代表
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西野さんに変わってからの3試合。最後の最後で出た「トップ下、香川」を軸にしたメンバー構成となった。そして最後まで隠していた酒井宏樹の先発。多分こっちはバレてたとは思う。紆余曲折あったが最後に最適解を導きだしてくれたことで一先ずはメンツを保った。

 

コロンビア代表
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こちらも日本と同じ4-2-3-1。4年前にトラウマになったハメス・ロドリゲスはベンチスタート。試合前のアップでも軽めにしか調整しておらず、コンディションの悪さが伺えた。

しかし、ハメス以外にも右サイドのクアドラード、FWのファルカオと強力な前線に日本はどう対処するのかが問題になるだろう、というのが試合前の見立てだった。

 

いきなりのカミカゼ

日本代表は4-4-1-1で守り、中からやられない事を意識していたと思われる。一方のコロンビアはサイドに幅を取らせてそこからの打開を考えていたようだ。2分にコロンビアは左サイドからクロスを送るが、ブロックをされて香川がクリア。これに大迫がウラに抜けてコロンビアGK、オスピナと1対1になりシュート。これはブロックされるが、こぼれ球に香川が詰めてシュート。これをペナルティエリアカルロス・サンチェスが手をだしてしまい、サンチェスは決定機阻止で退場。日本はPKを獲得する。これを香川がしっかりと決めて、日本は6分に先制をする。

1人少なくなったコロンビアは、選手交代はせずにキンテーロを1列下げて4-4-1へと変更。
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数的優位になった日本だが、ここから稚拙なプレーで流れを引き寄せられない。ボールを持つと縦に仕掛けたり、やや難しい縦パスを入れて簡単にボールを奪われてカウンターを受けてしまう。相手が自陣にブロックを作って待ち構えているのに、それを何度も繰り返し、ピンチを招いてしまう悪循環に陥ってしまう。

リードを奪って数的優位なのに浮き足だった日本が落ち着きだしたのは20分を過ぎてから。この時間になってやっと相手が高い位置から仕掛けてこないと気づいてボールを回し始める。

日本が無理に仕掛けてこないと気づいたコロンビアは、31分にクアドラードを下げて、ボランチバリオスを投入。サイドにキンテーロが回った。
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この交代から、コロンビアにボールを回される。ジリジリと日本サイドに入ると、37分に長友のクリアが真上に上がり、落下点に長谷部とファルカオが競ると、ファルカオが倒れてファールの判定。日本は抗議するも判定は覆らずにペナルティエリアの外でFKを与えてしまう。このFKをキンテーロが壁の下にゴロのシュートを放つ。川島はボールを掻き出すもゴール。日本は不用意な形から不覚にも同点にされてしまう。

同点になり、パニックになった日本はより前へ前へと攻め急ぐ。バタついて、数的優位なのを忘れたかのような振る舞いのまま前半終了。

 

相手にも助けられて

パニックを起こした日本だったが、ハーフタイムで落ち着きを取り戻し、後半はじっくりと攻めるようになった。

4+4で引いて守るコロンビアに対して、日本は原口、乾が積極的にDFラインと中盤の間でボールを受ける動きを見せる。また、そこでボールを奪われてもすぐにプレスに行くことで相手SHに高い位置を取らせない。
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これにより、日本はSBの酒井宏樹と長友がフリーでボールを持つことができるようになった。

試合がやや日本ペースのまま膠着しはじめた59分、コロンビアはキンテーロを下げてエースのハメスを投入。これにより主導権を奪い、2点目を狙う姿勢を見せた。しかし、この采配が大きな誤算となってしまった。

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ハメスはキンテーロと同じ右サイドに入ったが、コンディション不良のせいか動きが重く守備がほぼできない。これにより長友が高い位置で自由に攻撃に絡むことができ、乾も高い位置でカバーリングを受けられるので積極的にカットインに持ち込めた。

70分に日本は香川→本田、コロンビアはイスキエルド→バッカと両チームとも攻撃的なカードを切る。

バッカは右サイドに入り、ハメスが逆サイドにスイッチ。
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本田は投入時に、ベンチからの指示で大迫に「左右に流れず真ん中で受けろ!」と伝え、あくまでも勝ち点3を狙うために中央から打開をしたい考えがあったようだ。

本田は出場から僅か3分後にCKのキッカーを務め、大迫のゴールをアシスト。守備の貢献はできないが、「数字」で結果を出した。その後はふらふらと右サイドに流れて原口の邪魔になり、高い位置で奪われた酒井宏樹カバーリングもせずに散歩。これをコロンビアが見逃すわけもなく、連続のCKでピンチを招くも、大迫がハメスのシュートをギリギリで足に当ててブロックをしたりして失点にはならなかった。最後は柴崎→山口でボール狩りをしてるうちに2-1で試合終了!数的優位が生きた日本が、開幕戦を最高の結果で終えた。

 

監督の交代カードの意図を探る

開始早々の退場により大きくゲームプランが狂ったコロンビア。数的優位ながら慌てて主導権をなかなか握れなかった日本。そんな両チームの選手交代の意図を探る。

 

31'クアドラードバリオス(COL)

前半の最序盤に退場したC.サンチェス。彼の役目はおそらく、日本の「トップ下番」であったはずだ。日本の攻撃の中心はトップ下の香川か本田。この日は香川がトップ下で出場をしたので、前を向かせない、狭いスペースでの打開をさせないことがC.サンチェスの役割であった。しかし前半早々に退場。守備のキーマンを失ったコロンビアはキンテーロを下げて「トップ下番」をさせたが、本来は1列前の選手なのでどうしても守備が軽く、日本がボールキープをしはじめたタイミングで、ボランチに本職の選手が居ないと失点をしてしまうと感じての交代であったように思えた。交代で入ったバリオスは「トップ下番」として香川をゲームから消し、低い位置やサイドに追いやることができたので、「傷口をこれ以上広げないため」のこの交代でコロンビアは落ち着きを持てたはずだ。

