【大分】vs栃木(H) 今こそ見たい気持ちの強さ〈J2 第24節〉
3連敗、刀根の長期離脱と厳しい時期だからこそ、勝利という結果で魅せてほしいと願っていただけに、ただダラダラとリスクをかけないパス回しに終止し、勝ち点2を「落とした」大分。どうしたのよ?
この日のメンバーは以下のように。
大分トリニータ
後藤優介が5試合ぶりに復帰。ボランチを宮阪政樹から川西翔太、左WBを那須川将大から星雄次へと変更。馬場が第3節の岡山戦以来のベンチスタート。
栃木SC
6連敗からの2連勝と復調し始めた栃木。CBの西河翔吾が累積警告で出場停止。大卒ルーキーの浜下瑛が4試合連続のスタメン出場。そして先日登録されたばかりの西谷和希の兄、西谷優希とパウロンも早速ベンチ入り。
アグレッシブに。だが。
前半から仕掛けたのは大分だった。栃木が11人全員で守ることはスカウティングでわかっていたようで、しっかりと対策を用意していた。
栃木の守備は11人全員がハーフラインほどで守備を仕掛けてきたため、大分DFが比較的フリーでボールを保持できる場面が多くなった。栃木は守備でリトリートを第一に考えてはいたが、大分の3バックの左右にボールが入るとプレスの強度を上げてシャドウの浜下、西谷とボランチが連動して奪いに行く。プレスの方向づけを大黒将志がしてそれに連動するが、1stDFの位置を低くしてまずはスペースを埋めることを優先した。
それに対して大分は、ボランチの川西、CBの鈴木義宜がボールを運び、中央から大きな展開をして栃木の守備をより押し下げる。栃木の5-4-1のブロックの中盤4枚はボールサイドへ積極的にアプローチに行く裏を突いて大分の左右のCBが高い位置でフリーでボールを持てる場面も多くみられた。
10分には藤本憲明のポストプレーから國分伸太郎がミドル。こぼれ球を再び國分が打ち、もう一度こぼれたところを藤本が狙うもゴールならず。積極的にシュートを打ってサンドバッグ状態にしていた。しかし、そこからの前半は高い位置でボールを持ち、ボックス付近で栃木にブロックを作られてもう一度作り直すもどかしい展開に。
結局45分ではスコアは動かず、大分はボール保持率が74%という驚異の高さで前半を折り返す。
らしさでつくるもモノ足りず
後半に入り、栃木が先に動く。右WBの久富良輔から夛田凌輔へ変更。前半はほとんどボールを持たなかった栃木が時間と共に攻撃の形が見えるようになった。低い位置でボールを奪うと、ボールサイドへシャドウが開き、WBと縦の関係を作り、逆のシャドウが大黒と並び4-4-2へと変形。
(自陣左サイドでボールを奪ったらこの形に。)
中盤より高い位置でボールを奪うとFW3枚+両WBの5枚で仕掛けると言った形に。
前半からの修正として、リトリートからチーム全体を前からプレッシングへと変更。これにより全体の間延びの解消と、ボールを刈り取る事のできるヘニキに高い位置を取らせることでショートカウンターの意図を持たせていた。
大分は後半も急がず焦らずボールを保持して、左右へ大きく展開。栃木の中盤の脇を狙ってのプレーを続けたが、その脇を栃木のWBが積極的に埋めるようになっていたため、思っている以上に窮屈になり、次第にビルドアップが雑になってきた。簡単にロングボールを蹴って回収されてカウンターを食らう。すると大分の中盤中央は構造上どうしても空洞化してしまうためヒヤリとする場面も多くなっていった。
それでも大分は、78分に右サイドからチャンスを作る。川西から右サイド深くへスルーパスを出すと、松本怜が追いつきマイナスの折り返し。ニアサイドで鈴木が潰れて後藤がシュートを放つも枠から大きく外れる。
81分になり大分は星、後藤を下げて岩田と伊佐耕平を投入。88分には足首を痛めた國分にから清本拓己を投入するもゴールはこじ開けられず。スコアレスドローになった。
栃木の印象
開幕とは全く違い、走れるチームになっていた栃木。ここ数試合はレオーニとペチュニクがスタメンを外れるも、全体をコンパクトに保ち守備の強度を上げていた。ロングカウンターを狙っていたようだが、そこはまだ詰めれていないのかな、とも。
選手では、福岡将太とヘニキが目立っていた印象。福岡は対人の強さ、高さもあるだけでなく、ロングスローという飛び道具も持っていた。引いて守る栃木の攻め手の1つであるし、中には大黒となかなか気が抜けなかった。
ヘニキは機動力があり、ボール奪取のうまい選手。中盤でのプレスもサボらずにやっており、まさにチームの心臓といった働きだった。
半歩は進めたが
3連敗からの勝ち点1。最悪な状況からは1歩抜け出したが、依然として悪い状況には変わりない。ボールを「持たされた」ときにどうアクションするか、どこまでやりきるかは非常に悩ましい所だ。しかし、求めたいのは戦術的な策よりも、勝利のためのアクションだ。この試合の終盤、81分にサイドへ流れたボールを栃木の夛田は懸命にボールへダッシュをしてボールを残した。たったこれだけのプレーだが、自分は彼から勝利への渇望のようなものを感じた。それに比べて大分の選手たちはどうだったか。最後までやりきれたか?チャレンジできたか?と言われるとできていなかった様に思える。観ていて淡泊だな、と感じた。たった1つのプレーで雰囲気は大きく変えられる。最後までやりきる姿を、大分に魅せてほしいと感じた試合だった。
【ハイライト】2018明治安田生命J2リーグ第24節 大分トリニータ vs 栃木SC - YouTube
【大分】vs大宮(A) 結果は伴わずとも〈J2 第23節〉
2連敗で迎えた大宮戦は、結果から言えば連敗を一つ伸ばして3連敗。結果だけみると自動昇格を目指す上で手痛い敗戦となったが、内容は確実に良くなった。試合の中でどう立て直したかを振り返っていきたい。
この日のメンバーは以下のように
大宮アルディージャ
6月は負けなし。大前元紀は5試合4ゴールと絶好調。月間MVPを獲得した。ここ5試合スタメンは固定。勢いを持ってこの日を迎えた。
大分トリニータ
