【日本代表】vsセネガル 中央を制して〈ロシアW杯 グループH 第2節〉
1人少ないコロンビアに勝利したものの、守備での不安を抱えていた日本。しかしこの日は攻撃でのポストプレーが効いた事で相手に後手を踏ませ、自分たちの戦いに持ち込む事ができた。
この日のメンバーは以下のように。
日本代表
コロンビア戦からの変更はなし!
セネガル代表
ポーランド戦は4-4-2を採用していたが、この日は4-1-2-3で挑んだ。守備の中心はイタリアのナポリでプレーするクリバリからのロングフィード、攻撃の中心はリヴァプールでプレーするマネの運動量が注目された。
監督のアリウ・シセは大会最年少の42歳、唯一の黒人監督とそちらでも大きな注目を受けていた。
高く、コンパクトにすることで
どのようなゲームになるかを互いに伺っていた11分、セネガルが右サイドから作りファーサイドへクロス。原口が逸らすもサバリがトラップからシュート。川島が弾くも、目の前のマネにあたり、早くも先制を許す。
しかし日本は、時間と共にセネガルの3トップの前からのプレスをパス回しと球際の強さで対応していく。また、ラインを無闇に高くせず、後ろに最低でも3人を残して裏のスペースのリスク管理を行った。後ろに人数を置き、ライン設定を高くしない事により、日本は中盤での主導権の奪い合いに舵を切った。
中盤での主導権を握る上で、長谷部の動きがポイントとなった。長谷部がボランチからCBに下がり、SBを押し上げて、2列目の選手が流動的に相手のアンカー脇にポジションを取った。
セネガルは、守備の際にA.エンディアイエをニアングの横に置き、左右のウイングがSHを務める4-4-2。日本の長谷部が1列下がったことにより、マッチアップにズレが生じた。
日本は失点後も落ち着いてボールを回し、乾がボランチ(もしくはアンカー)脇に顔を出し、右SBのワゲを内よりに動かして、その大外を長友が突く形で攻略を目指す。
また、ミスマッチにより、柴崎がフリーでボールを持てる場面が増え、攻撃の起点になれたのが徐々に効いてくる。柴崎が起点になり、セネガルのボランチとDFラインの間でクサビを打つ回数が増える。セネガルのボランチは柴崎にチェックに行くとボランチ脇のSBにパスを出されてしまう。前からの守備は連続性に欠く。となればセネガルは撤退をして、3列目とDFラインを圧縮して日本の2列目を消すしかなくなる。これにより、セネガルの1stDFはハーフラインよりやや自陣寄りになり、押し込まれてしまう。
結局、柴崎を捕まえきれないうちに日本が同点に追いつく。中盤で柴崎から左サイド深くに正確なロングボールを入れると、SBの外を走り込んだ長友がワントラップ。長友は乾とスイッチして、乾が右足で巻いてファーサイドへ流し込み同点に持ち込む。
その後日本は香川をやや下げてビルドアップに参加させ中央で1枚剥がすことによりセネガルの中盤に混乱を与えると、セネガルはたまらず5-4-1へと変更。前半はドローで良いという判断からだろう。しかし、ニアングが柴崎のチャージを受けてからイライラしだし、守備の参加を怠りがちになる。不完全な5+4の守備は結果として重心をただ下げるだけの悪手だったと思われる。
その後、前半終了間際にカウンターからFKを与えてしまうが、完璧なオフサイドトラップを成功させる。
オフサイドトラップをかけながら、4人がカバーに入るという実に見事な出来だった。すごい。
そんなこんなで同点で折り返す。
逆向きの矢印を持って
後半に入りメンバーは変わらなかったが、セネガルは中盤の形を変えた。4-2-1-3に変更し、中盤に人数をかけると共に4+4の守備をしやすくした。
しかし、日本の2列目の選手が代わる代わるハーフスペースに侵入することで、相手SBの対応を難しくさせ、後半も日本のペースで試合が進む。59分には相手のミスから原口がボールを奪い、右サイドの酒井宏樹へ。酒井のグラウンダーのクロスに大迫が反応するも届かず。その5分後には大迫のポストプレーからヒールで裏にパス。乾がファーサイドへ巻いてシュートを放つも枠に嫌われて追加点とはならない。
流れを引き寄せられないセネガルは、A.エンディアイエからクヤテに変える。より対人に強いクヤテの投入でショートカウンターを狙う。また、中央で主導権が握れないためロングボールでサイドの深くで位置の回復をしてから攻め手を伺った。
71分に、左サイド深くでマネからサバリにパス。サバリは低く速いクロスを上げると、ニアングがフリックして逆サイドから爆走してきたワゲが豪快に蹴り込んで勝ち越しに成功する。
日本は直後の72分、香川から本田を投入。突然素早さが上がるわけでもないので相変わらず渋滞するが、この日はそれでよかった。
本田が"渋滞"を起こすのは、あくまでタテに速い速攻や、相手の背後を取ることが必要な時だが、セネガルには本田のタメが効いていた。
前半から1トップの大迫がゴールに背を向けた、いわば逆向きの矢印でプレーしており、それにより2列目の押し上げを可能にしていた。セネガルは、守備の要であるクリバリでさえも大迫に手を焼いており、時間と共にポストプレーを選択した選手に1人2人と無闇に寄せる場面が増えて、本来居るべき場所に居ない事が増えてきた。大迫を残しての本田起用は、ポストプレーのポイントを増やし、マークのズレを突く意図があった。
その3分後には原口→岡崎。4-4-2に変えて2つのポイントに加えて前線でのアバウトなボールも回収する意図が見えた。
そして79分、柴崎の縦パスから岡崎→大迫と繋がり、クロス。岡崎とGKが被ってサイドに流れて乾の足下へ。中へもう一度折り返すと岡崎が潰れて本田が押し込み、再び同点に。本田、持ってる。
再び同点にされたセネガルはその後、集中力を欠き、日本も攻め手を欠き試合終了。両チームとも勝ち点4でグループステージ突破に近づいた。
日本らしさを垣間見て
「自分たちの戦いがー」と念仏のように言い続け、惨敗をした4年前。結局、横パスサッカーが日本のサッカーなのか……と絶望をしたが、今回のW杯ではほんのりと「日本らしいサッカー」が見えてきたように思える。
では、日本らしさとは何か。それは「連続性」と「混沌の中の秩序」ではないか。
「連続性」とは今まで勤勉さなどと呼ばれていたもの。プレスバックの連続性や試合終盤でも安定して走れる気力。
「混沌の中の秩序」とは、戦術としての積み上げや整備があまりなされていなく、「混沌」とした試合の中でのゲームメイクやバランスを取るという「秩序」を保つ上手さがあるようにみえた。
W杯のたった2試合で「日本らしさ」などわかるわけないが、そのような傾向があるように見えた。
あと少しでポーランド戦。勝ち点を奪い、ベスト16に行くことで日本のアイデンティティを見つける手掛かりになってほしい。