 

59'キンテーロ→ハメス・ロドリゲス(COL)

前半の内に同点にしたコロンビア。しかし後半に入り、日本が落ち着きを取り戻し、守勢に回る時間が増えた。速攻はクアドラードがその前にベンチに下がっているため難しい。となればまずは日本からボールを奪取してから攻撃に転じる必要がある。ボールを持てば違いを魅せる事ができるハメスは、コンディション不良であっても使わないという手はない。また、4年前に日本はコートジボワール相手にリードをしながら、ドログバというスター選手が投入されるとメンタル的に受け身になってしまい逆転を許してしまう。それを見越しての交代だったかもしれない。しかし、これが大誤算。ボールは回ってこないし、守備はできない。コロンビアは9人+本田みたいになってしまい、より攻め手を欠く結果になった。

 

70'香川→本田(JPN)

前半から楔を受けて前を向ける香川はコロンビアにとって無視できないものであり、日本の攻撃の中心としてプレーができた。しかし、バリオスの投入により中で香川が消されたため、攻撃はサイドからの形が増え、中央からの打開はボランチがリスクを負って前に出ることが多くなっていた。しかし、それではカウンターを受けた際に守備に大きな問題を抱えてしまう。となればボランチの上がりの抑制(リスク管理)と中盤中央でのクオリティーの維持が求められ、それができるのは、本田か宇佐美というチョイスが考えられた。

宇佐美はドリブルを好むタイプなので彼が突っ掛けたあとの対応まで詰められていないので難が残る。守備に大きな問題を抱えてでも本田を起用することで、中盤でのタメとミドルシュートで牽制しよう、という意図を感じた。実際はヘロヘロのミドルシュートに始まり、サイドにふらふらと流れたり、ボールロストの鬼。フィジカルもそんなに強くないという苦行だったが、そこは本田圭佑。出場から僅か2分後に起点になり、その後のCKでアシストと「持ってる」所を見せてくれた。

 

70'イスキエルド→バッカ(COL)

守備できない、ボール触れないとイライラした兄ちゃんになってたハメス。繋ぐにしても高い位置まで持っていくのはしんどく、ロングカウンターもできないので、まずは位置の回復をしてそこから崩すしかなくなっていたコロンビア。それならばサイドに攻撃的な選手(できればシュートの上手いヤツ)を入れてどさくさに紛れて得点を奪おう!という半ばヤケクソ感のある采配のように思えた。最初から縦に速いクアドラードをなぜ下げた!?ってのはナゾだが、そこらでも多分カミカゼが吹いたんだろう。コロンビアは3強1弱の1弱からまさか勝ち点を落とすなんてのは想定してないだろう。そこらへんの関係で正常な判断ができなかったかもしれない。

 

80'柴崎→山口(JPN)

試合も終盤に入り、1点リード。相手はなりふり構わず前線にボールを入れて得点を奪いに来る。と、なればゲームメーカーの柴崎の頭上をボールが行き交い、起点となる彼は、相手からするとボールを奪えばチャンス!と考える。それならば多少パスには難ありでもボールは他の所で落ち着かせてもらって中盤に狂犬山口を放し飼いしてボール狩りをしてもらう。疲れてきた時間にフレッシュな狂犬。ボールを奪うチャンスはたくさん。相手は1人少ないのでたとえ動きすぎて居るべきポジションを空けても数的に優位に立っているので大丈夫。という考えでの起用だったように思えた。

 

 85'大迫→岡崎(JPN)

前線でボールを収めに収めまくって決勝点まで決めた半端ない功労者も、時間と共に体力を消耗。最後らへんは足がつっていた様であった。CFは控えに武藤と岡崎が居たが、運動量が多く、ルーズなボールでも回収できる岡崎が選ばれた。また、怪我とウワサのあった岡崎のコンディション調整としての意味合いも大きかったはずだ。

 

 選手交代から見ても、日本は前半は浮き足だったが、ハーフタイムで修正ができたことにより相手の状況を見ながら臨機応変に対応できたように思われる。コロンビアは先に動かざるを得なかったこと、日本の中盤をリスペクトしすぎたために有効な攻め手を自ら削ってしまった印象だ。ワールドカップ初戦の難しさが如実に表れたのではないだろうか。

  

11人の「個」での勝利

 退場者に加え、適切なベンチワークができなかったコロンビア。それに対してPKとFKとセットプレーから確実に得点を挙げて勝利を手にした日本は、きっかけこそカミカゼだったかもしれないが、勝ち点3という結果を手にしたことは評価されて然るべきだろう。

しかし、10人の相手に対しての稚拙なゲーム運びからも感じられたように、日本は大きな問題を抱えているように感じたのも確かだ。

特に問題だと思ったのは、マークの受け渡し。両チームのマッチアップはある程度は想定できるが、現代のサッカーでは攻守によってフォーメーションが分かれたり、複雑になりつつある。そうなれば、マークを受け渡す場面が多くなるが、日本は2ヶ月で3試合+W杯本戦の1試合、計4試合しかしていないせいか、マークの受け渡しが上手くいかない場面が多くあった。

特に目立ったのはクアドラードのカットインに対しての日本のアクション。対峙する長友から中央にマークを受け渡すも、CB、ボランチ、SHと3人も食い付く場面があったり、失点シーンの長友のクリアミスに対して落下点に味方同士が被ったりと、ワールドカップの初戦ということを差し引いても守備が整っていない印象が強かった。