スタメンを固めた大宮とは対称的にメンバーを5人変えて挑んだ大分。出場停止明けの丸谷拓也をはじめ、黄誠秀、福森直也、宮阪政樹、那須川将大がスタメン。宮阪、丸谷以外は久々な選手になった。
出鼻を挫かれズルズルと
試合は2分で動く。ボックス内で黄誠秀がマテウスを倒してPK。これを大前に決められて早くも先制を許す。大前は4戦連発のゴールとなった。
ここから大分はドタバタする……ことはなく、いつもより球離れを早くして打開を図った。
この日の大分の工夫は左右を非対称にした変則的なものだった。
左サイドに那須川を置いた理由として、相手の右SBで前線によく顔を出す酒井宣福に対して守備での貢献と、ボール奪取後に酒井のウラを馬場賢治が突くためにクロス精度が高くアーリークロスを使って展開ができるように、といった意図を持っていた。
逆の右サイドでは選手の距離を狭めて松本怜の前に國分伸太郎が流れて、國分が空けたスペースを宮阪が1列上がり、パス回しで崩すためだろう。
片野坂監督は守備の5-4-1をベースに宮阪と丸谷を高い位置で縦の関係にして上記の策により打開を図ったが、タスクの過多により発生したボランチ脇を突かれて機能不全に陥った。
タスク過多だったのは宮阪。中盤のボランチとトップ下を行き来していつもより攻撃的な役割を与えられていたが、なぜかDFラインまで下がってビルドアップをしており、松本と國分が孤立し、ボランチ脇にスペースを空けて守備偏重な形になってしまった。
そしてボランチ脇を大前、茨田陽生に突かれて守勢に回ってしまった。
また、大宮も大分のビルドアップに対してマッチアップを明確にしていたため、より切羽詰まった印象になった。
宮阪が落ちてDF4枚+1枚の形では4-4-2のままFW2枚+SH2枚で蓋をして対応。
大分がDF3枚+2枚のビルドアップに対しては茨田が内に入り、酒井が1列前に、DFラインに三門雄大が落ちて4-1-4-1で対応。
前からハメてショートカウンターという形を狙いとして持っており、それを可能としていたのは相手を見る事だけでなく、エリアによってリアクションを変えていたから。大宮のアタッキングサード、大分の自陣寄りでは上記のような形に応じて対応。中盤より前で大分がボールを持てば酒井がDFラインに戻り5-4-1に変えてブロックを築いてスペースを消す。
マテウス、大前をサイドではなく内に寄せた事により相手の左右のCBを釣りだしスペースを作らせると共にゴールまでの最短距離でカウンターを完結させる意図を持っていた。マテウスがボールの収まり所になること、ある程度は4バックでも守れるという個の強みを生かした実に嫌らしいものだった。
それだけでなく、大宮はボールを持つと中盤4枚が幅を取ってボールを回し、大分のシャドウのプレスを無効化とボランチ間を強制的に間延びをさせて、ボランチ間、ボランチDF間に大前がポジション取りをして大分の守備は混乱してしまう。ミスマッチを突かれまくった大分の崩壊は時間の問題かと思われたが、35分から4-4-2に変更し、マッチアップを明確にして球際の強度を強め対応して凌ぐ。
自分たちのタスクの矛盾による機能不全から悪い状況に陥ると共に、臨機応変に対応できる大宮と、やりたいことはチグハグでフィニッシュまで持っていけずミスの連続でより意識が守備に傾き、挙げ句の果てにプランの変更という最悪な状況。0-1なのが不思議なくらいだった。
整理をして「らしさ」を取り戻す
にっちもさっちも行かなかった前半。改善点は沢山あるように見えたが、原因は宮阪のタスク過多という1点のみ。そこで後半から宮阪をボランチに固定をし、3-4-3で前から仕掛けるように変更。これにより内容が劇的に改善した。
大分が3バックでビルドアップをするため大宮は4-1-4-1で対応をしてきたが、馬場を中心に大宮の1ボランチ脇を突いて次第に攻撃が活性化。國分がサイドに流れるのは変えず、彼の空けたスペースを宮阪が埋めるのは、後半開始すぐでは機能しなかったが、時間の経過と共にそこも改善していった。
64分には丸谷のパスを藤本が胸で落とし馬場がシュートと中央突破もできるようになり、ほぼ大分がハーフコートに押し込んでいく。73分には那須川→星雄次、馬場→清本拓己と2枚替えをしてより縦への意識を強めてゴールを奪う意識を強める。
2枚替えから左右に大きく展開をしていき、相手のプレスが効きづらくさせると、中央でシャドウがボールを受けやすくなり、そこに蓋をされても宮阪から大きなサイドチェンジでサイドを抉るという波状攻撃に。WBからWBへとつながりシュート、相手の背後からシュートなど様々な形でゴールを脅かす。結局最後の精度が足りずに枠内シュートゼロ。これが響いて3連敗になってしまった。
大宮の印象
好調の大宮は前回よりも手強く、特に前半は状況判断の面で大きな差があった印象。判断が良ければ自ずとペースは握れるはずなので、ノッてきた今からの巻き返しが怖い。
選手ではマテウス、茨田が印象に残った。
マテウスはゴリゴリのフィジカルでシュートの意識も強く、リトリートで守備をする大分のスペースへの侵入は大きな驚異だった。
茨田はこれまではボランチだったが、今季の途中からSHへ。主にサイドから中に入り、ハーフスペースへの侵入と酒井のスペースを空ける役割だったが、これが上手くハマった印象。ボールキープもできるのでタメを作ってサイドの上がりを待てるので、右サイドの酒井とのコンビは強烈だった。
そしてなんといっても石井監督。オーソドックスな4-4-2に選手の特長を生かした配置は理にかなってると感じたし、茨田のコンバートで酒井との関係や、大前と富山貴光を流動的に置いたりと確実に良くなっていた。守備も大崩れしないし、これから勝ち点をまだまだ伸ばしそう。
結果は伴わずとも
結果だけ見れば片野坂体制初の3連敗と厳しい結果になったが、これまでとは違い、後半の45分で盛り返していたことを評価したい。今までは流れが悪くなって苦肉の策でのフォーメーション変更で応急措置をして多少は佳くなることはあった。しかし、この日はベースである3-4-3で真っ向勝負をして多くのチャンスを作った。これは、これまでミシャ式をベースにしたサッカーが根付いている証左であり、ハイプレス、ハイインテンシティーを貫いて押し込んだ、盛り返した事は大いに評価したい。幸い、上位陣も軒並み足踏みと、首位とは勝ち点差もあまりない。この日の後半45分をベースに戦えば、必ず建て直せると思う。敗れはしたがチームとして、トリニータが勇往邁進するために必要な自信をつけられた試合になったはず。悪い中で見いだしたこの光明を掴めるか。次節が楽しみだ。
【ハイライト】2018明治安田生命J2リーグ第23節 大宮アルディージャ vs 大分トリニータ - YouTube
【大分】vs甲府(H) 噛み合わず、必然の敗戦〈J2 第22節〉
ここからリーグは後半戦。前期での対戦は2-6とフルボッコにされたが、今回はそれよりも酷い内容だった。走れない、ミスが多い、機能しない戦術。今季ワーストの内容。なんだこれ……
この日のメンバーは以下のように。
大分トリニータ
放送では3バックと話していたが、4-1-4-1だったように思われる。
前節退場した丸谷拓也に変わり岸田翔平、川西翔太から姫野宥弥と2人を入れ替え、宮阪はベンチ外に。七夕開催で誕生日、J通算250試合出場を果たした馬場賢治に期待がかかる。
ヴァンフォーレ甲府
ルヴァン杯PO進出によりJ2で唯一の中2日で対戦となった。1週間前から4人、3日前から7人を変更して大分に挑む。
怪我人が多く、仕上げのリンスはFC東京へ移籍となかなかメンバーは揃わないためかほぼ0トップのような布陣に。そして0トップの中央には曽根田穣が初スタメンに。
ハマらない戦術
前半4分、CKをすんでの所で高木駿がセーブ、こぼれ球も星雄次が掻き出して前回対戦のような開始早々からの連続失点は防ぐものの、大分はふんわりと入った、もしくは出鼻を挫かれる形になった。
前回対戦と同様に、甲府が前から仕掛けてくる事は想定でき、それに対しての策を片野坂監督は準備をしていたが、全くと言って良いほどハマらなかった。
大分が準備していたのは3つ
・被プレス回避の策
・相手ボランチのスペースの攻略
・サイドの強化による3バック脇の攻略
被プレス回避の策は、小手川が中盤底に入り4+1の形と、小手川、姫野が1列下がり、両サイドが一列上がり3+3の形を併用してパスコースの確保をする意図があった。
相手ボランチのスペース攻略は、守備でも前から仕掛けてくる甲府。だが、大分がミドルサードまで持ち上がるとボランチの島川俊郎がDFラインに入り、4バックに可変。小椋祥平の1ボランチ脇にスペースが生まれる。ここを、シャドウの國分が下がると共に、姫野が1列上がり数的優位を作って攻めるというもの。
サイドの強化による3バック脇の攻略は、大分が4バックを敷いてサイドに2枚ずつ配置をするというだけでなく、よくドリブルで上がってくるエデルリマの背後を狙う意図と、相手WBをサイド2枚で挟んでカウンターという狙いがあった。
しかし、この3つの狙いで重要だったダブルボランチの動きが全くと言って良いほど機能せず、甲府対策のデメリットばかりが出てしまうというものになった。
姫野は、機動力を生かして攻守でボールに関わる事を求められたが、3+3の1ボランチではボールをロストしまくり、攻撃では國分と横に並べずにボールを持ったら前に5枚はいるというのを原則とする大分の形を作れなかった。
小手川はバランスを取る事に長ける選手という評価での起用だったが、彼は「ボールを持っている時に」バランスを取れる選手ではあるが、ボールがない場面でのポジション取りは曖昧で、特にボールを奪われてすぐの場面で棒立ちになったりしていた。
中盤の底を意味する「ボランチ」は、ポルトガル語で「ハンドル」の意味。スペイン語で同じポジションを指す「ピポーテ」は「軸」という意味だ。ダブルボランチが機能しない事はハンドルがないこと、軸がブレブレだったということだ。
そんなこんなであたふたしている間に20分に堀米勇輝、24分に曽根田に決められて0-2。
大分は42分に姫野を諦め、川西を投入して応急措置をして前半を終える。
プランBでも変えられず
流れを掴めないまま前半を終えた大分は、星を下げて伊佐耕平を投入。フォーメーションを変えて打開を図る。
松本怜を左SB、藤本憲明をトップ下に変更し、4-2-3-1へ。
ボランチの上下の動きをなくし、中盤でのスペースを狭めて応急措置を施した。
この変更により落ち着きを取り戻し、攻勢に出た大分だったが、次の得点は甲府だった。カウンターから堀米がペナルティエリアの外からループシュートを放つがバーに当たって跳ね返る。これを佐藤和弘が頭で押し込んで3点目。
大分は74分に裏抜けをした藤本がボックス内で倒されてPK。自ら決めて2点差にして勢いが増したが、83分に小手川が自陣中央で佐藤に奪われてGKと1対1を決められて万事休す。アディショナルタイムに再び藤本がPKを貰い自ら決めるも結果は変わらず。厳しい敗戦となった。
甲府の印象
怪我人が多く、リンスも移籍。それに加え、ルヴァン杯の関係で試合数も多いと厳しい時期を過ごしているが、どの選手が出てもクオリティが下がらないのはやっぱりJ1で戦ってきただけあるなぁ、という印象。そんな選手達が惜しみなく走るのだから驚異でしかなかった。
この試合で、島川が負傷交代とまた一人怪我人が出た様子。ここから怪我人が戻るのが早いかリーグ戦が終わるのが早いかで成績が変わることもあるだろうが、後半戦の目玉となるだろう。大変トラウマになりました。
辛抱の時
大分は甲府相手に2試合で10失点。非常にしょっぱい結果となった最たる原因は、ボランチの機能不全であった。今季初、そして昨年8月の町田、ヴェルディ戦以来の連敗となってしまった。ここでブレるかブレないかは悩ましく、辛抱の時だと感じる。そして、次節は昨年J1で、前期では逆転敗けを喫した大宮。勝ちが遠い今こそ、一丸で戦わなければならない。
【日本代表】vsベルギー 見えた限界。だが、美しく〈ロシアW杯 R16〉