グループHの残り2試合、相手が早々に退場者を出すことなどほぼないだろう。11人どうしで試合をしたときに、このマークの受け渡しの曖昧さ、ボールに食い付きすぎるのは大きな問題である。

個々で戦い、対峙する選手に対して球際で気迫のこもったプレーをみせて勝利に持ち込んだ日本代表。これは11人の「個」での勝利だ。これからの2試合は「個」だけでなく、チームとして連動しなければ苦しくなる。今からしっかりと準備することは難しいが、コミュニケーションでなんとかしていくしかない。

 

 

最後に。この勝利は「JFA」の勝利ではないことはハッキリと記しておきたい。。田嶋やTwitterハリルホジッチ監督に対して敬意を欠く川淵三郎の手柄ではない。この勝利は、西野さんをはじめとするスタッフと、23人の選手たちによってもたらされたものだ。

次はセネガル戦。連勝で予選を勝ち抜けたい。

 

 

【大分】vs松本(A) 手堅く、最後まで〈J2 第19節〉

勝ち点差は僅かに「3」。得失点差はなし。松本が勝てば順位が入れ替わり、大分が勝てば勝ち点差がまた開く。まさに「6ポイント」のゲームは大分が手堅く勝利した。

 

この日のメンバーは以下のように

松本山雅FC
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ここまでホーム負け無し。そして最近のホーム5試合は無失点。怪我人がちらほら出ており、この日はFWの高崎寛之がベンチスタート。

 

大分トリニータ
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前節は21位の愛媛に敗戦し、首位陥落。そこから4人の変更をした。契約の関係で宮阪政樹がベンチ入りできず、岸田翔平、伊佐耕平はベンチスタート。黄誠秀はベンチ外に。

3バックの右に丸谷拓也を下げて、 ボランチ小手川宏基川西翔太が組む。左のWBに星雄次がはいり、松本怜は右サイドに戻った。FWには藤本憲明が3/17東京V戦以来の先発に復帰と大きく入れ替えを行った。

 

 前節の修正をしっかりとできた前半

大分は前半早くの7分に失点をしてしまう。

左右を揺さぶり、左サイドからの星のクロスが流れて逆サイドの松本がボックス内の深い位置でクロス。これが松本DFにあたると、前田大然が自陣深くでボールを回収してドリブルを開始。松本の援護のために高い位置にいた丸谷がぶち抜かれ、カバーに鈴木義宜と刀根亮輔、小手川が行き、逆サイドがポッカリと空いたところに前田直輝に決められて失点。前田大然の速さで守備が完全に後手を踏まされた形になってしまった。

しかし大分はボールを持たれる、奪われると前線から球際に激しく寄せ、ボールを保持すると中盤から下でボールを落ち着かせて、バタつかない。

前節はボールを持っても相手DFラインに5人をぶつけることができずに攻めあぐねたが、この日は両サイドを直接5人ぶつけずに、WBには幅を取らせることと、ボランチとの距離を離れすぎないようにすることを意識していた。

いつもならこのようにDFラインに5人を直接ぶつけるが、
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この日はWBを低い位置で起用。
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これに対して松本山雅FCは、まずはシャドウの後藤優介、馬場賢治にチェックにいくのを第一にしており、左右のスペースはそこまで気にしない。松本山雅FCの3バックは空中戦に強いので、中でしっかり締めればよい。という考えだったのだろう。実際、大分のサイドからのクロスは精度が高くなく、それほど脅威に感じていなかっただろう。大分もこれは折り込み済みであったようで、ウラ抜けを得意とする藤本を起用することで相手DFラインを下げる意図を持って、シャドウが死なないようにしていた。

そして前半22分。DFラインからウラへのボールに藤本が飛び出してトラップしようとしたところで岩間雄大に倒されてしまう。岩間のこのプレーを決定機の阻止に当たるとしてレッドカード。松本山雅FCは残り70分を10人で戦うことになる。

 1人少なくなった松本山雅FCは、先制点を挙げた前田直輝を下げでDFの浦田延尚を投入。3-4-2の形でFWを1枚削った。
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33分に大分のCK。後藤がショートコーナーを選択し、一旦ボールが松本怜に預けられている間に混戦のボックス内で浦田が刀根を倒したとしてPKを獲得。後藤がしっかりと決めて同点に。

40分には中盤で馬場が右足アウトサイドでDFラインのウラにボールを出すと後藤がボールを残して藤本にマイナスのパス。これを藤本がしっかりと決めて逆転に成功。

よい形で、また数的優位を生かして前半の内にリードを保って折り返す。

 

数的優位を生かして

後半に入り、松本が多少形を変更。

攻撃では3-3-2-1とボランチを1枚削り、
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守備では5-3-2、もしくは永井龍がサイドに流れて5-4の形でブロックを形成。
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前田大然を内側からサイドに張らせて、パウリーニョが前後に動いて攻守を繋ぐ。

 

49分に丸谷から藤本へロングボールが渡ると、今度は當間建文が手を掛て倒してしまいイエローカード。同じような形から大分はいい位置でFKを獲得。このFKはクリアされ、続くCKも中でファールがあったとして松本山雅FCボールに。このときに、立ち上がった守田達弥に藤本の肩が当たる大袈裟に倒れてファールをアピール。結局カードは無かったが、ボールがないところでも様々な駆け引きがあった。ホームの大声援を背に、異様な雰囲気の中でゲームが進む。

66分に大分が動く。前線で精力的に動き回った藤本からボールがより収まり機動力のある伊佐を投入。この時間から大分のチェックが緩くなり、前田大然の速さを受け身で対応する形になった。

これを見て両チーム共に動く。大分は馬場から三平和司に変えてゲームを落ち着かせようと試み、松本はパウリーニョと永井を下げて工藤浩平高崎寛之を投入。2枚変えで同点にするため攻撃面でフレッシュな選手を入れた。