2-2。アディショナルタイム。本田の蹴った無回転のFKは枠を捉えたが、クルトワに弾かれCKに。ここからカウンターを食らい、失点。
北京世代が求め続けた「自分たちのサッカー」はベスト8には届かなかったが、最後で最高の90分を魅せてくれた。美しく散った日本。グッドルーザーだったかもしれないが、それと同時に限界の見えたのも確かだった。
この日のメンバーは以下のように。
日本代表
グループリーグ第1戦、第2戦と同じ11人。フルメンバーでFIFAランク3位のベルギーに挑む。
ベルギー代表
プレミアリーグオールスターのような面々のベルギー。タレント揃いのチーム。デブライネがボランチをしたりカラスコがWBだったりと結構攻撃的。
ゲーム序盤のベルギー攻略法
攻撃に強みをもつベルギー。日本はその相手に対してしっかりと対策を立てて弱みを見抜いていた。
ベルギーの3-4-2-1は攻撃の際に両WBが上がり前5人が幅を取る。
①
自陣からのビルドアップでは、ヴィツェルが右SBに入り4-1-4-1で組み立てを行う。
②
相手が攻めて来たら上記の4-1-4-1か、5-4-1でブロックを作って対応。
③
この3つの形を使い分けるベルギーの弱みとなったのは、右サイドのムニエの裏と、可変の際に大きく動くヴィツェルのスペースだ。
ベルギーは、日本に対しての守備ではたいていは②の形で守り、①の形で攻撃。守備であまり③を使わなかった理由として、日本の攻撃は大迫の足下に入るとスイッチが入ること(高さでの勝負ではベルギーに分があるため)、5-4-1では自陣に引く形になるため攻撃で特徴が出る選手の個性がなくなると共に日本の両SBがフリーになりやすくなるため、前からスイッチを入れられる②の形での守備、組み立てをメインとしていた。
これに対して日本は、ベルギーの右サイドを突くデザインを準備していた。
4-2-3-1を基本とする日本。
攻撃の際には大迫、香川、乾、原口の4人にボールサイドのSBかボランチの柴崎が上がり、5人で幅を取りながら攻めるというこれまでの形は維持。
しかし、乾と香川の動きには工夫があった。
これまでは乾はサイドと左のハーフスペース(中央とサイドの間)を行き来してマークを外していたが、この日は左サイドよりも内側に入ってプレーすることが多かった。これはサイドの長友のスペースを空ける意図と、相手CB、右WB、ボランチの間に位置を取ることによりベルギーの連携を分断できた。
また、これまでは時間帯によって組み立てに関与するために下がることもあった香川は、2列目から動かないことを重視。相手のダブルボランチの内、ヴィツェルは右SBに吸収されるため、デブライネの1ボランチの脇にできるスペースを突く事ができた。また、内に来る乾、ポストプレーをする大迫との距離が必然的に近くなるため、中央での連携から3バックの脇を突くことがよりスムーズにできた。
日本は、ベルギーのヴィツェルのボランチ-右SB間を動くことによりできるスペースの有効活用を準備できたことにより、主導権を握ることができた。
前半中盤からベルギーの修正
主導権を握られたベルギーは想定外だったようだ。日本が柴崎を中心に左右のサイドチェンジから組み立てると予想していたかもしれないが、予想に反して前から仕掛けてくる。ベルギーの両サイドは高い位置を取るため、守備で後手を踏む。ここでベルギーはビルドアップの形を修正。ヴィツェルとデブライネの位置を変えて、ヴィツェルのポジション移動をスムーズにできるように変更。また、ヴィツェルが下がって4+1のビルドアップから、3バックが大きく広がり3+2のビルドアップを主軸に置いた。
この変更により、中盤とDFラインのスペースを突いていた乾の位置をヴィツェルが消すと共にベルギーがボールを持った際に乾はヴィツェルとアルデルワイレルトのどちらを見るか迷いが生まれ、中央で香川と被ったりサイドで孤立する場面が増えた。
日本の1stDFのズレから中盤→サイドと繋がると、低い位置からでもクロスを入れはじめた。最前線のルカクにボールを当てて日本のDFラインの押し下げと中盤の分断を狙ってのことだろう。しかし日本はルカクとマッチアップをする昌子がなんとか凌ぎ、全体をコンパクトにすることで間延びを防ぎ、大崩れをすることはなかった。
30分ほどからゲームは落ち着くと、44分に右サイドから左へ振り、長友がシュート。大迫がコースを変えるとクルトワがボールを後逸。ゴールラインは割らなかったが、非常に珍しいシーンだった。
攻守での駆け引きが多く、見ごたえのある前半はスコアレスで折り返す。
電光石火の連続得点
後半に入り、先手を取ったのはまたしても日本。48分に前がかりだったベルギーに自陣からカウンターを仕掛け、中盤中央から柴崎が3バックのウラヘ見事なスルーパス。これにベルトンゲンが足を延ばすが届かず、原口にパスが通ると、ボディフェイントからファーサイドへ右足一閃。3バックの脇を突いた会心の一撃で日本が先制。
直後の49分、昌子と長友の間でメルテンスがボールを受けて右サイド深くからマイナスのパス。これをアザールがダイレクトでシュートも枠に嫌われる。
先制を許したベルギーは、日本のボランチの位置でのプレスの強度を上げてショートカウンターを狙うも、これが仇となってしまう。
中盤の高い位置からプレスをかけるも、素早いパス回しでサイドの長友→乾とパスが回る。ベルギーは前がかりになった中盤とDFラインが間延びをしてしまい、香川にフリーでボールを持たせる。ベルギーはここでディレイができ、守備ブロックを作ったがその前から乾が強烈なミドルシュートを放つ。無回転のボールは、糸を引くようにゴールに吸い込まれていった。
52分で日本がまさかまさかの2点リード。ここからゲームはまた、大きく動く。
3と4の間。流動的に。
ベルギーは2点をリードされてから変更を加えた。右サイドのムニエの攻撃参加をやや抑え、右サイドのチェーン切れを抑制。DFラインは3枚か、ヴィツェルが降りて4枚の形。中央のレーンにCB2枚とトップ下の2枚、デブライネの5人を置いて中央で日本に気持ち良くプレーさせないようにした。また、ルカク、メルテンス、アザールは流動的になり、より自由に攻撃を仕掛けるようになった。
前線が流動的になったベルギーは、ロングボールを入れるために、自陣でビルドアップをするときにルカクがサイドへ流れて長友とマッチアップをする形を増やした。ルカクは190㎝に対して長友は170㎝。ミスマッチを作ってボールが収まれば、そこからはズレを突いていくだけだ。
なりふり構ってられないベルギーは、65分に2枚変え。メルテンスを下げて194㎝のフェライニ、カラスコを下げてシャドリを投入。
交代直後はこの形だったが、フェライニはルカクと2トップになったりボランチまで下がったりと流動的で、それにあわせてデブライネがバランスを取ることで日本にマークの的を絞らせなかった。
流動的なベルギーを相手になんだかんだで粘り強く対応をしていた日本だったが、フェライニ投入から僅か4分後、思わぬ形から失点をしてしまう。左サイドからのCKを乾がクリアミス。大きく上がったボールをベルトンゲンがヘディングで折り返すと、これが川島の頭上を越えて直接ゴールへ。不運かミスかはわからないが、あり得ない形から失点。すると5分後の74分にはCKの流れから左サイドのアザールのクロスをフェライニに合わせられてあっという間に同点に。
日本はこの連続失点に動揺して稚拙なミスが増える。79分80分にはベルギーに連続でCKを奪われてファーサイドを徹底的に狙われたが、これで失点はせず。慌てまくる日本は、柴崎→山口、原口→本田。本田が入ってから多少落ち着いたが、85分にシャドリのヘディングシュート、そのこぼれ球をルカクがヘディングシュートをするが、どちらも川島がファインセーブ。
そして試合終盤。90+1分、あの場面。大迫が中盤中央でファールを貰い、キッカーは本田。
距離的にも8年前のデンマーク戦とほぼ同じ。無回転のボールは枠を捉えたが、クルトワに阻まれた。
その後のCKをクルトワにキャッチされ、速攻。たった10秒でデブライネからムニエと繋がり、ルカクがスルー。ファーサイドでシャドリ詰めて逆転。そして、試合終了。
見えた動揺、Jの文化
この試合の流れが大きく変わったのは、川島のミスと言われても仕方のない失点からだった。直後のプレーで大迫がコンパニとのデュエルで負けて副審に怒った場面や、その後の日本チーム全員が浮き足だって攻め急いだ場面から「ヤバいかも」と感じた。
多分この動揺は、川島のミスだったからではなく、どのような形からの失点でも日本はおそらく同様に浮き足立っていたと思う。それは単純にメンタルに起因するものでなく、普段のJリーグの文化が関係しているのではないか?
Jリーグはビッグクラブがなく、毎年チャンピオンは変わるし、勝ち点1差で明暗が別れるケースは他国に比べてとても多い。J2ではより顕著だ。また、外国人選手が日本サッカーに関してのインタビューを見ると「良く走る」「勤勉である」「規律を守る」と共に「たとえ点差が開いても最後まで諦めない」と言うのを目にする事がある。個人の経験なので印象でしか語れないが、2-0から1点を返されると途端にあわてふためいて引き分けに持ち込まれたり逆転されたりという機会が多く感じる。Jリーグがはじまりたったの25年だが、最後まで諦めない「文化」が悪い方向に作用してしまったのだと感じる。
試合を終えて
あまりにも、あまりにも劇的な逆転での敗戦。うずくまる昌子の背中を見ると、号泣する乾を見ると、とてもやるせない気持ちになった。項垂れる選手たちを見るとサッカーはとても残酷だ、と感じた。
北京世代が中心となった南アフリカ大会後から取り組んで、自分が毛嫌いしてきた「自分たちのサッカー」の集大成の1戦。選手たちの気迫がこもった90分。なんだかんだでステキなサッカーだった。観ていてとても美しく、最高の試合だったと思う。
だが、この結果は北京世代の成功や成果であっても、日本サッカーの成功ではないことは残念で仕方がなく、これが俗人的で再現が難しい事を考えると、とても儚いものだったのだろう。それが個人としてはとても悔しく、やるせない。
「感動をありがとう」と連日のTVで見たが、個人としてはベルギー戦の90分を終えての感想だ。これまでの4年間の積み上げを反故にしてまで「感想をありがとう」とは、自分は言えない。JFAにはしっかりと振り返りと検証を行ってほしいが、目先の新監督、目先の親善試合と場当たり的で、長期を見通した指針はなかったものとされてまた漫然と4年を過ごす事がとても、とても虚しい。そして指針なき組織の下でプレーをしないといけない選手達が割りを食らうのがとても気に入らない。
非常に美しく、スペクタクルな試合。しかしその感動を田嶋に削がれた。とても悔しく、気持ちはまとまらない。
【大分】vs徳島(A) 崩せず自滅〈J2 第21節〉
一進一退の好ゲームで47分で退場者を出した大分。これにより破綻してしまった。低いラインの相手に釣り出され、ことごとく背後を取られての敗戦。これからの戦い方を考えさせられるものとなった。
この日のメンバーは以下のように。
徳島ヴォルティス
開幕前は昇格圏に予想されながら、怪我人が多く、ここまで4連敗。主力の大崎玲央が神戸に移籍を発表しベンチ外。難しい時期が続く。
この試合から広瀬陸斗が怪我明けで初スタメンで右WBで起用。それに伴い、大本祐槻が逆サイドを務めた。
大分トリニータ
変更は1つ。契約上出場できなかった松本戦以外は全試合先発出場していたボランチの宮阪政樹がベンチスタート。かわりに川西翔太が先発。昨年はこのポカスタでPO進出を逃し、シーズンダブルを食らった。
相手に対応できずに
大分はゲームの入りで、徳島が前からアグレッシブにプレスを仕掛けてくると想定していた。それはボランチのビルドアップの際に工夫を施していたからだ。普段はボランチが1枚下がり4+1の形で組み立てをするが、この日はその下がり方を変更。川西が左CBの刀根亮輔の横に入り、プレス回避の意図が見えた。