それでも松本山雅FCは攻めあぐねると、パワープレーを選択。
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これに対して大分は、チームの重心を下げてロングボールでチャンスを伺い、松本は工藤を起点に高崎のポストプレーから攻める。

83分に、高木駿からのボールをを川西がトラップミスから相手に奪われたのを再び奪い返してドリブルで運び伊佐へパス。ボックスの外から放ったシュートは守田に弾かれるが、三平がこぼれ球を押し込んでリードを離すと、その2分後にも川西のスルーパスに後藤が抜け出して4点目。その後もパワープレーに晒されるが、後藤から竹内彬を投入して守備を補強。これ以上失点を増やすことなく4-1でゲームをモノにした。

 

松本の印象

前半で退場者が出てしまい、ガッツリ組み合ってのゲームにはならなかったのは心残りだった。松本の選手たちの当たりの強さは脅威であったが、この日はその強さが裏目に出てしまったようだ。

選手では前田大然と高崎寛之が印象に残った。前田大然は脚の速さを生かしての裏抜けだけでなく、守備で連続したプレスができるので、大分のように後ろで繋ぐチームにとっては脅威であり続けた。高崎は高さ、強さとポストプレーで周りを生かした。この日のようなコンタクトの激しい試合での駆け引きで嫌な選手であり続けた。

 

試合後のDAZNのインタビューで反町監督は審判の判定について腸が煮えくり返っていると、不満を露に。昨年は20試合で8度の退場者を出し、1試合あたり0.4人の退場者が出る審判で、松本山雅FCも3試合中2試合で退場者が出た。アセッサー、マッチコミッショナーが正確なレポートを書いてくれないと日本のサッカーは良くならない。1試合あたり0.4枚、JFLでも0.3枚も退場者を出す審判はいかがなものか。このままではサッカーではないし、スポーツでなくなってしまうと話していた。選手を守るために審判を槍玉に上げるのは度々みられる事だが、果たしてそれは好ましい事なのかは大いに疑問に感じた。

ファールで流れが大きく変わってしまったのは間違いないが、その原因を審判に擦り付けるのは違うと感じる。1試合あたりの退場者なんて、ゲームの内容や個々の退場の場面を観なければフェアに語れない。「よく退場者を出す審判だぞ」というのを知っておきながら「どのような場面でカードを提示するか」について話していないから退場者が出るのではないか。それなのに自分たちは判定で恵まれてない!と不満を言うのではお門違いであるし、クラブのイメージにも大きく関わるのではないか?1国のプロの監督が公の場でレフェリーを批判するのがまかり通ってしまうなら、それこそスポーツではなくなってしまう。負け惜しみとしても見苦しい限りだ。

 

悪い流れは作らずに

判定によって大きく流れが来た大分は、連敗をせず、よい形で福岡との九州ダービーを迎える。ビルドアップの変化のために丸谷のCB起用したり、WBの動きの工夫、微調整など挑戦をしつつ勝ちが多い充実した今、迎えるダービーはとても楽しみだ。前半戦ももう残り2試合。よい形で後半戦に臨みたい。

 

【ハイライト】2018明治安田生命J2リーグ第19節 松本山雅FC vs 大分トリニータ - YouTube

【日本代表】vsパラグアイ 組織は見えたが……〈国際親善試合 〉

ワールドカップ前最後の調整となったパラグアイ戦。日本代表は「らしさ」を見せることができたが、守備がハッキリしないままワールドカップを迎える結果になった。

 

この日のメンバーは以下のように。

日本代表
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前回と同じ4-2-3-1を採用。メンバーは酒井高徳以外は全員入れ替え。酒井高徳も逆サイドの左SBで起用された。

 

パラグアイ代表
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こちらも4-2-3-1を採用。この試合でGKのビジャールは代表引退試合となった。2010年の南アフリカ大会で対戦した時のGKであった。お疲れさまでした。

 

"香川システム"が機能

前半から日本は相手のMFとDFの間やDFラインの裏を狙うシーンが多く見られた。

中盤の底から柴崎がクサビのパスを多く入れ、2列目で受けた選手がターンやワンツーをして相手に後手を踏ませる。狭いバイタルエリアでフリックやターンができる香川を中心に攻撃の形を作る。

攻撃のスイッチの役割を果たした柴崎だったが、シーンによっては中盤でパスコースがなく、バックパスしかない状況でパラグアイの前線から激しくチェックを受けて数的不利になる場面も数度あり、ビルドアップのサポートはまだ課題があるように見受けられた。

それでも、日本はボールサイドに1トップと2列目の3人が寄り、空いた逆サイドのスペースをSBが上がった3-2-4-1や、ボランチが1列上がり4-1-4-1のような形にして狭いスペースでパス回しをして行く事と、ボールを奪われてもすぐに取り返す事を意識していた。

左サイドで組み立てる時は逆サイドの遠藤が2列目の一角に入り、幅を持たせる。
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ボールを奪われても前から仕掛けていく。

相手CBが岡崎からボールを奪い、手薄な日本の右SBのウラを狙うが、前からプレスをかけてそのスペースにいい形でボールが行かないようにする。
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相手に素早いカウンターをさせないようにしていたこの形が機能していた。狭いスペースで人数をかける事で狭いスペースで局面を打開できる香川が生きやすく、プレスの連動ができるようになっていた。

しかし、32分にスローインの流れからオスカルロメロにボレーシュートを決められて先制を許す。

その後39分に柴崎のFKがクロスバーをかすめるなどあったがスコアは動かず0-1で前半を終える。

 

守備の形を模索した後半

 後半に入り日本は東口、遠藤を下げて中村と酒井宏樹を投入。これで日本は代表メンバー23人全員がプレーすることとなった。

51分に香川がDFラインとMFの間に動きワンタッチで乾にパス。乾はカットインから巻いたシュートを放つとゴールに吸い込まれ同点に。3試合目にして嬉しい初ゴールとなった。