しかし、徳島は前線からのプレスを仕掛けては来ず、ハーフラインよりやや自陣よりにラインを引いてきた。これはただ単にドン引いたワケでなく、明確な意図を持っての低いライン設定だった。
徳島の狙いは攻守共に狙いがあった。
まずは守備。
これまでの「大分対策」はいずれもパサーへのアプローチをどうするかが中心だったが、徳島はパスの受けてへのアプローチを試みた。3-3-2-2のサイドを下げて5バックにし、中盤中央の3人は内側を重視し、3バックと中盤の3枚で大分のシャドウを孤立させた。
また、ラインを低く設定することによりボランチからのロングフィードも無効化した。スピードのある大分の両サイドがロングフィードを受けて背後を取って崩す形を取るが、徳島DFがあらかじめ低い位置に構えているので高さでの競り合いに持ち込んだ。また、ラインが低いため、裏のスペースもなくなり、結果として大分のボランチは近くの味方に預けるしかなくなっていた。
ボールの位置取りを高くしてから全体を押し上げる大分は、攻め手は無いがボールは持たされるという状況に。そうなってはリスクを負ってでもラインを高く設定して殴り続けることを余儀なくされた。
次に攻撃。
基本的にはDFラインを低く設定するとそれだけ相手ゴールからも自ずと離れるため、攻めあぐねる事が多い。しかし、徳島はしっかりと攻撃のデザインも施されていた。
肝となったのは中盤の底にシシーニョを置いたことと、FWの動きだ。
徳島の中盤の底はいつも岩尾憲だが、この日はシシーニョを起用。これはボールをシンプルに捌けるシシーニョが一番ボールに触れる位置に置いたということ。シシーニョにボールが渡ればそこを起点にカウンターへと移る意図があった。
徳島の2トップはボールを奪うと、縦ではなくナナメに走り、高い位置を取った大分の左右のCBの裏を狙った。中央を回避することにより、大分のCB、鈴木義宜をサイドへと釣り出す。そして岩尾憲と小西雄大がインサイドを駆け上がりフィニッシュまで持っていく。
大分は高いラインの背後を取られてサイド→中と揺さぶられて多くのカウンターを受けてしまった。
その形から11分に岩尾のシュートをブロックした丸谷の腕に当たってPK。これを岩尾にしっかりと決められて失点。
大分は効果的なカウンターを繰り出す徳島にただただ攻めあぐねてしまい、25分ごろからフォーメーションを変更。4-1-2-3に変えてサイドの補強をした。
引いた相手に対して3バックでは人数が余ること、5バックを敷いた相手のサイドに2枚をぶつけて3ボランチ気味の中盤を拡げる意図があった。これによりサイド突破が増え、シャドウもボールを触れるようになったが、粘り強く対応されてしまい、カウンターを食らう。を繰り返し、ややテンションの高い前半をビハインドで折り返す。
崩れたゲームプラン
大分はハーフタイムに國分伸太郎から清本拓己を投入。今季初めて4-2-3-1に変更をして後半をスタートさせた。
しかしこの変更から僅か2分後にゲームプランは完全に崩れる。なんでもないボールを丸谷が岩尾に対してスライディング。これが岩尾の足首に入り2枚目の警告を受けて退場に。あまりにも軽率なプレーでゲームを台無しにしてしまった。
これにより4-4-1に変更。
大分は果敢に走り、積極的に攻めるも打開はできず。65分ほどから徳島が前に出て来て攻め手を失うと、69分、89分と失点をして0-3で敗戦。残念な結果となった。
徳島の印象
ただ守備的なだけでなく、攻撃もデザインされており、やっぱり徳島はどの順位にいても嫌な相手だと思う次第。
特に攻撃面では、しんどい長い距離のスプリントを何度もこなし、チャンスを作るのは走力が叩き込まれているから。島屋八徳や岩尾憲はそのスピードでもプレーの精度が落ちない良い選手と感じた。次は11対11での戦術での殴り合いをしたい。
運も味方して
個人の軽率なミスもあり、0-3で敗戦も、2位山口も敗戦、町田、福岡は引き分けと上位チームが軒並み勝てず、前半戦を勝ち点40で首位で折り返すことができた。しかし、昨年暮れにPO圏進出を逃し、片野坂監督の涙の会見があったポカスタでリベンジが果たせなかったことはとても悔しい。
ここまで完勝といったゲームはほぼなく、クリーンシートでの勝利も数えるほどと課題は多く残る。そんななかでも今年はシーズンの折り返しをトップで迎えられたのはこれまでの積み重ねの証左であり、勝負強さが備わっているからこそ。後半戦はより研究をされて難しい試合も増えるが、そこを勝つことで新たな景色が見えるのは確かだろう。
後半戦最初の相手は甲府。前回の対戦ではボッコボコにやられた相手にどこまで出来るかを楽しみにしたい。
【日本代表】vsポーランド "最終的には"勝負に徹して〈ロシアW杯 グループH 第3節〉
とても退屈でクソみたいな90分。国際大会で「無気力試合」はエンタメとしては最低で、とても醜いものだった。だが、それでも決勝トーナメント進出という「結果」を残したのだから、それは評価されて然るべき。しかし、そこに至るまでの過程には首を傾げる他ない。個人としては納得いなかいゲームであった。
この日のメンバーは以下のように
日本代表
突然の!4-4-2!メンバーを6人も変更した。
ポーランド代表
こちらは4-2-3-1。
解説者泣かせの、舌を噛み切るかのようなメンバーたち。グジェゴシュ・クリホビアクとか。(グジェゴジュって東欧っぽい)
ピシュチェクやブワシュチコフスキといったドルトムントで見たことある選手はベンチスタート。とりあえずミリクが出て来たらヤバいって印象だった。
つまんない
90分通して日本はちぐはぐだし、ポーランドはモチベーションの低下からかパスは回せど凡ミスで奪われて……と互いに良さを出しあうわけでなし、良さを消しあうわけでもなし。死ぬほどつまらなかった。セットプレーで大外を酒井高徳がはずされて失点して負け。まだ23時にキックオフだったからよかったものの、時間を無駄にした感が半端ないって!