 

ボールが落ち着いた後半、日本は守備の形を変更した。

ガーナ戦で試した3バックのような形で守備を行い、酒井宏樹が内側に入り武藤がサイドを守るような形に。
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 相手を引き込んで、カウンターの場面を作る意図があったようだ。55分には香川が裏に抜け出してペナルティエリア内に入るもシュートまでは持ち込めず。

63分にパラグアイのSBの裏で武藤がボールを受けると、CBが武藤のチェックへ。これにより内側でズレができ、武藤から香川へパスをすると香川はフリック。後ろから走り込んだ乾がフリーでシュートを放つとGKの脇に当たりながらもゴールにが決まり逆転に成功。

この得点後に武藤を下げて大迫を投入。これにより2トップとなった。
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解説は「2トップで前線のポイントを増やしてより攻撃的にー」と話していたが、リードを奪った際の守備を意識していたように見えた。香川のサイド起用は4年前に守備の穴として散々狙われていたので守備の強度を見たかったのだと感じた。しかし、結果としてシステム変更により日本の多くの選手が守備の際に適切な対応ができずに、無闇に複数人がボールホルダーに寄せていき、危うく守備が崩壊しかけた。

これを見て西野さんは岡崎から原口に変更し、4-2-3-1に戻す。
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その後、柴崎のFKから相手のオウンゴールでリードを離し、再び4-4-2での守備を試すために79分に乾から宇佐美へと交代。香川を2トップの1角で起用を試した。
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この変更後は相手ボランチから中盤でボールを奪いカウンターから3対2の形を作るも香川がフカしてしまい決まらず、90分にパラグアイがFKのこぼれ球を豪快なミドルで突き刺して3-2。その1分後にまたしても相手ボランチからボールを奪い2対3になったところを香川が狭いスペースのドリブルで抜いて最後はDFの股を通してGKの逆をついてゴール。

4-2と西野さんの率いた時のガンバのスコアのような形で初勝利を飾った。

 

"ザックリ"とした中で

攻守共にやりたい事が見えた日本代表ではあったが、どれも"ザックリと"したモノにしかならなかった印象が強い。

攻撃面では1トップ+2列目3人でボールサイドに寄って空いたスペースを下から支えて計5人が前に張る事は見えた。が、4-4-2に変更をして2トップ+両サイド+1枚の形での崩しは見ることができなかったし、5人より少ない人数では仕留めきれない印象が強かった。また、ネガティブトランジッション(攻撃→守備)ではリスクを負って出たスペースのカバーが曖昧で、そこを突かれた時にどう立ち振る舞うかは全くと言っていいほど見られなかった。

守備ではスイス戦後に槙野が「(DFラインの人数は)3枚なのか4枚なのかわからないですが……」と話していたように、この日もどちらにするかを迷ってしまい、細部が詰められないままでいる。最悪なのは3バックと4バックの併用。この日のパラグアイの緩い攻めであっても3バックから4バックへ変更した際に、マークの受け渡しやフォアチェックなどすべてで後手を踏み「とりあえず」ボールホルダーに食い付く場面はすなわち守備の崩壊を意味する。時間帯によって臨機応変にできる見込みはごくごく僅かだろう。 

今回迎えるワールドカップは「南アフリカ大会によく似ている」と言われているようだが、"ザックリ"とした中で迎えるワールドカップは今回がはじめて。最後で日本式ポゼッションを棄てて守備の意識を第一に置いた岡田監督と、最後までどっち付かずな今の日本では比べる対象ですらない。

すでに開幕をしたロシアワールドカップでは、代表チームがクラブチームのような緻密さを持つチームが多い。そんな中で攻守ともにどっちつかず、出たとこ勝負なチームは非常に難しいゲームになるだろう。開幕戦でサウジアラビアが崩壊したように、無秩序なチームは切り刻まれる。今までで最も難しい大会にしてしまった田嶋をはじめとするハリルホジッチ監督を切った人々を怨まずにはいられない。

 

何に期待するか

ここまでは夢も希望もない日本代表についてグダグダと話したが、明日にはいよいよ初陣のコロンビア戦。4年前のトラウマは未だに強烈な印象だが、セネガルポーランドに比べればまだなんとかなりそうなイメージ。(ウラを返せば開幕で惨敗なら悲惨な結果になるだろう。)ここで踏ん張れるか否かで予選だけでなく、これからの日本サッカーの未来は大きく変わるだろう。

期待すべきは香川を中心としたアタッカー陣。世界に比べ、守備は貧弱としか言えず、西野さんになってからは平均2失点と守って勝つのはほぼ不可能だろう。と、なれば2点取られても3点取る勢いが必要。チーム全体を圧縮してボールサイドで細かいパス回しをして狭いスペースを仕掛けの量で圧倒して押し込み前からの守備、ショートカウンターを狙う必要がある。それができれば「窮鼠猫を噛む」では無いが、世界をアッと驚かせることができるかもしれない。

 

 

 

とりあえず、日本代表に「がんばれ」と声をかけ続けて田嶋が消える

だったり

某プロフェッショナルに「ありがとう」と声をかけ続けてスタメンから消える

だったりすればいいんじゃないっすかね。
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ハリルホジッチでよかったやん!!!!!

いろいろあるけど応援します。

 

【大分】vs愛媛(A)「できた」気分にさせられて〈J2 第18節〉

攻めども攻めども崩せずに、PKでの敗戦。しかしそれはラッキーパンチではなく、愛媛の狙いにまんまと嵌められて、ズルズルと沼に填まった印象だ。

 

この日のメンバーは以下のように。

愛媛FC
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成績不振により間瀬監督を解任し、後任の川井監督就任後も4戦勝ちなし。開幕からホームで未勝利となかなか浮上のきっかけを掴めない愛媛。

前節から丹羽詩温がベンチスタートで、変わりに小暮大器が右WBで先発。小池純輝が逆サイドに回り、近藤貴司が1列前のシャドウに入った。

 

大分トリニータ
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前節の終盤で脚を痛めた素振りを見せた福森直也が星雄次と共にベンチ外。福森の位置に刀根亮輔が回り、右CBには黄誠秀がスタメンに。星の位置に松本怜が回り、逆サイドには岸田翔平が先発に入った。そして林容平と岩田智輝がベンチ入り。

 

入りは良かったが……

前半入りの大分は、愛媛の低いラインの前でシャドウの後藤優介、馬場賢治が楔を受けて相手を引き付けてサイドに展開、クロスからチャンスを伺う。12分には左サイドの松本のクロスにDFの死角から飛び込んだ後藤がヘディングで合わせてゴールネットを揺らすもファールの判定。

一方の愛媛は序盤からDFラインでボールを回せど、大分の前線の選手が内側のコースを切っていたため、前へ繋ぐ流れがCB→WB→サイドに流れてきたシャドウと限定されていた。そのため、アタッキングサードに入る前に大分の網にかかり、シュートまで持ち込めない。

大分はビルドアップに問題を抱えた愛媛を序盤で叩けなかった事が、後に大きなツケを払う事に繋がってしまった。

 

愛媛の狙いが効きはじめる

愛媛は3-4-2-1で守備をしていたが、ボールを持つと以下のような4-1-2-3に可変。
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3バックが左にズレて右のスペースを田中裕人が埋めて両WBに高い位置を取らせる。

これにより大分の5バックに前5人をぶつけ、攻撃から守備に転じた時に相手WBに高い位置を取らせづらい形を作っていた。

しかし、これが効き始めるのは前半の30分ほどから。それまでは、DFラインからボールを引き出す動きが乏しく、アンカーの野澤英之の周りは相手にコースを切られているため、3トップの両サイドに位置取りをしたWBが下がってボールを受ける事しかできなかった。

DFラインは上がらない、シャドウは降りてこないとなっており、攻守は完全に分断され、間延びしていた愛媛。そこを大分が突く前に修正をかけられてしまった。

前半35分ほどからシャドウの一角を担っていた近藤がシャドウとアンカーの間を繋ぎ、リンクマンの役割を担うと、ここからジリジリと大分を追い込んでいく。外だけでなく中からもボールが繋がるようになった愛媛は、DFラインも積極的になり、ラインを上げる。全体の距離感が近くなり、間延びを防ぐだけでなく43分にはDFラインからサイドの裏のスペースを小暮が突いてチャンスを掴む。愛媛は前半のうちに修正をして後半へ。

 

徐々に劣性に

大分はチャンスを決めきらないが、40分までは相手にシュートを打たせないまずまずな前半を過ごした。しかし、徐々に噛み合う愛媛の攻守の前に、大分は良い形が作れなくなっていく。

後半での愛媛の修正は、サイドでSB、アンカーorシャドウ、WGの3人でユニットを作り、タッチ数を減らして大分のWBの裏を取ってCBを釣り出し、DFラインのズレを作る事を試みた。

そこからのチャンスはなかなかできなかったが、流れは徐々に愛媛へと流れていく。52分には大分のパスミスを近藤が奪ってシュートをするが高木駿に弾かれるも、65分にはビルドアップのミスからカウンター。カバーに入った宮阪のスライディングした手に当たってPKを獲得。これを近藤が決めて愛媛が先制。

 徐々に攻め手を失った大分は、69分に黄誠秀を下げて國分伸太郎を投入。
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國分はシャドウではなく、左サイドに回り松本が右サイド、岸田が右CBに入って攻撃に厚みを持たす。愛媛は松本の速さの対策としてか小池と小暮を入れ替えて対応してきた。

前がかりになった大分。愛媛は大分のWBとCBの間のスペースにシャドウを走らせカウンターを狙う。前がかりになって戻りも遅いとみた片野坂監督は、79分に馬場を下げて清本拓己を投入。4-4-2に変更し、サイドのケアとサイドアタックと前線の厚みを持たせた。
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特に左サイドは速さと量で勝負をするも決めきることができず。21位の愛媛を相手に痛い敗戦で首位陥落となった。

 

愛媛の印象

前半の30分まではボールに顔を出す選手が少なく、このままならどこかで集中が切れて大分が勝つなぁ~とぼんやり思っていたが、時間を追うごとに攻守が噛み合った愛媛を前になにもできなかった。川井さんはかなりやり手な印象。嫌なチームだった。

選手で目立っていたのは近藤貴司と前野貴徳。近藤は前から、前野は後ろから攻守のリンクマンの役割を果たしており、彼らが良い体勢でボールを受けるとスイッチが入っている印象があった。

 

やりたいことをやらされて

大分は攻守でやりたいことを愛媛にされて、攻守が分断。結果として攻守の意識のズレが生まれて間延びをしてしまった。

チームの守備の決め事として5-4-1のブロックを作り、リトリート。相手のDFラインは低く、攻勢に出ればキモとなるシャドウはフリーになりやすい。そうなったときに相手選手がCFとボランチの間で受けるとフリーにしてしまう事が大きな悩み所だった。
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野澤の横の位置に近藤が下がり、大分のボランチの前でボールを回されてもリトリートが優先なので、フリーで回すのを許容する形になった。これにより、サイドの守備をするシャドウは「ボランチが押し上げてボールホルダーにチェックにいけよ!」と思う一方で、ボランチは「まずはブロックの形成が第一だから、サイドから中にボールが行ったらシャドウがコースを切ってくれよ」と両者の間に意識のズレがあったように思われた。結果として早く攻めたいシャドウが前への意識が強くなり、サイドの押し上げを待たずして前線に突っ込み間延びをしていた印象が強かった。リトリートでブロックの形成を第一にするのは構わないが、相手のボールホルダーの位置に合わせて適切なラインの高さを設定しないと厳しいと感じた。