采配に疑問
この日のスタメンを見て、まず最初に思ったのは
そして、試合を見てもこの感想は変わらなかった。
スタメンを6人変更し、フォーメーションも変えた。変わって入った6人は、岡崎以外はいずれも課されていたであろうタスクを全うできていない、もしくはそもそもタスクなんてなかったんや!としか言い様のない酷い出来。
まず4-4-2の採用について。
相手が4-2-3-1。マッチアップを考えての4-4-2採用であったようだが、日本の強みであるトップ下を生かしたプレーを捨ててまで相手に「形だけ」合わせることはあまりにも無謀だった。
真ん中に人がいないため、日本の強みであるトップ下を使った中央からの崩しは皆無。サイドからサイドへ繋ぎ、どん詰まり。相手のCBはアジリティで優れているとは言えず、今まで通りの戦い方のほうが優位に試合を進められていたように思われる。
起用された選手の力量
前線から岡崎、武藤、宇佐美、酒井高徳、山口、槙野と6人が先発出場をしたが、岡崎以外はよく分からない起用だった。
武藤は、前線で相手DFと駆け引きを好んでいたが、そればかり。あれだけバイタルエリアがポッカリと空いているのに下がる素振りも見せない。それでは大柄なポーランドのDFと高さで勝負しかなくなるのに、非効率的な動きしかできなかった。決定的な場面で宇佐美にパスも出さずに横にドリブルでは怖くもなんともない。
宇佐美は、守備をしない(できない)し、攻め残りからカウンターという戦術でもなく、長い距離をスプリント出来るわけでもないため、中盤でアタフタするのみ。一番酷い選手だった。ポーランドも彼のサイドからチャンスを作っていたし、後手後手の守備はレイトチャージでファウル。攻撃でも輝きは放てず。
酒井高徳はいつもとは違う1列前での起用。軽いプレーで簡単にボールをロストして、酒井宏樹は守備にばかり回った。そんなだからサイドで厚みのある攻撃はできずにごちゃごちゃしてチャンスを潰してばかり。
山口は無策にボールサイドへ向かい、自分のカバーなんて全く見ない。自分が空けたスペースをもっと使われていたら確実に戦犯だ。柴崎との連動もできずにカウンターで相手SBに柴崎、山口がぶつかっていき宇佐美が守備をしないという地獄が完成した。
槙野は前でのグダグダのしわ寄せをくらい、1列前のカバーリング、最終ラインでの守備と頑張っていた。しかし、相変わらず手グセの悪さや軽いプレーでヒヤヒヤもの。最後、フェアプレーポイント差になったときに一番カードをもらいそうな選手だった。他に比べれば悪くはないが……
そんなこんなでいびつな形になってしまう。
気持ちとしてはこんな形に。
DFと中盤のラインはぐちゃぐちゃ、サイドの距離感は離れて分断とまさに地獄絵図だった。
監督の修正力
こんな無秩序な地獄が続くなかで、相手を見て西野さんは修正をするわけでもなく、難しい顔をして見るだけ。
もし自分が試合中で修正をかけるならけこの形にする。
守備で穴になりつづける宇佐美を真ん中に回して守備の負担を下げて、武藤はパラグアイ戦のように右サイドに。酒井高徳を逆サイドに回して宇佐美の裏を突いていた相手に守備力の高さで対応。フリーダムなボランチにはボールに食いつきすぎないように指示を出して中を埋める。
これができればある程度は秩序が保たれ、ゲームも落ち着いて引き分け以上を狙える気がする。しかし、そもそもこんなに修正を施さないといけない状況にあるのが意味不明だし、この試合にそんなリスクを取る必要があるのかと言えばないだろう。
結局、頑なに4-4-2を使い機能不全のまま岡崎→大迫と攻撃のリンクマンを棄てて、宇佐美→乾で結局サイドに守備が必要と判断。いくらなんでもちぐはぐすぎやしないか、と思う次第。
選手選考自体の破綻
ここからわかるのは、主力とベンチメンバーの差が開きすぎており、代役になれていないということ。それはつまり、選手選考自体の破綻であり、戦力になりきれていない選手が主力のかわりを担う極めてリスクの大きいものであるということ。これは西野さんとJFAの失敗に他ならない。特に田嶋は許さん。
なぜか漏れるメンバー
何はともあれ
糞みたいな采配、糞みたいな内容でも、ベスト16進出という"最低限"の結果は掴んだ。結果論だが、主力を休ませての予選突破。最高ではないか。しかしそれはあくまでも「結果論」での話。もっと楽に勝ち点1を手にする采配ができたと感じるし、不要なリスクを背負ってまでビハインドでのボール回しをしなくて良かったと感じる。そこらへんをもっと詰めていければより代表はスキのないものになるのではないか。とも思う。
しかし、なんだかんだ言っても、日本が勝ち上がったのはホントの話。勝負に徹して負けを許容し、リスク上等のゲーム運びでも結果がすべてだ。勝ち負けに美しいもクソもない。最後に時間稼ぎができるくらいここまでの2試合で勝ち点を積み上げてきたのだから。
今日のベルギー戦でこのモヤモヤを晴らしてくれるでしょう!
歴史を塗り替えるまであと1つ。
【日本代表】vsセネガル 中央を制して〈ロシアW杯 グループH 第2節〉
1人少ないコロンビアに勝利したものの、守備での不安を抱えていた日本。しかしこの日は攻撃でのポストプレーが効いた事で相手に後手を踏ませ、自分たちの戦いに持ち込む事ができた。
この日のメンバーは以下のように。
日本代表
コロンビア戦からの変更はなし!
セネガル代表
ポーランド戦は4-4-2を採用していたが、この日は4-1-2-3で挑んだ。守備の中心はイタリアのナポリでプレーするクリバリからのロングフィード、攻撃の中心はリヴァプールでプレーするマネの運動量が注目された。
監督のアリウ・シセは大会最年少の42歳、唯一の黒人監督とそちらでも大きな注目を受けていた。
高く、コンパクトにすることで
どのようなゲームになるかを互いに伺っていた11分、セネガルが右サイドから作りファーサイドへクロス。原口が逸らすもサバリがトラップからシュート。川島が弾くも、目の前のマネにあたり、早くも先制を許す。
しかし日本は、時間と共にセネガルの3トップの前からのプレスをパス回しと球際の強さで対応していく。また、ラインを無闇に高くせず、後ろに最低でも3人を残して裏のスペースのリスク管理を行った。後ろに人数を置き、ライン設定を高くしない事により、日本は中盤での主導権の奪い合いに舵を切った。
中盤での主導権を握る上で、長谷部の動きがポイントとなった。長谷部がボランチからCBに下がり、SBを押し上げて、2列目の選手が流動的に相手のアンカー脇にポジションを取った。
セネガルは、守備の際にA.エンディアイエをニアングの横に置き、左右のウイングがSHを務める4-4-2。日本の長谷部が1列下がったことにより、マッチアップにズレが生じた。
日本は失点後も落ち着いてボールを回し、乾がボランチ(もしくはアンカー)脇に顔を出し、右SBのワゲを内よりに動かして、その大外を長友が突く形で攻略を目指す。
また、ミスマッチにより、柴崎がフリーでボールを持てる場面が増え、攻撃の起点になれたのが徐々に効いてくる。柴崎が起点になり、セネガルのボランチとDFラインの間でクサビを打つ回数が増える。セネガルのボランチは柴崎にチェックに行くとボランチ脇のSBにパスを出されてしまう。前からの守備は連続性に欠く。となればセネガルは撤退をして、3列目とDFラインを圧縮して日本の2列目を消すしかなくなる。これにより、セネガルの1stDFはハーフラインよりやや自陣寄りになり、押し込まれてしまう。
結局、柴崎を捕まえきれないうちに日本が同点に追いつく。中盤で柴崎から左サイド深くに正確なロングボールを入れると、SBの外を走り込んだ長友がワントラップ。長友は乾とスイッチして、乾が右足で巻いてファーサイドへ流し込み同点に持ち込む。
その後日本は香川をやや下げてビルドアップに参加させ中央で1枚剥がすことによりセネガルの中盤に混乱を与えると、セネガルはたまらず5-4-1へと変更。前半はドローで良いという判断からだろう。しかし、ニアングが柴崎のチャージを受けてからイライラしだし、守備の参加を怠りがちになる。不完全な5+4の守備は結果として重心をただ下げるだけの悪手だったと思われる。
その後、前半終了間際にカウンターからFKを与えてしまうが、完璧なオフサイドトラップを成功させる。
オフサイドトラップをかけながら、4人がカバーに入るという実に見事な出来だった。すごい。
そんなこんなで同点で折り返す。
逆向きの矢印を持って
後半に入りメンバーは変わらなかったが、セネガルは中盤の形を変えた。4-2-1-3に変更し、中盤に人数をかけると共に4+4の守備をしやすくした。
しかし、日本の2列目の選手が代わる代わるハーフスペースに侵入することで、相手SBの対応を難しくさせ、後半も日本のペースで試合が進む。59分には相手のミスから原口がボールを奪い、右サイドの酒井宏樹へ。酒井のグラウンダーのクロスに大迫が反応するも届かず。その5分後には大迫のポストプレーからヒールで裏にパス。乾がファーサイドへ巻いてシュートを放つも枠に嫌われて追加点とはならない。
流れを引き寄せられないセネガルは、A.エンディアイエからクヤテに変える。より対人に強いクヤテの投入でショートカウンターを狙う。また、中央で主導権が握れないためロングボールでサイドの深くで位置の回復をしてから攻め手を伺った。
71分に、左サイド深くでマネからサバリにパス。サバリは低く速いクロスを上げると、ニアングがフリックして逆サイドから爆走してきたワゲが豪快に蹴り込んで勝ち越しに成功する。
日本は直後の72分、香川から本田を投入。突然素早さが上がるわけでもないので相変わらず渋滞するが、この日はそれでよかった。
本田が"渋滞"を起こすのは、あくまでタテに速い速攻や、相手の背後を取ることが必要な時だが、セネガルには本田のタメが効いていた。
前半から1トップの大迫がゴールに背を向けた、いわば逆向きの矢印でプレーしており、それにより2列目の押し上げを可能にしていた。セネガルは、守備の要であるクリバリでさえも大迫に手を焼いており、時間と共にポストプレーを選択した選手に1人2人と無闇に寄せる場面が増えて、本来居るべき場所に居ない事が増えてきた。大迫を残しての本田起用は、ポストプレーのポイントを増やし、マークのズレを突く意図があった。
その3分後には原口→岡崎。4-4-2に変えて2つのポイントに加えて前線でのアバウトなボールも回収する意図が見えた。
そして79分、柴崎の縦パスから岡崎→大迫と繋がり、クロス。岡崎とGKが被ってサイドに流れて乾の足下へ。中へもう一度折り返すと岡崎が潰れて本田が押し込み、再び同点に。本田、持ってる。
再び同点にされたセネガルはその後、集中力を欠き、日本も攻め手を欠き試合終了。両チームとも勝ち点4でグループステージ突破に近づいた。
日本らしさを垣間見て
「自分たちの戦いがー」と念仏のように言い続け、惨敗をした4年前。結局、横パスサッカーが日本のサッカーなのか……と絶望をしたが、今回のW杯ではほんのりと「日本らしいサッカー」が見えてきたように思える。
では、日本らしさとは何か。それは「連続性」と「混沌の中の秩序」ではないか。
「連続性」とは今まで勤勉さなどと呼ばれていたもの。プレスバックの連続性や試合終盤でも安定して走れる気力。
「混沌の中の秩序」とは、戦術としての積み上げや整備があまりなされていなく、「混沌」とした試合の中でのゲームメイクやバランスを取るという「秩序」を保つ上手さがあるようにみえた。
W杯のたった2試合で「日本らしさ」などわかるわけないが、そのような傾向があるように見えた。
あと少しでポーランド戦。勝ち点を奪い、ベスト16に行くことで日本のアイデンティティを見つける手掛かりになってほしい。