 

これから松本、福岡と上位陣との対戦が続く。DFラインの高さを丁寧に微調整することがこれからの課題だろう。それが上手くできれば昇格圏を狙っていけるはずだ。

 

【ハイライト】2018明治安田生命J2リーグ第18節 愛媛FC vs 大分トリニータ - YouTube

【日本代表】W杯開幕前に読んでおきたい本〈書籍〉

さーて、金曜日にはもう開幕ってのに自国の代表がクソすぎて盛り上がりに欠けるなぁ……でもどうせなら楽しみたい!って人は多いはず。実際ワタクシもそう。W杯前後は特に書籍も充実してくるので、そこに乗っかってソンはないかな、という事で何冊かご紹介。

 

本を選ぶにあたり、まずなぜハリルホジッチ監督は解任されなければならなかったのか?どういう戦いをしたかったのか?から始まり、これまでの代表ってどんなだったか?今の戦術のトレンドは?などを知るという観点で選んでみました。多分W杯が終わったあとに代表の顛末についてや、上記の内容を踏まえた面白い本がまた出るはず。楽しみだけどとりあえずはW杯前に、ということで。

 

 

 砕かれたハリルホジッチ・プラン

著者:五百蔵容
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まずはハリルホジッチ監督の解任により、4年間の積み上げがなくなった日本代表。ハリルホジッチがやりたかった事はなんぞや?というのは結局分からずじまいだが、そのヒントになる1冊。

日本代表でやりたかった「戦術」やコンセプトを図解を交えて分かりやすく記すとこから、代名詞となった「デュエル」や「縦に早い」といった言葉の意味、今の日本代表や協会、メディアなどが抱える問題にも触れた名著。最後の霜田正浩氏(現山口監督)の章だけでも一読の価値がある。これを読まずして今の代表は語れない。

 

 

日本代表戦術アナライズ

著者:西部謙司
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上記の「砕かれたハリルホジッチ・プラン」では、ハリルホジッチ監督を中心にした話なので、これまでの代表の流れはあくまでも補助としての役割。オフト時代からの代表の"最後の"試合を中心にどんなコンセプトでサッカーをやりたかったか、というのはこの本で補いました。西部さんの書籍は読みやすいので、こちらから読むのもありかも。代表の4年間は続けど、次の4年には繋がらない。ここ数ヵ月で露になった醜態の予兆はずっと昔からあったんだな、と。また、日本代表の日本化とは何かの考察も面白かった。

 


モダンサッカーの教科書 イタリア新世代コーチが教える未来のサッカー

著者:レナート・バルディ、片野道郎
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2008年の無敵艦隊スペインやバルセロナが平たく言えば「パスサッカー」で、勝利を重ね戦術は新たな局面を迎えた。そして鬼才、ペップ・グアルディオラが率いたバルセロナバイエルン(特に後者)は新たな試みが多くあった……そこから早10年。グアルディオラの頭の中にあったものが「ポジショナルプレー」「5レーン理論」「可変システム」などの言葉を通して今、触れる事ができる。

監督たちの頭の中ではどういう局面が想定されていて、どんなリスク管理をしているのか。まだ読み終えてないのでなんとも言えませんが、グラぽさんがまとめているのでそちらを是非。

 

  

 footballista 2018 RUSSIA WORLD CUP GUIDEBOOK

出版:ソルメディア
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海外のサッカーについて知るならfootballista。月刊誌で、各国リーグのレポートやコラム、インタビューなど日本のサッカー雑誌で一番内容が濃い雑誌が発行するワールドカップの選手名鑑。日程や放送、選手の情報だけでなく、ピルロの大会展望や審判の名鑑、キャンプ地からスタジアムの距離など様々な「知りたい!」に答えてくれる1冊。名鑑で迷ったらこれにすれば間違いない……!

 footballistaのHPにも面白いコラムがたくさんあるのでそちらも覗いてください。

 

 

多分これで今回のハリルホジッチ監督の解任騒動の問題点、日本代表の現在地が分かるようになるはず。また、今の世界のサッカーはどんなのかも知るとワールドカップはもっと楽しめる!と思います。

 

以上!

【日本代表】vsスイス 自分たちの"壁ドン"サッカー〈国際親善試合〉

W杯初戦のコロンビア戦まであと2試合。FIFAランク6位のスイスと対戦をしたが、ゴール前では"壁ドン"続きにエースの介護で全くサッカーですらなかった。クーデターを起こしてこの内容、この結果では到底納得はできないが、もう、どうしようもない。虚しさだけが残る90分であった。

 

この日のメンバー

日本代表
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ちぐはぐだった3バックをやめて4年前は慣れ親しんでいた4-2-3-1を採用。先発メンバーはシステム変更により山口蛍が外れ、かわりに酒井高徳が入った。

 

スイス代表
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こちらも4-2-3-1。W杯初戦の相手がブラジルということもあり、結構本気でどれくらいできるかのテストとしての日本戦だったはずだが、練習にすらならなかったようだ。ごめん。

右SBのリヒトシュタイナーはこの日が代表100試合目。

 

30分間のみのサッカー

前半のスイスはボールを持つと、ボランチの11番ベーラミが下がりSBに高い位置を取らせると共に、8番のフロイラーが連動して下がり、長谷部を釣り出してスペースを創る。長谷部が出てきたらそのウラを狙う意図を持っていた。また、日本のボランチに激しくデュエルを仕掛けて中を締めると共にショートカウンターを狙っていた。

一方の日本は1トップの大迫と2列目の宇佐美、本田、原口が流動的に動き相手に的を絞らせないようにする。守備では前から積極的にプレスにいくが、連動した動きは皆無であった。それが顕著だったのは、スイスのボランチに対してのプレスであった。本田はコースは切るがボディコンタクトは一切なし。左右の宇佐美、原口もボランチにプレスをかけてがら空きのサイドに回される。どこで奪うかがハッキリしないため、守備陣は撤退しかなく、サイドに回ったボールをSBが飛び出してそのウラを取られる無限地獄だった。

無計画な前線からのプレスは明らかにオーバーペースで、30分過ぎには運動量が下がり、11人全員が自陣に撤退することでしか守備の強度をあげることができなかった。自陣に撤退をしていざボールを奪ってロングカウンターでも、浅野のような裏抜けのスペシャリストがいるわけでもなし、すでに体力を使いきっており走れないのでボールを回収されて再び守備を繰り返す。38分にはその前のプレーで接触があった大迫が座り込み40分に武藤と交代。自陣に押し込まれたまま、その直後にサイドから仕掛けたエンボロがペナルティエリア内で吉田に倒されてPK。これをしっかりロドリゲスに決められて先制を許す。そのまま攻め手を欠いたまま前半を終える。

 

単調に次ぐ単調

 30分でガス欠を起こした日本代表。ハーフタイムで多少の体力の回復はできただろうが、相変わらず前線からのコースの限定ができない。56分に宇佐美と酒井高徳を下げて乾と酒井宏樹を投入するも守備の改善はなし。相手にズレを作られてサイドに吉田を釣り出せば中で長友がミスマッチを作られる苦しい展開。74分には川島のスローがシャキリにカットされてループシュート。これは枠に飛ばなかったが致命的なミスになりかけた。

60分に大島→柴崎、75分に本田を下げて香川を投入する。相手がゲームを流してプレーをして、プレスが緩くなってやっとボールを保持できるようになった。両SBを押し上げて相手陣にてボールは持てども相手DFの前でしかプレーができずに、守備陣に対応されたりパスミスを奪われてカウンターなど単調なプレーに終始した日本。その後は日本のCKからカウンターをドルミッチに決められて0-2で敗戦となった。

 

プロフェッショナルの介護

前回のガーナ戦で3-4-2-1の守備の穴になり続けた本田圭佑。この日は"得意"の4-2-3-1で2列目の真ん中でプレー。しかし、この日の本田もタメを作る事で攻撃で多少のアクセントにはなったが、やはり守備では負担になり続けた。

前半30分まで"飛ばした"日本。選手たちの距離感が近く、ポジショニングも流動的。これが90分フルでできれば世界をアッと驚かせる事ができるだろうが、強度の問題と稚拙な守備により脆くも崩れた。そしてその中心にいたのは本田だった。

前線で起こったカオスの中心は本田。彼が10番として中盤を自由に動くことによりできた歪みは、守備の大きな負担になりチームメイトの足を止めさせる枷になっていた。本田が自由に動けば動くほど、左右の人数の偏りは激しくなり、次第に2列目の3選手は中へ中へと渋滞を起こしてボールロストを繰り返す。カウンターから本田のいないサイドにボールが渡る事があっても、本人の走力、体力が原因でサポートに行けずに攻撃に厚みを持たせることができないし、守備ではボールホルダーの前に立つだけの"アリバイ守備"に終止し、1対1でデュエルもできず、パスコースの限定もできない。本田は無回転芸人であって中村俊輔のようなスペシャルなフリーキッカーではないし、香川のように狭いスペースでの打開や、相手の背後を取るアイデアもアジリティもない。むしろ何ができるのだろうか本当にわからない。

そんな彼にFWと左右の2人の3人がかりで介護をつけて良い形で攻撃に繋げることは不可能だ。11人の組織の中で攻撃のタスクを握る中盤の真ん中でなにもしない、できないのだから異物と言う他ない。これでピッチ内で監督のように振る舞う王様っぷりは本当に不快でしかなかった。なぜ代表に選ばれているのかを「結果」で示してもらうほかない。

本田についてはこちらでも指摘があるのでそれも良ければご覧下さい。

 

それ、本気で言ってます?

 この試合のハーフタイムに、JFA会長の田嶋幸三が出演。前半の感想を聞かれ「やりたい形が見えた」「DFも中盤もコンパクトで意図が伝わる」「忌憚ない意見を言い合っている」と妄言に終始した。

「やりたい形」の意図は全く見えないし、「中盤もDFもコンパクト」にベタ引きをして攻撃に転じる事もできないし意図があるなら教えてほしい。そんな中で「忌憚ない意見を言い合っている」のは一部の権力を握った選手達が一方的に要求をしていることではないかと勘繰られても仕方がない。

【閲覧注意】
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また試合後に西野監督は「形はできている」「ゴールが足りなかった」「中が閉じられていて変化がないと厳しい」と能天気な事ばかり述べていた。テストマッチは残り1試合。何を話しているのだろう。

ゴールするための手段も意図もなにも見えないし感じられない。11人がサッカー未満の意図のない球蹴りを見せられて「形はできた」ってもうアホかと。本番前で無能がたくさんしゃべっても結果が出ない、出る雰囲気もない地獄を見せられても我々は白けるだけだ。

 

それでも本番はやってくる

クソみたいな単調で意図の全く見えない試合をW杯直前に見せられて大変腹立たしいが、それでもコロンビア戦はすぐに始まるし、腹は減るし、いずれ田嶋も死ぬ。"奇跡"を待つしかない虚しさを抱えながら。